50話 イーニヤ商会
その後マックスの馬車で冒険者ギルドまで送ってもらった。
「また何かあったら頼ってね。先輩として助言してあげるわよ♪」
「ああ、今日は助かった。マックスよ礼を言う」
マックスと別れてからリンに連絡を取った。
リンから即座に返信が来て、イーニヤの店にいるということなのでそこに向かうことにした。
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「さぁ、キリキリ情報を吐くにゃ!」
イーニヤ商店に入ると仁王立ちしたイーニヤに突然そう言われ詰め寄られた。
なんでも俺がマックスと馬車に乗って貴族街へと向かっていったのを見ていたプレイヤーが多くいたらしく、また問い合わせが殺到したそうだ。
そんな用事があるのにも関わらず直前に何も言わず行ったことにご立腹らしい。
「だ、男爵になったのにゃ?」
「頭が高いぞ?」
「ハハ〜」
そういって平伏したふりをするイーニヤ。
「それでなんで男爵になったのにゃ?」
「あ〜、帝国に多大な貢献をしたから?」
「そんなことはわかってるにゃ」
イーニヤにジト目で睨まれた。
「詳細は言えねぇが、帝国の危機を未然に防いだからだ」
「もう少し欲しいにゃが、まあ無理には聞かないにゃ。それで?依頼も頼まれたのかにゃ?」
「ああ、情報を誰にも売らないと約束するなら1つ役に立つことを教えておいてやろう」
「わかったにゃ。約束するにゃ」
「聖国と戦争になるかもしれないらしい」
「戦争にゃ?!にゃ、にゃるほど〜。無くはないにゃね。大会終わった次のイベントが国家間戦争・・・色々用意しておいた方がいいにゃね。ありがとうにゃ!」
「ああ、だがこの情報絶対に漏らすなよ?漏らせば2度とお前には情報を売らんからな」
「わかっているにゃ。あたしもこの世界を無闇に荒らすつもりはないにゃ」
「そうか。悪かったな」
「おいリン、ということでダンジョンに行くつもりなんだがダンジョン探索に向いてそうなスキル持ってるか?」
「持ってないっす。ていうかあたしも行っていいんっすか?」
「ああ、少しばかりの条件はあるが許可をもらった」
リンはそれを聞いて、パア、と顔が明るくなっていた。
「他にも連れて行けるっすか?」
「連れて行くのが自由だが、報酬は頭割りだから人数が多くなればなるほど少なくなるぞ。ただ競争相手はいないがな」
「それならテルはどうっすか?この前聞いたスキルの中にかなり探索向きなスキル多かったっすよ?」
「ああ。たしかにな。だがどこにいるか知らんぞ?」
「この前パーティー組んだからログからチャット出来るっすよ。頼んでみますっすか?」
「ああ、頼んだ。そういやイーニヤよ。こんなものを陛下から貰った」
ニヤッと笑って鑑定のスキルオーブを見せた。
「にゃにゃにゃ、何にゃこれ!こんなものがあるにゃ?!」
「ああ。むしろこの世界では何らかのスキルを得られるスキルオーブが主流っぽいぞ。オークションでたまに出品されて数億の値が付くらしいぞ。買ってみたらどうだ?」
「オークションって何にゃ?どこでやっているのにゃ!」
「あ〜、それは知らねえわ。マックスがオークションでたまにあるって言ってただけだからな」
「マックスって誰にゃ」
「冒険者マスターのギルドマスター」
「名前があったのにゃ・・・」
「そりゃあるだろ・・・」
「確かに初めて聞くっすね。それにしても名前で呼ぶなんて親しげっすね」
「ああ、まぁここ数日色々世話になったからな」
「ギルマスについても知ってること教えて欲しいにゃ・・・」
躊躇いがちにイーニヤが言ってきたが、そのくらいは構わないだろう。
「ギルマスって男爵だったのかにゃ〜・・・。今日だけで色々な情報が増えて行くにゃ」
「商売人としては嬉しい悲鳴ってやつだろ?」
「まぁそうにゃね〜」
「どうした?いつもの元気がなさそうだな」
「今回のアップデートでランキング機能が消えたにゃ。あれで1位になるってわかりやすい指標があったんにゃが・・・大商店を目指すことには変わりないんにゃけどね!とりあえずは貴族のお抱え商人を目指すにゃ」
「俺も一応貴族だぞ?もうすでに目標達成したんじゃないか?」
そう言ってケラケラ笑った。
「うるさいにゃ!それはなんかズルした気がするにゃから、NPCの貴族のお抱えを狙うにゃ!」
「あ、返信来たっす。是非お願いしたいってことらしいっす。ここに来てもらうっすか?」
「ああ、そうだな」
「了解っす」
リンはそう言ってまたウィンドウを操作し始めた。
頬杖をついてアイテム欄をチェックしてると
「リュウジン君、お願いがあるんにゃが。1人この商会の人員を連れて行ってくれないかな。もちろんその人員への報酬は商会から出すし連れて行ってくれるならこちらからも報酬を出すにゃ」
「何のために?」
「情報のためにゃ。まずテルは配信者にゃから、今回のクエストでもリュウジン君の許可があれば配信しながらの攻略になるにゃ。そして絶対何かやらかすのにゃ!!そしてまた問い合わせの嵐がくるのにゃ!そんな状態になるとわかっているのにゃらすぐに説明できるように1人こちらの人間を忍び込ませておきたいのにゃ!」
「まぁ俺はかまわんぞ。他は自分で許可を取れよ。あと俺は守らんぞ?護衛依頼じゃないからな」
「ありがとうにゃ。ちゃんと役に立つ人員を送るにゃ!一応戦闘人員もいるにゃよ」
誰を連れて行くのか流してくる、と言い残して部屋を出て行ったイーニヤを見送り、リュウジンはこれからのことを考えていた。
金が手に入ったので職業につけるようになったこと、そして手に入れたスキルの確認、眷属召喚(改)の眷属との契約、あとは防具の調達、今の防具は安物だからそろそろしっかりしたものを揃えておきたいのだった。
そしてテルが来るのを待っている間、眷属召喚できるリストの一覧と契約条件を見ていた。
契約できる眷属にはランクがあるらしく冒険者ランクと同じくGランクからSSSランクまであった。
下位ランクの眷属には戦闘能力はないがそれぞれ優れた能力を持っていたため、本当はテルに頼らずともささっと契約してしまえばよかっただけなのである。
しかしリュウジンが欲していたのは共に戦える眷属であったので上の方しか見ていなかった。
SSSランクに載っているリストを見て、1体の詳細を見てみた
そうすると、そのモンスターのホログラムが現れ
――[SSS]冥獄神轟ガンダールーー
契約条件:冥獄神轟ガンダールに戦闘で勝つ。ただし一度負ければ再挑戦は出来ない。
ステータス
HP:1765000
MP:7230000
STR:84371
VIT:120043
AGI:4328
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更によく見るとホログラムの横には小さく帝都のミニチュアが比較対象として置いてあった。
リュウジンはおもわず頭を抱えた。
(勝てるか!)
そんな様子を見てリンが話しかけてきた。
「どうしたっすか?」
「いや、なんでもない」
苦笑いでリンに大丈夫だと伝えた。
(SSSランクは論外だな)
そうこうしているとテルがやってきた。