27話 ???
死が目前に迫っていたリュウジンたちは、自分たちにはどうしようもない攻撃をいとも簡単に無力化した少女らしき人物に目を見開き驚いていた。
「『#$¥』様が渡御なさります。平伏して着御なさるのをお待ちなさい」
その声には逆らってはならぬ圧倒的な威圧感があり、反抗は許さぬという逆らうことなど考えられぬ圧力がズドンと体全体にのしかかってきた。
3人はしばらく平伏して待っていた。
自身が死を覚悟した攻撃を意にも介さない圧倒的上位者に逆らうことはそれこそ死と同義であるからである。
しばらくすると、
ーーリン♪
――リン♪
という音が聞こえ、徐々に足音が何もないところから突然現れたかのように増えてきた。
その瞬間背中にゾクっと今までに感じたことのない警報が頭の中で鳴っていた
そして突然、先ほどの少女の存在感が霞むような圧倒的な圧力がリュウジンたちを襲い、体の全ての毛という毛が逆立ち、鳥肌が立つような感覚に陥っていた。
そしてリュウジンは気がつけば体が震えていた。
リュウジンの後ろからはドサッという音と、カチカチという歯がなる音が聞こえてきた。
リュウジンも気を抜けば気を失ってしまいそうであり、いまにも胃の中のものを全て吐きそうなくらいの圧迫感を感じていた。
そしてその『#%¥』様とやらが近づいてくるほど肌にビリビリとした鳥肌と震えが強くなり、気づかぬうちに冷や汗で地面に水溜りが出来ていた。
リュウジンはいつもの癖で咄嗟に平伏したまま気配を探ってしまった。
「「「「不敬である」」」」
『やめよ』
リュウジンは更に冷や汗をかくことになった。
気配を探った瞬間4人の従者が即座に殺しにきたのである。
そして殺される寸前で『#%¥』様の静止が入ったため何とか生きながらえたのである。
そして『#%¥』様の声を聞きさらに苦悶の表情となっていた。
そして後ろからドサっという音がしたので、おそらくリンが気絶したのだろうな、と思った。
『#%¥』様の声には力がありそれだけで人を殺すことができそうなほどであり、実際殺せるのである。
そして自身と比較するまでもなく生物として圧倒的な上位者、被捕食者と捕食者、もはや神に近しい存在であると感じるには充分であった。
そしてリュウジンは気配を一瞬探ったことで、『#%¥』様は巫女服の少女と同じようなかっこをした者達に神輿で担がれており、どれもが圧倒的に格上であると感じる従者や先ほど戦っていた狼もどきのようなものが総勢数百あまりいることがわかった。
『さて、ヒューマンの子よ。面を上げよ』
しかしリュウジンはその声の圧迫感で動くことができなかった。
『面をあげよ』
リュウジンは全身に力を入れ何とか顔を上げることができた。
『#%¥』様は神輿の中にいるので顔を見ることは出来なかった。
むしろ直視などしたら死ぬな、とリュウジンは考え頬を引き攣らせていた。
『我が眷属が迷惑をかけたようだな。慙愧の至りである』
そう言わせた原因である先ほどまで戦っていた狼もどきに、上位者たちによる圧倒的な殺意が向けられ狼もどきは震えた後に気絶していた。
『さて、ヒューマンよ。なぜこの森に来たのだ?』
先ほどまでの空気よりさらに数段階重くなったように感じられリュウジンは、受け答えを間違えれば死ぬ、と直感した。
『直答を赦す』
まるで首に死神の鎌がかかっているかのように錯覚しながらもリュウジンは口を開いた。
「こ、この森に異変が起こっているのでその原因を調べてくるという依頼を受けてこの森に来ました」
リュウジンは生物として当たり前に感じる恐怖によって無意識のうちに丁寧な喋り方をしていた。
『ふむ。その異変というのはここに住んでいたモンスターが外に出たことであるかの?』
――リン♪
と鈴の音がした。
「はい・・・。その通りでございます」
『我は自身が住むに相応しい住処を探しておる。我が住んだらお主らは迷惑かえ?』
圧倒的な絶対者であるにも関わらず先ほどからこちらを気にかけていることにリュウジンは気づいたが、なぜかまでは分からなかった。
そして、正直に言えば迷惑であるがそう言えば殺されそう、少なくとも眷属に殺されるだろうと思ったリュウジンは何も言えなかった。
『フフフ、少し意地悪な質問じゃったかの?』
先ほどまでの平坦な声と違い抑揚のある声でそういった。
『安心するといい、ここを住処とすることはない。次期に元の森に戻るであろう』
そしてまた平坦な声へと戻った。
『さて、それでは最後に我が眷属が迷惑をかけた詫びと眷属に傷をつけることが出来た褒美をやろう』
そしてリュウジンの目の前に3つのものが飛んできた。
[スキルオーブ改]
[神白の刀]
[???への挑戦権]
[勲章]—-『#$¥』との邂逅――
「お、俺にだけですか?」
ジャキっと金属音がしたが、すぐに静かになった。
『我を前に気絶するような者に与えるようなものはない』
吐き捨てるような声でそう言った。
『それでは再び相見える日を楽しみにしておるぞ』
―リン♪
―リン♪
そして全ての眷属たちが消えていった。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。クソ!」
リュウジンは圧倒的上位者の圧迫感が消えたことでやっとまともに息をすることができるようになった。
そしてこの世界の強者を舐めていたと思い知り地面を思いっきり叩いた。
リュウジンは勝てない敵はいるだろうと思ってはいたが、ステータスを上げたりスキルなどを使えば何とか倒せるレベルであると思っていた。
しかしその気持ちは砕かれたのである。
心の底であれにはどう足掻いても勝てないと思ってしまったのである。
そして立ち上がりさらに貪欲に強くなることを決意したのである。
主人公の絶望感を感じていただけたでしょうか・・・
私はそんな文章が書けるようになりたい・・・