序章 とあるお見合い
序章 お見合い
「見てください!この庭!聖書にある原初の青い光をイメージして作られたそうですよ!」
厳かな庭園の中央で一人の男が声を張り上げていた。
青々とした草木は見事なまでに切り揃えられ、彩られた花々は計算されたように庭の厳格さを演出している。
しかし、そんな中で叫ぶ男は隣でもう一人誰かを配していた。
黒く・・・漆黒で艶やかな長い黒髪を揺らして、男の言葉にぎこちなく頷く着物姿の女性がいた。
「は・・・はぁ・・・」
ペラペラと喋り続ける男は、隣の女性の少々申し訳なさそうな表情を見抜けないないのか、気取ったリーゼント気味の頭を揺らして、庭の説明に熱が入っていく。
「きっとこの鯉たちが聖書にある、光をもたらされた者を表していてですね・・・」
足元を流れる作られた小川を見やって、男は集まってきた錦鯉らを話題の中に組み込んでは話し続ける。しかしそれにも女性は興味無さそうに困った顔を見せるだけであった。
そして。
「・・・――あの、申し訳ないのですけれど」
と、女性は喋り続けるの男の流れを断ち切る様に声を漏らした。
その言葉を発する女性の瞳は綺麗な黒色で、真っすぐ男を射抜くように見つめていた。