45話 決闘
41話にて皇帝陛下のこの国での設定を書き加えました。
皇帝陛下はこの国では絶対的な君主だということです。
ご迷惑をおかけしますが、今後もよろしくお願いします
「おい!宮廷魔導士団長と副団長を呼んでこい!」
「は!かしこまりました!」
陛下は端にいた兵士に命を出した。
近衛騎士を5人引き連れた陛下は俺とリチャードの近くに来て話しかけた。
「さて、それじゃあルールを決めるとするか」
ニヤッと笑ってこちらを見てきた。
「さて、学園でよくする決闘のルールに今回は3本先取とすることにしよう」
そしてルールがチャットで送られてきた。
このウィンドウの機能はプレイヤーだけじゃなくNPCも使えるのか。
この前ドゥにもらったIDってのはこれに使うのか?
IDといって渡されたのはいいものの、どのように使うのか分からなかったリュウジンは放置していた。
イーニヤに聞くにも秘密裏に接触してきた相手の情報を漏らすのはリュウジンの信条に反したためNPCから IDというものを入手したことすら隠したのである。
――決闘のルールーー
内容:サバイバル戦
回復不可
消費アイテムの使用不可
使用武器は一つのみ持ち込める
勝利条件:「相手のHPを0にする」または「降参させる」、を3回達成。
――――――――――
「よいか?」
「は!問題ありません」
「ああ」
「貴様!陛下に対してその口の利き方はなんだ!」
「武器を取り出せねぇんだが、これは外してくれんのか?」
リュウジンはリチャードの言葉を無視して、ブレスレッドをはめている腕を上に上げながら聞いた。
「き、貴様〜!!」
リュウジンに掴み掛かろうとしたリチャードであるが陛下の側にいた近衛騎士が抜剣したことで顔を青くして動きを止めた。
「後ほど外してやる。それでリュウジンよ。どの武器を使うつもりだ?」
陛下としては神獣が作ったという神刀を見てみたというある意味催促のようなものであったが、リュウジンは対人であの刀を使うことはないと決めていたので
「ドーラ工房の刀だ、です」
リュウジンは言葉が崩れていることに気づいて取り繕ったかのように言い直した。
「ハハハ。かまわんかまわん。言葉を崩すことを許す。流石に公式の場では許さんがそれ以外の場でなら今後許可なく言葉を崩して良いぞ」
「ありがとうございます」
そう言って礼儀正しく頭を下げた。
そして近衛騎士が陛下に耳打ちすると陛下は去っていった。
「・・・う、どー・・こ・・・う、ドーラ工房だと!俺様がわざわざ出向いてやったというのにクソ平民の分際で断ったドーラ工房だと!!少し貴族に人気があるからと調子に乗りおって・・・貴様も奴も俺様が伯爵になったら処刑してやるからな!!いや、お前はこの決闘の褒美の一つとして処刑してやろう!光栄に思え!」
リュウジンにとってはもはや倒すべき敵であり、敵が挑発してくることなど当たり前であるので反応することは一切なかった。そもそも挑発ではなく本心で言っているだけに救いようもないのだが・・・
そしてそんな様子のリュウジンを見て更に理性を失くしていくリチャードであった。
その時点でもはや勝負は喫してるといってもいいだろう。
リュウジンの見立ててではリチャードの強者としてのオーラはせいぜいが新月流門下生の下位も下位。逆立ちしようが負けようがない相手なのである。
しかし相手の実力も読むことができないリチャードは当然のようにリュウジンを殺せると思っているのである。
「さて、準備が整ったようである。双方こちらへ来るといい」
陛下の声が鮮明に聞こえてきた。
リチャードはこちらを殺さんばかりに睨みつけながら、リュウジンはどこ吹く風で全く相手にせず陛下の下へ行った。
陛下の下に行くとローブを着た老人と中年くらいのダンディなおじさんがいた。
「これから決闘のための空間を構築し、そこに入っていただきますのじゃ。入るとカウントダウンが開始されるので0になったら決闘が始まりますのじゃ。よろしいですかな?」
「ああ」
「は!」
「それでは封魔のブレスレットを外させていただきますのじゃ。中に入ってから初めに取り出した武器以外の武器を取り出した時点で敗北と見做しますのじゃ」
そう言って2人のブレスレットを外した。
ブレスレットを外されたリュウジンははめていた手首を持ち軽くストレッチをした。
「それではお入りください」
――決闘場に入場しますかーー
入場 拒否
――――――――――――――
リュウジンは即座に入場を押した。
リュウジンの視界が切り替わり、何もない荒野のような場所に立っていた。
少しすると20mくらい離れた位置にリチャードが現れ、
――決闘開始まで60秒――
とカウントダウンが始まった。
そしてリュウジンはロゾーに借りている刀である龍炎刀を取り出した。
レッドドラゴンの骨が素材として使われていてほんのりと赤みを帯びた刀身は惚れ惚れする美しさがある。
対するリチャードはAランクモンスターであるヘルガイザーの牙を使って職人に無理やり作らせたお値段5000万フーロの剣である。
明らかに実力にあっておらず、ただ剣の性能に頼っているだけなのであるが・・・・・・。
そして決闘が始まった。
「ハ!貴様ごとき即座に殺してやるわ!」
そう言いながらこちらに走ってこようとした瞬間リチャードの首が落ちた。
「へ?」
地面がいきなり迫ってきた意味がわからず間抜けな声を最後に絶命した。
リュウジンがやったことは、戦闘開始と同時に新月流の歩法を用い20mという距離を即座につめ、首を切った、ただそれだけである。
――第1戦 勝者 リュウジンーー
――次の戦闘開始まで60秒――
カウントダウンが開始されると同時にリチャードがまた出現した。
しかしリチャードはないが起こったか分からず放心していた。
「手加減してくれるのは嬉しいが、手加減しすぎなんじゃねえか?」
リュウジンは放心しているリチャードを見て思考を誘導した。
リチャードは案の定自分が無意識のうちに手加減をしていたんだと、もはや自己暗示に近いことを繰り返し、いまだにリュウジンの戦力を図ることすらしていなかった。
そして第2戦が始まった。
リュウジンは次は即座に殺さずリチャードから来るのを待っていた。
「ふ!先程は花を持たせてやったが、これからは手加減せずに叩き潰してやる!」
もはや冷静さの欠片もない状態でリュウジンに斬りかかってきた。
リュウジンは最初、少し後退しながらリチャードが打ってくる斬撃を全て刀で防いでいた。
「フハハハハハハハ!防戦一方だな!先程の調子はどうした?所詮お前ごときが俺様に勝てるわけないだろう!ホレ!ホレ!ホレ!ホレ!」
全力で攻めているのに決まっていないことにすら気づかず、自分はまだ本気を出していないだけ本気を出せば即座に片がつくと信じてやまなかった。
数分も打ち合っていると
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
碌に鍛錬もしていなかったリチャードは肩で息をするようになり、対するリュウジンは汗一つかいていなかった。
誰がどう見ても実力差は明らかであるが、リチャードは未だに自分の方が強いと思っていた。
「は!お遊びはこのくらいで終わりだ!そろそろ本気でいくぞ!」
そうして斬りかかってきたリチャードの斬撃を今度は刀を構えることもなく全て体捌きだけで紙一重で避けていった。
「クソ!クソ!クソ!当たれえ!当たれ!当たれ!当たれー!!」
リチャードは子供のチャンバラごっこのように大振りを繰り返す。
そして最後の大振りの一撃をリュウジンは左手の中指と人差し指の2本だけで挟み取った。
そして、
「どうした?それが本気とやらか?」
そう言って挟んでいた手を離して、見えない速度で首を斬り飛ばした。
――第2戦 勝者 リュウジン ――