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プラトニック ラブ  作者: 伊咲 汐恩
第四章
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前倒しになっていた留学日程




ーーセイの留学日が7日前に迫った、3月上旬のある日の朝。

紗南とセイ。

2人の恋の障害が色濃く描かれ始めた。


制服に着替え終えた紗南はダイニングに降りてパンの香りが漂ってくる食卓椅子に腰を落として、テレビの電源スイッチを入れていつもの情報番組にチャンネルを合わせると、衝撃的なニュースが目に飛び込んできた。




「えっ⋯⋯」




本日のトップニュース。

それは⋯⋯。


《KGK、2年間芸能活動休止!アメリカにダンス留学へ…》

《ダンス専任講師は、元TOPSメンバー マイケル・リー》

《衝撃!1週間後には渡米》


紗南はマシンガンで胸を撃ち抜かれたような衝撃を受けた。

何故なら、本人から告げられた留学予定日よりも2週間も早い出発だったから。



誤報だと思った。

先に話を聞いていただけにマスコミが信じられない。

聞き間違えていなければ、彼はあと3週間ほど日本で過ごす予定だ。

渡米までまだ時間があるから、残された時間をどうやって充実させていこうかと考えていたところだった。


それなのに、テロップどころか番組のキャスターまでもが、彼との2年間の別れに拍車をかけるように渡米は1週間後と伝えている。


しかも、それはテレビだけじゃない。

父親がいま大きく広げている新聞の一面トップですら1週間後の渡米日を濃厚にさせている。


セイくんが1週間後にアメリカに?

信じられない。

日程が変更になっていたら一番に教えてくれてもおかしくないのに……。


紗南はメディアから間接的に留学日程を知らされると、まるで自分だけが世間に置いてきぼりにされたような気分になった。



次第にいてもたってもいられなくなって、食事を口にせぬまま席を離れた。

顔色が悪い娘を心配した母親は、心配の眼差しで背中を追う。




「紗南、朝ごはんは?」


「ごめん、後で食べる」




階段を駆け上がりながら背中でそう伝えた。

リズミカルに叩きつける足音が耳に入らないほど、渡米日の事で頭がいっぱいになっている。


部屋に到着すると、ベッドの上に置きっ放しにしていたスマホを鷲掴みにして混乱状態のまま震えた指先を叩きつけるようにセイにLINEメッセージを打つ。




『留学は1週間後になったの?』




たった一行だけの短いメッセージに全ての問いを詰め込んだ。

長文は彼の負担になるから。


送信後、10分間ベッドの上でスマホ画面をじっと見つめたまま返信を待った。

でも、返信どころか既読マークすらつかない。

過去の経験からして返信してくれるかどうかも不明だ。


セイは時間差でメッセージを受け取ると、じっと画面を見つめていた。

日程の件は顔を見て伝えようと思っているが、それ以前に仕事が忙しくて会えるかどうかわからない。

手間を省いて返事をするのであれば、彼女の表情を見ないままになってしまう。

紗南との恋は慎重に進めていきたい分、小さな事ですれ違いたくないと思っていた。



デビュー以降、海外ツアーを度々こなしているせいか、アメリカは然程遠い場所ではないと考えているセイ。

丸2年間一度も会えないと思い込んでいる紗南との考え方に、若干温度差が生じていた。


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