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#0.-opening

黒太陽歴2435年

キドラム王国の北方にある小さな山々に囲まれた平凡なる田舎の村ピロームの広場では秋の収穫祭が行われていた。


主神ヴィラロウェアラスにその年に作物が無事収穫できたことを感謝するのである

弦楽器や太鼓を鳴らせ賑わう広場では今年取れた野菜や果物 そして畜産によって出来上がった食べ物などが色とりどりの料理となって並べられていた。


笑いながら酒や料理を飲み食い歌を歌いながら楽しそうにしている人の中、大層美味しそうに焼かれた

『ヤギの丸焼き』があった。

一晩かけてハーブなどの香りや味をしみつかせたのか とてもいい匂いがする

村の人々はそれを切り分け 美味しそうにその油がのった肉を口に運ぶ


そんな中、今年の春にこの村で生まれ一つの屋根で寝起きをともにする村娘のロゼッタちゃんに引き連れられた1匹の雌の子山羊、ヤミーは絶望していた。


「マ…ママァ…」


そう、ヤギの丸焼きは ヤミーのママ、マミーであった。

 マミーはこの村のヤギの中ではたいそう美人ならぬ『美』山羊でありよく牡山羊の目をひいていた。

そして何より大層芸達者であり

祭りがあるたびに彼女の芸は村の人たちを喜ばせた。


 しかし、2日ほど前から姿を見なくなりどこへ行ったのかとヤミーは探していた。


 美しく芸達者なマミー…

そんなマミーですら秋の収穫祭で肉になってしまうということを知ったヤミーは絶望したのである

この日、賢いヤミーはマミーから教わった芸だけでは生きていけない


―……そう 教わった。



「あっヤミー!!どこに行くの!?ヤミー!!」


ヤミーは走り出した。

 一瞬 村から抜け出すことも考えたが 村の外は魔物がいるので村の塀から出れば そこから先は魔窟である

子山羊のヤミーがいくら賢かろうと所詮は山羊

村の教会が作った塀を超えれば次の瞬間にはその喉笛を魔物たちに噛みつかれて死ぬのだろう


…だから走る

 さっきまでいた家主の家、ロゼッタちゃんのパパさんの家

彼の書斎にはたくさん本がある

元々ロゼッタちゃんの父である彼は冒険者であり彼の持つ本の中には外の世界へ生きるすべなどが書かれた本もある

―そして何よりヤミーは異常なほど賢かった。

 人の言葉を理解するだけではなく人の書く文章なども読むことができるため

ある程度の文章ならばスポンジが水を吸うごとくすぐ理解してしまうのだ。

 息を切らしながら祭りに行くために 家主がいなくなった 家のドアについた彼女専用の入り口を通り

暗い家の中に入る

夜目のきく彼女は迷わずパパさんの書斎に入り

彼が普段座る椅子を全体重をかけて本棚の方に押してからその上に乗りほとんど読み終えた本の中から

2冊の本、『魔道書』を前足で床に落としその本をめくり始めた。

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