世界が変わっても人間そんなに変わらない10
昼ご飯のドリアも美味しく頂いてゆっくりとした午後の時間を楽しみながら、そういえばと英美里に魔法の事について聞いてみる。
「英美里は魔法って使えるの?」
相変わらず何がそんなに楽しいのかは分からないがニコニコと楽しそうにこちらを見つめながら食後の一杯を楽しんでいる英美里に尋ねた。
「使えますよ?光系統は適性が無いので光系統以外の魔法ならそこそこ程度ではありますが使用可能ですね。私自身は近接と影を使った戦闘が主体ですので、魔法は戦闘では補助程度ですね」
「そうなんだ、ちなみに俺も魔法使えたりするのかな?」
一番気になっていた事を質問する、やはり魔法を自分で使ってみたいという欲はあるので少しドキドキしながら返答を待つ。
「適正次第ですね、魔力は全ての生命が持つ力ではありますが適性は持って生まれた才能ですので適正さえあれば後は練習次第だと思いますよ?」
「適正か……それってどうやったら分かるんだ?」
「そうですね……自分の適性は感覚的に分かるのですが、ご主人様の適性を調べる方法は私にはありませんね。ですがエルフ達なら何か知っているかもしれませんよ?」
やはり魔法関連はエルフに聞く方が良いらしいので暇潰しがてらリーダーに念話を掛ける。
『リーダー!』
『はい?どうかなさいましたか?』
『今大丈夫?ちょっと聞きたい事があるんだけど……』
『えぇと……今はちょっと皆でお風呂に入っているので、出てから折り返しても良いでしょうか?』
平静を装いながら短く返す。
『分かった、また後でな!』
遂にこの時が来た。
この瞬間を待っていたんだ。
勝利の栄光は俺に。
今こそスキルの使いどころでは無いか。
俺は遂に怠惰の魔眼(自身の支配下にある者の視覚を覗く事が出来る瞳)をリーダーに使用した、だがリーダーの視界は目を瞑っているのか真っ暗なままだった。
『児玉様』
何か優しく諭すような口調のリーダーから念話が掛かってきてドキリとしながらも冷静に念話を返す。
『どうした?もう風呂から出たのか?』
『そういう事は女性に黙ってするのは駄目ですよ?言って頂ければいつでもお見せしますので、次からはきちんと断りを入れてからなさってくださいね?女性にも準備というものがありますので』
バレていると悟り慌てて怠惰の魔眼を解除する。
『はて?なんのことかな?』
大根役者さながらに全力で惚ける。
『これ以上は追及しません。ベル様や英美里様にも言いませんから安心してください、ではまた後程』
リーダーからの念話が切れた。
(やっちまった……完全にバレてるしなんだよこのクソスキル期待させるだけさせやがって!)
近所のお姉さんに優しく諭されてしまったようなシチュエーションに恥ずかしい気持ちとなんとも言えない嬉しさが込み上げてきて、変な扉を開けてしまいそうだった。
「ご主人様、変な顔をされてますが……大丈夫ですか?」
あまりにも気持ち悪い顔でもしていたのか、不意に英美里が心配するように声を掛けてくれた。
「大丈夫、リーダーにちょっと念話しててな」
「魔法適正について何かわかりましたか?」
「いや、また後で連絡するって言われてな」
真実を隠しながら説明する。
「……なにかありましたか?」
何かを感じ取っているのか食い下がってくる。
「いや別に」
ボロを出さぬように言葉少なめに返答する。
「そうですか……リーダーに念話してみますね?」
何故だか分からないが笑顔が怖く感じる。
「……良いんじゃない?」
「では」
黙り込む英美里を見つめて必死に祈った、どうか喋らないでくれと。
「特になにかあった訳では無いそうですが……」
腑に落ちないのか若干こちらを怪しみながらも口を閉ざす英美里を見てリーダーに感謝する、約束通り黙っていてくれたんだと。
このままここに居てはマズイと思い部屋に戻る事にした、戦略的撤退は勝利の為には必要な場合もあるのだ。
「じゃぁ部屋でまたネトゲでもしてくるよ、夜ご飯も楽しみにしてるから!」
返事を待たずに言い逃げしながら部屋へと戻る。
中断していたネトゲを再開しようとするがいつ念話が入るかわからないのでインターネットでダンジョンの事を調べてみるが相変わらず出現情報は無い。
会見の後から馬鹿は動画をあげていない、というよりも馬鹿の投稿アカウント自体既に消去されている、ネット上では色々な噂が出回ってはいるがどれもこれも確証は得られずにいた。
「まぁ……あんな動画上げれば目を付けられるのは当たり前だよな……噂通り政府に保護されてれば良いけど、そうじゃ無かったらもう馬鹿は……」
その先は怖くて口に出来なかった、馬鹿は世に加護の存在を信じ込ませるだけの事を成したがやはり何者かに目を付けられてアカウントまで消去されたとみて間違い無いだろう、俺も一歩間違えば馬鹿のようになる可能性がある。
正直俺の<怠惰>と<娯楽神の加護>は異質だ、ネット上では加護についての情報がある程度出始めてはいるが大半は<火精霊の加護>等の<精霊の加護>ばかりで俺が確認出来ている<神の加護>は<芸能神の加護><植物神の加護><娯楽神の加護>の3つだけ、加護持ちが危機感を感じて情報を伏せているのは間違いは無いだろうがそれにしても情報が少なすぎる。
「神の加護を持っている奴が圧倒的に少ない可能性もあるか……」
ネット上の情報を信じるのであれば精霊の加護と神の加護では大きく異なる事がある、それはアイテムボックスが使えるかどうかと経験値取得と成長値上昇がついていないということ。
<火精霊の加護>では<鑑定><同類言語理解><火精霊の親愛>(火に関する事との親和性、効果上昇効果)しか無いらしい、ネット上の情報でしか無いので多少の間違いはあるだろうが色んな人が同じような内容の説明をしているのでほぼ間違いは無いと思う。
『児玉様、お待たせいたしました』
ネットサーフィンをしているとリーダーから念話が掛かってきた。
『ごめんなさい!もうしません!許してください!黙っていてくれてありがとうございます!』
開口一番で謝罪して、感謝を伝える。
『いえ、お気になさらず。今後は事前に連絡するか児玉様のお力の説明を皆様にしておいた方が良いかと、いきなりでは驚いてしまうと思いますので』
優しく諭され変な事を考えつつも気になっている事を聞く。
『ちなみになんで分かったの?<怠惰の魔眼>を使った事』
『そうですね……恐らく児玉様は<怠惰の魔眼>を初めて使ったんですよね?』
『そうだね』
『でしたら分からないのはしょうがないのかも知れませんが……<怠惰の魔眼>を使われると視界に文字が現れるんですよ』
<怠惰の魔眼>が使用されました、許可しますか?
『というふうに許可するか否かを選択出来るみたいです。ですから私は初めて使ったんだろうなと思い、目を閉じて視界を無くした状態で許可したんです。ふふふ、可愛らしいなと思いながらつい意地悪のような事をしてしまいました。申し訳ありません』
なんという事でしょう<怠惰の魔眼>は許可制な上に思春期男子を見てつい意地悪しちゃったかのようなお茶目なリーダーの行動に気恥ずかしさを感じつつも必死に言い訳を考える。
『その……ね!俺もほら、男だし、魔が差したというか……ね!あの、純粋に!そう!純粋な思いで<怠惰の魔眼>の使用感?みたいなものを確かめたくてさ!悪気は……無くはないけど、やっぱお風呂って言われるとさ!男はみんなそうなるんだよ!だから不可抗力?的な?……俺が悪いというか<怠惰の魔眼>が悪いんじゃないかな?こんなのあったら男は誰だって同じ事すると思うよ?だからさ誰が悪いとか無いよね?もう……これはある意味俺も被害者なんじゃ無いかと思うんだけど……どうでしょうか?』
もはや言い訳でも何でもない犯罪者紛いの発言である。
『ふふ……ではベル様と英美里様にこの事を報告しても良いですか?』
笑いながらこちらを揶揄うようにリーダーが問うてくる。
『いや、それちょっと待ってください……それは良くないんじゃないかな?……ごめんなさい全て私が悪いです!』
念話しながら頭をこれでもかと下げてもはや土下座に近い状態で謝罪した、プライドなんていう余計な重りは俺には必要無いと言わんばかりに。
『児玉様は悪くありませんよ?全ては男の子の性というものであると私は理解していますから……次はきちんと連絡してから使ってください、私の体でしたら好きなだけお見せしますから』
(もう駄目だもう無理だエルフにこんな事を言われた日には俺はもう駄目だもうエルフ無しでは生きていけないかもしれない可愛すぎるリーダーガチ恋勢になっちまうよどうしようどうしよう結婚って出来るのかなあぁ尊い尊いよリーダー)
『いや、今後悪用はしません!……ところで聞きたい事があるんだけど?』
この話題から離れる為にも強引に話を本題に戻す。
『ふふふ……本当に可愛らしいですね!それで聞きたいこととはなんでしょうか?』
機嫌良くこちらの話に合わせてくれるリーダーに感謝しながら本題を切り出した。
『魔法が使ってみたいんだけど……適正って調べたり出来る?』
『適正ですか……最初は1つずつ試していく他無いと思います、その中で感覚的に使いやすいかどうかみたいな事を把握していくのが魔法を覚えていく基本ですから』
答えはでた、後は練習あるのみ。
『じゃあ今度暇な時に魔法教えてくれないか?』
『良いですよ、では明日にでも教えましょうか?私達の家にまだ招待も出来ていませんし、歓迎の準備を今からしておきますので!』
『おぉ!それは助かるよ!リーダー達が良いならそうしてくれるとありがたい!』
『では、明日仕事が終わって準備が整ったら連絡しますね!それではまた明日!』
リーダーとの念話が終了し、お宅訪問の約束も再度出来た。
一応ベルと英美里にも言っておこうとまずはベルに念話する。
『ベルー!』
『はい、マスター。なにかありましたか?』
『いや、明日リーダーに魔法を習いに行くからベルにも連絡しとこうと思ってな!』
あえてお宅訪問の件は言わずに伝える。
『ソウデスカ、魔法を習いに行くダケでしたら良いんじゃないですか?英美里も一緒に連れて行ってあげてクダサイネ?』
少し機嫌が悪いベルに英美里の同行を勧められる。
出来れば同行は避けたいが、英美里は俺の護衛も兼ねている関係上同行拒否は難しいがここで天啓が舞い降りる。
『明日はランダムスライムスポナーを設置するから、英美里はそっちに回ってもらった方が良いんじゃないか?』
我ながら妙案だと思いベルに伝えた。
『いいえ、マスター。ランダムスライムスポナーを設置してマスターを含めた全員でスライム狩りをして頂くつもりですので何も問題ありません、全員で動いた方がリスクを回避しやすいので』
『ですよね!』
『英美里にはこちらから連絡してオキマスノデ!』
なんという正論、返す言葉も無く俺は了承の返事を返すとベルが念話を切る、機嫌はあまり良くは無かったがもうどうしようもない。
「うん!ネトゲしよう!」
この後夜ご飯に呼ばれるまでめちゃくちゃネトゲした。




