43話 バカ貴族
「さ、降りるわよ」
リュウジンが馬車を降りると執事とメイドがずらりと並んでいた。
「お待ちしておりました、マックス様、リュウジン様。陛下より命を出され、本日リュウジン様のお世話を担当させていただくボードと申します。何かございましたら何なりとお申し付けください」
そう言って真ん中に立っている執事服の老人がキレイな礼をした。
「ああ、よろしく頼む」
その後リュウジンとマックスは客間に通された。
そしてまずはサイズを測るために採寸をしていた。
「リュウジン様、まず初めに本日のご予定を話させていただきます。そのままお聞きください。まずはこのままここで服のサイズ調整や謁見に関して注意事項を聞いていただきます。10時30分になりましたら謁見の間に移動していただき11時より謁見となります。謁見は10分から20分ほどで終わる予定ですので、その後もう一度ここに戻ってきていただき帰宅していただく流れとなります。何かご質問はございますか?」
「いや、特にない」
そして注意事項を聞き服の試着などをして30分ぐらい経った頃にそいつは来た。
「お待ちください!これ以上は誰も通すなと命じられております!」
「ええい、邪魔だ!俺の邪魔をするとはその首を刎ねるぞ!!」
そして細身の長身ではあるがしっかりと鍛えられている15〜16歳くらいの男が部屋に入ってきた。
そして部屋を見渡し俺を見つけるとニヤリと笑ってこちらに来ようとしたが
「これはこれはリチャード=バロック様、こちらへはなぜお越しになられたのでしょう?この棟へは今日は近づかないようにと厳命されていたはずですが、ご存知ありませんでしたか?それとも知っていて陛下の命に背いたということでしょうか?」
口調自体は優しげであるのに、ただの執事とは思えない有無を言わさぬ圧力でリチャードに詰問した。
「っぐ!俺はただそこのやつに一言言いにきただけだ。それが終わったら帰る!おい、お前!お前の持っている挑戦権とやらは俺が貰ってやることにした。ありがたく思うんだな」
それが決定事項だと言わんばかりに一方的に言って帰っていった。
「あなたのことだから殺気くらい漏れるかと思ったけど大丈夫そうね」
「ああ、事前に予測していたからな。むしろあいつの今後を思うと怒る必要もあるまい」
「野心を持つなとは言わないけど、せめて身の丈にあった野心を持つべきね。バロック伯はあれほど優秀なのになんてその息子は・・・はぁ」
「伯爵とは知り合いなのか?」
「ええ、バロック卿は外務大臣で、よその国に行ったりすることがあるからよく会議などで顔を合わせるのよ」
「バロック伯とやらはアレを放置しているのか?」
「いいえ。バロック伯自身に野心はないし、宮廷貴族の恐ろしさも知っているからことあるごとに諌めてはいるみたいだけど逆効果みたいでね・・・。今回のことで責任を取らされるかもしれないわね〜」
「もう成人してるんだろ?自分のやったことのツケぐらい自分に払わせればいいだろう」
「平民ならそれでいいんでしょうけど、貴族はそうもいかないのよ」
「めんどくせえんだな」
「まったくよ。私も平民の方が気が楽だから、貴族街に家を持っているけど平民地区で大抵寝泊まりしてるわ」
「もうすでに辞退したい気持ちなんだが・・・」
「まだもらうと決まったわけじゃないわよ?」
「確率は?」
「1%もないわね♪」
「ハァ〜・・・」
「まぁそうは言っても伯爵以上にならなければそれほどめんどくさくはないわよ。領地持ちは別として子爵以下は基本的に絶対に集まらないといけない行事はないからもらったらあとは本当に自由よ♪」
それから少しマックスと話をして暇を潰していると
「リュウジン様、お時間になりましたので移動をお願いいたします」
「それじゃあ私は先に謁見の間に行ってるわね♪」
「なんだ?お前もいるのか?」
「私は参加自由だからね。何かあったら援護はしてあげるわよ♪」
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