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転生したら、アンデッド!  作者: 三ノ神龍司
第二幕 偽りの王子と国を飲み込む者達
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第二十七章 『死神ノ権能』

 俺は頭部だけ(その下に触手は多少生やしているが)で地中を進んでいた。


 ……本気で殺されるかと思った。


 あの格闘家の放った攻撃は、想像以上に俺にダメージを与えてきた。あの一撃で俺の頭部はボロボロになっている。これでも一応、防いだのだ。


 もしとっさに首から下を変形させて、骨と肉の二重構造のシェルターで顔を覆わなかったら、俺は死んでいた。俺が地面に潜っても殴ろうとしてきた時点で何かしら来るとは思っていたが……恐ろしい。


 とりあえず今は限界深度まで潜って、移動している。声などから相手が俺を見失って追撃や追跡をするつもりがないようで安心した。


 ……というかおかしいだろ、あいつら。


 魔法使いだって、楽勝に見えただろうがかなり焦ったぞ。レジスト能力が高いとは聞いたが、まさか『侵蝕』が効かないばかりか、逆にレジストされそうになるなんて思わなかった。もしとっさに電撃やら『麻酔』などを使わなかったら、あの時点で詰んでた。


 ……回復術士はパワーはないようだったけど、すり抜けとか卑怯過ぎるだろ。もし魔法使いを殺していたり、使わなかったりして足止めしてなかったら、たぶん追いかけられて地面から引きずり出されてた。


 その後、あの格闘家に殺されていただろうな。


 ……そういえば格闘家の奴、状態異常とか全く無視して突っ込んできた上に腹貫いた時以外は身体能力一切落ちてなかったな。この世界のスキルに耐性系はないらしいけど、じゃあ、あれはなんだ? 肉体を無理矢理動かすスキルを持っていたんだろうか。今後、そういう奴がいるってことを頭の片隅に入れておかないとな。正直、がむしゃらに突っ込んでこられた時は焦った。もしあの衝撃波みたいな攻撃を直接叩き込まれていたらと思うと恐ろしい。


 ……さてこれからどうしようか。一旦、屋敷に戻ってすぐ準備を済ませようかな。そして屋敷に待機させている奴を外に移動をかけておくか。


 たぶん場合によってはあいつら聖人達は俺の行動を予測して、屋敷に急ぐかもしれない(どう動くかなどの会話は聞けていない。近くに居たら格闘家の第二波が来たとき不味かったから)。


 あいつらの仲間を一人殺した以上、その報復で無茶苦茶やる可能性もあるだろうし。


 まあ、でも魔法使いの服も奪ったし、俺が肉片を使って人形を作れるのも披露したから城に警戒を向けるかもしれないけど。多少、時間は稼げるはずだ。


 (……んで、この服どうしよう。俺が変態に思われるよな、こんなの持ってたら)


 《元から変態じゃん》


 ちょっと心の中で不安を呟いたら、妖精の声がした。


 (あら、起きてたんだ。おはよう)


 《……今、目が覚めた。……生きてるんだ》


 (残念ながらな)


 《…………》


 妖精がそれっきり黙り込む。今んとこ俺の記憶も心の声も読めないから、詳細は分からないだろうけど想像は出来るよな。


 というか聞かれても言う気は無いし、記憶を見せる気も無い。正直、あの戦闘は相手が敵だろうとなんだろうと見せたくないものだ。俺より強かったとはいえ、年頃の少女を痛めつけまくったことを自慢げに語りたいと露とも思えなかった。


 そもそもああいうのは俺の守備範囲外だ。ぶっちゃけ相手を痛めつけるのとか好きじゃないし。まあ、そういう拷問系の能力は好きだけど、使うっていうよりもコレクションしたいだけって感じだしな。


 んで、……さーて、終わったことには一旦区切りをつけるとして、次は……『これ』どうしよう。


 《…………》


 すっげぇ、空気がピリッとしてる。……妖精とのこの空気、想像以上に気まずいぞお。


 話題を変えるべきだけど、普通に話しかけても無視されそうだよね。


 ちょうど良い話題はないわけじゃないけど……。


 屋敷に着くまでだんまりは辛いから、この……『名前』をつける話題を出そうか。


 (お前の名前、決めようと思うけど何か案とかある?)


 《別に好きに呼べば?》


 (元の名前に由来とかある?)


 《花。……妖精は人に憑くとき、花の名前から選ばれる》


 ……花かあ。だとすると花言葉とか考えてつけられるのかね。この世界にそれがあるかどうかは知らないけど。


 まあ、だとするなら花の名前が無難かな。ホスタってこの世界特有の花の名前なのかな? それとも俺の世界にもある奴かな。花に詳しくないから知らん。


 なんかリリーとかつけたら名前かぶりとかありそうだよな。たぶんこいつもそれは嫌だろうし……。なら、被りがなさそうな、それでいて俺と組んだ奴にふさわしい花は……。


 (ラフレシアでいいか?)


 《……一応、私、ロミーと一緒だったからそっちの世界の知識とか普通にあるからね?》


 うん、それはなんとなく分かってた。進化キャンセルしようとしてきたしね。


 (可愛い名前つけられるのも嫌だろ? それにこれなら俺と組むのにふさわしい、捨てたくなるような素晴らしい名前だと思うけど)


 《優しさのつもり?》


 (最悪に寄った感じのな)


 俺のその言葉に妖精が鼻で笑う。


 《……確かに花言葉としてもふさわしいかもね。私としては、そうであって欲しい意味がある》


 (ラフレシアにも花言葉ってあるんだな。どんな意味?)


 《夢現(ゆめうつつ)。……こんなのすぐ終わって欲しい悪夢だよ》


 最高に皮肉ってんな。俺もこいつも。だからこそちょうどいいっちゃちょうどいいか。


 と、そんなことを思っていると……、


 『『端末』の名前が再設定されました。生育管理者、ティターニアとのリンクが切れています。ティターニアの存命を確認。――能力の大幅な制限を確認。注意要請プログラム発動。――要請拒否。管理者不在と判断します』


 うん? なんか聞こえてきたんだけど。


 (何これ?)


 《……私も知らない。というか『あいつ』が直接関わってきてるわけないから、これは元から設定されていたもの? ……でも、こんなの知らない》


 なんか怖いね。


 『個体名『アハリート』。記憶情報によりユーザー:リディアや『不滅の勇者』ミチサキ・ルカとの接点確認。生育管理者不在のため、一時管理者権限を委譲します。よろしいですか?』


 《はぁ!? 何言ってんの!? だめ、駄目に決まってるでしょ!》


 よく分からないけど妖精、もといラフレシア的には駄目だったらしく機械音声に向かって怒鳴る。ちなみに俺はというと――、


 (よろしいですよ)


 《ちょっと!? なにしてんの!》


 (だって面白そうですし)


 《この快楽主義者ぁあ!》


 ラフレシアがあらぶっておられる。面白いなあ。


 『確認しました。スキルを確認します。『魂支配』取得済。『魂鑑定』取得済。『魂感知』取得済。『魂贈与』未取得。『魂回収』未取得。――『魂贈与』のスキルを贈与します。『魂贈与』の取得を確認。続いて『魂回収』の贈与――Error 適合不可のため取得出来ません。『魂吸収』のスキルで代用――取得しました』


 おお、なんか一気にスキル入手したぞ。


 《ちょ、それ私達の能力じゃん! 何してんの! ゾンビなんかに渡すなんて……》


 (ゾンビなんかとは失礼な、ぷんぷん!)


 《黙れ、この馬鹿!》


 なんかラフレシア、余裕なくなっちゃってるな。予想外すぎたのは分からんでもないけど。


 で、機械音声はこっちの都合なんかお構いなしにマイペースに語りかけてくる。


 『属性『天使』を一時的に付加します。『寄生者』の属性は保持して、後に再付加しますがよろしいですか?』


 (よろしいですよ)


 《だーめー!》


 必死なラフレシアは可愛いなあ。


 『確認しました。属性『天使』を取得しました。条件を満たしました。『魂支配』『魂鑑定』『魂感知』『魂贈与』『魂吸収』――属性『天使』を統合して、最上位スキル『死神ノ権能』に変化出来ます。統合しますか?』


 (いえーす)


 《もうやめてよお!》


 『確認しました。『死神ノ権能』を取得しました。――属性『寄生者』の再取得をします。……取得しました。――以上、管理者委譲プログラムを終了します』


 と、それっきりぱったりと機械音声が聞こえなくなってしまった。


 いやあ、ビックリしたなあ。まさかラフレシアに名前つけただけでスキル手に入られるんだもん。しかもなんか最上位スキルだってよ。なんかすごいねー。使い方一切分からないから、持っててもどうしようもないけど。あとでリディアに能力の詳細きこーっと。


 《……あぁ、なんか変なことになっちゃった。私のせいで、この変なマスターに……ん?》


 (マスター? そんないきなり言われても照れるし)


 きゃっ、と俺は頭だけで恥ずかしそうに身もだえてみせた。ラフレシアは慌てる。


 《ちがっ、ちょ、えっ? お、おま――マスター! ああぁ! 変な上書きされてる! やだ! 女神とのリンク切れてたせいで、マスターが本体設定になってる! あの『邪神』めぇ!》


 まさかのマスター呼びに俺はとっても照れてしまう。でも、これってある意味、NTRだよね? そっちの趣向はあんまりないんだけどなあ。だから、ちょこっと罪悪感がある気がする。


 (……なんかごめんね?)

 

 《謝るならまず死んで詫びろ!》

 

 それはちょっと御免被るかな。


 (てか、『生育管理者』って何すんの?)


 ラフレシアが頭を抱えて唸ってそうな、低い呻き声を上げてたけど、ぴたりと止まって小さな声で返答してきた。


 《……。大層な名前はついているけど、ただの魔物のレベリングだよ。たぶんそれほど強制力もないと思うし、やる必要は無い》


 (ふーん。……ん? でもそれって、女神の役目なの? ……なんか今まで聞いてきた話だと女神って魔物を滅する的な奴っぽかったけど)


 《本分はそのレベリングの方が正しいよ。……ただ単に私達はそれを拒否してるだけ。……でもまさかそのせいで能力が与えられるなんて……。けどスキル創造まで得られてないのは救いかな》


 スキルを創造とかチートも良いところだけどね。持ったところでそんなの持て余しそうだ。


 《それにマスターには魂の浄化能力もないし、下手にレベルアップに使ったら自分でも相手でも確実に狂うよ。そう思えば、宝の持ち腐れにしかならないかな。……良かった》


 (俺って能力に色々と不備がある気がする)


 もうちょっと素直にならないかな、俺の能力。まあ、この力は別に使わないけど持ってたら嬉しい特典みたいな感じに思っておけばいいかな。


 さて、そろそろ屋敷につくし、身体を回復させて、明日のために色々と動こう。


 (そんなわけでこれからよろしく、ラフレシア)


 《うん、こちらこそ、マスター。でも明日にはくたばってくれたら嬉しいなっ》


 そんなこんなで仲良くなった俺達は、楽しげな会話をしつつ明日に備えるのであった。

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