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夢を追うもの笑うもの6


 翌朝、朝食後に純から報告があった。


「早速、何人か冒険者になりたいって人から連絡があったよ!そのうちの何人かは今日にでも冒険者本部まで来れるってことだからパパッと面接しちゃうけど、良いよね?」


「早いな、まぁ早いに越したことは無いんだから良いんじゃない?」


 驚きの早さだ。

 機を見て敏に動ける人は大歓迎だが、こういう人は無理に冒険者協会に入って命の危険がある事をしなくても大丈夫そうだと思ってしまうのは俺の考え過ぎだろうか。


「私の方にもSNS経由でDMを送ってきてる子が一人居るんだが……どうやら自分を変えたいとは思っているが外に出るのが恐いらしいんだが、どうしたら良いと思う?」


「変えたい自分が居て、でも外に出るのが怖いと……直接会いに行ってみるしかないんじゃ無いか?ちなみに何処の人なんだ?」


 勇気はある。応募するではなく、一度千尋にDMを送ってくるあたり中々に闇が深そうでもある。出来れば何か力になってあげたい。地元が近いのであれば千尋に直接出向いて貰って、話を聞いてきて欲しい。


「住んでる所は本部からも近いぞ、律儀に住所も記載してくれていたからな」


「それはどうなんだろう……最初から住所を記載しているってさ。警戒心が無いのか、本気で自分を変えられる可能性に本気で掛けたのか、新手の詐欺か……まぁいずれにせよその住所に行ってみれば分かるか」


 住所も分かる、地元も近い、何より連絡が早い、詐欺という可能性を考慮しないのであれば是非にでも冒険者協会で何とかしてあげたい。


「ならば私は、今日この住所に訪ねるとしよう。というわけで午前中の鍛錬が終わったら午後は家を離れるぞ」


 今日から忙しくなるとは思ってはいたが、こういう風な形で忙しくなるとは思って無かった。

 PCHからの連絡も今の所無い。

 政府が抑えていないダンジョンの情報も入ってはいるが、出来れば新しい冒険者協会に所属する新人の為にも確保したままにしておきたい。


「りょーかい。千尋が午後から新人発掘、純が午後から新人面接ね。俺はベルとインテリ悪魔とドワーフの生成の予定だ。まぁ詳しい事は朝練の間に詰めるとして、冒険者協会については博信さんに丸投げで良いんだよな?」


「お父様もやる気満々だし、お兄様達も協力してくれるから丸投げで良いよ!何かあれば私に連絡が来るから!」


 適材適所、何と便利な言葉だろうか。

 実際問題、千尋と純にしか出来ない事が多すぎるので他の人でも出来る仕事は他の人に任せる方が効率が良い。


「りょーかい。じゃあまぁもうすぐ一馬さん達も来るだろうし、今日も一日程々に頑張りますか!」


「あぁ」「おー!」



 会見の翌日は当初俺達が思っていたよりもゆっくりとしたスタートになった。

 それもこれもPCHから何のアプローチが無かったからに他ならない。不気味な沈黙だ、こちらの行動を把握しておきながら何のアクションも起こしてこなかったというのは。

 俺が知っている日本のトップの男ならば遅くとも今日の朝にでも何らかのアプローチをしてくると予想していた。


 超常現象対策本部で何かが起きている可能性もあるし、今日はまだ始まったばかりだ気長に待つしかない。



 ☆ ☆ ☆



 昼食後、俺とベルは第二階層に来ていた。


 ちなみにPCHからの連絡はまだ無い。

 千尋はDMの送り主の住所に向かい、純は冒険者協会本部に向かった。


「マスター!いよいよインテリジェンスデビルとドワーフの生成が出来ますね!」


「そうだな!これで新しい技術が開発出来る!」


 科学と魔術の融合した技術が確立できれば日本が長年苦労してきたエネルギー問題も解決するかもしれない。


「では!インテリジェンスデビルとドワーフを生成しますので、私はコアルームへ戻りますね!マスターは畜舎ハウスでお待ちください!」


「りょーかい」


 ベルがコアルームへと向かうのを見送ってから俺は畜舎ハウスへと向かった。鬼人娘衆が家畜の世話をしているのを横目にハウスへとお邪魔する。現在畜舎ハウスは鬼人娘衆の住処になっているので、前よりもかなり生活感が出ていた。


「番長もあんな感じだけどかなり家庭的なんだよな……」


 キッチンには使い方も分からないような調味料や台所用品が所狭しと綺麗に並べられている。見た目は大和撫子、口を開けば田舎のヤンキーというのが番長だが、他の鬼人の娘らは見た目も口調も大和撫子なので番長が特殊なんだと思う。


「お茶って何処に仕舞ってるんだろうか……」

 アバターなので別に飲み物を飲まずとも良いのだが折角味覚があるのだから、待ちながら何かを口にしたい。


「お茶なら私が用意するっす!」

「おっ番長か、お邪魔してるぞ」

「はいっす!お茶っす!」

「さんきゅー!」

「じゃあ自分は仕事に戻るっす!」

「おぅ!程々に頑張ってな」

「うぃっす!」


 番長に入れて貰ったお茶を飲みながらベルを待つ。

 英美里は今頃レベリングに励んでいる所だろうか。英美里はお嫁ーずの居ない間はレベリングをしたいと言って、俺の側からは離れている。英美里も千尋には負けられないのだろう、新たな戦闘方法を模索しながらレベリングに挑むと言っていたので近々千尋にリベンジでもするつもりなのかもしれない。


「リーダーはリーダーで仕事の合間に魔法の練度を上げてるらしいし……皆忙しくしてるなぁ」


 俺以外は本当に忙しくしている。

 俺やベルが何も言わずとも自ら考えて行動している。怠惰ダンジョンと言いながら怠惰なのは俺一人。


「にしても……遅いな」


 ベルがコアルームに向かってから結構な時間が経った、にも関わらずベルは未だに帰ってこない。何かトラブルでもあったのだろうか。


「インテリ悪魔が生意気でひと悶着あったとか……まぁそれは無いか、生まれたばかりのインテリ悪魔がいくら強かろうともベルには勝てないだろうし、心配するだけ無駄か」


 身にもならない事を思考しながらお茶をゆっくりと楽しむ、たまには一人でまったりとお茶を飲むのも良いものだ。最近は考えなくてはならない事が多くて精神的に疲弊していたし。


「マスター!お待たせしました!インテリジェンスデビルとドワーフを連れて参りました!」


「来たか!」


「失礼します……」「……」


 ボンキュッボンと言えば良いのか、グラマーと言えば良いのか迷うが羊のような立派な巻き角を頭に2本生やした女性と無口な褐色ロリがそこには居た。グラマラス羊がインテリ悪魔だと思うので、無口褐色ロリはドワーフだろう。

 二人ともがベルが用意したであろう服を着ている。

 白衣にラフなTシャツとスラックという研究者然としたススタイル。二人にはとても似合っていた。


「俺は児玉拓美、一応ここのトップだ!これからよろしくな!」

「はい……」

「……」


 インテリ悪魔は少し恥ずかしがり屋なのかもしれない、挨拶を済ませるとベルの後ろへと直ぐに隠れた。

 逆にドワーフは俺に興味が無いのか、軽く頷きはしたが俺とは目を一瞬合わせただけで以降は部屋の中を観察している。


「ではマスター!挨拶も済んだので、早速二人には科学と魔術の勉強からしてもらいますね!教材はある程度用意しているので、後は住居を用意しますのでそこで暮らしてもらいましょう!研究施設も建てたいので二人とリーダーの意見を聞きながら第二階層に作る予定ですので!ではまた!」


「そっか、じゃあまたな!」


 そう言われてしまえば仕方が無い、もう少し二人と話がしたかったのだが俺は諦めて家へと帰るとしよう。


「はい!マスター!」

「はい……」

「……」


 もしかしたらベルが気を利かせているのかもしれないと思った。

 二人はあまりコミュニケーションが得意そうでは無いので二人が怠惰ダンジョンに慣れるまでは俺もあまり距離を詰め過ぎないようにしてやろう。



 三人と別れて地下広場へと向かう。コアルームから我が家へと戻る為に。

 地下広場に着くと英美里が大きなスライムを相手に戦っていた。影だけじゃなく、あらゆる魔法を試しているので新たな戦闘スタイルを模索しているのだろう。あまり長居して邪魔するのも悪いので急ぎ足でコアルームへと向かう。


「頑張れよ……英美里」


 今夜の歓迎会について考えながら我が家へと戻ってきた。

 本当ならもっと二人とコミュニケーションを取りたかったのだが、個性というのは尊重すべきだろう。


「……早くここに慣れてくれると良いけど」


 あんまり派手に歓迎すると二人は萎縮してしまうかもしれない。

 焦る事は無い、これから少しずつ二人とは関係を築いていけば良いだろう。

 
























「グラマラスなインテリ悪魔とロリ属性のドワーフ……何て呼ぼうか……」

 博士と助手は失礼過ぎるだろうか。

 でも二人が並んだ姿は正にそれっぽいんだよな。

 白衣だし。




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