59話 トーカの独白
Side:トーカ
私は元々エルフの村で暮らしていた。
80年くらいその村で過ごした私は変化のないエルフの村に飽き、村の外に出た。
そんな時に、奴隷商に不意を突かれ拐われた私を助けてくれたのが頭領であった。
奴隷になった者の末路など言うまでもない・・・・・・
その結末から救ってくれた頭領に恩を返すためについていくことにした。
頭領は山賊だというが、襲う者襲わない者を明確に区別をつけているらしい。
毎回通るものに、ぷれいやー、なるものかを聞いている。
一度なぜなのか聞いてみたけど、困った顔をしながらプレイヤーなら死んでも復活するんだ、とはぐらかされた。
その後危ないからと何度かエルフの村に帰ることを提案されたが私は断った。
まだ恩を返しきれていないからだ。
それからは仲間と共に無敗の山賊団、当人達は山賊ごっことよく言っているが、を作り上げていった。
人を殺すことには最初は罪悪感があったが、何故だか殺される側も楽しそうに笑顔で死んでいく者が多かった。
な、あいつらは死んでも死なねぇから気にすんな、と言われてからは自分もまだ疑問が完全に晴れたわけではないが少しは気持ちが楽になった。
この前は自分たちの討伐隊だという者達が100人あまり来たが、頭領と副頭領のスキルにより相手のスキルを使えなくし、なす術もなく相手を全滅させることができた。
それで調子に乗っていたのだろう。
たった4人の冒険者。
3人は立ち振る舞いから強いということは分かったが、スキルを使えなくなれば皆同じであると思っていた。
その考えは甘かった。
最初は2人いるのにたった1人で挑んできたことに、バカにして、と傲慢になっていた。
しかし普段であるのなら絶対に当たる連携攻撃を避け続け、遂には前衛を抜け後衛に迫ってきた。
だが、その対策も織り込み済みで、一見すぐに破壊出来る土も仲間の魔法で補強することで見た目以上に硬くなっている。
だから、それに手間取っていると上からの攻撃の嵐に敗れるし、向かい打って全て対処することなどスキルなしでは不可能である。
だから今まで誰にも破られたことがなかった必勝の策であった。
しかし、攻撃が止んだ後に立っていたのは無傷のあの男だった。
この辺りから私は焦っていたのだろう。
皆が固まって動けない時にみんなを死なせないように援護した。
この時にはもう相手を下になど見ていなかった。
むしろ全力で殺すべき敵だと認識した。
しかし援護も虚しく2人が殺された。
悲しくて憤りを感じたが、まだ生きている仲間が大勢いるので嘆くのは後だと自らを叱咤し援護を続けた。
そして皆が全力で殺しに行っても全く傷すらつけられないことに焦れてしまった私は皆に離れる指示をし、1人で全力で攻撃をしてしまった。
そして自らの矢の本数すら管理できず、更には連携のミスをしてしまい目の前に迫る死を覚悟した。
だが、その瞬間ボローが私の前に飛び出し私の身代わりとなり死んでしまった。
ボローは私がこの山賊団に入ってからいつも気にかけてくれて、戦闘訓練もよくしてくれた。
そして最初の頃によく落ち込んでいるといつも慰めてくれて気分転換にと遊びに連れて行ってくれた。
そんな優しいボローが私のミスのせいで死んでしまった・・・・・・
ミカ、ハンゾー、トウリ、カレン、ワフー・・・・・・
他のみんなも自分がしっかりと援護出来ていれば死ななかったのでないか、そう思うともう自分の感情を抑えられなかった。
ガルの『山賊の領域』は相手のスキルを使用できなくする代わりに味方のユニークスキル以上のスキルも使用できなくなってしまう。
私のユニークスキル『白霊の奏者』を発動するためには領域を解除してもらわなければならなかった。
ボローは逃げろと私に言ったが、仇を残して逃げることなど出来なかった。
ユニークスキルを使えば仕留める自信はあった。
だが、蓋を開けてみれば避けられ続けている。
それに相手はまだスキルを使っていない。
スキルが使えるようになったことに気づいていないだけかもしれないが、それならば尚のこと早めに決めなければならない。
そしてまたしても焦ってしまった。
誘導につられ接近を許してしまった。
エルフの村を出るまでは剣など扱ったことはなかったが、何かあったときのためにとボローが剣の扱いを教えてくれていた。
またボローに助けられた。
そのおかげで数度相手の攻撃を受けることができ、魔術を使って相手を離し、それによって初めて傷をつけることができた。
だが傷をつけられてもあの男は笑っていた。
もはや恐怖すら感じた。
そしてそれ以上の戦闘に耐えきれなくなり奥の手を使った。
一応仲間に当たらないように範囲は調整したが、しっかりと出来ていたかはわからなかった。
そして雨が降ってくるときにあの男が避けるのはもはや無理なところにいた。
そして勝ったと思った。
脱力したとき、首に刀が当てられていた。
そして負けたのだと気づき生き残ることを諦めた。
最後に思い浮かべたのは死んでいった仲間達、頭領、そして村に残してきた両親だった。
だが、後少しで死ぬと言うときに頭領の一声で男が止まり生き残った。
あの男が頭領の方に向かうと仲間達が駆けつけてくれて抱きしめられた。
そして無茶をしたと怒られたり、よく頑張ったと褒められたりした。
だが殺された者のことを思うと喜ぶ気にもなれず落ち込んでいると、仲間は死んでいないアジトでまた復活していると、慰めてくれた。
前々から相手は死んでも死なないし、自分たちも死んでも死なないということは言われていたが世迷言だと思っていたし自分が罪悪感を感じないように慰めの言葉を言っているとしか思っていなかった。
あまり信じていないのを察したのか仲間のみんながアジトに戻ればわかるよ!と何度も力説してくれた。
その必死さに少し笑いが込み上げてきて信じてもいい気がしてきた。
そして心に少し余裕ができあの男のいる方を見た。
頭領があの男に頭を下げており、その後ニカっと笑っていた。
ああ、これでやっと終わりだ。これ以上仲間が死ぬことはないと思い涙を浮かべていると、あの男と頭領の闘気が膨れ上がった。