表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

出会いと別れの吸血鬼

作者: 花依だんご

ただ、思いついたストーリーを書きたかっただけなので文の拙さなども温かい目で見ていただけると幸いです。

 私は吸血鬼。元来、人間から忌み嫌われるべき存在。


 だけど、私には人間の友達がいた。怪我をしていた私を解放してくれた心優しい女の子。治療中に仲間に見つかってしまい、吸血鬼族からも嫌うべき存在になってしまった。

 でも彼女だけは違った。村に連れて行って、家で匿ってくれた。


 それからの毎日は幸せだった。


 一緒に遊んで、一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入り、一緒に寝る。


 たったそれだけでも私は楽しかったし、嬉しかった。彼女と一緒だったから。


 彼女の両親も村の人たちも私のことを知っていて、それでも尚優しく接してくれる。まるで他の人間の子どもと同じように。


 私は、こんな幸せな時間がずっと続くことを夢見ていたんだと思う。しかし、時間が経てば経つほど、それが幻想であることを実感した。


 1年経てば彼女に身長で追い抜かされ、

 10年経てば彼女は既に結婚相手を見つけていた。

 30年経った頃には村の長老たちが息を引き取ったし、

 50年経つと、育ててくれた彼女の両親すら亡くなった。


 月日とは残酷なものである。見慣れた景色を、人を、日常をも奪っていく。だからこそ私は確信した。


「ずっと一緒に居る、なんて不可能なんだ……」


 と。土砂降りの雨の日、家の中で一言こぼした。ちらと後ろを見ると、村の流行り病で病床に伏した彼女の夫がいた。必死に看病をしている彼女の髪の毛には白や灰色が目立っている。


「ゴホッ、ゴホッ!」

「本当に大丈夫なの? 雨が止んだらお医者様を呼びにいくから、それまで頑張って!」


 そうはいうが、間違いなく彼は保たないだろう。しかし、それを口にはしない。彼女たちを絶望させるのはあまり気持ちのいいことではない。


 こんな風に大変な状況でも、ついつい自分たちの年齢について考えてしまう。


 彼女は人間、私は吸血鬼。彼女の背には翼が生えていないし、私には鋭くとがった歯ばっかりを持っている。彼女はすっかりおばあさんな見た目だけれど、私はまだ少女のままだ。実年齢は一緒なのに、こうも違う。それは私が吸血鬼だからだろう。

 私の背中にはコウモリの翼が生えているし、彼女は鋭く尖った歯が並んではいない。


 だからこそ思う。私は、みんなとは違う、“化け物”だってこと。人間の何十倍もの時を生きる種族。体質上、流行り病などにはかからない。


 私のそんな体質を、彼女の夫に授けることができる。吸血鬼が吸血した相手は眷属に、つまり吸血鬼になるのだ。


 だからこそ、提案した。吸血をしようか、と。彼から返ってきた返事はこうだった。


「要らない。これがわしの運命じゃから。それに、覚悟を決めたというのに、今更生きたい、なんて言ってられんのじゃ」

 そういって静かに微笑んだ後閉じられた瞼は二度と開くことはなかった。彼女は泣き崩れる。私は寄り添う。


 それからというもの、彼女は悲しみに明け暮れ、ご飯すら食べない日もあった。そのせいか、彼女は数ヶ月後には夫と同じ流行り病にかかってしまった。


 私は献身的に彼女の看病をしたつもりだったが、1週間後には彼女はかなり弱っていた。看病をしている間に何度もした提案を再びする。


「ねぇ、吸血、させてよ……」

「いいよ」


 このいいよ、が肯定の意味だったらどれほど良かったか。彼女は首を横に振り、言った。


「大丈夫。私は自分の夫を追いかけるだけ。だから、代わりに生きてて欲しいの。あなたはまだ、人生長いんだから。私の分まで胸張って生きて」


 子どもを諭すような話し方をした彼女は力を抜き、そのまま息を引き取った。


 私は、涙で視界を曇らせながら、彼女を夫の隣に埋葬してあげた。同時に私は決意する。『王都』へ行こうと。多くの人間が集まる街。警備も厳しい場所。そんなところに吸血鬼である私がいけばどうなるか。考えるまでも無く分かる。きっと、すぐに殺されてしまうだろう。


「ごめんね。約束、守れないよ。やっぱり、もっとあなたと一緒に居たい」


 見えてきた街へと駆け出す。同時に、背のコウモリの羽をこれでもかと広げ、存在を主張する。


「待っててね」


 その姿を見つけた街の守衛が魔法を放つ。


「今、行くよ」


 寂しがりな吸血鬼の姿は炎の中へと消えた。


文字数少なめの話でした。短編の投稿は稀にするのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 不老の吸血鬼と人間の少女との、寿命の違いによっておきた悲劇がとても上手く表現されていて感動しました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ