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人ならざる者に与えた優しさとその代償④

 さらに数年が過ぎる。


 ティターニアは毎月飽きもせず、律儀にリディアの家にやってきて戯れていた。


 なんとなく感情というものを分析して理解出来ている気がする。自分自身にも多少、感情の変化があるからそこから推察して、手探りで知ることが出来たのも大きい。


 ただ、妖精やリディアらのように大きな感情を露わにすることはほとんどないが。


 何故だろう、とティターニアは内心で首を傾げつつ、――もしや道具を使うこと然り、感情も使い込みで発達するのではと仮説を立ててみた。


 と、言っても脈拍もなく感情表現をするのは、周りが困惑してしまうだろう。それに状況と合っていない感情の発露は、そもそも『使い込み』効果も乏しいはず。


 だから、機を見て状況に合わせて、自然に発するようにすべきだろう。


 『などと糞真面目に考えている貴様を見ているのは中々に愉快だ』


 『オーベロン、どこかに行ってくれませんか?』


 ティターニアが紅茶を嗜みながら色々と考えていると、いつの間にかオーベロンが数席先にいた。


 そんな彼に、つい反射的にきついことを言ってしまう。だが『これ』に関してはこのくらいの対応がちょうどいいはずだ。


 『嫌われたものだな』


 そう言いつつもオーベロンは楽しそうに笑っている。何を考えているのかさっぱり分からない。


 ちなみに今のオーベロンは前より成長しており(正確には姿を変えているだけ)、13歳程度に見える。


 そんな彼に対面に座っていたリディアが片手を挙げて、笑顔を向けた。


 「あー、オーベロン久しぶりー」


 『久しぶりだな、リディア。調子はどうだ?』


 「まずまずかな。ウェイトもそれなりに落ち着いてきたし。……まだやんちゃ盛りだけど」


 そう言ってチラリと視線を他方に向けると、そこにはウェイトが妖精フラワー達とついでに今合流したパックと戯れていた。


 皆で駆け回り、――鬼ごっこをしている。


 全員、本気であったがウェイトは妖精達を潰さないように気をつけているようだ。


 物心ついた時にうっかり力加減を誤って潰してしまうことがあって、それから加減を覚えるようになった。


 過去に一度、フラワーを潰してしまった時に、かなり本気で後悔したようだ。それ以降、記憶を共有した群体であることを伝えられても、フラワー達を雑に扱うことはない。


 ――ウェイトが気遣いが出来る人間であったことにリディアは嬉しく思う。


 「ところでどうしたの? オーベロンが来るなんて珍しいよね」


 『なに、単なる報告だ。とある森でアンデッドが湧くようになった。まあ、魔力濃度が高いのはその森の中だけだから、神経質になる必要はないがな。森の外に出ることは稀だろう。だが、『稀』のままであるためには、一定の数にすることが条件だが』


 「あらま。うーん、確かに『湧く』なら処理しないと後々大変かもねえ。やっぱりダンジョンで?」


 『そうだ。4、5年ものの規模だ。そのダンジョンは前々からあったし、これからあれ以上大きくなることはないだろうな』


 「なら安心だけど……破壊はまず不可能かなん。そもそもあんまり拡張空間は壊したくないからなあ」


魔力によって拡張してしまった空間を元に戻すには、今のところ、外部から破壊する他ない。しかし、そうすると拡張した空間分の爆発が起こるのだ。最悪、もっと危険なことになりかねない。


 「……そうすると、アンデッドを排除する方法を考えた方がいいかなあ」


 『貴様がその任に就くなどとは言うなよ。自分から面倒事を増やすな』


 「ははは」


 オーベロンがあきれ顔で言うと、リディアは軽く笑う。どうやら、本気で考えていたらしい。


 これに関してはティターニアもオーベロンに同意する。どうにもリディアは面倒事を増やして心労を自らに課すことが多い。


 管理――という訳ではないが、無理をしないように監視しないといけないだろう。


 ただ、この問題は適任がいない。延々と続くアンデッド退治を誰かに任すことはまず無理だ。


 ……少なくとも人間には。


 『新たな魔物を創りだして、アンデッドを退治するようにしましょうか』


 『ふむ、それは中々に良いな。アンデッドだけを殺す魔物か。貴様の能力ならば、ある程度、目的に近い存在を創れるだろう。しかし、どんなものにするつもりだ』


 『……それは考えないといけませんね。アンデッドに固有のスキルがあれば良いのですが、リビングデッド(ゾンビ)、スケルトン、ゴースト共に生態も能力も大きく違いますから難しいでしょう』


 アンデッドと一括りにしても実際のところ、別種と言って良いほど彼らは大きく違う。


 「そういえばアンデッドって魂の状態が少し特殊なんだよね? それを感知させるのも良いんじゃない? それと特定の種類だけ狩るようにするとか。そういえばオーベロン、増えると予想してるアンデッドは?」


 『ゾンビ系だな。随分前に滅んだ町が『保存』されているせいで死体だらけのようだ』


 「ゾンビは、確か『感染』持ちだったよね。……ある意味、一番厄介な存在だから、それを狩るようにした方がいいかも?」


 リディアの提案にティターニアは口元に手を添えて考え込む。


 『魂の感知にリビングデッド……ゾンビ系を中心に退治するようにですか。モデルは何が良いでしょうね』


 ちなみに殲滅が目的ではない。そもそも湧き続ける以上、狩り尽くすのは不可能だし、ならば生態系に組み込むべきだろう。


 『森はそれなりに多種多様な生物が住んでいる。別に好きに決めて良いぞ』


 「あっ、じゃあカエルで! いっぱい増えそうだし、森に迷い込んだ子がいてもギリギリで逃げられそう。……蛇とかだと食べられちゃいそうだし」 


――確かに、とティターニアは思う。森に迷い込でしまった人間などの知的生物のことも考えねばならないだろう。


 ただ、気を遣い過ぎて使い物にならない存在を生み出すことはないようにしないといけない。そこら辺は冷徹に物事を見るべきだろう。


 ティターニアは情報を整理しつつ、優先順位を決めていると――ふとリディアの方へウェイトがとてとてと走り寄っていった。遊びは終わったのか、休憩中なのか、彼の身体に妖精達が止まっている。


 「おかーさん!」


 「あら、ウェイトどうしたの?」


 リディアが首を傾げて問うと、ウェイトは彼女の膝をパタパタと叩く。


 「お空飛びたい! フラワーとパックと一緒にびゅーんって!」


 「お空飛びたいのお? ――よしっ、ティターニア、オーベロン、ちょっと待ってて」


 『我が輩は別に構わん』


 『私も考えを整理する時間が欲しかったので』


 「ありがとう! ウェイト、いくぞー」


 「わーい」


 リディアは嬉しがるウェイトを抱き上げて、瞬く間に飛び上がってしまった。残るのはティターニアとオーベロン、それぞれの妖精が一人ずつだ。


 妖精達がキョロキョロとティターニアとオーベロンの顔に視線を送っている。なんとなく空気が変わったのを肌で感じているのだろう。


 ティターニアは少し冷たい雰囲気が増して、オーベロンはどことなく楽しそうだ。


 『ところで――』


 『黙っていてください』


 『おや』


 オーベロンが口を開きかけたところで、ティターニアが、ぴしゃりと言う。これにはオーベロンも目を見開いて、肩を竦めてしまう。


 パックが、オーベロンの耳元まで近寄り囁きかける。


 《マスター、ティターニアを苛めちゃ駄目ですよ。マスターが口を開くだけで不機嫌になっちゃってるじゃないですか!》


 『悪いと思っている。だが、止められない』


 《……なんだか好きな子に意地悪しちゃう男の子みたいですね》


 『まさしくな』


 オーベロンはカラカラと笑う。性愛などの感情とは違うかもしれない。けれど、オーベロンはティターニアに対して好意を抱いているのは確かだ。


 ティターニアのあの初々しさがなんだか面白いのかもしれない。


 《もう、マスターはぁ》


 パックはなんだか駄目な主にため息をついてしまう。


 そして、その横では同じようにフラワーがティターニアの耳元に囁きかけていた。


 《マスター、今の対応はどうでしょうか?》


 『どうとは?』


 《素っ気なさ過ぎて酷いと思います》


 『彼にはあれくらいがちょうど良いかと。それに懲りてはいないようですし』


 ちらりと視線を向けると、オーベロンはやっぱり楽しそうだ。彼と視線が合うと、ティターニアはあからさまに逸らして見せる。


 どうして彼は自分に意地悪をしてくるのだろうか。全く分からない。――それなのに向こうは自分の感情を知ることが出来る。なんと不公平なのだろうか。どうにも不快である。


 『……私は彼が嫌いです。たぶん』


 《私はパックが好きですよ。私達は近い存在なのですから、きっと仲良くなれるはずです》


 そうだろうか。――いや、そもそも仲良くするために前提となる問題があるのだ。


 『彼が私をからかわないなら、仲良くしないでもないです。彼が意地悪をしなくなる妙案があれば聞きますが』


 《え? えっと……》


 フラワーが困ったように視線をあちこちに向ける。――と、彼女とパックの視線が合い、彼の元にふよふよと行こうとする。


 ティターニアはフッとフラワーの進行方向上に手を添えて止める。


 『待ちなさい。彼に尋ねたら、筒抜けになるでしょう』


 《オーベロンの視界内なら、常に筒抜けになると思いますけど。というかすぐそこにいますし》


 つまりどこにいようと思考や感情は筒抜けなのである。どうしようもない。


 『黙りなさい。貴方もそれなりに感情を得たなら、自分で考えてみなさい』


 《え、えぇ……》


 フラワーが困ったような声を漏らしてしまう。ティターニアも自分がかなり理不尽なことを言っているのを分かっていた。


 そもそもこの問題は、主題がティターニアであるので、フラワーに丸投げするのはおかしいのだ。まあ、フラワーはティターニアが好きだから解決したいと思っている。だから、律儀に考え込むのだ。


 そんな中、オーベロンがティターニアに声をかける。


 『ティターニア、自分の妖精を苛めるのはよすべきだろう』


 『黙りなさい』


 先ほどよりきつく言うが、やはりオーベロンはどこ吹く風で楽しそうだ。どうにも気に入らない。


《……えー、マスター。妙案というほどではありませんが、一つ考えつきました》


 『聞かせなさい』


 《オーベロンがマスターに意地悪をするのは、反応が面白いから、だと思います。あっ、だからって無視は駄目ですよ? 出来れば、マスターの感情表現が多彩にして『普通』にすれば弄ってくることもなくなるかと》


 『……なるほど』


 要は感情表現を普通に出来るようになれということなのだろう。怒ったり笑ったりが普通になれば、初々しい反応を求めてきているかもしれないオーベロンも飽きてしまうはず。


 ――まあ、確かに妙案ではない。今すぐ効果が現れることではないのだから。


 でも、確実ではある。


 永遠に近い命だ、気長にやっていくのがいいだろう。


 しかし何も考えずにただ無作為にやっていくのでは、時間がかかりすぎるだろうし、最悪何も得られない可能性もある。先ほど考えていた、感情の使い込み云々に関係することだ。


 だから弄られる確率が上がったとしても、多少なりとも感情表現を自らやっていくべきだろう。


 己の心を解した上で、最適な表現を露わにするのだ。


 ティターニアはそんなことを考えながら、今の自分の感情はどんなものかと考え、最適な表現を模索する。


 そしてティターニアは、一つの答えに行き着き、握った両手の拳を目元に当てて言うのだ。


 『えーん』


 泣いてみた。


 なんだかオーベロンの扱いが嫌だったし、気に入らなかったから、これが正しいと思う。怒る、はまた違うだろう。それは攻撃的にならなければいけないし、そうすると不和の種を蒔きかねない。


 それに泣くという行為は、時に相手に気遣わせることが出来るもののはずだ――もちろんこのような考えは筒抜けであるため、効果は限りなくゼロに近いことは理解しているが。


 『ぶふっ』


 案の定、オーベロンが噴き出しやがった。


 《うっ、くっ――》


 《むぅうっ――》


 そして、フラワーとパックも何故か口元を押さえて顔を逸らしてきた。


 ……感情に疎いティターニアでも、彼女らのそれが何を意味するのか分かってしまう。彼女らはオーベロン同様に噴き出しかかってしまったのだ。つまりはかなり可笑しかったということ。


 『…………っ』


 なんだかティターニアは身体が、特に顔が、カァと熱くなっていくのを感じる。たぶん、恐らく、これが羞恥というものなのではないかと考える。


 『うはーっ、はっはっはっはっはっはぁ!』


 周りの反応、ティターニアの心情を見てオーベロンはついに堪えきれずに大笑いしてしまった。


 そのせいでティターニアの身体は無意識の内に震え、顔の赤みも増す。羞恥、の他に、――あれだ、自然とたぶん怒りも感じ始めている。


 『……オーベロン、黙りなさい』


 『くっ、ふっふっふっ、悪い、悪いが……本当に悪いと思っているが……あれだ、ツボに入った。許してくれ……くくっ』


 『私は黙れと言ったのですが?』


 『あぁ……くくっ、ふふっ、くぅ――待ってくれ、少し――ふふっ、頼むっ、これはっ、本当にっ――くくっ』


 オーベロンも多少は悪く思っているのか、笑いを堪えようとしていたが、止めることが出来ないようだった。


 悪気はないのかもしれない、そう思っても元々気に入らない相手であるため、羞恥を覆い尽くすような感情が沸き立ってくる。――これは、そう、まごうことなき、怒り、だ。


 『黙れ』


 瞬間、オーベロンの頭上が光ったと思ったら、突如として極太の光が降り注いできた。


 ノータイムで振る舞われた『破魔ノ光』だ。


 本来、光魔法は『効果』の制約上、最低限『発現』『収束』『発射』の行程を組まなければならない。


 しかし、ティターニアは前半の二工程を排除して、即座に『発射』せしめたのだ。


 これは卓越した魔力操作と魔力への親和性がなければ成し遂げられない。この力があるため、リディアでさえ、ティターニアの前では容易く無力化されてしまうだろう。


 普通なら、少なくとも魔力によって身体を形作られた存在であるオーベロンは、塵へと還ってしまったはずだが――、


 『た、頼むっ、ほ、本当に待って、くれ――本当に、止まらない、んだ――ぶふぅっ』


 『破魔ノ光』が降り注いだ地点よりさらに奥に、オーベロンが転がっていた。這々の体で逃げた、というより笑い転げて立てないだけのようだ。


 実際、死にかけたというのに、未だ笑いを噛み殺すことに全神経を向けている。


 それが余計、ティターニアの癇にさわってしまう。


 これほどまでに怒っているのに、あんなに簡単に避けられるのは腹が立つ。無論、避けると分かっていたからこそ、全力の一撃を叩き込んだのだが。


 当たらないにしても、少しだけでも肝を冷やしていれば溜飲が下がったはずなのに。


 ああ、気に入らない。やっぱり、彼のことが嫌いだ。――ティターニアはそう思ってしまう。


 だからこの腹立たしい気持ちが収まるまで、全力をぶつけてやるのだ。


 顔を真っ赤にしたティターニアは、逃げ回り続けるオーベロンに『破魔ノ光』を叩きつけるのであった。









 

 

 『貴方はっ、本当にっ、このっ! このっ!』


 『わははっ、分かった、分かったから、叩くのは止めてくれぇ!』


 リディアが空の旅から戻ってくると、ティターニアがオーベロンにのしかかって、ぱかすか叩いていた。


 ティターニアは相当興奮したのか、顔を真っ赤にして涙目になっている。対してオーベロンは無抵抗に叩かれながらも、楽しそうに笑っていた。


 どういう状況だろうか。


 ウェイトを降ろすと、困惑しながらもここにいるべきではない雰囲気を感じ取ったのか妖精達を連れながら、離れていく。


 リディアはテーブルの上にいたフラワーとパックに顔を向ける。


 「えーっと? 一体何が? なんか空飛んでる時、二人の空気が変わったのは知ってたけど……」


 《色々あってね。……まあ、僕のマスターことオーベロンが、ティターニアの……なんというか頑張りを笑っちゃってね》


 《……あれは、ティターニアにも多少、原因があったと思いますけど。……私達が噴き出したのも悪かったですけど》


 「あー、なんか色々あったわけね」


 言い淀んだ二人を見て、何か諸々言い出しにくいことがあったと察せられる。


 なんだか妙に大気中の魔力が薄いし、ティターニアが光魔法を乱発したのかもしれない。そしてその結果、両方共に魔法を扱うことが出来なくなって、物理的行為に至ったのだろう。


 「……うーん、二人は仲良しさんだねえ」


 リディアはティターニアとオーベロンを見ながら、困り顔ながらそう口にする。


 ティターニアはオーベロンを嫌っているのは分かる。けれど、彼女が素の感情のまま触れ合えるのは恐らくオーベロンだけだ。それ以外だときっと自らを律してしまうはずだから。


 そしてそれはオーベロンも同じはずだろう。


 (……あの二人は、この世界が無事終わって新しい世界が始まっても大丈夫そう)


 目的から解放されたらどうなるか分からないけれど、もしそうなっても悪くはならないはず。今の彼らを見ているとそう思える。


 (私も、一緒にいられるかな)


 そうだったら、嬉しい。終わりに怯えるだけじゃなくて、新しい幕開けを望めるならそれだけでも違うはずだから。


 《大丈夫だよ》


 そう言ってリディアの手に触れたのは、パックだった。――そういえば一応、この子にもオーベロン同様に心を読み取る能力があるのだった。


 《だ、大丈夫、だよ?》


 フラワーがちょっと遅れて、よく分かっていないまま――でもリディアが少しだけ寂しそうな顔をしたから、手に触れてきた。


 「……ありがと」


 リディアは二人を掬い上げて、おでこにくっつける。


 とても安心出来る。


 何度も何度も、あらゆる終わりを見ることになる中、彼らだけが変わらずいてくれるから。それを信じられるから。


 ――リディアにとって、ただ生きているだけでも変わってしまうことが多すぎる。

 

 怖いのだ。自分以外の全てが変わり、朽ちてしまうのは恐ろしいのだ。


 ……ウェイトと一緒にいられるのは後、十年が限度だろう。彼が大人になったら、どこかの集落に行ってもらわなければ。


 一緒にいられない。――いや、いたくなかった。自分の子供が老いて死ぬ姿なんて、みたくなんかない。


 だから、今の彼を精一杯愛してやらなければならない。捨てられたなんて彼に思わせないためにも。


 それがリディアにとっての贖罪であり、少しでも心に安寧を与えることが出来る小狡い方法だったから。


 ――時間はゆっくりと確かに過ぎていく。あらゆる終わりに向かって。

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