小さな発見は大きな事件7
部屋へ戻りいつものようにネトゲを起動させてベルの為に据え置き型のゲームを起動してあげた。
「ベルはどういうゲームがやりたいんだ?」
ゲームがやってみたいというベルにどんなゲームがやりたいのか聞いてみた。
「はい、マスターのオススメの物があればそれをやってみたいです!」
「じゃあ……この魂シリーズかな、ちょっと難しいけどクリア出来ればめちゃくちゃ達成感あるから!ベルも楽しめると思う!」
「はい!マスター!では<悪魔魂>でお願いします!」
魂シリーズ、所謂<死にゲー>と呼ばれる高難易度で重厚なストーリーが魅力のアクションRPGの超人気作。
その第一作目である<悪魔魂>ゲーム機のハードは2世代前の物だがゲーム初心者のベルなら問題は無いだろう。
最新のハードでリメイクもされてはいるが、最新ハードは持っていない。
買おうとしても抽選販売というまさかの販売方法だった為未だに買う事が出来ないでいる、転売されているものを買えば良いと言う意見もあるだろうが、ゲームだけはちゃんとした方法で入手したい。
なにより転売されている値段が馬鹿みたいに高額な為なおさら買いたく無い、ネットでも転売の値段が高額すぎて話題になっている程だ。
転売が駄目というよりも出荷台数が少なく、その上で更に抽選販売という方式だったので値段の高騰は致し方ないのかもしれないが、楽しみにしていたユーザーを裏切るような形になってしまったのは残念という他無い。
「俺も最新ハードでゲームしたいな……まぁ今はPCゲームがあるから気長に待てるだけましだけど……」
「最新型のゲーム機を手に入れたいのですか?」
俺の呟きに反応するベル。
「そりゃ欲しいけど、抽選販売だから中々買えないんだよ」
「なるほど……では製造元からから奪ってしまえば良いのでは?英美里に頼めばちょちょいのちょいですよ!」
「それは駄目だろ、そんなことしてバレれば外部の奴らと戦争になりかねんぞ」
「それはそれで望む所ですね!現状この世界ではトップクラスの戦力を所持していますから!」
何故かヤル気満々なベル、だが争いなんて面倒なだけでメリット等全くない。
戦力が高かろうが低かろうが面倒事は出来る限り避ける、これが俺達の基本方針だという事を全く理解していない。
「争いなんてそんな面倒な事するわけ無いだろ、火の粉が飛んで来たら払えば良いんだよ、わざわざこっちから火種をまく必要は全く無い」
ベルは意外と好戦的だ、身内には優しいがそうでは無い者には容赦が無い。
ベルは優秀だが少し子供っぽい部分がある、これは自我が芽生えたばかりという事も関係しているんだと思う。
「はい、マスター!面倒事は避けて命大事に!ですね!」
「おう、じゃあ準備出来たからやってみな。どうしても分からない事があったら聞いてくれ、大体の事は教えてやれるから。まぁ自分で考えながらやる方が楽しいからとにかく頑張れよ!」
「はい!マスター!」
ベルが悪魔魂を開始したのを見届けてから俺もネトゲを開始した。
☆ ☆ ☆
ネトゲを始めて暫くして、ふとベルのプレイ画面を覗き見る、どうやらビルドで悩んでいるようだった。
その光景を見てそういえばと自分のステータスを確認する。
「LVが26で、スキルは……増えてる!」
GーSHOP SP67000
スキル
・槍術 消費SP30000
・魔力操作 消費SP50000
「魔力操作か……エルフが持ってるスキルだよな、欲しいな……でもなぁ……アバターを優先したほうが良いと俺のゴーストが囁くんだよなぁ……ここは直感を大事にしよう!そうしよう!」
続いてアバターの項目を開いた。
<アバター> 67000SP
アバター修復 消費SP1000
聴覚強化 消費SP15000
視覚強化 消費SP15000
触覚強化 消費SP15000
嗅覚強化 消費SP15000
身体能力強化 消費SP15000
魔力同調 消費SP20000
魔力強化 消費SP20000
魔力量強化 消費SP20000
加護同調 消費SP30000
自動修復 消費SP30000
「加護同調と自動修復で良いよな!」
もはやノータイムで加護同調と自動修復を取得した。
一応確認する為にアバターを取り出す。
「マスター、アバターで何するんですか?ネトゲですか?」
アバターでネトゲ、ありかもしれない。
「アバターをアップデートしたから確認の為にな」
「おぉ!新機能追加したんですね!おめでとうございます!」
「ありがとうベル」
本体とアバターを同時に操作する、以前と同じで頭が割れるように痛むが前よりも少しだけスムーズに実行でき、なんとかアバターを鑑定する事が出来た。
<ダンジョン用アバター 児玉拓美>
・発声機能
・味覚機能
・身体能力同調
・魔力量同調
・スキル同調
・加護同調
・自動修復
<スキル>
・念話
・隠蔽
<加護>
・娯楽神の加護
「加護が増えてるな!これでもしかしてアイテムボックスもアバターで使えるのか?試してみよう!アイテムボックス!」
アバターでアイテムボックスを使用する。
アバターの側に黒靄が発生した、手を入れ中身を確認する。
「なるほど……本体と中身は共有するのか!便利だ!」
これでアバターと本体の性能差が更に縮まった。
「早速アバターでネトゲやってみるか!」
布団の上に寝転んでアバターでネトゲを始めた。
ベルは初プレイとは思えない動きでボスと戦っていた、武器が弱いのでちまちまと攻撃しているのだがベルにボスの攻撃が当たらない、この日天才が誕生した。
☆ ☆ ☆
ベルが所用を済ませて来ますと言って部屋から出て行った。
仕事熱心だなと感心しながらもアバターでのネトゲに勤しんでいた。
『ご主人様、そろそろそちらに戻ります』
『おう、わかった!千尋の訓練はどうだ?順調か?』
『はい!とても順調です!特に剣術のセンスが素晴らしいです!それと魔法も扱えるようになりました』
『そうか!それは僥倖だ!』
『ではまた、すぐに帰還しますので。夕飯はもう少しお待ちください!』
英美里と念話を終える。
千尋は順調に成長しているようでなによりだ。
再びネトゲを再開すると何やら全体チャットが騒がしい。
「なんだ?……<宮崎ダンジョン>で自衛隊員5名が行方不明……これはちょっとマズイのでは?」
ベルが使っていたテレビを点ける。
テレビでは安相さんが会見していた。
『今回の仮称<宮崎ダンジョン>での自衛隊員行方不明につきましては、現在も鋭意捜索中であります。ダンジョン内では所謂<ゴブリン>と我々が呼んでいるモンスターが発見されています。対話を試みましたが対話は不可能と判断しこれを射殺、以降は接敵した場合のモンスターと思われる者については攻撃の許可を出しております。今回行方不明となっております自衛隊員らを発見、救出するまでは捜索を継続する所存であります。……ここからは本音で話す、今回の事で良い加減気付いただろう?我々は今、非常にマズイ状態だ!ダンジョンやモンスター等という訳の分からんものが世界中で広がっているんだぞ!ゴブリンしか発見されていないダンジョンでこの様だ!今回ダンジョンに派遣したのは<加護>保持者だけだ!だがな!彼らは精霊系の加護の保持者だ!もう分かっているんだぞ!<神の加護>と<精霊の加護>では大きく能力に差が出る事ぐらい!それでも!まだお前らは表には出てこないつもりか!このままではこの国はいずれ破滅する!断言してやる!この儂が!この国の政治のトップであるこの俺が!今は国民全員で力を合わせて立ち向かわなくてはならない!だからどうか……どうか頼む!この国を救ってくれ!我々には君達が必要なんだ!君達に協力を仰ぐしか無いこの俺を馬鹿にしてくれても構わない!だから頼む!<神の加護>を持つ者達よ!未曽有の大災害に見舞われている日本の為に声を上げてくれ!頼む!』
センセーショナルな内容と会見が行われている、歴代総理大臣の中では初めてであろう自国民に向かって懇願の土下座、その光景を部屋の中で見守りながら胸に熱いものが溢れるような感覚を覚える。
「本当に尊敬するよ安相さん……でも俺は表には出ないし、出られない……すみません」
人知れず部屋の中で謝罪した。
『安相さん、顔をあげてください。ここからは俺の出番ですから』
見たことも無い大学生ぐらいのイケメンが会見に横入をして安相さんの肩を支えて立ち上がった。
『皆さんこんにちは、私は<超常現象対策本部>に配属されました<馬場 由隆>と申します。私の事をご存じで無い方も多いと思います。ですのでまずは皆さんに知ってもらう為にこれを持って参りました』
そう言って彼は黒靄を出現させ、その中から茶色い物を取り出し頭に被った。
「生きてたんだな……馬鹿」
『これで分かった方も居るかと思います、そうです私があの動画を上げた<馬鹿>です!私が動画を上げてから直ぐに安相さんから連絡が来ました、日本の為に働いてくれないかと。私は悩みましたが承諾しました、そして私が持つ<芸能神の加護>つまり<神の加護>についての情報を提供してきました!そこで分かった事は神の加護の恩恵についてです!詳しい事は<超常現象対策本部>のサイトをご覧下さい!この会見終了時に詳細を載せますので!そしてここからは個人的な頼み事です。加護持ちの方、特に危機感を感じて雲隠れしている<神の加護>を持っている方!超常現象対策本部に来てください!貴方達の力が必要です!一緒にこの国難から日本を救いましょう!国は我々<神の加護>を持つ人を保護すると約束してくれました!俺のせいで怖がらせてしまった事は謝ります!申し訳ありませんでした!……一緒に戦ってください!国の未来の為に!お願いします!』
馬鹿も土下座をしながら加護持ちに謝罪と懇願を行った。
「まぁ……俺が居なくても大丈夫そうだなこの国は」
最初から表には出ないとは決めていたが、最悪矢面に立つ覚悟はしていた。
だがそんな覚悟も千尋の協力により必要無くなった。
だからだろうか、もはや興味も無くなりテレビの電源を落として再びネトゲを再開した。
「ちーちゃん最強計画を必ずや成功させて、ちーちゃんの力を世界に見せつけてやらねば!」
他力本願な決意を強固なものにしながらもネトゲは辞められない。




