20話 イーニヤ商会
その後大体の説明を聞いたリュウジンはリンとイーニヤと共にイーニヤ商会に来ていた。
「あれ、会長? 今日は用事があるんじゃなかったんですか?」
店からちょうど出てきたメガネをかけた女性がイーニヤに話しかけてきた。
「今も用事の途中にゃ。将来有望なお客さんを連れてきたにゃ!」
そう言いながらイーニヤはメガネの女性に頭を撫でられ髪に顔を埋め思いっきり匂いを嗅がれたりしていた。
その光景を少しの間見せられていたが、やっと終わったのかメガネの女性は立ち上がり
「失礼いたしました」
メガネの女性は存分にイーニヤを堪能した後、さっきまでの出来事が嘘かのように淡々として去っていった。
リュウジンはその光景に呆気に取られていた
「あ〜、あの人は猫が大好きらしくイーニヤを愛でることを許可することを条件にこの商会に入ったらしいっす」
「そ、そうか・・・。世の中には変わった奴がいるんだな」
リュウジンは顔と引き攣らせながらそう言った。
「とりあえず入るにゃ」
そういってイーニヤは自分の店に入っていった。
この店はイーニヤ商会の本店らしく三階建てのかなり大きな建物であった。
一階は主に一般客の接客をしており、2階ではVIPの接客、3階の部屋は防音室で他の人に聞かれたくない話をするときなどに用いられているらしい。
また商会の店では在庫などは一括で管理されており、許可がなされている者なら誰でも出すことができるようになっている。
店の外で出る場合には個人のインベントリに移して持ち出さなければならないが、盗賊などに襲われ死んだときにはアイテムが全ロストするので、死んでも落とさない専用のアイテムボックスに入れるか護衛を雇って移動するのが一般的だそうだ。
俺たちは3階に通された。何の防具を買ったのかわからないための配慮だろう。
その後イーニヤの勧めで2万フーロにまけてもらった防具一式とポーションなどを購入した。
そしてついでに溜まっていたステータスポイントも割り振っておいた。
――リュウジンーー
人種:ヒューマン
職業:
HP:124/124
MP:56/56
ST:132/132
ATK:46+25
VIT:22+12
INT:27
AGI:34+10
LUK:30
ステータスポイント:0
―スキルー
―称号・勲章―
『技術の神』
――――――
そして今のステータスはこんな感じになった。
決闘でもらった勲章には「スキルを使わない攻撃に20%の攻撃力上昇」というものでパッシブで発動されるらしい。
対人戦において一切スキルを使わずに勝利することが取得条件だったのでその情報をイーニヤに10万フーロで売った。
一見こういう条件だけ聞くと八百長のような決闘をすればすぐに取得出来そうなものであるが、案の定あの何たらシステムによってそういった行為による取得はすることができないんだそうだ。
ゆえに知っていても簡単そうで取得出来ない称号や勲章は数多くあるんだそうだ。
そしてリュウジンとリンはイーニヤに礼をいい冒険者ギルドへと向かった。
数分雑談をしながら歩いていると冒険者ギルドが見えてきた。
リンと共に冒険者ギルドに入ると、数多くの視線を感じた。
好奇の視線、嫉妬の視線、羨望の視線、恐怖の視線、敵意の視線・・・
さまざまさ視線がリュウジンに向けられた。
ふむ、強烈な敵意の視線はあの女からか・・・
そこにはポニーテールの髪で気の強そうな印象を受ける何らかの紋章が鎧の全面にデカデカと刻まれている女がいた。
何かした覚えはないが、昨日喧嘩を売ったやつの関係者か?
しかしその女はそのまま何もすることなくギルドを出て行ってしまったのでリュウジンは拍子抜けした気持ちになり依頼掲示板の方に向かっていった。
「あらぁ?あなたたちいいところに来たわねぇ?ちょっとついていらっしゃい?」
ギルドマスターがいきなり現れ、有無を言わさずついてくるように言い、歩いていった。
ギルドマスターについていくと2階の応接室に通された。
その部屋に入ると既に男が1人座っていた。
「座ってちょうだい♪」
男が座っている長いソファに手のひらを見せ言った。
そう言われたリュウジンはドカっと男が座っているソファに座り足を組んで頬杖をついた。
リンもリュウジンの隣に座った。
そしてギルド員がお茶をもってきて部屋を出ていった。
奥のテーブルから紙を持って戻ってきたギルマスはリュウジン達とは対面のソファに座った。