【UNDERTALE】本当のリセット
アンダーテール二次創作。
フリスク視点。喋ったり考えたりします。一人称「僕」です(書き終えたあとにフリスクの性別について特に原作で言及されてなかった事を思い出しました)
あれから何度もこの世界をやり直しているが初めてここに来た時の出来事は今でも鮮明に覚えている。
…ここは、どこだろう。
とても暗いし、肌寒い。
夜だってまだ、月明かりも星の瞬きもあるからこんなに暗くはない。
とりあえず起き上がろうと手をついて、そこに花があることに気付いた。僕が寝ていた場所は花畑になっていたようだ。もし、これが誰かが手入れしていた場所なら悪い事をしちゃったな。
立ち上がり、辺りを見回してみたけどやっぱり真っ暗で何も見えない。
ここがどこなのか、僕はなぜここにいるのか。後ろでガサガサと音が鳴り、僕の思考は中断された。慌てて振り向き、音がなった場所をじっと見つめる。
「ハロー、僕はフラウィ!お花のフラウィさ!」
目の前にいる何かが喋った。少しだけ慣れた目には花の中央部が顔のような奇妙なモノがいた。
…モンスター?じゃあ、ここは地底世界……
フラウィと名乗るモンスターはゴチャゴチャと何事か喋っていたけど、そんな事よりも何でこんな所に来たのか、とかどうやって来たのかとか考えていた。
ふと気付いたら目の前にはゆっくりと僕に向かって飛んでくる弾が。慌てて避けるとモンスターは露骨に焦った表情を浮かべ、更にたくさんの弾を放ってきた。
それも避けるとモンスターは不機嫌さを隠そうともせずに更に大量の弾を放った。
僕の周りを覆うように展開された無数の弾、到底避ける隙間はない。
ワケもわからずこんな場所にきて、いきなり殺されるなんてどんな悪い冗談だ。
僕は何とか避ける隙間を探すけど、どうやら本当にそんな隙間はなさそうだ。
「ーーーーー。ーー、ーーーーー」
…え?
ワケの分からない言葉が聞こえ、目の前でフラウィと名乗ったモンスターは燃えた。
「ーー、ーーーーー、ーーーー。ーーーー」
右の方からまた何か聞こえる。そこには白い毛で覆われた新しいモンスターがいた。
今度のモンスターは両手?を広げゆっくりとにじり寄ってきた。
僕はとっさに手に持っていた何かで迫ってくるモンスターの胸を突いた。
それは、ナイフでも槍でもないただの木の棒切れだったのにモンスターの胸を貫いていた。
…何だ、簡単じゃないか。
それから僕は襲ってくるモンスターを全て返り討ちにしてきた。ほとんどのモンスターは弱かったし、手強いのは何度か殺されそうになったけど、それだって倒すことができた。
…でも、それは間違いだったんだ。全てを終えた時、アイツは、僕を、世界を破壊した。そして…
何度繰り返しただろう。最初はモンスターとしか思ってなかった人達と仲良くなり、世界の壁を乗り越える。最初は名前もわからなかったけど、トリエルもサンズもパピルスもアンダインもアルフィーもアズゴアも僕を助けてくれて、一緒に世界を越えてくれた。
…でも…
「どうしたの?怖いユメでもみたのかしら?」
ベッドで体を起こしている僕にむけて優しい声が掛けられる。甘いパイの香りがする。トリエルだ…
前は何を言っているのか分からなかったけど、今ははっきりとわかる。
「あらあら、泣いてるの?大丈夫よ。何も怖いことはないわ。ずっとあなたのそばにいますからね」
そう言うとトリエルはベッドに腰掛け、僕の頭を撫でてくれた。
「だからもう、おやすみなさい」
…違うんだ。僕が寝ちゃったらアイツが…トリエルを…皆を……
また…こうなった……
キッチンの床に積もった塵を見て確信する。
アイツはまた皆を殺した。僕が寝ないとか、縄でグルグルまきにして動けないようにするとか、皆と別々で過ごすとか、そんな方法じゃダメだ。
…そして僕はあるケツイを秘めて世界を『リセット』した。今度こそアイツを止めるために。
皆を…殺せば、最後にアイツと会う。でも、会えてもどうしようもなかった。地底世界の全員を…殺して得られる暴力、殺意…その程度では足りない。アイツを止められない。
そして当然だけど、誰も殺さないでいたら、つまり今の僕の力ではどうにもならない。
だから…僕が目指すのは他の方法。僕が『リセット』できるから思いついた…残酷な方法。
僕が一番強くなるにはやっぱり強い人を倒す事だけど、それだけじゃダメだ。
それに、出会った中で一番強いのはサンズだけど、彼が本気で僕を倒そうとする時は皆を殺した時だけだ。それだとまたアイツに会う。会ってしまう。
だから、二番目に強いアンダインと本気で、何度も殺し合う。その為に、底抜けに明るくていつだって僕を信じてくれるパピルスを殺した。カエルも、中のいい犬の夫婦も、シャイな歌姫も、何の罪もない皆を、何度も…何度も、何度も何度も何度も!!
アイツは言っていた。僕が力をつけたその極点、それがアイツを覚醒させたと。だからそこに至らないで留めることが必要だった。
だからマフェット、メタトン。君たちはターゲットにしないよ。
でも、やっぱりダメだった。『リセット』をすれば僕の力…暴力、殺意も当然だけど『リセット』されていた。アイツは事もなくまた世界を破壊した。
他に方法もなく、僕は何度も世界を進んでは『リセット』していた。何かが変わってほしくて…
何度目かも覚えてないけど、僕は今花畑に寝転がっている。手には棒切れ。体を起こし、僕はそこにいる彼に声を掛ける。
「そこにいるんだろう?フラウィ」
棒切れを彼に向けて構える。でも、出てきたのはフラウィじゃなかった。
「実に、実に興味深い。もしかしたら新たな可能性が現れたのかもしれない。では、実験を開始しよう」
初めて見るヒトだった。でも、それならもしかしたらチャンスが巡ってきたのかもしれない。
彼?の攻撃は見たことがないものばかりだった。
初期状態の僕は回復手段も持たなかったし、翻弄され続けた。でも攻撃するたび「実験を続行する」と言って僕を回復させてくれた。殺すつもりはない、ってことなのか。
そして、攻撃にさらされ続けて行くうちに気づいた。僕自身の力が、強くなっている。
攻撃されているうちに隙ができた。何度も殺されかけては回復させられていたけど、今回はしのぎ切れた。
僕は手に持った棒切れを全力で振り下ろした。
でも、そいつはまるで実体のない幽霊のようでなんの手応えも感じられなかった。
また、攻撃が来る。そう思って身構えたけど、予想外の言葉が返ってきた。
「よろしい。大変素晴らしい。では、これより観測を開始する」
そいつは塵になった。いや、塵とはちょっと違うのかもしれない。地面に落ちずに空中を漂うようにそれは消えてしまった。
想像以上に苦戦したけど、まだこの世界は始まったばかりなんだ。いつもならここでフラウィとトリエルに会うけど、今回は違った。フラウィもトリエルも現れず、訳の分からない戦いをした後、僕は遺跡の奥へと向かった。
まずはトリエルの家を目指す。道中で出会う皆も、すまないけど、全員殺させてもらうね。
大した苦労もなく、僕はトリエルの家に着いた。
ここで…トリエルを殺さなきゃいけない。何度も僕に笑いかけてくれたあの人を、家族になってくれるとまで言ってくれたあの人を。
大きな音をたてながら乱暴にドアを開ける。せめて僕を敵だと思ってほしかった。僕に笑顔を見せないでほしかった。でも、あの人は、やっぱりあの人は僕を見ると笑いかけた。
「あらあら、どうしてかしら。ごめんなさいね、気付いてあげられなくて。ここまで心細かったでしょう?今」
「ごめん、トリエルさん」
にこやかに声を掛けながらこちらに近づいてくるトリエルを僕は手に持った棒切れで叩き伏せた。
「な…なん、で…?」
トリエルは僕の顔を見ながらそうつぶやき、塵になった。
トリエルの家の地下を抜け、雪が積もった林道に出た。ざくざくと雪を踏みしめながら先を目指す。橋が見えた頃、後ろから声を掛けられる。何度も繰り返したやり取り。
…サンズ。差し出された君の左手を握り返す資格は今の僕にはない。
「………。なあアンタ、どんな生き方をしたらそんなカオができるんだ?」
僕も君たちと同じだったなら、きっと『そんなカオ』をすることはなかったんだよ。
スノーフルの町へ向けて歩きだす。
犬の衛兵も、ゆきだるまも、パピルスのパズルももう、どうでもいい。とにかく、僕が皆を殺さなきゃ…
パピルスを殺すチャンスは沢山あった。彼は本当に優しいから、僕がどんなに冷たくしても、酷いことをしても、僕を突き放すことはないし、たぶん、僕を殺せない。
ただ、サンズの目の前ではやれない。きっとそんなことをしたら、その場でサンズともやり合うことになると思うし、きっとそうなった時の彼は本気の時よりもずっと弱いしケツイも足りてない。
…だから、やっぱりキミはここで塵になるんだ、パピルス。
スノーフルの町を抜け、ウォーターフェルへと続く道、そこにやっぱりキミはいた。
「うごくな!ニンゲン!」
ザク…と雪を踏みしめる音が鳴った。
「ちょっと!ひとが」ザク「しゃべってるときは」ザク…ザク「じっとしてきかなきゃ」ザクザクザクザク「ダ…ダメなん、だ」
「ごめんよ、パピルス」
まだしゃべってるパピルスに、僕は棒切れを振り下ろして、その頭蓋骨を叩き潰した。せめて…続く言葉を聞かないように…
ウォーターフェルについた。ここにはアンダインがいる。誰よりも強い心を持った、皆を守る最強のロイヤルガード。
サンズと彼女だけは強いケツイで僕に向かってくる。でも、僕はそれ以上のケツイで君達を倒さなきゃいけないんだ。だから、その為に全員を…
アンダインの闘技場の手前、橋でアンダインと向き合う。槍を構えるその姿は本当に物語の英雄のようで、そしてその槍を向けられる僕は英雄に倒されなきゃいけない魔王だ。
あの子を庇って大ケガをしているはずなのに彼女は余裕シャクシャクといった表情で槍を振るう。
僕も全力でその槍を避け、弾き、もう何度も使ってすっかり手に馴染んだ棒切れを叩きつける。
…でも、もうそれも何度もやってきた事なんだ。
グニャリ、とアンダインの身体が溶ける。
アルフィーの家の地下、秘密の研究所で読んだ。モンスターの身体にはケツイは収まらない。無理に注入すると身体が溶けて混ざり合ってしまう。
アンダインは強いケツイを持って僕と殺し合った。それは彼女の身体には収まらない程の強さを与えたけど、身体はもう限界だったんだ。
「おやすみ、アンダイン」
せめて、完全に溶けてしまう前にトドメを刺そう…
ロイヤルガードも、マフェットも、メタトンも、目の前にいるヒト達は皆やっつけた。
だから、後は君だけだ、サンズ。
「…オマエ……そうとうやんでるな」
「…サンズ。後は君だけだ」
その表情は分からない。でも、それはきっと僕も同じなんだろうな。
サンズの攻撃は…とにかく凄まじかった。そして、こっちの攻撃は難なく避けてくる。君と戦うのはこれが初めてじゃないけど…何度見てもすごいな。
「…君を倒すのは…ホネが折れそうだ」
「……なら、さっさとあきらめてくれないか?」
……そりゃ、スケルトンだからな。そう言ってほしかったけど。ま、そんな気分じゃないよな。
何度も殴りかかるが全て避けられて、その度にタマシイが削られるような反撃を受ける。
…でも、知ってるんだ。それが君にも凄く負担になっていることも。
最後の猛攻をしのぎきった僕に「オレのターンを続けることにした」と言って、サンズは手を止めた。が…
一歩、踏み込む。サンズの目が見開かれる。
「前に、君はサイアクなめにあわされるぞって…僕に、言ったんだ。」
更に、一歩。驚いた様子でサンズはこちらを見ている。前は近づくことができなかったけど、今回は違うんだ。
「…だけど、サイアクなめに合わないためにはこうするしかなかったんだ」
…残った間合いを一足で詰め寄り、彼を叩き潰した。
「…ハハ」
「またな、サンズ」
避ける体力も残っていなかったからか、それとも「この攻撃方法」は想定外だったからかは分からないけど……どちらにしても、サンズは倒れた。
アズゴアはフラウィの不意打ちにやられ、そのフラウィを『アイツ』が切り刻んだ。
…この時を待っていたんだ。アイツは唯一、この時、この瞬間だけ、『僕の前に』現れる。
「久しいな、パートナーよ」
張り付いたような笑顔の裏に見える…とんでもない殺意。
僕は口を開かない。
「そう邪険に扱わないでくれ。私とお前は一心同体。さあ、こんな用済みの世界は消し去り、また作り直そうではないか」
「…お断りだ。もうアンタの操り人形にはならない」
僕の回答にアイツはふう、と、ため息をつく。駄々をこねる子供の相手をするように。
「前にも言ったはずだが。お前はいつから私に指図する立場になったのだ?」
嘲りながら近づき、ナイフを振り下ろす。
…でも、それは見えてる、知ってる、避けられる。
「…な…に?」
アイツはナイフを避けてみせた僕に心底驚いたみたいだった。
「チカラの極点がアンタを生んだ、いや、再生させたんなら…そしてタマシイの主権をそれで取れると言うなら、それ以上を僕が得られれば、また僕がタマシイの権利者に戻れるってことだろ」
僕は使い慣れた棒切れを握りしめる。皆を殺したこの武器で、この世界の一番の悪党を始末する。
武器の性能には差があったけど、同じように僕とアイツ自体も性能の差がある。この世界で最初に会ったワケの分からないヒト。あのヒトが僕に残してくれた経験は今思えば何度も『リセット』を繰り返し、渡り歩いていくうちにリセットしきれなかった僕の力だったのかもしれない。
アイツがもつ膨大なチカラに僕は負けていなかった。
ナイフを振るその手首を、僕は渾身の力を込めて叩いた。
キィンと乾いた音が鳴ってナイフが落ちる。
「…ぐっ」
ナイフを拾うより早く、僕はアイツの手を踏みつけた。
「…わかった、私の負けだ。お前のタマシイは返そう。それが望みなのだろう?」
僕は何も答えない。棒切れを両手でしっかり握りしめ、頭上に掲げる。
「もう二度と君達の世界に干渉しない。約束しよう」
僕は何も答えない。アイツの顔が引きつっていく。
「…答えてくれ、何が望みなのだ」
恐怖をにじませながら叫ぶアイツの頭めがけ、全力で僕は棒切れを振り下ろした。
「…アンタがいない世界さ」
…全部、全部終わった。
さあ、セカイをやりなおそう。
end
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UNDERTALEの世界観、膨大な作り込み、そして何よりNPC達の魅力に魅せられて書き上げました。
ハードのリセットではない方法でのGルート解除といった感じでしょうか。
とはいえそれで本当に望み通りになるのか。
この世界の終焉を見届け、観測を終えた『彼』がそのまま大人しくしてるとは思えませんから『やりなおしたセカイ』に出てきたり、なんてなりそうです。
そうでなくてもフリスクもだいぶ壊れてしまっているでしょうし。
『やりなおしたセカイ』がどんなエンドを迎えるかはここまで読んでくれた方の想像にお任せします。それができるのがUNDERTALEだから。