キミが選んでくれたから
「300文字のストーリー」の第25部分を擬人化した作品です。
今日もショーケースの中で、整列して並んでいる。
いつも仲間と並んで、色々な人に見つめられたり、指をさされたりしている。今日は何やらいつもと違う光景が繰り広げられた。
「好きなの選んでいいからね? 私は……」
幼い女の子を連れたお姉さんが、小さな女の子にボクたちを見て声をかけている。
小さな女の子は、ショーケースが曇る程、顔を寄せ食い入るようにボクを見つめる。思わず幼い女の子と目が合う。
姉妹の様子を見ていたお店のお姉さんが、声を掛けている。
「今ですと、栗や巨峰なんかを使ったケーキがおすすめですよ」
ボクの仲間たちを紹介している。季節限定の特別な仲間たち。その声を聞いて、幼い女の子のお姉さんが
「季節限定かぁ。今しか食べれないんじゃ、やっぱりこれにしよっかな」
特別な仲間たちを見比べ迷っている。うん、そうだよね。モンブラン君も巨峰ちゃんもキラキラ輝いているもんね。
「ななも栗さんにする? 好きだもんね? 栗さん」
お姉さんが、幼い女の子にモンブラン君を勧めている様子。その声に幼い女の子は
「なな、いちごしゃんのケーチにしゅるでちゅ。くだちゃい!」
えっ、ボク? お店のお姉さんが
「はい。じゃあ1番おっきな苺さんのにしようね」
そう幼い女の子にお話したと思ったら、ボクをトングで挟んでトレイの上にのせて白い箱の中に詰めた。ボクの隣にはモンブラン君。
ボクたちは、箱に詰められていた。
「なな、揺らしたらケーキつぶれちゃうよ」
「はいでちゅ!」
ふたりの楽しそうな会話が聞こえてくる。ねぇねぇ、揺らさないでよ~~、ボクの角がつぶれちゃったよ!
「いちごしゃん、だいちゅきでちゅ」
幼い女の子にボクは気に入ってもらえているようだ。ボクは特別じゃないけど、幼い女の子の特別みたいだ。
「ななの、いちごしゃんでちゅ」
ボクは角がつぶれちゃったけど、幸せな気分で真っ白な箱の中で揺られている。