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#1.-冒険者ヤミー

田舎の村ピロームのまわりの小さな山々を越えたところにある小さな町ペルペには冒険者協会ペルペ支部があった。

 ただ冒険者協会とは言ったもののここペルペ支部はドがつくほどの田舎である

それゆえ そこまで活気はなく人もいない

その建物の上では閑古鳥が鳴いている状態だ

そんな冒険者協会にはたまに冒険者登録をした狩人が来て森の浅い所に生息する小さな魔物から取った素材を売りに来るだけである


「……退屈やわぁ」


そばかすの目立つ瓶底眼鏡をかけた灰色の長い髪に灰色の瞳を持つ受付嬢のアリシアは今日もそう つぶやいてぼーっとしていた。

元々彼女は王都の冒険者協会にいた敏腕職員だったが上司の嫌がらせにより左遷されてしまい今はこのような 片田舎で暇を潰すように生活をしている


そんな彼女が盛大にあくびをしている時、冒険者協会の扉が開いた。

 アリシアは慌てて身を正し扉の先の来客者を見る


「あら、ヤミーちゃんこんにちは」


扉の先にいたのは腰に装飾のない剣と革製の胸当てをつけその下地に動きやすい服を着た短く切りそろえた白髪の少女で頭には山羊のような巻角があった。

 この世界には『獣人』という種族がいる

そのため このような見た目でもあまり疑問は持たれないこともあって アリシア はいつものように彼女に挨拶をした。


「こんにちは アリシアさん 今日は仕事あるかな?」


 そして彼女ヤミーも礼儀正しく挨拶をしてからアリシアに微笑むような笑顔を向けた。

彼女ヤミーは3ヶ月前の春からここの冒険者協会に加入したソロ冒険者である

 本人曰く 魔法剣士で知識もあるらしく色々とできるためここの冒険者協会での依頼は問題なく全てをこなしている

そのため万年冒険者不足でたまにしか冒険者が来ず

溜まっていく 来るはずのない王都からアリシアに対しての『嫌がらせの依頼』の山が少しずつ片づいていくことに アリシアは心中では彼女のことをありがたく思っている


「せやなぁ、あるちゅうたらこないだの回復薬の生成と山奥におるレッドベアの討伐依頼がきてるわなぁ」


「うん、じゃあそれ2つ受けるよ」

 

彼女ヤミーはそう答えると出した2つの依頼書に素早く目を通し

さらさらとアリシアの代筆ではなく自分の手でサインし同時に受けることを承諾した。

 最初の頃は1つだけだったが ここ最近は依頼の数を増やしている


アリシアは無理しないようにとは言ったがヤミーができるというのであえて言わないようにすることにしている


「じゃあ、行ってくるね」


「ええ、気ぃつけてな」


早速依頼をこなしに行くためにヤミーは冒険者協会をあとにした。


―町のペルペの外に出てからヤミ―は周りを見渡して周りに人がいないことを注意深く確認し


一息吐いて一言、「デコイ解除」と言う

するとそこにいた少女の姿はかき消え

首に布袋を下げた一頭の山羊が現れた。

 そう、彼女、冒険者ヤミーは獣人ではなく山羊である

彼女の家にあるロゼッタちゃんのパパさんの持つ『魔導書』の中にある幻影魔法で偽りの姿をその空間に映し先程受付で声で話したりペンを持ってサインするのには風魔法を使っていた。

 これらの魔法は空気中にある魔力操作や術式の発動にかなり緻密なもので取得するのに大変苦労したが去年の秋にこの世を去った芸達者なマミーのお陰でかなり細かい事は慣れているため早くコツを掴むことができた。


「さてと、じゃあ早速同時進行で以来をこなしていこっと」


ヤミーはそう人には伝わらない山羊の鳴き声でつぶやきながら軽やかに魔物の巣窟である山に向かって走っていった。


鬱蒼うっそうとした山の中、ヤミーは歩いていた。

 白い山羊の毛皮はよく目立ち

そのため山羊のヤミーはさぞ美味しそうな獲物に見えたのだろう

そんな食欲をそそる魅力的な彼女の背後に数匹の魔物グレイウルフたちが飛びかかっていくがその瞬間まで気づくことなく見えない刃が彼らの首を一刀両断した。

 風魔法と結界術を合成した自動発動型の魔法で結界に触れると本来は風魔法によるけたたましい音がなるのだがヤミーはここに風魔法の風刃を組み込んでいる

もちろんこの魔法は町中では外すがこのような場所では

ヤミーは常時発動にしている

両断されたグレイウルフたちの背後には他にも仲間がいたがヤミーの魔法があるため近づけないことに気づいた彼らは諦めて離れていった。


「う〜ん、依頼にはないけどお金にはなるから剥いどくかなぁ…」


 ヤミーはグレイウルフの死体から牙と毛皮を風魔法を器用に使って剥ぎ取ると首に下げた布袋に詰め込む

布袋は依頼で稼いだお金で買ったマジックバッグで大人10人は入る容量でヤミーは大変重宝していた。

 それからは同じように魔物がいくつか襲撃してきては風刃ふうじんの錆になりその度彼女の布袋を満たしていく

 そのいくつかは回復薬の材料のスライムもいたので依頼達成の道に一歩近づいた。

そして薬草が生えた場所で目的の薬草を風魔法を使って綺麗に根ごと回収してからその場でそれら回復薬の材料を小さな球状の結界に詰めると火魔法と風魔法を手早く使用して薬草とスライムを細切れにして撹拌かくはん加熱し

そこから土魔法を応用してろろか、抽出などを行った

とれた液体を水魔法で買った瓶に封入ふうにゅうした。


「うん、上手くできた!帰ったらヌムラムの実でも買って食べよっと!」


 依頼された本数を制作して布袋に瓶を詰めるとヤミーは次の依頼、レッドベアの討伐に向かうためにその場にあるほぼ崖のような斜面を軽々と登っていく

人とは違い元々山羊とはこのような斜面では苦も無く歩けるのでヤミーは鼻歌交じりに進んだ。

 その後、山羊だと油断したレッドベアを軽々と風刃ふうじんで首を落としたヤミーは思っていたより楽なのに高収入な依頼だったな〜と思いながらホクホク顔で帰るのだが

本来はただでさえ魔物も出る険しい道中、斜面を迂回しながら進んでからの頑強な毛皮を持つレッドベアとの戦闘、からの険しい帰路で血の匂いで集まる魔物に追われながらの帰還と過酷な依頼なのだが

魔物もあまり出ないが人も通れないような急斜面などを迂回せずほぼ直進して行くため多く見積もって2週間かかると言われていた依頼をたったの3日でこなしたことでアリシアや他の職員に驚かれていたということにヤミーが気づくのは後の話である

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