英雄も事件が無ければただの人27
我が家へと帰り、お嫁ーずの帰りを待ちながらステータスの確認を行う。けれど俺には才能という物が圧倒的に無いようで取得可能なスキルは何一つ増えてはいなかった。
「千尋も純も俺に気を使ってなのか、あんまり言わないようにしてるけど……一般スキルすら俺には取得可能なものが少ないしなぁ……」
現状俺の取得可能なスキルは全て取り終えている。SPだけが日に日に増えていくが使い道が何一つとして無い、G-SHOPに表示されるスキルは本人が取得可能なものだけなので俺には単純にスキルに至る程の才能が無いという事なのだと思う。
怠惰スキルのおかげでSPは誰よりも多いのだが、そのSPを活かす事が出来ないで居る自分に少しだけ腹が立つ。もしも怠惰というスキルが俺では無く、千尋や純が持っていたのならばこの世界は今頃救済されていたかもしれないのに。
「無い物ねだりをしていても仕方が無いか……せめて俺のSPを他人に譲渡出来るようになればな……」
希望や理想を口にしても俺のG-SHOPには何の変化も見られなかった。
「……超常現象対策本部のサイトでも見るか」
気分は落ちたままだが、情報の収集だけは忘れない。
「被害者が増えてるみたいだけど……自業自得なんだよなぁ。ゴブリンを甘く見過ぎた結果だな、これでまた暫く大人しくしてくれれば良いけど……馬鹿な奴らは一定数居るから、どうにもならんだろうな」
ゴブリンによる被害者は例の英雄気取りの若者の登場以降右肩上がりで増えていた。動画投稿者や、チンピラの様なアホまで被害者は多岐に渡る。中には後遺症が残る程の怪我を負ったものも居り、超常現象対策本部と政府はゴブリンを見つけた場合は即座にその場から離れるようにと呼び掛けているが効果は薄い。行方不明者も多数出ているのでその中には、ダンジョンに侵入して亡くなったり、ゴブリンに殺されたりした者も居るだろう。これで益々人類側は不利になった、だが未だにダンジョン攻略を果たしたという報告はあがっていない。
やはり現状を打破する英雄がこの変わった世界では必要なのだ。
「安心しろ。もうすぐ英雄は現れる……そう!それは俺の嫁!」
「全く何を馬鹿な事を言っている……夕飯だぞ。先に居間で待ってるから、早く来い」
「りょーかい!」
未来の英雄。千尋様に呼ばれたからには急がない訳にはいかないだろう。
「今日のご飯はなんじゃろなッ!」
☆ ☆ ☆
相変わらず美味い英美里の作る夕飯をお腹いっぱい食べてからベルと共に部屋へ戻った。
今夜はベルとアニメを見るだけなのでやましい事は何一つ無い。
「どうする?作品内の時系列順で見るか、製作された順で見るかだけど。どっちが良い?」
「マスター的には、どちらから見るのがおすすめですか?」
「そうだな……やっぱり俺的には製作順かな。その方が絵的にも違和感が無いし、世界観も把握しやすいと思うけど……いや、時系列順で見た方がラストがより感動するか?うーん……正直、どっちでもありだな」
「ではあみだくじでお決めになられるのはいかがですか?」
「うぉ!英美里か……いきなり背後に現れるのは辞めてくれ、びっくりするから」
背後から急に英美里に声を掛けられてとても驚いた。
影から出現する事には大分慣れたのだが、背後に現れて急に声を掛けられれば誰だって驚くだろう。
「申し訳ございません!ご主人様。それであみだくじでお決めになるのはどうでしょうか?丁度ここにあみだくじがありますので!」
いつ用意したのか英美里の手にはあみだくじが書かれた紙があった。折角、英美里が用意してくれたので使わない手は無いだろうが、何故英美里が急に部屋に現れたのかが気になる。
「ありがとう。じゃああみだくじで決めようか……」
「はい!マスター!」
「って事だから、英美里よろしく」
「はい!ではどちらにしますか?」
「「右」」
ベルと意見が被ったのでそのまま右を選択し、何本か横線が引かれたあみだくじを辿っていく。選ばれたのは時系列順だった。
「じゃあ時系列順で見ていこうか」
「「はい!」」
どうやら英美里も一緒にアニメを見る流れのようだ。
特に気にする事でも無いので、俺はアニメのブルーレイをプレイヤーにセットする。
「あっ……お菓子とか要るか?」
「欲しいです!」
「頂きます!」
「じゃあ出しとくから、好きに開けて食べてくれ。飲み物はセルフで頼む。では……スタート!」
ベルと英美里と一緒にアニメ鑑賞を開始した。
美しいアニメーションに驚き、感動している二人の姿を見て何故かアニメ制作とは関係無い筈の俺が誇らしく感じた。
俺は日本が誇るジャパニメーションの良さは人間だけでなく、魔人とダンジョンコアにも通じた事がとても誇らしいのだろう。これからも色んなアニメを二人に見せてやろうと、脳内で二人に見せたいアニメをピックアップしながらアニメ鑑賞を続けた。
☆ ☆ ☆
25話構成なので今日は5話まで見てから再生を止めた。
明日も朝が早いとか色々理由はあるけれど、一番は少しでも明日が楽しみになるように敢えて分割して見る事にある。
「今日はここまでだな」
「「えぇ!」」
「はいはい、明日また見ような」
「はいますたー……」
「はい……」
二人ともすっかりアニメに夢中なようでなによりだ。
「どうだった?」
「凄いです!アニメ!今日、マスターに見せて貰った色男の方も出てました!あの動画だけでは分からなかった事が知れて良かったです!それでもやっぱりあまり好きでは無いですけど!」
「私も、アニメの素晴らしさに出会えてとても嬉しいです!ありがとうございます!やはりこの世界は素晴らしい物で溢れていると思います!今後は猫動画だけでは無く、アニメも見ようと思います!」
そういえば、英美里には美奈のノートパソコンを渡していたなと思いながら、二人に質問する。
「そうか、それはなによりだよ。ちなみに二人が好きなキャラは?」
「私は断然!剣士です!カッコいい!可愛い!」
「私は暗殺者ですかね、プロフェッショナルな集団な所が好きです」
「えぇ……根暗ばっかじゃん!あいつら絶対性格悪いよ?」
「ですが、プロとしての矜持に私は好感を持ちました」
「いやいや……」
「いえいえ……」
二人の論争を無視して床に着く。
不毛な争いには参加しない主義なのだ俺は。
「おやすみ」
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