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小さな発見は大きな事件9


 <超常現象対策本部>に行くと先輩は言った。

 水神の加護があるからといって安全という訳では無い、現状先輩のレベルがどのぐらいかは分からないが俺達より高いということは無いだろう。

 <神の加護>でのレベルアップには制限が掛かっているんではないかという推測の話を千尋が昨日話してくれた、千尋はどんなに剣の稽古をしようが1ずつしかレベルが上がっていないと言っていた。

 レベルが上げられると知ってから練習量を増やしたり、減らしたりしても1日に上がったレベルは1つだけ、ゲームなんかではレベルが上がって行けばレベルが上がりづらくなるのが当たり前だ、だが練習量を変えても上昇値は1ということは毎日1は簡単に上がるがそこで制限がかかってしまうのではないか、と推測を立てたらしい。

 千尋の検証してくれた事実が正しいとするのならば、このまま先輩を<超常現象対策本部>に行かせるのは駄目だと思う。

 でも<怠惰ダンジョン>が世間に露見する事態は避けたい、どうにか先輩をこちら側に引き込みたいのだが引き込める自信が無い。

 

「先輩<超常現象対策本部>にはいつから行くんですか?」

 少しでも先輩の助けになりたい、恩を返したい。

 そう思って先輩に質問した。


「色々こっちの事が片付いてから行く予定だから来週ぐらいに行く予定にはなってるよ」

 来週、幸いにも1週間程の期間はある。

 皆に相談して決めたいが、どうするべきか。


「先輩すいません、ちょっと用事が出来たので一旦切ります。またすぐ掛け直すので、ちょっと待っててください」

「わかった、忙しいのにごめんね。先に用事済ませてきて良いよ、待ってるから。じゃまた後で」


 電話が切れた。

 急いで皆に連絡を入れる。


『ベル、すまないが至急全員集合だ。俺の家に召集してくれ』

『はい、マスター。召集します』


 召集をベルに任せた俺は居間へと向かった。



 ☆ ☆ ☆



 召集をしてからすぐに、全員家に帰ってきた。

 居間に集まってもらい、皆席に着いた。

 一人知らない人が増えているが、今は申し訳ないがスルーさせてもらう。


「全員集まってくれてありがとう、緊急で相談したい事が出来てな……」

 千尋も袴姿の女性が気になるのかちらちらと見ているがその話は後ですると決めている。


「実は俺の先輩が<水神の加護>を持ってて<超常現象対策本部>に来週行くらしい、だがこのまま行かせれば死ぬ可能性が高いと俺は思ってる。だからどうにか<怠惰ダンジョン>に引き込んで死なないようにしたいんだが、みんなの意見を聞きたい。賛成、反対とその理由を。時間があまり無いので早めに決断したい」


 千尋が一番最初に手を挙げた。

「じゃあ千尋、意見を聞かせてくれ」

 俺の言葉に頷いてから手を降ろした。


「私は大いに賛成だ、先輩の事は良く知っているしなによりもまこちゃんが先輩を助けたいのなら反対する理由が無い。例え今回の事が原因でここの存在が世間にバレたとしても先輩の命には代えられないし、もしこのまま何もせずに先輩を行かせてしまったら必ず後悔する。だから私は賛成だ」

 千尋は賛成。


「じゃあ次は私ね!マスターのやりたいようにやれば良いよ!以上!」

ベルは俺に任せるらしい。


「私もご主人様にお任せします」

「「「「私達もお任せします」」」」


 もはや何の為に召集したのか分からないがこれで全員の同意を得られた、一人無言のままだが誰なのかまだ知らないのでスルーします。


「ありがとう、じゃあ先輩を勧誘してみるよ。千尋、明日たぶん先輩を迎えに行ってもらう事になるが大丈夫か?」

「わかってるよ、任せておけ」


 話し合いも終了したので部屋へ急いで戻って先輩に電話を掛ける。



 ☆ ☆ ☆



 まずはどうやって先輩をここへ連れてくるか、迎えは千尋に頼んだが先輩を家に呼ぶ口実が欲しい。

 まぁシンプルに話がしたいので家に来てくださいで良いだろう。

 きっと先輩なら来てくれる。

 携帯の通話ボタンを押すとコール音が耳に響いた。


「もしもし、用事は終わった?」

「はい、おかげさまで無事終わりました、それでですね。ちょっと先輩に直接会って話がしたいので明日俺の家まで来れますか?」

 軽い感じで家に先輩を誘った。

「明日?急だね、午後からなら行けるけど……色々やらなきゃいけない事もあるからそんなに時間は取れないけど良いかな?」

「はい、大丈夫です。じゃあ明日千尋に迎えに行ってもらうんで、明日出れる時に連絡ください!」

 ちょっと強引過ぎる気もするが大丈夫だろう。

「……話がある……家に来い……千尋ちゃんが迎えに来る……結婚するの?」

「しませんよ?」

「ホントに?じゃあお付き合い始めた?」

「いやもう面倒臭いな!明日色々話しますから!また明日!」


 強制的に電話を切った。

 先輩に言われると何かムカつくので仕方ない。


「これで、後はなんとかこっちの陣営に引き込めれば解決するだろ……あの袴女子は誰なんだろうか……別嬪さんだったけど……ベルに聞くしか無いよな」



 ☆ ☆ ☆



 再び居間に全員集合した。


「それで、この人は誰?」


「マスター!良くぞ聞いてくれました!この子は新しく<怠惰ダンジョン>の仲間になりました、牧畜担当の<鬼人>ちゃんです!拍手!」


 まぁ内心そうだろうとは思っていたので然程驚きは無い。

「軽く自己紹介とかいるか?」


「いえ、大丈夫っす!ベルっちに色々聞いてるんで!」

「お、おう」


 ちょっと変わった喋り方だった、見た目とのギャップが凄すぎて困惑している。

 真っ白で綺麗な肌、袴姿で和美人。

 きりっとした釣り目気味な少し冷たい印象を与える黒い瞳。

 角を隠す為なのか頭には団子のように纏められた美しい黒髪。

 日本人顔で全体的に大和撫子のような印象を受けていたので喋り方もお淑やかな感じだと思っていたが、喋るとどうにも田舎のヤンキー臭がすごい。


「ちなみに、現在はこの子だけですが<鬼人>は後三人追加で生成予定です!エルフで言うリーダーポジションにこの子を据えようと思いまして、先に生成しておきました!<鬼人>は上下関係に厳しい種族らしいので、他の鬼人の良き先輩役をこの子に任せたいと思ってます!」


「よろしくっす!」


 心なしか皆の反応が冷たい気がするが、大丈夫だろうか。

 少し心配だが、新しい仲間だ。

 これから関係を構築していくしかないだろう。


「よろしくな!番長!」

 勝手にあだ名を付けたが後悔は無い。

 

 番長は序列に厳しいのか、入った順で挨拶をしているようだ。

 俺の次は英美里、エルフルズ、最後に千尋。


番長のあいさつ回りも終了してそのまま夕ご飯タイムへと移行する。



「遅くなってしまいましたが、これから夕飯を作りますのでもうしばらくお待ちください」

 英美里が一人台所に向かう。

 その後を番長が追いかける。


「手伝うっす!」

 ヤバイと思ったが、遅かった。

 これはまた怒られるぞ。


 英美里が振り返り、上から下までじっくりと嘗め回すように番長を観察する。

 何か納得したように頷き番長を手招きして台所へと向かった。

 何が起きているのかさっぱり分からないが、番長に手伝いをさせるようだ。


『まこちゃん!なんであの子は怒られなかったの?』

 千尋から抗議のような念話が入る。

『いや、俺にも全くわからん!』

 何かの琴線に触れたのか、それとも単純に人が増えたので人手が欲しかったのか。

 何れにせよ、番長は英美里のお眼鏡に適ったのだろう。

『納得がいかない!抗議してくる!』

『いや、やめとけよ……また怒られるだけだぞ』

『いや、これは言わないと私の気が収まらない!理不尽には抗っていかねばならん!』


 千尋が辞めとけば良いのに、台所へと向かった。


「英美里、何故この子は良くて私は駄目なんだ?」

 ど真ん中真っ直ぐストレートの直球を投げる千尋。

「申し訳ありませんが、単純な<技量>の差です」

 英美里も一歩も譲らない、自分の仕事にプライドを持つ彼女が<技量>の差だと言うのならばその通りなのだろう。

「私の時は食器の片付けだったが<技量>の差はそんなに無いだろう?」

 これは少し千尋の分が悪そうだ。

「お言葉ですが、食器の片付けも適切な方法を知らなければ出来ませんし、そんな事は私が許しません。ですから千尋さんにはお断りさせて頂いただけですが何かご不満がありますか?」

 ここからでは顔は見えないが怖い笑顔を浮かべる英美里が容易に想像できた。

「いや、不満は無い……だが私も色々と英美里から学びたいと思って、ちょっと羨ましいというか……なんというか」

「まぁ!それならば私が全身全霊を込めてお教えします!」

 雲行きが変わった。

「ちょ、ちょっと待て!どういう事だ?教えてくれるのか?」

「はい!勿論です!お手伝いは未熟な方にはさせませんが、教えを乞いたいのであれば大歓迎です!一緒にメイド道を極めましょう!」


 どうやら手伝いと教えてもらうという事の違いがあるようだ。

 言われてみればそうだな、と思わなくも無いが正直どうでも良い。


「そういう事なら改めて、私に家事を教えてください!」

「はい!勿論です!」

 どうやら和解が成立したようだ。

 だが疑問が一つ残る。

 番長は本当に家事が出来るのかという問題が。


 エルフが作った野菜スティックをぽりぽりと齧るベルに聞けば何かわかるかもしれない。

「ベル、番長って家事出来るの?」

 野菜スティックを齧るのを止めて口の中の物を飲み込んでから口を開いた。

「はい、マスター!番長のステータスを見れば分かるかと」


 そう言われてから初めて番長に鑑定をかけた。














「なるほど……スキル持ちだからか」

 英美里が納得出来るスキルを番長は持っていた。





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