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プラトニック ラブ  作者: 伊咲 汐恩
第九章
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プラトニック ラブ



「えっ………」


「毎日一緒に居よう。一番近くで守るから」




アイドルにとって同棲は死活問題だが、いっときの目線も離さない様子からして本気だとわかる。




「再会して確信したんだ。お前が隣にいたら、自分らしく生きれるんじゃないかって。お前の笑顔を原動力にしたいから、忙しくて会えないとかは無しにして、忙しくても傍にいるって関係はどうかな」


「セイくん……」



「もう二度とすれ違いたくない。どんなに辛い未来が待ち受けていても、俺が幸せにすると誓うよ」


「……っ」



「生まれた笑顔は絶やさせない。悲しくて辛い涙は流させない。決してお前を傷付けたり苦しめたりしない。絶対ひとりぼっちにさせない。約束する。お前がくれたこの勇気の飴に誓って」




セイは自信に満ち溢れた表情で、右手に握りしめている飴を手の平から覗かせて微笑んだ。


セイくんは世界一のバカだ。

誰もが知る有名人なのに、何の取り柄もない私と同棲したいと言ってる。

それが発覚してスキャンダル記事が出たら、セイくんは紛れもなく芸能界から干されてしまうだろう。

昨日までアメリカで学んだ事が全てパァになるかもしれないのに、敢えて危険な橋を渡ろうとしている。



でも、私はそれ以上にバカだ。

その言葉を信じたいし、本気で一緒になりたい。

どんなに辛い事があってもいっときも離れたくない。


自分の人生の主人公は自分だ。

産声を上げて生誕した瞬間から、人それぞれの人生が始まっている。

神様は1人1人別々のドラマを描けるように、人間にイタズラを仕掛けてる。



以前の私は、彼の為に気持ちを押し殺したり、限界に達するまで我慢をしたけど、最終的に幸せじゃなかった。

お互い幸せじゃなきゃ意味がないのに……。


だから私は、彼が目の前にいる今この瞬間から新しい自分に生まれ変わろうと思った。




「はい……」




紗南は涙ぐませながらコクンと頷いた。


私は弱気な自分を捨てて、彼が隣に居る未来を選択した。

それが自分にとって一番の幸せだと思ったから。


すると、セイは紗南の両頬に両手を添えて顔をゆっくり近付けた。

紗南にとっては初めてのキス。

期待と緊張で胸をドキドキさせてゆっくりと目を閉じた。



恋人として復活したばかりなのに、いきなり同棲だなんて自分でも驚いている。


彼の職業は歌手。

私は医師を目指す大学生。

お互い生活スタイルが違うし、彼はどんな食べ物が好きなのか、休みはどうやって過ごしているのか、どんな趣味を持ってるかはまだ知らない。


でも、きっと一緒に暮らしてるうちに少しずつ分かり合えていく。

お互い意見をぶつけ合って、時にはケンカをしながら仲良く生活していけばいい。

どんなに辛い事があっても、彼が隣に居てくれればきっと乗り越えられるから。



ところが、接近してきたセイの唇が5センチ手前に届いた瞬間。


ガラッ……


突然、保健室の扉が全開になった。

その奥には養護教諭の姿が。




「おっふたりさーん。二度目の運命的な再会を果たしたぁ? おめでと……っとぉ」




再会の席を設ける為に長らく席を外していたが、おぼんに乗せた温かいお茶3つとレジ袋に入ってるお菓子を持って現れた。


その瞬間、あとたった2センチで届いはずの唇は、不意打ちを食らったせいで60センチほど飛ぶように離れた。

2人は一瞬にして赤面に。




「いっ……!」

「!!」




セイは白い歯をむき出しにてベッドに座ったまま身体を仰け反らせて。

即座に姿勢良く起立した紗南は、りんご色に染めたほっぺのまま手で口を覆う。


養護教諭と目が合った瞬間、保健室内はシーンと静まり返った。

3人の間に気まずい空気が流れた事は言うまでもない。



養護教諭の予想では、2人は感動的な再会に明け暮れていると思った。

だから、しんみりした空気を打ち破ろうと思って明るく登場すると決めていたが、予想外のキス現場に2人が上手くいった事を確信した。

思わず口元がニヤける。




「あ〜ら、お邪魔だったかしら?」




嫌味の1つも言いたくなるほど、2人はウブに照れ臭さを見せる。




「ぜっ全然……邪魔じゃないです……」


「あっ……たかいお茶、早く飲みたいなぁ」




2人は動揺の色を隠せずしどろもどろな返答に。


外は白銀の世界に包まれる中、静寂に包まれている廊下には保健室からの賑やかな声が漏れていた。



ーーこうして、2年越しのラブストーリーは、一度目に再会した保健室で再び始まりを迎えた。

セイくんとは2年振りに恋人関係に戻っって、勢いに任せて同棲を決意したけど……。




「キスの続きをしたければいつでも席を外すから遠慮なく言ってね」


「杉田先生っっ!」


「じゃあ、折角だからお願いします」



「セイくんってばぁ!」


「あはは……」




私達のプラトニックな関係は、想像以上に長引く予感がしてなりません。




【完】


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