33話 あの存在の正体?
「まずはそうねぇ〜・・・この世界の創世について話していきましょうか」
そう言ってリュウジンの目の前のウィンドウにこの世界の始まりについての挿絵と記述が書かれた資料が映し出された。
そしてマックスは語り始めた。
「この世界を作った創造神様はまず最初に、この世界を管理するための天使を創ったと言われているわ。そのお方達の名前が、熾天使『アスフィ=ロードメアス』様、智天使『ルーフル=アルメロイ』様、座天使『ウルト=チェンバース』様と伝えられているわ」
「あ、アスフィってのには会ったことがあるな」
リュウジンはこの世界の始まりなどにはあまり興味がなく適当に聞き流していたので、つい聞いたことがある名前に反応してしまったのである。
言ってから。あ、と思ったリュウジンであるが時すでに遅く・・・
「な、なんですって!?会ったことがあるってどこで?いつ?!もしかして貴方って使徒様なの?!」
と、今までにないくらい興奮した様子でマックスが訪ねていきた。
「お、落ち着け!・・・とりあえず会ったのは最近だ。場所は言えねぇ。使徒ってのも違う」
チュートリアル空間でプレイヤーなら誰もが会っていると言えるわけもないリュウジンはとりあえず言葉を濁した。
しかしこれはリュウジンの勘違いであり、普通のプレイヤーたちはチュートリアル用のA Iが担当しておりアスフィのことを知っているプレイヤーはいないのである。
「まぁそうよね〜。何を話したかも言えないかしら?」
「ああ」
リュウジンは外側は冷静を装っていたが内心では冷や汗を浮かべ動揺していた。
「残念ね〜・・・。でもなんとなく貴方のことがわかったわ」
思いっきり勘違いされてそうではあるが、何も言うことが出来ないのでリュウジンはスルーした。
「それで?続きは?」
リュウジンはこれ以上広げられたくもなかったので続きを促した。
「えっと・・・、それでその管理者の方々はまず3体の生物を生み出したと言われているの。それが始まりの生物と言われる3体なのよ。その3体の名前はわからないんだけど、今いる生物全てがその始まりの生物を祖に持つと言われているわ」
「それは人種もか?」
「そう言われてもいるし、否定している人もいるわ。そこのところは実際わからないのよ。話を戻すけれど、その始まりの生物が生み出した時期によって、神代種、古代種、近代種という3つの種に分けられているの。近代種は始まりの生物達が最後の方に産んだゴブリンやオークなどいわゆるそこいらで簡単に見つけることができる低い知能で繁殖と食事ばかりしているモンスター達のことね。古代種は神代種を産んだ後に産んだ高い戦闘力とある程度の繁殖力を備えた下位ドラゴンやベヒーモスなどの冒険者ギルドでは討伐ランクがSランク以上に設定されているものがそれに当たるわ。そして最後の神代種。始まりの生物が生み出されてからすぐに産み落とされた7体の生物のことを言うわ。そしてその7体は7神獣と呼ばれているわ。この7神獣はすごく高い戦闘力を持つ代わりに繁殖能力は全くない唯一の個体達よ。そしておそらく、というよりは確実に、あなたが今回遭遇した存在がこの神代種の1柱である第4騎と呼ばれる通称『狐狼神雷姫』様でしょうね」
「確かに狼は従えていたな・・・。その通称ってのはどこから来たんだ?あいつの眷属の巫女が名前らしきものを言っていたが、なんて言っているのか聞き取れなかったぞ?」
リュウジンは確かに何か言っているのを聞いていたが、名前の部分だけはどうしても聞き取ることが出来なかった。
「それならやはり『狐狼神雷姫』様で確定でしょうね。なぜかは・・・、いつから呼ばれ始めたのか誰が呼び始めたのかその辺の資料は全くないのよね。神獣関連の情報は分かってないことが多すぎるのよ。そもそも遭遇できる人なんてそうそういないし、遭遇できてもその圧倒的な存在感に耐えられる人がいないと言われているわ。だから貴方からの情報は相当価値が高いものなのよ。おそらく相当高い値段で買い取ってくれるはずよ♪」
リュウジンはその存在感による圧倒的な恐怖を経験しているだけに納得できるものであった。
リュウジンが気絶せず耐えられたのも戦闘直後でアドレナリンが大量にでていたからであり、通常時にもし遭遇していたのなら気絶したであろうと考えていた。
「そして、もし7神獣様に認めてもらえたら褒美をもらえると伝えられているの。
具体的なことは例え貴方が喋ったとしても私たちには聞こえないのだけれど」
「ん?ということはさっき俺が話したもらった報酬の話は聞こえていなかったのか?!」
「剣とスキルオーブについては問題なく聞こえていたわ。でも、もう一つのものについて話している時には雑音のような音が終始聞こえるだけで何も聞き取れなかったし、あなたの姿もぼやけて見えていたわ」
「[???への挑戦権]」
リュウジンは口に出した
「ダメよ。聞こえないし見えなくなるわ」
マックスは、はぁ〜、と大きなため息をついた。
「そして、『7神獣に認められし者、管理者に会わん。さすれば願いが叶おう』と言い伝えられているわ。そしておそらく7神獣の1柱に認められた証が貴方が持っているそれよ。さっき門番が通したのもそれを持っていたからよ。それが許可証代わり。見せる必要が無かったのはそもそも見ることができないからよ。そしてここに入ることができるギルドマスターの私が貴方が資格を持っていることを保証したから入れたってわけ♪まぁもし私が嘘をついて貴方をここにいれていた場合はそれ相応の罰則を受けるけどね。最悪の場合は死罪もありえるわ」
「見れないなら確かめることもできないのではないのか?」
「見れないからわかるのよ!なんていうか・・・、ものすごく形容し難い気持ちの悪い感覚なのよね〜。そこにあるのは認識できるのに、認識できないという矛盾のような・・・」
マックスは、う〜ん、う〜ん、と説明が難しいのか唸り続けていた。
「それに同じ有資格者なら見ることができるのよ。帝国にも1人いるわよ。どうせ後で会うことになるだろうけど、この国の第零騎士団騎士団長ローラン=アヴェイロン、アヴェイロン公爵家の御子息よ」
「そいつはどの神獣とあったんだ?」
「それは私には教えられないわ。流石に帝国の機密事項を漏らすわけにはいかないもの」
「誰か教えるのは構わないのか?」
「それはグレーってところね♪どうせ後で知る頃になるだろうし構わないでしょ♪私が貴方を買っているからサービスよ♪」
マックスはウインクをしてきたがリュウジンはスルーした。
マックスはそんな様子のリュウジンを見て、つれないわね〜、と呟いた後話を続けた。
「神獣達は繁殖能力がない代わりに自身の眷属を生み出すことができるのよ。貴方が戦ったという狼も眷属の1体ね。眷属達はそれぞれ自我があり自由に行動できるのよ。普段は自身の生みの親から離れることはないみたいだけど、ごく稀に離れて発見されるケースがあるの。300年以上も前に、第3騎の眷属に喧嘩を売って自身に従わせようとした国が滅んだことがあったわ。それ以降国に害を及ぼさない限り国が故意に眷属に攻撃することを世界各国で禁止する法が作られたの。今回の件も、もしそのまま放置していたらその狼ちゃんがこの帝都付近に現れたかもしれないの。そうなると国にとっては爆弾が近くにいるのに手出しできなくて、防御に専念するしかない状況になっていたかもしれないから未然にそういった事態を防いでくれた貴方にはとても感謝しているわ♪」
「俺が手を出したのはよかったのか?」
「あくまで手を出してはいけないのは国なのよ。ただ国が裏で冒険者に依頼して攻撃するってことなんかもありえるからグレーなところではあるけど、今回は向こうから攻撃して来たんだし当然不問よ♪まぁ負けていればそのまま国に攻撃をしてきていたかもしれないけど、流石に攻撃してくる生物に無抵抗で殺されろ、とは言えないしね」
たしかにあの場面で例えあれが神獣の眷属だとしても交戦しないなんて未来はなかったなと思い納得した。
ブックマーク・評価ありがとうございます!
ネーミングセンスが無いから名前と読み方を考えるのが難しい・・・
いい読み方が思いついたら後々読み方を追加するかもしれません