51話 職業選択
「まさかパーティーにお誘いくださるとは思ってもいませんでした!自分も今日ダンジョンに行ってたのである程度は案内や説明をできると思います!」
前のようなビクビクした感じではなく、はっきりとした明るい青年になっていた。
(前もこんなやつだったか?)
「リン、どこまで伝えた?」
「えっと、ダンジョンに行くつもりなんっすけど一緒に行かないっすか?としか伝えてないっす」
「なるほど。まずテル、来てもらってからで悪いが、行くところはお前が行っていたダンジョンではない。それと行くに当たってある条件を呑んでもらわないといけない。その条件が呑めないなら全然断ってくれていい」
「は、はい!」
「まずはこれから挑むダンジョンは帝国所有のダンジョンになる」
「えっと・・・、それってダンジョンの前に騎士がいて追い払われるところですか?」
「おそらくそうだな。許可がなければ入れないところだ」
「ま、まじっすか。いきます!いかせてください!!あ・・・、でも、帝国所属のダンジョンの中だと配信できないとかあるんでしょうか・・・」
「う〜ん、まぁそれは大丈夫じゃないか?知らんが別にそのくらい構わんだろう」
「それで、これは皇帝陛下からの依頼になるから普通のダンジョン探索とは違うことがある。まず入手したアイテムは原則帝国が買い取るらしい。ただ、いらないものはそのままもらえるらしいが・・・。で、報酬だが1日の探索にパーティー単位で100万フーロ、それと
見つけたアイテムの売買を3人で割る形となる。アイテムの場合は・・・まぁ適宜相談で。それと見つけたアイテムを隠した場合は罪に問われるからやめとくように。大丈夫だとは思うが」
「なるほど。全然大丈夫です。それと報酬ですが、僕は便乗させていただく形ですから全体の2割でいいです。100万って3で割り切れないですしね。その代わり配信をさせていただければ・・・」
「流石にそれはダメだろう。こういうのは公平にしとくべきだろう」
「いえ、あの・・・配信での収益もあるので、むしろ公平に貰ってしまうと僕だけズルしている気が・・・。あ!もし良かったら配信やってみませんか?リュウジンさんとリンさんならすぐに人が集まるだろうし、お金ももらえて一石二鳥ですよ」
「興味ねぇな。誰かがやるのは別に構わんが、わざわざ自分の戦法を晒す気にはなれん」
「あたしもっすね〜」
「そうですが・・・。じゃあやっぱり僕の報酬は2割でお願いします!それが僕の条件ということで!」
「まぁ、本人が納得しているのならいいが・・・」
「はい!大丈夫です!それでいまから行くんですか?」
「いや、イーニヤのやつがもう1人同行者を連れてくるって言ってどっか行ったからそれ待ちだな」
そのとき、バン、と扉を開けて入ってきたイーニヤが流れるように土下座をした。
「も、もう1日待って欲しいにゃ!もしくは明日からの合流で許して欲しいにゃ!」
テルは呆気に取られたようで、口をポカンと開けていた。
リュウジンもやりたいことがあったし別に急がないため別に明日からでいいと思っていた。
「お前らはどうだ?俺はやりたいこともあるし別に明日でもいいと思っている」
「僕もそれならアイテム補充や武器調達をしておこうと思いますので明日からでいいですよ」
「あたしはどっちでもいいっす!」
「ありがとうにゃ!明日は何時にいればいいにゃ?」
「あ〜、昼からでいいか?」
「は、はい。大丈夫です!」
「大丈夫っす!」
「じゃあ昼の1時にここに来る」
「わかったにゃ!」
「じゃあ僕はこの辺で失礼します。あ、イーニヤさんアイテムの購入していってもいいですか?」
テルとイーニヤはそのまま話し始めた。
「よし、じゃあ俺は神殿に行ってくる。リン、お前はどうする?」
「あたしもアイテムと武器の補充をしておくっす。その後は戻って鍛錬っすかね」
「そうか。じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃいっす〜」
リンが手をひらひらと振って見送ってくれた。
リュウジンは神殿に着いてそのまま中に入っていった。
「あら?何か御用かしら?」
中に入るとシスターの服を着た40代くらいの女性に話しかけられた。
「ああ、職業に就きたくてな」
「あらあら、お若いのに偉いのね〜。でも職業に就くには結構お金がかかるのよ?大丈夫?」
フフフ、と嫌な感じは全くない笑みを浮かべ聞いてきた。
「これでもちょっとした小金持ちに最近なってな。一応男爵でもあるから金の心配はいらん」
「あらまぁ。男爵様とは失礼いたしました」
目を大きく見開き驚いた様子で謝罪してきた。
今のリュウジンの格好はとても貴族とは思えないものであった。
「かまわん。そもそも俺自身が貴族という意識がないからな」
「ありがとうございます。それではこちらに来てください」
そう言って神殿の奥にある祭壇らしきところに来た。
「それではこの魔法陣の中にお入りください。起動しましたら目の前に今就くことが出来る職業が浮かび上がってくると思いますので、就きたい職業を選んで教えてください」
「金額はどこでわかる?」
「選ぶときにわかりますよ。それではいいですか?」
「ああ」
リュウジンがそういうと魔法陣が起動した。
そしてリュウジンの頭の中に幾つかの候補が浮かび上がった。
[剣士]
[武士]
[拳士]
[魔獣使い]
[??見習い]
(気になるのは)
――武士――
大剣豪になれる可能性を秘めた職
刀を使う攻撃に10%の追加ダメージが乗る
寄付金:150万フーロ
――――――
(まぁ今の戦い方からならこれでいいだろうが・・・もう一つ気になるのは)
――??見習いーー
今はまだ弱いが??に至れる可能性を秘めた職
あらゆるパラメーターが1%上がり、自分よりも格上の相手に挑む場合にLUKが大幅に上がる
寄付金:1000万フーロ
―――――――――
(何だこれは・・・・・・寄付金の割にもらえる恩恵がショボ過ぎないか・・・・・・。だが、何になれるのか隠されているのが気になるな・・・・・・。あの神獣の名前も隠されていたし・・・・・・。無性にこれに惹かれるものがある。賭けになるが・・・・・・直感もまた大事であろう)
「決めたぞ。この『??見習い』ってので頼む」
「えっと、そのような職業はございませんが・・・」
シスターは冗談ではなく本気で困ったように言っていた。
「は?だが、ここにあるのが見えるだろう?」
リュウジンも焦ったようにシスターに問いかけたが、困った子を見るような目で微笑まれただけだった。
リュウジンはよくわからないが文字化けしているしまだ成れない職業なのだろうと考え武士を選ぼうとした。
「じゃ、じゃあこの」
「『??見習い』でよろしいですね?」
「は?」
「どうかなさいましたか?」
先ほどまで無いと言っていた職業を突然当たり前のように言ってきたシスターにリュウジンは困惑していた。
「い、いや」
「それではこちらに1000万フーロお布施ください」
そう言われ訳もわからないままとりあえずお金を払うと
「リュウジン様、貴方様は今より『??見習い』となりました。どうか貴方が『??』になれんことを」
そう言って穏やかな顔で微笑んだ。
そして、リュウジンはよく分からないが用事が終わったので神殿を後にした。
「フフフ、期待していますよ?」
後に残されたシスターは誰にも聞かれることもなくそう言い残し目を閉じた。
「あ、あら?さっきまで職業選択に来ていた子がいたような・・・・・・。あらやだ眠ってしまっていたのかしら」
そう言って日常に戻っていった。