62話 ダンジョンの前
「止まれ!!」
その声が聞こえるや否や馬車が止まった。
「ここより先は許可の無い者は立ち入り禁止である。即刻立ち去るといい」
リュウジンは馬車を降りた。
リュウジンが馬車を降りると帝国兵が警戒したのがわかった。
「ああ、すまんな。俺は皇帝陛下よりダンジョンの調査依頼を受けたリュウジンだ」
「許可証はどこだ?」
リュウジンはインベントリから取り出そうと操作し始めた。
「ゆっくり取り出せ。妙な真似をすれば敵と見做す」
そう言われ、リュウジンはピクッと止まり、その後ゆっくりと取り出し許可証を掲げた。
「確認した。すまなかったな。これも職務ゆえ許されよ」
「ああ、気にしちゃいねえ。にしてもピリピリしているんだな?」
もう1人後ろで待機している帝国兵の女性はこの男よりも警戒していた。
何が起こっても即座に動き鎮圧できるように。
「ここ最近冒険者による襲撃が多くてな。またその類かと思っておった」
(ダンジョンの情報に踊らされたバカがダンジョンを独占しようと奇襲を仕掛けたってところか。まぁこの2人も冒険者ギルドで見た門番ほどではないが俺よりは遥かに強いだろう。そこいらのプレイヤーが束になってかかろうがどうこうすることは出来んな)
「そうか。大変だな」
「まぁ来る奴らの強さは大した事ないからいいんだが・・・・・・。この前飯の時間を2度も連続で邪魔されてな・・・・・・相方の方がな・・・・・・」
帝国兵の男は苦笑いしながら小声でそう言ってきた。
「聞こえておるぞ」
その凛と透き通った威圧感のある声を聞きリュウジンと帝国兵の男は思わず背筋をピンと伸ばしてしまった。
「行くんならさっさと行け。あとダンジョンに入るときにダンジョン前の操作パネルにパーティー登録をしておけ。そうすれば死んでもそこに戻ってくるらしい」
「ダンジョン内で死んでも生き返るということか?」
「知らん。だが、そういう報告を聞いている。それに釣られたバカがダンジョンに殺到しているらしい。一応確かな筋からの情報ではあるが鵜呑みにはするなよ。自分の命は一つしかないと思って挑め」
「ああ、忠告感謝するぜ」
ソラは馬車を止めていい場所を聞きに行き、リュウジンはリンとテルを連れて操作パネルの前にやってきた。
「これか」
とりあえずタッチしてみると、操作パネルが起動した。
操作パネルには、パーティー登録、アイテムショップ、ポイント交換、蘇り地点登録、と表示されていた。
(蘇り地点登録か・・・、さっきの話を聞いてダンジョン内で死んでもすぐに生き返れるのかと思ったが、単に死んだら街で復活じゃなくここで復活できるってだけか?)
「うへ〜、このアイテムショップぼったくりっすね。イーニヤちゃんのとこの2倍近くするっすよ」
「割高価格ってやつっすかね。たしかにいちいち街に戻るくらいなら・・・これでも買うかもしれない。ポイント交換ってのも気になりますね」
「お前、別のダンジョンに行ってたんだよな?既に知ってるんじゃないのか?」
「それが、見落としてただけかもしれないですけど、こんなのがあった記憶はないですね。街からもさほど遠くなかったので露天商もよく居ていましたしあっても使う機会はないですね」
「とりあえず開いてみろよ」
「・・・・・・」
「いや、これやばいっすよ。このポイントがどれくらいで貯まるのか知らないっすけど手に入るアイテムが尋常じゃなくぶっ飛んでるっす」
「蘇生のスキルオーブなんてのもありますよ。1億ポイントなんていつ貯まるのかわからないですが・・・・・・」
「少なくとも市場に出回っているようなものじゃないっすね。売れば一つで当分遊んで暮らせそうなものばかりっすよ」
「・・・・・・」
「どうしたっすか?」
「いや、これもダンジョンで手に入れたアイテムになるのかな、と」
「「あ」」
「ちょっと聞いてくる」
そう言ってリュウジンは帝国兵の所へ向かっていった。
――∇∇――
リュウジンとソラがと共に戻ってきた。
「とりあえず連絡を取って確認するってよ。先にパーティー登録してダンジョンに行くぞ」
「はい!」
「パーティーリーダーはリュウジンさんで良いですよね。でもこれって何のためにあるんですかね?前のダンジョンではこんなものなかったんですけどな。まぁ僕はソロでしたが」
「さぁな。まぁなるようになるしかないだろう」
「1階層の情報とかないんですかね」
「ダンジョンも迂闊に入ると危ないとかでまだ誰も入ってないんだとよ」
「それじゃあ僕たちが1番ってことですね!称号もらえるかもしれないですね!」
「そうですね。もらえる可能性は高いでしょう。役得です」
表情はあまり変わっていないが少し嬉しそうな声でソラはそう言った。
「貰って何かいいことあるっすか?」
「僕が行っていた『獣のダンジョン』では最初の発見者が称号を貰ったとかで、ダンジョン内のステータス上昇効果があったそうです」
「そうか。とりあえず入るか。あまり時間もないしな」
そしてダンジョンに踏み入れた瞬間目眩のようなものに襲われた。
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この後のダンジョン編ですが、ある程度書いていた話に納得できなくなってしまったので一から書き直します。
リアルも忙しくなってきていますので、少し期間が開くかもしれません。
もしよろしければ、万人受けするような作品ではないですが私のもう一つの作品をご覧いただければと思います。