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しふくの時と言われても13


 任務を終えて俺達は我が家へと帰る。


 俺達がダンジョン攻略を終えた事はまだ世間には伝わっていないようで、特にトラブルも無く飛行機に乗る事が出来た。


「とりあえず意識本体に戻すから、何かあったら念話してくれ……」


 隣に座っている千尋に小声で伝えてからサブキャラから意識を外す。


「東京まで約4時間か……とりあえず飯食って日課こなしに行くか!」


 まずは腹ごしらえしようと居間へと向かった。


「おかえりなさいませご主人様。直ぐに朝ごはんを用意しますね!」


「ありがと、英美里」


 英美里におかえりを言われてやっと日常に戻れた気がする。


 俺自身は我が家にずっと居たし、ちょくちょく意識を本体に戻しては居たが比重はサブキャラに傾いて居たので精神的に疲労は蓄積していた。


 今回の北京遠征は俺が我儘で無理矢理着いて行ったようなものなので弱音を吐く訳にもいかず、久々に頑張った気がする。


「東京まで戻れば後はサブキャラを解除するだけだしな……」


 居間で英美里が用意してくれる朝食を今か今かと待ちながら、大きな仕事を終えた達成感を感じていた。



 ☆ ☆ ☆



 朝の日課を熟してもうすぐ東京に到着する時間になったので、念の為サブキャラへと意識を戻す。


「……おはよう、もうすぐ着く?」


「おはよう、もうすぐ着陸だ。空港でもしかしたら記者に囲まれるかもしれないから、飛行機を降りたらなるべく私達から離れた方が良いかもしれないな……」


 わざわざ俺の存在を公表するつもりは無いが、バレたとしてもそれはそれで問題無い。


 既に中国では俺の存在は露呈しているので、遅かれ早かれ俺の存在は世間に認知されるだろう。


 俺が千尋達とどのような関係なのかは言及されれば千尋の口から世間に説明する予定にはなっているが、俺がどんな奴かは説明はしない。


 あくまでも俺は千尋の旦那であり、千尋のような強さを持っている事は言うつもりも無い。


 色々な疑惑や憶測は飛び交うかもしれないが、そんな事は知ったこっちゃ無いのだ。


 俺は今まで通り我が家から出るつもりは全く無い、俺がここに居続けて怠惰が発動している限り怠惰ダンジョンへは誰も辿り着けないのだから、安心安全快適な暮らしは約束されている。


「着いたな……先に行ってくれ、俺は後から降りて人目に付かない所に移動したらサブキャラを戻すから……」


「あぁ」


 千尋達英雄御一行は俺より先に飛行機を降りて行った。


 俺は暫くの間座席で他の搭乗者が降りるのを待ってから飛行機を降りた。


 空港からモノレールで浜松まで移動して、駅を出てから人目の付かない所で俺はサブキャラを解除した。


「ふぅ……任務完了!千尋達はどうなってんのかね……眠ぃ、寝るか……」


 乗り換えの間、記者に囲まれているであろう千尋達の事を考えながら一人だけ先に任務を完了した解放感を満喫しながらお昼寝タイムに突入する事にした。



 ☆ ☆ ☆



 目が覚めて時刻を確認すると、もう夕方になっていた。


 千尋達は今頃千尋の実家である道場にもう到着しているだろう。


「やっぱ直通の転移門が欲しいな……かと言って道場をダンジョンにするのもなぁ……」


 暫くは記者やら何やらが道場や冒険者協会の本社に張り付いていると思われるので不用意にここへは戻って来れない。


 例え記者やら何やらがここへ来ても敷地内には侵入出来ないが、侵入出来ないという違和感は与えてしまう。


 そうなればより一層怪しまれる事になるのは明らかなので俺の本籍事道場に移して、この場所には誰も住んでいませんという対外的なアピールを行っているが何処まで持つかは運次第だろう。


「はぁ……何も考えずに生活出来る日は来るのだろうか……」


 外との関わりが出来た事によって発生したデメリットに嫌気が差しながらも後悔はしていない。


 ベルや英美里、他の怠惰ダンジョンで生まれた者達だけで暮らしていたら俺はきっと今よりも駄目になっていたと思う。


 自ら考える事も無く、ベルに全てを任せて一生ゲームだけをしていたに違いない。


 それはそれで楽しいだろうし、安全に暮らして行けるとは思う。


 だけどそうしていたら何時まで経ってもベル達が外の世界に出る事は無かったかもしれない、共存共栄という道を目指す事も無かったかもしれない、何より結婚何て出来ていないだろう、そう考えると多少のデメリットぐらい許容して然るべきだと思う。


「グローバルなダンジョンを目指そうかな……次は台湾辺りに転移門作りたいなぁ


 家から出ずに世界旅行出来るようになったら千尋と純と一緒に色んな場所へ出掛けて、沢山の思い出を作りたい。


「……美奈に連絡しておくか」


 馬鹿な妄想をしながら妹の事を思い出し、連絡を取ってみる事にした。


 スマホから美奈に電話を掛ける。


 コール音が数回鳴ってから美奈が電話に出た。


「もしもし」


「何?」


「いや、とりあえず一段落したから連絡してみた。いつこっちに戻ってくる?」


「……ニュース見た、千尋さん凄い事になってるね。……来週一回そっちに行こうかなと思ってる……辞表書いたけどまだ渡して無いんだよね」


「おっ!遂に辞める決心が着いたか!おめでとう!これで兄弟揃ってニートだな!とりあえず来週、待ってるから……大分に着いたら連絡してくれ迎えに行くから!千尋が!」


「はぁ……相変わらず能天気だね、まぁ今度はこっちから連絡するから……ありがと」


 最後に感謝の言葉を残す辺り、ツンデレな妹である。


「もうすぐ美奈も帰って来る……これでなんの憂いも無くなるな」


 やはり妹の存在があったからこそ色々と自重していた部分はある。


「美奈が帰ってきたらびっくりするだろうなぁ……」


 今やダンジョンと化した我が家、ダンジョンから生み出された新しい家族。


 普通の人なら受け入れ難い事かもしれないが、美奈なら大丈夫だろう、何せ俺の妹だし俺よりも遥かに優秀だ。

























「……もしかしたら怒られるかもな」


 一抹の不安を抱えながらも美奈の帰りを楽しみに待とう。


「美奈も加護とか持ってそうだよなぁ……」


 俺が加護を持っていて美奈が持っていないとは流石に思えない。







 





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