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転生したら、アンデッド!  作者: 三ノ神龍司
第一幕 死の森に生まれたゾンビと古の魔女
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第六章 紙耐久になりました

 無事に幼女もといミアエルを救い出すことに成功した。そして、事情を説明して、俺らが敵ではないことを伝える。

 

 俺のことも――転生者というのを説明するのが面倒なので伏せて――簡潔に人間の精神を持つ特殊な魔物だと言っておいた。リディアいわく異世界転生って、ないわけではないけどそんなにメジャーな事柄じゃないし、知らない人には説明が面倒なんだって。

 

 信じたかどうかは分からないけど、ミアエルは攻撃する意欲はなくなったようなので、それで良しとする。

 

 というか、ミアエルは俺らを信じたと言うよりも実際のところはリディアに怯えて抵抗する気力を失ったようなんだけどね。

 

 で。リディアが一応人間だって伝えたら、ぶつぶつと呟いていたのを聞いてしまった。

 

 「……嘘だ。人間でも塵にするくらい出力上げたのに――」

 

 とかなんとか。

 

 マジか。この子、あの瞬間、マジで殺しにきたのか。もし俺、避けるの遅れてたら塵になっていたのか。恐ろしいな、おい。

 

 てか、それを耐えきるリディアも本当なんなの?

 

 只者じゃないと思っていたが、割とこの世界最強の存在なのではなかろうか。考えてみれば、俺の『剛力』の効果が乗った拳を真正面から受けつつ、怪我ないとかその時点でおかしいもんな。さっきの威圧感も半端なかったし、リディアを怒らせないようにしないとな。と、言ってもあからさまに態度を変えるつもりはない(さっきまではビビってたけど)。

 

 そういうのは逆に失礼だし、リディアも俺にそういう態度で接してもらいたくはないだろう。それが俺の勘違いだったら、俺はすでに生きていないし、たぶんいいはず。

 

 やりすぎないようには注意するくらいに留めるのだ。

 さて、そんなリディアに重要なことを訊かなくてはならない。

 あれだ、俺の失った左足を治せるかどうかを訊かなくては。

 

 そのことについて問うとリディアは苦い顔をしてしまった。

 

 「あー、ごめんちゃ。私、攻撃専門の魔法とかスキルしか持ってなくて治せないかなあ。そもそも治療の魔法とかスキルを得るには、本当に才能がないとダメで、私はそこら辺、からっきしでねえ」

 

 いわく治療系のスキル持ちはそれなりに珍しいんだとか。魔法も難しく、出来てちょっとした怪我を治す程度でもすごいことなんだとか。失った四肢を再生させるとかは、世界でも数えるほどしかいないかもしれないとのこと。

 

 ちなみにミアエルに尋ねてみたが、彼女も使えないらしい。なんか天才幼女っぽかったから使えるとふんだんだけど、無理だったかー。残念。

 

 「ご、ごめん、なさい……」

 

 すっごい申し訳なさそうに謝られてしまった。治療魔法を持ってないことと足を消し飛ばしてしまったこと両方についてだろう。

 

 うーん、そんなおどおどしなくてもいいのに。痛くないし、安定して立つ代用として木の棒を足にぶっ刺して義足代わりでも充分だし。そのことをリディアを介してミアエルに伝えたけど、やっぱり罪悪感は消えない様子だ。

 

 いや、別に俺としてはあの時は攻撃するのは仕方ないと思うし、俺も同じ立場だったら確実に滅するような攻撃をするはずだからな。

 

 むしろ血肉貪ってるゾンビ見て無警戒になる奴なんていたら、ただの馬鹿だ。

 

 俺としては今現在ミアエルが殺意向けてこなくなっただけで充分嬉しい。てか、この幼女は敵に回したくないから本気の本気で嬉しかったり。

 

 だから俺はミアエルの行為については全く気にしてない。

 なので、今はそんなこと置いといて、とにかく足を戻す方法を考えてみる。

 

 『自己再生』なるスキルはあるが、あくまで手足を生やすことができる生物特有のスキルなんだとか。当たり前か。スキルは現状の能力を補助、強化するもの。ゼロから発生することはない。

 

 良くて『治癒強化』という傷の治りが速くなる程度のスキルくらいしか得られないらしい。

 

 むむむ、どうしようかなー。足が消えずに、切断された程度なら、もしかしたらくっつけられたかもしれないけど、なくなっちゃどうしようもない。

 

 ――いや、待てよ。いっそのこと、適当な物――同じゾンビの足でも引き千切って繋げば、案外、くっついたりしないだろうか。

 

 どうせ、俺の身体は死んでいるから免疫による拒絶反応とかの心配は皆無だし。治癒機能は普通にあるから、くっつくかもな。んで運が良ければ勝手にそれらを補助するスキルも入手出来るだろう。

 

 物は試しだ、やってみようではないか。

 

 そんなこんなで俺は、手頃なゾンビを見つけて(この森、無駄にアンデッドが多い)暗殺者よろしく後ろから首コキャで倒すと、そいつの左脚を膝から引き千切って自分の脚にくっつける。

 

 んで、さすがにすぐにはくっつかないと思うので、切断部分を頑丈なツタや木の皮で固定して放置する。

 

 この際、ミアエルのみならずリディアからも引かれた顔で見られてしまった。まさかリディアに引かれる日が来るとは……。解せぬ。

 

 そんなこんなで今日は解散。リディアにはミアエルを村まで送ってもらい、俺は土に潜って安静にする。

 

 

 ――でもって、次の日。



 『熟練度が一定まで溜まりました。スキル『接合』を取得しました。スキル『融合』を取得しました』



 なんかボーッと睡眠に近い状態になっていると、ふと脳内に機会音声が響いてくる。

 

 おお、まさか一気に二つも取得するとは思いもしなかったよ。

 

 試しに地上に出て、脚の具合を見てみると、しっかりくっついていた。しかも、動いている! うむ、上手く行って何よりである。これなら、今後は手足を失ってもスペアさえあればどうにかなるということかっ!

 

 ……そうならない方が良いんだけどね。

 

 『条件を満たしました。属性『合成獣』を取得しました』

 

 ん? なんぞや? なんか遅れてまた声が聞こえてきたぞ? でも、今回はスキルではなくて属性とかなんとか言ってたが……。

 

 まあいいや。そこら辺、教えてリディア先生とか言って、訊けばいいや。

 

 さて、あいつが来るまで時間があるし、適当にスキル取ったり、この際、いっそレベル上げしたりするか。

 

 そんな意気揚々と狩りに向かう俺なのであった。

 

 ――この属性というのが中々の曲者であるのを知らずに。




 「……ゾンビちゃん、大丈夫?」

 

 地に伏していた俺は割と本気な感じでリディアに心配されてしまった。

 

 心配するのも無理はないと思う。なんたって俺の身体、いたるところがへし折れていたり、潰れていたりと、かなり悲惨なことになっていたのだ。治癒が速いと言っても――ああ、回復のしすぎか、『治癒強化』も得ちゃったよ――治る端からバキベキグシャリと身体をぶち壊しているから、回復が間に合わない。

 

 いや、別に『治癒強化』取るために自分で自分を痛めつけてた訳じゃないよ? 手足をくっつけられる算段がついたと言っても、さすがに自分自身を痛めつけたりはしない。痛みがないと言っても、だ。

 

 というか、リディアいわく、そういう自傷行為や意図的に自分を傷をつけた場合では『治癒強化』のスキルは得られないらしいし。逆に『自己破壊』なんていう自分を壊すのに補助がかかるダメスキルが得られてしまうらしい。

 

 で、なにがあったかというと、まあ、別に普通に戦ったり生活したりしていたんだよ。

 

 なのにも関わらず、なんか知らんけど、身体が簡単に壊れよるんよ。

 

 何があったんだ、俺の身体に。

 

 ついに寿命か? 考えないようにしてたけど、じわじわと腐敗が進行してしまっていたのか? うおー、まさかの短いゾンビ生だったよ……。

 

 (俺、もう死ぬのかな……)

 

 「アンデッドって自然死しないはずだけどなあ。腐りはしないし。脳とかの重要な部分が壊れない限り、半永久的に動けるよん? 文字通り『不死者』なんだからねえ」

 

 マジかよ。えっ、俺って死なないの? まさかの不安要素が不意打ちで解決されたんだけど。

 

 でも、じゃあ、なんで俺、こんなに簡単に壊れるようになってしまったんだ?

 

 「なんか昨日と違うこと起こらなかったかなん?」

 

 (スキルは二つ取ったけど――――あっ、そういや、なんか属性『合成獣』だかなんだかを取得したって声が聞こえたな)

 

 「あー、たぶんそれのせいかなぁ」

 

 そこで俺は、リディアに属性について教えて貰った。

 

 属性とは称号や職業なんて呼ばれる特殊なスキルらしい。属性とは取得することで、特定のスキルを強化または熟練度を多く得られるという特性があるようだ。

 

 スキルが持ち前の技術の補助をするものなら、属性はスキルそのものを強化するためにあるものなんだとか。まあ通常のスキルにも他のスキルを強化するものも色々あるから一概には、こうだとはくくれないらしいけど。

 

 「でもいたせりつくせりってわけでもなくてねえ、この属性っていうのは、マイナス面もあるんだよね。その『合成獣』って属性、今鑑定で調べてみたら、肉体変化型全般のスキル成長の伸びを良くしたり変化に伴う副作用に耐性を得られるらしいんだけど、その代わり身体が脆くなるみたいなんだよねえ。……本来なら、そこまででもないらしいんだけど……」

 

 (……俺の身体は腐りはしないけど、元から脆いからとんでもなく弱くなったと)

 

 「みたいだね」

 

 えー、なにそれー。いらないんだけどー、そんな俺にとって最悪を具現化したようなものー。取り外しを要求する!

 

 だけど、リディアいわく、属性は、そう簡単に取り消せるものではないらしい。対処方法としては属性は一つしか持てないようなので、新たな属性を取得して上書きすればいいそうだが……生憎と属性はスキルよりも遙かに取得が難しいらしい。特定の条件が絡まないと得られないようだ。この『合成獣』も偶然取得したようなものっぽいし。

 

 人工的に属性をつけられる方法もあるらしいが、この近辺では出来ないようだ。まず大きな町に行かないといけないんだと。村にすら入れないのに、そんなの無理だな。

 

 「ゾンビさん、大丈夫?」

 

 幼女ことミアエルにも心配されてしまう。

 

 この子、色々と大変な目に遭ったから村で大人しくしていれば良かったのに、どうやらリディアについてきたらしい。まあ、俺より強いから外うろついても心配はそれほどしてないけどな。ちなみに村に軽い治療魔法を使える人間がいたそうで、足の腱を治してもらったようだ。もう普通に歩けるとのこと。良かった良かった。

 

 とりあえずミアエルを安心させるために頷いておいて、どうするか考える。

 

 新たな属性を得るよう奮闘するのは、あまり良い考えではない。というか下手に変な属性を取って俺にとっての生命線である『潜土』などのスキルが弱体化でもしたら目も当てられない。てか、死んでしまう。

 

 一応、属性を上書きする際は、YESかNOの選択が出来るようなので確認してからするが。……いや、だったら、初めて取る時も選ばせろよ、と思うがそう上手いことなっていない。

 

 ……しかし俺、本当に運悪いなあ。一発目の属性がこんなのって。

 

 どうしようか。一番の対処は進化かなあ。まあ、敵を倒せないわけではないし、進化する方向でいくか。どっちにしろレベルアップする気はあったし。身体をボロボロにしながらも、なんとかレベル7まで上げられたし。進化は10のくらいでなるらしいし、後、レベルを3上げれば進化出来るようだ。

 

 もう一つの方法として、新たなスキルを得て、せめてこの紙装甲を通常の状態に戻すべきか。

 

 でも、身体を丈夫にするスキルって何があるかな。肉体の強度をアップさせる術ってゾンビには備わってないからスキルとして取得は出来ない。

 

 ……いや、出来るか? この元凶である『合成獣』を上手く使えばいけるか? 

 

 『接合』や『融合』を使えばあるいは本来得られないスキルを取得できるかもな。

 

 ちなみに二つのスキル効果は次の通りだ。

 

 『接合』……生体を自身の身体に癒着させる速度や成功率を上昇させるスキル。ただし癒着させる生体に意思などがある場合は、抵抗され失敗する可能性がある。

 『融合』……他の生体を自身に取り込み、肉体の補填に当てるスキル。このスキルも生体に意思などがある場合、抵抗され失敗する可能性がある。

 

 これらのスキルはざっくり言うと他の生物の身体を自分にくっつけられて、動かせるようになるっていうものだ。まあ、普通の生物には使い道のない能力かもなあ。使い道ってか、免疫の拒絶反応は普通に起こるらしいから、属性『合成獣』を持っていないとかなり危険なのだ。たとえ持っていたとしても、確実に防げるわけではないようだし。

 

 でも俺ならば、この力を上手く使いこなせるだろう。

 

 あっ一応言っておくが、『接合』と『融合』は似たようなスキルだが若干違う。

 

 『接合』は単純に他の物体を身体にくっつけるだけの力だ。つけるだけなので、自分の元の肉体じゃない限り、動かすことは出来ない。稀に動かせるようにはなるみたいだが可能性が低い。

 

 『融合』は他の生物の身体をくっつけて発動させると、神経を接続しながら融け合って混じり合うんだと。それで自分の欠損部位の補填に当てる。その補填した部位は普通に動かせるようだ。腕に腕がつくとは限らないが。取り込んだ生物のそのままの形で補填されるおまけつき。で、余った肉があった場合は適当に身体の至る所に流用させるんだとか。

 

 正直、これ『接合』と『融合』ってセットではないと使い勝手が悪い。ていうか、使えない。まず使い方としては『接合』を使って癒着させる。その部分を仮初めの身体と認識させて『融合』を使って神経の接続のみをする。そうしないと張りぼてだらけの身体か色んな生物を複合させたかのような奇っ怪な化け物へと変貌してしまうだろう。

 

 そんな危険なスキルだが、これを上手く使えれば、他の生物の部位を使ってスキルを得られるかも。スキルを得た後は、その部分を千切って外せばいいだけだからな。

 

 ……よし、実験をしてみるか。そこら辺にいる野生動物で試してみよう。

 

 ――こうして俺は、原型を保ちながらゾンビらしからぬゾンビへとゆっくり変貌していくのであった。

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