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22話 コロームの森への道

やっと冒険に

 リュウジン達はギルドを出たあとコロームの森に向かって歩き始めた。

 森にある程度近づいた草が人間の高さほどある草原地帯に入ると


「あ、あの・・・。いつもクエストをするとき配信しているんですけど、配信してもよろしいでしょうか?もし映るのが嫌とかなら全然・・・」


「ああ、別にかまわんぞ」


「あたしも別にいいっすよ」

 リュウジンとリンは特に興味もなかったので勝手にすればいい、と思っていた。


「ありがとうございます」

 えっと、・・・・これでよし・・・、などと独り言を言っているテルは


「はい!今日もクエストやっていきたいと思いま〜す。今日はギルマスからの指名依頼でコロームの森の調査をしていきたいとおもいます!指名依頼の関係で今日は僕以外の人も一緒にやることになったので迷惑をかけないように頑張っていこうと思います!あ、P太さんありがとうございま〜す!」


 テルの突然の性格の変化にリュウジンは軽く驚いていた。


「おいリン、配信ってのは性格まで変わるのか?」

 リュウジンはリンに近づき小声で聞いた。


「あ〜、まぁ人それぞれじゃないっすか?仕事の間は性格が変わるみたいな?感じだと思うっすよ?」


 なるほど。たしかに剣を持つと性格が変わるやつがいたな。あんな感じか。

 、とリュウジンは少しずれたことを考えていた。


「あ、500mくらい先にモンスターが30体くらいいます。どうします?」

 テルは、今までの会話からどうせ戦うだろうな〜。でも配信で戦いの図は映えるから良さそう、と思いながら一応リュウジン達に聞いた。


(普段なら撃破すればいいだけであるが、それで目標達成が難しくなるのなら迂回すべきか・・・)


 リュウジンは自分勝手にただただ戦っていくと思われがちだが、チームプレイも出来るし、目標達成のための最適解をしっかり考えることができるのである。


「おい、何がいるのかわかるか?」

 リュウジンは真剣な目でテルに尋ねた。


 テルは、戦う、という返事が来ると思っていたために少し反応が遅れた。


「・・・っえっと・・・、種類までは特定できないです。ただこの辺にいるモンスターであの数だと大体ゴブリンだとは思います・・・が、このクエストで中域のモンスターが出ている可能性もあるかもしれません」


(ふむ。ゴブリンならよし、中域のモンスターであっても視界が悪い森で初めて戦闘するよりかはマシか・・・)


「よし、そのまま進む」


「はいっす!」


「りょ、了解です!」


 少し進むと草の隙間からゴブリンの集団が見えてきた。


「リンとテルで戦ってみろ。俺は今回はお前らの戦闘を見ている。危なくなったら助けるつもりだが・・・大丈夫だよな?」


「はいっす。余裕で片付けるっす!」

「僕もゴブリン程度なら大丈夫です!」


「よし、じゃあいけ!」


 そう言うとリンは即座に駆け出していき、テルも少し遅れて駆け出した。

 ――グギャ?


 ゴブリンの集団と少し離れたとこにいたゴブリンは音に気づいて振り返ったが、それと同時にリンが振り抜いた剣によって斬られた。


 ――グギャギャギャ!

 ――グギャ!

 いきなりの奇襲で慌てていたゴブリン達であるがゴブリンの1体による一喝で冷静さを取り戻し陣形を組み始めた。


 テルはダガーを逆手で両手に持ったままリンの後をついて走っていた。


「あたしは右から行くっすから、左を任せるっす」


 ここで敵と戦うことを示せなければ今後戦わせてはくれないかもしれない、と考え緊張していたテルにリンが指示を出した。


「は、はい!わかりました!」


 リンはそれを聞いてさらに速度を上げてゴブリンの集団に突撃していった。


(ぼ、僕も倒さなきゃ!)


「行きます!」


 そうしてゴブリンの集団に突っ込んでいった。

 目前に迫ってきたゴブリン達が棍棒を振りかぶっているのが見えたが、


 ――迅速の祈りーー


 テルは速度上昇のスキルを使用して、そのまま駆け抜けていった。

 駆け抜けざまにダガーでゴブリンを切り裂いていった。


 致命傷には程遠いダメージであるが、ゴブリン達は痙攣して動きを止めていた。

 テルのダガーには斬りつけたものを麻痺状態にする効果がついていた。

 状態異常耐性持ちや格上相手には効かないがゴブリン程度には必中で効くくらいには現段階の武器にしては高性能であった。


 リンは通り抜けると同時にゴブリンをバッタバッタと斬り殺していた。


 大方動くゴブリンがいなくなったのを確認したリンは剣をしまいリュウジンのところに戻っていった。


「終わったっす!」


「まぁ悪くなかったな。力加減は出来てんのか?」


「大丈夫っす!それに予備の武器は結構持ってるっすよ」


 その間テルは麻痺で動けないゴブリンにトドメを刺し、リュウジンのところに戻ってきた。


「ど、どうでしたか?」

 少しおどおどとしながらテルはリュウジンに聞いた。


「悪くはなかった。これからも自分の判断で戦闘をするといい」

 実際リュウジンの目にも、テルの戦闘は判断も悪くなく十分に使える部類のものとみなしていた。


「だが、攻撃力はあまりなさそうだが、何か対策はあるのか?」


「ダガーの麻痺効果が効きそうにない敵には、もう一つ別の武器で戦っています。あとは攻撃系のスキルなどがあります」


「さっきの戦闘前に何らかのスキルを使ってから、速さが上がったように見えたが・・・」

 リュウジンは戦闘前にテルからスキル光が出ているのを見ていた。


「あ、あれは『迅速の祈り』っていうスキルでAGIを3分間20%上げれるスキルです。仲間にもかけれますので欲しければ言ってください」


「なるほど。他に役に立ちそうなスキルはあるか?」

 テルは自分の持っているスキルをリュウジンとリンに説明した。


「それにしてもたくさんのスキルを持っているんだな」


「ほとんど毎日遊んでますから・・・。それに配信していると視聴者の方が結構教えてくれるんですよ。本当にありがたいです。あ、皆さんコメントありがとうございます。あまりコメント見れないと思いますが・・・」


 そう言い配信のコメント返しを始めたテルから視線を外し、今来た道のほうにリュウジンは目を向けた。


 そして3人はまた歩き始めた。


 森に近づくについれて明らかに異様な空気が漂ってきていた。


 リュウジンはいきなり刀を抜いた。


「え?」

 テルのそんな声が聞こえるや否や、リュウジンはテルの影から出てきたモンスターに斬りかかった。


 一刀で倒したリュウジンであるが、警戒が解かれることはなかった。


「おい、警戒しろ!敵襲だ!!」


「え・・・え?」

 事態が未だに読み込めていないテルは初動が遅れていた。

 テルは斥候のスキルを常に発動しておりスキルにモンスターの気配が引っ掛からなかったため突然のモンスターの奇襲に対応する事ができなかった。


 しばらくすると森の方からドタドタドタドタと数十ではきかない足音が聞こえてきた。


「来るぞ!」


 すると、草を薙ぎ倒しながらゴブリン、グレートウルフ、オークといった様々な種が視界を埋めてくさん勢いで一心不乱にこちらに駆けてきていた。


 ふう〜、と息を吐き精神統一したリュウジンは、リンとテルに耳を塞いでおけ、といった後に大きく息を吸い込んで


「喝ああああああああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁあああああぁぁっぁあぁぁっぁあぁっぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

 するとまるでその場の空気がビリビリと揺れているかのような状態となり、その後に残ったのは先ほどまでの騒がしさが嘘のような静寂だけだった。


「新月流門下生龍谷真一、推して参る」


 リュウジンがしたのは新月流『炎』という技であり、自身の闘気を高め殺意や敵意を相手にぶつけることによって敵の行動を乱し、更にアドレナリンを大量に出すことによって自身の運動能力を限界以上に出すことができるのである。

 門下生で使えるのはリュウジンだけであり、リュウジンも実戦で使うのは初めてであったため、いつも以上に興奮しているが、剣筋は冷静そのもので恐慌状態に陥っている敵の首を次々と刎ね飛ばしていっていた。


 リュウジンがモンスターの群に突っ込んでいったのを見て


「あたしも行ってくるっす」

 テルにそう言い残して同じくモンスターの群に入っていき、ドゴ〜ン!バン!!、といった音が聞こえてきた。


 テルは先ほどのリュウジンの咆哮に当てられ尻餅をつきショック状態から抜け出せていなかった。


(ッチ!数が多すぎる。もう数百は倒したはずだが未だに減る気配がねぇ。それにそろそろこいつらも正気を取り戻しやがるな・・・)


 リュウジンは走るのを止め、その場で立ち止まった。


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