1/155

始まりは突然に１

「あぁ、異世界転生したいなぁ、異世界召喚とかトリップでもいいけど…」

　いつからだろう、こんな夢物語を本気で願うようになったのは。

　いつからだろう、現実と向き合うのをやめたのは。

　いつからだろう、現実を味気なく感じたのは。

　いつからだろう、リアルで生きていくことに飽きたのは。

　特別な事があった訳じゃない、特別な理由がある訳でもない、只々毎日がつまらないと感じるだけ、誰しもが一度は考えた事があるだろう、自分は特別だと、他とは違うのだという事を、だが大半の人が気付く事実、自分は特別な何かではないという事に。

　ただその事実に気付くのが早いか遅いかで、人生は大幅に変わる、いや変えられるのだ。

　変えられるのは、変えようと足掻く者、変える努力が出来る者だけだが。

　だが、世の中には特別な存在だと思い込んだままの人間もいる、そいつらは幸せだろう。

　気付けば辛い現実と向き合うはめになるのだから。

　こんなくだらない事を考えてしまうのは、気付くのが早かったのはいいが、努力する気概もなく、楽な方に逃げて来たからだろうか。

　それとも、いつか特別になれると心のどこかでまだ希望を抱いているからなのか。