09 オリガーテ王国の王女姉妹。
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本日三回目の更新で、こちらは一話目になります。
――ガーデニアside――
――その頃、オリガーテ国王夫妻の元には、一通の手紙が届いていた。
差出人はシャルル・エーデルワイス。この名前だけで食事中だった両親は震えあがった。
「お父様、どなたからのお手紙ですの?」
「カトレア、食事中ですよ」
「煩いわね、お姉様は一々礼儀だのなんだのと煩いのよ!!!」
「……」
そう言って姉であるわたくしを怒鳴りつけるカトレアを両親が睨みつけると、一瞬怯んで「フン!!」と口にすると食事を再開する。
ペーパーナイフを持ってきて貰い中を読むと、オリガーテ国王の手が震えた。
「カトレア!!!」
「な……何よ」
「またお前はストレリチアの女主人であるプリシアに対して失礼なことをしようとしていたのか!!」
「失礼なことって何よ。身に覚えがないわ」
「今度、公爵家であるお茶会に無理やり参加するつもりでしたわね」
「ええ、それがどうかしたの?」
「カトレア、何度言ったら分るんだ。ストレリチアの女主人には絶対に手を出してはならないのはオリガーテ王国の誰もが知っている当たり前の事だぞ!」
「あら? あんな女よりシャルル様の隣にはわたくしが相応しいとは思いませんの?」
「シャルルはプリシア殿を一途に愛しいらっしゃる。それを邪魔立てするのなら王家にすら牙を剥くのだぞ。お前は暫く部屋で謹慎だ」
「なんでよ!!」
「それすら解からんようなら、育て方を間違えたとしか言いようがないな」
「そうですわね、いっそ修道院にでも入れます?」
「その方が良いかも知れん」
「はぁ!?」
まさか嫌がらせの為に突撃しようと思っていたところが、自分が修道院に入れられるような事案になるとは思ってなかったようで、カトレアは眉を上げて声を上げた。
「怠惰病の女よりわたくしの方が素晴らしいって何故分からないの!?」
「分からないのはお前の方だ、この愚か者が!」
「!」
「全く、さっさと除籍処分にでもしたほうが王家の為とすら思えてくる」
「本当に」
「……何よ。シャルルにはわたくしの方がお似合いじゃない! 何で皆分からないのよ!」
「兵よ、直ぐにカトレアを自室へ。外に出ないように一カ月の謹慎処分とする。それでも理解出来ないようならカトレア、分っているだろうな?」
「ふざけんじゃないわよ!! お父様もお母様も大嫌い!! ちょっと触らないで!!」
「連れて行け!!」
こうして、慌ただしい朝食はカトレアが出て行ってから静かになった。
両親は大きく溜息を零し、姉であるわたくしは静かに食事を摂っていた。
お父様とお母様があそこまで怒るような真似をまたしたのね……懲りない子。
わたくしはそんな事を思いながら食事をしていると、両親は疲れ果てた様子で食欲を失ったようで溜息を吐いていた。
「何故姉妹で同じように育てたのに……」
「そもそも、カトレアの性格の所為でわたくしの婚期も伸びているというのに」
「さっさと見限るのが一番か?」
「貰い手があれば押し付けたい所ですわ」
「そうだな。だがシャルルを怒らせたのは不味い、ストレリチアの女主人に失礼があればシャルルも黙ってはいないからな」
「本当に、莫迦な子供になったものですわね」
そう語り合う両親には悪いけれど、あの子生まれた時から性格変わってませんわよ。
そう言いたいのをグッと堪え食事を済ませると、わたくしは気分転換に庭を散策することにした。
わたくしとて王家の為に結婚するべく頑張った時期もある。
だがそれらを尽く潰してきたのがカトレアだ。
今ではカトレアの名は隣国にまで広がり、他国では『罪人ノジュのようだ』と揶揄されている。
隣国、ナカース王国の元姫殿下であったノジュは、呪いのアイテムを依頼して作らせた罪で投獄され死亡したと風の噂で聞いた。
妹もそんな運命を将来辿るのだろう。
――出来る事なら、さっさとその道を進んで欲しいわ。
わたくしは既に疲れ切っていた。
20歳を超え結婚相手もなく、隣国でも有名となった妹の悪評のお陰で結婚することも出来ない。
このまま一生結婚出来ないと言う事は無いにしろ、子を産むことが可能な時期を過ぎてしまいそうで怖かった。
また、わたくしの好みにも問題があった。
わたくしは年下好みだったのだ。
20歳を過ぎ、年下の男性と知り合う機会も失った今……結婚と言う未来を描けないでいた。
また、国王夫妻もわたくしの結婚について深く追及もしないし、相手も探さない、いや、探せないと言った方が正しいだろう。
「このままではオリガーテ王国は終わりね……」
小さく呟いた声は付き添いのメイド達にも聞こえない程、全てを諦め切ったか細い声での呟きだった……。