カサブタ
こんな話を聞いた。
ある夏の日、梶浦さんは手土産を持って突然実家を訪れた。
彼はいつも連絡をせずに帰るので、両親も慣れっこなのだという。
家に着いた梶浦さんはインターホンを鳴らした。しかし反応がない。
玄関の戸を引いてみると、鍵がかかっておらず、すんなり開いた。
梶浦さんは「まあ近所にでも喋りに行ってるんだろう」と思い、勝手に上がって休むことにした。
エアコンのない家だが、外からの風に冷やされた畳がこの上なく気持ちよく、玄関も閉めずにすぐに大の字になって眠りについた。
しばらくして梶浦さんは口の中の「ジャリッ」という感覚で目を覚ました。何かを噛んだのだ。それは今までにない食感だった。
手に出して見てみると、それが2センチほどの大きさのカサブタだということが分かった。
気持ち悪くなった梶浦さんはすぐに台所に行って口をゆすいだ。
居間に戻り、自分の体を確認する。どこにも怪我はない。
その後帰ってきた両親の体を見てみても、傷ひとつ見当たらなかったという。