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しふくの時と言われても9


 中国ダンジョン入り口前での戦闘は呆気なく終了し、襲って来たミノタウロスというモンスターの情報もベルによって判明した。


「じゃあこれから本格的にダンジョンに挑む事になるんだが……正直戦闘に関しては何も心配はしていない。だけど罠に関しては常に警戒しながら進む事になる、俺もなるべくなら罠を看破しながら先頭に立つつもりでは居るが、何か異変を感じたり俺が見落としていると思った時にはすぐに声を掛けてくれ」


 俺は死んでも大丈夫なので今回も鉱山のカナリアとして先頭に立つ。


「それは良いが、隠密で慎重に進むとなると時間が掛かり過ぎるぞ」


「いや、今回は罠にだけ注意して隠密行動はしない。モンスターに見つかる可能性は上がるがこのメンツなら大体の敵は瞬殺出来るから問題無い。なるべく時短で攻略するつもりだよ」


「なるほどね!じゃあ初見のモンスターは発見次第鑑定してから瞬殺でお願いね!資料は多い方が良いからね!」


「それじゃあ行こうか!」


 遂に中国最大のダンジョンへと足を踏み入れる。


 本来なら中国が解決すべき問題だが、ここまで規模が大きくなれば現状攻略出来るのは俺達ぐらいだろう。


 世界の危機とも言える問題に首を突っ込みたくは無かったが、嫁とベルの以降には逆らえない。



 ☆ ☆ ☆



 ダンジョンに足を踏み入れ、罠が無いかだけを確認しながら

順調に歩みを進めている。


「ゴブリン、オーク、偶にミノちゃん……結構進んだと思うけど、出てくるモンスターは代り映えしないね!」


「生成自体のコストは馬鹿にならないし、基本的には繁殖させるのが効率の良いダンジョン運営らしいからな……効率を求めるとどうしても繁殖力の高いモンスターで構成されるんだろ」


 ダンジョン運営も意外と世知辛い。


 規模が大きくなり、DPが安定供給可能になれば防衛や発展の観点からも多種多様な種族を生成するようになるとは思うが、流石にまだダンジョンというものが発生してから期間が短いので、いくら短期間でDPが多く手に入ったダンジョンだとしてもまずは安定供給を目指すのは必然だろう。


「良くも悪くも効率重視なのが普通のダンジョンコアの思考回路なんだろうね!そう考えると早期にゴブリンとかオーク以外のモンスターが発見されたダンジョンってベルみたいな存在が居る可能性が高いよね!」


「そうかもしれないな……そういえば少し前に東京の方で人狼が目撃されていたが、あいつはどうなったんだ?」


「人狼はあれから目撃情報無し、ダンジョンに帰ったのか誰かが討伐したのか……恐らく前者だろう」


「人狼っすか……モンスター寄りなのか人寄りなのかによって、脅威度は変わりそうっすね」


「知能が高いというのはそれだけで脅威ですからね……」


「前方にゴブリン、複数」


「お任せください!アクアウィップ!」


 リーダーが放った水の鞭により、前方に居たゴブリンが一掃された。


「ドロップは無しっすね!」


 その後も危なげなく洞窟の奥へと進んで行く。


 いくつか枝分かれした道や部屋もあったが、基本的には一本道の洞窟なので迷う事無く大きな広場にたどり着いた。


 そこで下に降りる階段らしきものを見つけたが、階段の前には青い龍が一匹居た。


「あの龍は階層守護者か?」


「めちゃくちゃ睨んでるね!とりあえず鑑定!……駄目だね!隠蔽持ちと見て良いかな?」


「こうしてお見合いしていても仕方が無い、まずは私が突っ込む!援護してくれ!」


「娘だけ行かせる訳にも行くまいて!俺も突っ込むぞ!」


「いやっ!ちょっと待って!一旦様子を……あぁもう!各自!千尋と一馬さんを援護!」


「「「「了解」」」」


 千尋と一馬さんの脳筋親子が人の話を聞く前に突っ込んでいったので、俺達も二人を援護するべく動き出した。


「せいっ!」


「ふんっ!」


 脳筋親子の気合の籠った斬撃が青い龍を襲う。


 甲高い音を立てつつも龍の鱗を数枚剥がす事に成功したようだが、体の大きさからしてあまりダメージは通っていないように思える。


「意外と固いぞ!」


「がははは!!!固い方が何度も斬れて良いじゃないか!」


 青い龍の大きさは大体10m程はあるだろう。


 千尋と一馬さんの一撃を嫌ってか地面から離れ、空中に浮いた龍だがそんな事はお構いなしに千尋と一馬さんはジャンプしながら斬撃を繰り返している。


「俺も行く!純とリーダーは魔法で攻撃!助手ちゃんは魔法純で攻撃!番長は三人を守ってくれ!」


 俺も攻撃に参加するべく、魔装を装着し魔槍を構えながら龍に突っ込んだ。


 龍が反撃の為に尻尾を振り回したり、腕で攻撃を仕掛けているが脳筋親子の剣精の絶対防御を突破する事は叶わない。


「……しっ!」


 脳筋親子にしか目が向いていない龍の横腹に魔槍の突きを放った。


「ギャォオオ!」


 思いの他サクッと刺さった俺の突きが痛かったのでか、空中でのたうち回る龍。


「退いて下さい!アクアランス!」


「火槍!雷槍!」


「ぶっ放す……!」


 リーダーの掛け声と同時に俺達は龍から距離を離す。


 水槍、火槍、雷槍、魔力の弾丸が青い龍に降り注ぐ。


 着弾と同時に眩い閃光が辺りを包み、凄まじい爆発が発生した。


 咄嗟に千尋を庇いながら爆風を浴びるが、流石はベル達渾身の魔装、無傷で爆風から千尋を守りきれた。


「大丈夫か?」


「あぁ、ありがとう……」


 千尋なら一人でも大丈夫だとは思うが、咄嗟に体が反応してしまったので仕方が無い。


 爆心地である龍が居た場所にはもう何も居なかった。


「消滅確認!被害は?」


「こっちは被害無しだよ!」


「がはははっ!流石に驚いたぞ!被害無し!」


「俺達も被害無し!全員無事だな……階段を降りる前に一旦態勢を整えよう!周辺警戒しながら小休止だな」


「ふぅ……思ったより硬かったな」


「だが何度か斬ればイケたな!」


「第一階層でこれかぁ……まぁ大丈夫っぽいね!」


「自分だけ出番が無かったんで次の大物は自分も活躍したいっす!」


「高火力は浪漫……」


 喧々囂々、和気藹々。


 初めての大物討伐で皆テンションが高い。


 気持ちを落ち着かせる為にも休憩は必要だ。


 俺も精神を休ませながらベルに念話する。


『ベル!』

























『はいマスター!』


『階層守護者っぽい10mぐらいの大きさの青い龍が居たんだが、どんなモンスターか分かるか?』


『流石に情報が少なすぎますね……龍種は意外と種類が多いので。どんな攻撃方法でしたか?浮いていましたか?』


『浮いてたな、攻撃方法は尻尾の振り回しと腕を使っての攻撃ぐらいしか確認出来てない』


『シンプルに考えるなら青龍だと思います!龍種でも最上位に位置する龍ですが、似たもので青竜というのも居ますので何とも判断出来ませんね!』


『ありがと!また連絡する!』


 青龍なのかそれとも青竜なのか。


「まぁどっちでも良いか!」


 危険度ランクを付けるとすればA以上が妥当だろう。


 脳筋親子の攻撃を受けて数回耐えれただけで耐久力は目を見張るものがある。


 冒険者協会の新人の子らでは間違い無く勝てない。


 龍の鱗を突破する火力が足りない。


 可能性があるとすれば魔法銃の狙撃型での一点集中攻撃をピンポイントで同じ部分に当て続けて龍の鱗を剥がした上での攻撃ぐらいだろうか。



 何れにせよ、こんな強さのモンスターが居る時点で中国は成すすべも無く蹂躙されていた可能性が高い。





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