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夢を追うもの笑うもの39


 突発的に開催された模擬戦大会もいよいよ決勝戦。


 勝敗に関しては試合をやる前からほぼほぼ決まっているようなものなのだが、真の強者の姿を見て少しでも皆の成長の糧になれば良いなと俺は思う。


 博士と助手ちゃんはあんまりベルの強さが理解出来ていないとも思うので今回の模擬戦は丁度良い機会だ。


「英美里は休憩するか?」


「いえ、魔力はリーダーから頂いていたので問題ありませんのでこのまま試合を始めてもらって大丈夫です」


「そうか……それでは!これより決勝戦を行いたいと思います!両者はスタート位置に向かってください!」


「ではマスター!行ってきます!」


「行って参ります!」


 二人がスタート位置に向かう。


 英美里は気合の入った表情で。


 対するベルは機嫌良さげに。


 英美里からは緊張感を感じるが、ベルからは緊張感は微塵も伝わってこない。


 両者の実力差は歴然。


 万が一にもベルが負ける事はありえない一戦。


「それでは!決勝戦!試合開始ぃ!」


「どこからでもかかってこーい!」


「……」


 まずは両者睨み合いの形にはなった。


 これは英美里が何も仕掛けられない状態でベルが英美里の動きを待ってくれている状態なだけだ。


「……大影・包躯巣!」


 暫く静かな睨み合いが続いたが、英美里が意を決して自身が出せる最大火力をベルにぶつける作戦にでたようだ。


 英美里の初手は先ほどのリーダー戦で見せた新技の大きな影で作られた黒鷹による攻撃。


「ふむふむ……なるほどね!ありがとう英美里!でも、私に二回も同じ技を見せるのはマズイかな!……大影・ホークス!」


 ベルも英美里と同様に影で作った黒鷹を作り出した。


 ベルの強さは自身の身体スペックだけじゃなく、その解析能力と再現性によるものだ。


 俺のスキルであるアバターを解析してアバターに似た分身である肉体を作りあげた事もそうだが、ベルは基本的に怠惰ダンジョンに属している者を上回るスキルや能力を使う事が出来る。


 故に最強なのだ。


 俺達がどれだけ強くなればなる程にベルも強くなる。


 今回もベルが生み出した大影の黒鷹は英美里が作り出したものよりも、造形の細かさも精緻で動きも破壊力も上のようで英美里の操る黒鷹は常に防戦一方だ。


「英美里!後輩を厳しく指導するのは良いですが、あまりやり過ぎは良くないですよ!これは私からのお仕置きです!後でちゃんと博士に謝って仲直りしてくださいね!」


「了解です……しかしお見事ですね、私よりも既に大影を上手く使えてますね、今後の参考にさせて頂きます!」


 ここで英美里が大影を解除した。


 それに合わせてベルも大影を解除。


「次はこれで行きます!影人形!」


 英美里が無数の影人形を生成。


「影人形を64体ですか……私ならこうしますね!影騎士!」


 ベルが生み出した影は鎧のようなものを身に纏っており、手には剣と盾を持った騎士のような出で立ちの影だった。


「なるほど……生み出した影を武装化させるのですね。勉強になりますね!」


 英美里の影人形がベルの影騎士に襲い掛かるが、どんどん返り討ちに合っていく。


「英美里の影は自由に姿形を変えられるのが、最大の強みですよ!もっと工夫を凝らしましょう!こんな風に!影銃士!」


 前方の影騎士はそのままに、後方に控えていた何体かの影騎士は手に持っていた剣と盾が銃に変わり黒い銃弾を英美里の影人形に射撃を開始した。


「……そこまでの技量が私にはまだまだ足りてません」


「魔法の腕を磨くのも良いですが、貴方の一番の武器は影です!もっともっと長所を磨きましょう!伸びしろはまだまだありますよ!千尋のようにまずは自分の長所を最大限伸ばしなさい!そうすれば千尋に後れを取る事は無い筈です!」


 次第にベルも指導に熱が入ってきたのか、英美里にアドバイスをしだした。


 基本的にベルは放任主義だ、俺には良く指導やアドバイスをくれたりするが英美里を含め俺以外の怠惰メンバーに直接こういう風な指導やアドバイスをする事は無い。


「外敵からこのダンジョンを守る為にはこの程度じゃ足りません!私よりも強い存在がこの怠惰ダンジョンに攻撃を仕掛けてきたらどうするのですか!私よりも強い存在が暴食ダンジョンを襲ってきたらどうするのですか!出来る出来る!英美里なら絶対出来る!だからもっと!熱くなれよぉ!」


「はい!」


 熾烈で苛烈なベルの特別授業が始まった。


 ベルの言葉に素直に返事をしている英美里は凄いと思う。


 もし仮にベルより強い存在が居たとして、そいつが怠惰ダンジョンや暴食ダンジョンを襲ったとしてもなんやかんやベルが解決するだろうし、そもそもベルより強い奴が居たら地球が滅びてるんじゃなかろうかと俺は思ってしまった。


「そうです!その意気です!ネバーギブアップですよ英美里!まずは自分の限界に挑戦です!」


「はい!」


 英美里がベルを真似て数体の影人形を影騎士に変えた、だがその見た目はベルの影騎士には遠く及ばない。


 鎧も無く、盾も無い。


 手には剣を持っただけの英美里に似た英美里の影騎士。


 それでもこの短期間に確実にレベルアップしているのは間違いない。

 

「影人形の可能性は無限にあります!貴方の理想や想像を形に変えれば良いんです!……セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、バーサーカー、アサシン!」


 ベルが新たに生み出した影は最近コアルームで良く見かけるベルのお気に入りのフィギュアにとても良く似ていた。


「さて!そろそろお開きにしましょうか!行け!大影雄!」


 サイズ感がちょっとおかしいが、あれは間違いなくアニメの影響なのは間違いないだろう。


 アニメで見たキャラクターに似た大きな影が縦横無尽に地下広場を駆け回っている中で、英美里も対抗するように黒鷹を3体作るが、明らかに戦力不足だ。


「これは流石に無理ですね……」


 そしてセイバーが上段に剣を構えて必殺の構えに入った。


「あぁーこれはマズイか?ベル!やり過ぎるなよ!」


「はい!マスター!……これで終わりです!Xカリバァー!」


 大影雄セイバーによる一撃で英美里の影は消し飛んだ。


 周囲にも余波が来るが、ベルの魔法の防護膜によって被害は出ていない。


 上手い事手加減したのか英美里がぐったりとしながらベルによって抱きかかえられていた。


「試合終了ぉ!勝者ベル!」
























 俺は英美里に駆け寄った。


「大丈夫か?」


「手加減して頂いたので大丈夫です……」


「お疲れ様、英美里!良く頑張ったね!ちょっとやり過ぎたかもしれないけど、今後の参考にしてね!」


「ありがとうございます。ベル様」


 当初の予想通り優勝はベルになった。


「良かったな!英美里!」


「はい!」


 今後、英美里はもっともっと強くなるだろう。


「大会も終わったし、歓迎会の準備しようか!」


 この後は博士と助手ちゃんの歓迎会だ、千尋と純が居ないのは少し残念だが二人が帰ってきたらその時にはまた何かイベントを開催したいと思う。




 

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