第二十五章 ちょっと進化してみる
さて、進化するわけだけど……何がいいかな。
ほんと出来れば全部になりたいし、せめて何がどんなのなのかとか最低限知りたいんだけど……。
(妖精はどう思う?)
《知らない! 地面に埋まって肥やしにでもなれば!》
(参考になる)
つまり植物を育てるような優しいゾンビさんになれということか。でも、俺で育った植物ってグロい色してぶにぶにした葉っぱとか果肉がついてそう。ついでに腐敗臭もセットかな。
でも、残念、今回そんなゾンビにはなれないんだ。
大まかにまとめると、
『バイオハザード』は生物系、――細菌やウィルス系取得や強化かな。
『インベーダー』は名の通り、支配系特化……ワームや寄生虫の効果かと思われる。
『ピュアキュア』は俺の予想では回復系……であって欲しいなと思う。
『ポイズンテラー』はまんま毒強化だよな、これ。バイオハザードと若干被るかもしれないと少し思ったが、こっちは出血毒とかなら違いは大きいはず。
『※デモンズワーム』……なしかなぁ。今、アンデッドじゃないのに変わるのはちょい危険かもだし。
《あっ、私は『※デモンズワーム』を推すかな! きっと格好よくなるよ! すごく良いと思う!》
なんか妖精がさっきと打って変わって超明るくフレンドリーになって、グイグイきた。格好良いかあ、そう言われると嬉しいけどなあ。
(けど、その心は?)
《知能失って土でも耕してろ》
ミミズになれと。何が何でも君は俺に土を耕させたいらしいな。
まあ、妖精の悪態はおいておく。ていうか、妖精って強制進化の権限もあったはずだけど、出来ないっぽいからやっぱり普通の契約とは違うのか。
それならいいけど。
んで、進化だけど………………どれも捨てがたい……。趣味を求めるなら、『バイオハザード』に『インベーダー』だけど、今回町中でなっちゃいけなそうな系でもあるし。
『ピュアキュア』が一番良いかもだけど……予想とは違う能力持ちそうなんだよなあ。ある意味地雷っぽい感じが……。
『ポイズンテラー』が何気に安定してるし、聖人との戦いをするならこっちが一番良いはず。
……けど、うーん。
………………。趣味か実利か安定か…………。今後、同じ進化先が現れないことを考えると……。
ふと、俺の脳裏に血塗れのミアエルの姿がフラッシュバックする。その前で何も出来ない俺……。
……決めた!
(『ピュアキュア』に進化する!)
『確認しました。『ピュアキュア』へと進化を開始します』
《BBBBBBBBBBBBBBBB!》
(……進化、キャンセル、すんなし……)
俺は妖精にそんなツッコミを入れながら、意識を闇へと沈み込ませる。
『『ピュアキュア』への進化が完了しました。進化により『麻酔』『骨成形』『発電器官』『発光』『精神汚染』を取得しました』
はいっ、進化しましたっ。
俺は地上周囲に誰もいないことを確認してから、全身を露わにする。一度、被ってる肌を引っぺがしてちょっと自分の身体を見渡してみると……うーむ、結構変わった、かな?
今までは筋肉繊維剥き出しだったけど、また新たに皮膚がついた。けど、ぶよぶよした皮膚で真っ白なせいで、とっても死体らしさが出ている。触手も相変わらず生えていたけど、こっちもぶよぶよ皮膚になってて……なんか表面に牙っぽいのが無数に生えてる。
やだ、これ、あれじゃん。
映画『ミ○ト』で出てくるような触手じゃん! あ、あれ、そういえば掴んだ相手の皮膚をズタズタにしてたんだっけ? やばい、そんな凶悪な進化、やばいよ! うへ、うへへ。
《なんで喜んでるの……? ……怖い》
なんか妖精さんが震え声で言っているけど、気にしない。
顔は皮膚がついた以外は、特に変わりはないかな? 相変わらずの化け物顔だ。たぶん皮膚がついたからつぶらな瞳感が増しているかもしれないけど。自分じゃ確認しようがないし。
あと、なんか危なそうに突き出た骨が所々身体から生えてるな。『骨成形』なるものを手に入れたから、これで骨の形を変えてなんかしろってことかね。
んで、他は……背中のフジツボ突起は変わらずで、刺胞触手も出せるな。一番変わったのは、お尻の辺りから触手が数本生えているけど、これかな。
前に持ってきて確認すると、六本全部とも普通の触手より断然細いかな? 一つは、先端が骨で出来た蓮の花托(?)っぽい。その表面に……あれだ、蓮コラって言えばいいのか、グロいぷつぷつとした肉がたくさんある。
これなんだろう。
肉の先端に白い棘が生えていた。なんとなく掴んで引っ張ってみると、数センチの棘の後ろにびーっと糸を引いて伸びていく。いっぱい引っ張ってみるけど、かなり長い。なんか終わりが見えずに怖かったから、途中でやめる。
俺の足元には伸びに伸びた糸が垂れていた。
……引っ張るのをやめたけど、元には戻らないなあ。切っても問題ないかな? 根本からブチッと切って放置!
《いやいや、駄目だよ! 片付けはちゃんとした方がいいと思う。お前の肉片って結構危ないし》
(一理あるな)
寄生虫とかの気配は感じないけど、危ないのは同意だ。そもそもこれなんだろうね。分かんないから、とりあえず『侵蝕』を使って取り込んでおく。
さっき外した部分は……抜けたままだな。また棘が生えてくんのかな。
次行くか。他の触手だけど、なんか先端が丸く膨らんで、その先に結構長い棘がついているのがあった。膨らんでいる部分を触ってみると、何か液体が入っている模様。
……これ、もしかして『麻酔』か?
ちょっとこの触手に力を込めてみると、ぴゅっと液体が飛び出てきた。地面に触れるが、溶けるとかの変化はない。何かにぶっさして液体を注入してみたいけど、住民とかを犠牲には出来ないしなあ。……チンピラが来たら、確かめてみようか。
他の触手は……なんか同じのが二つあるな。なんかのプラグみたいな形をしていて表面がつるつるして、ぶつけるとこつこつとして固い。うーん? なんだろう、これ?
まあ、いいや、他のだ。……えっと、なんか丸っこいぷっくらしたものがついた触手がある。……なんか内部に液体が詰まってる? でも、『麻酔』用っぽかった奴と違って噴出させる部分がないな。こう、なんか力込めてみたら――――おぉ、光った!
もぁあ、てな感じで発光……『発光』これか! す、すごーい、光ったー! あかるーい!
そんな嬉しがってる俺に妖精がちょっと呆れた感じに口を開いた。
《そんな火を初めて見た原始人みたいな反応しなくても……。ていうか暗闇でも普通に動けるし無駄過ぎない?》
(いや、そうでもないぞ。俺はともかく他の仲間の足元を照らすのに使えるし……暗闇で光らせれば疑似餌的な役割も……)
《前半は良かったのに後半のその発想が出来るお前がやっぱり怖い》
(どうも)
というか、この『発光』触手で気付いたんだけど、もしかしてこの六本の触手って新しく得たスキルに対応しているのか? 蓮コラ触手はよく分からないが、もしや同じ奴が二つあるのは……。ちょっと力込めて、両方をくっつけたら――ばちぃってなった! 電気だ! 俺、電気使えてる!
これ、二つとも相手につければ電気流れる奴だ! 水の中じゃなくたって使えるぞ! やっほい! ……ん? でも俺の体表には電気が流れてないのかな? なんか全身ビリビリもやりたいけど……うーん、電気流れてる感じがしないなあ。でも、自分が痺れてないだけっぽいかも。これもチンピラに試してみるか。
あと最後の一本は……蕾状の触手だ。開くと人一人の頭を包み込めるくらいあるな。たぶんこれは『精神汚染』用かな。
頭を覆って、使う感じか。でも、『精神汚染』ってどんな感じになるんだろう。『麻酔』同様、これも使ってみて効果のほどを確かめようか。
一通り確かめてみたけど……うん、良い感じだ! 蓮コラ触手の使い道があんまり分からなかったけど、他のは概ね満足!
でも、どの辺が『ピュアキュア』なの?
《キュアは医者っぽいからじゃない? あと『精神汚染』がピュアさせる部分とか?》
(ピュアにえぐみがあるとか斬新だな)
《なんか腐ってない腐敗物みたいな矛盾を感じるんだけど》
……なるほど、医者っぽいか。確かに『発光』やら『発電器官』による電気、『麻酔』は医者っぽいと言われればそうかもな。『精神汚染』は……まあ、うん。
……医者……あっ、もしかしてこの蓮コラ触手って、針と糸ってことで縫合道具か!? おぉ、医者っぽい行為が即席で出来るのか!
うん? …………。ファンタジーで医療行為(物理)って挑戦してる感満載だな。しかも今の敵対者が宗教団体っぽい奴らだから、なんかあれだ。
それにさ、改めて見るとこの針部分は良いんだけど……糸部分…………あぁ、やっぱり、刺胞触手だわ、これ。
え? 医療行為でショック死しちゃうんですが、これは。
《不完全ここに極まれり》
妖精がケラケラ笑ってきた。
ほんとウケる、なにこれ(泣)。一番重要な部分が使えないんだが。
うーん、針はともかく糸部分は違うもの使わないとなあ。
まあ、そこはおいおい考えよう。
さて、『材料』用のチンピラ共もやってきたのを感知したし、仕上げをやろうか。
(悪いけど、この町にいる聖人の特徴を教えて貰うぞ)
《…………。分かった》
かなり不本意そうに妖精が言う。
(あぁ、戦いの最中邪魔だし、説明し終わったら、戦いが終わるまで眠っててくれ。……あとそうだな、その後、俺の記憶も考えてることも読むな)
俺のその命令に、妖精が威嚇するように唸る。
《……ありがとうなんて言うもんか》
(元より言われるつもりなんかない)
お前に気を遣ったところで、意味なんてないしな。どうせ何をしたってお前は俺を嫌い続けるんだろうし。ただ単にしばらくは俺の中に居させ続けるなら、今以上に荒れさせる原因は作りたくない。それだけだ。
どっちにしろ聖人と戦って俺が生き残る=そいつらを傷つけた、ことになる。その後、絶対俺はなんやかんやと荒れる妖精に自己弁護することになるだろうし。
俺、そんな格好悪い真似したくないんだもん!
《……はぁ》
妖精はため息をつく。けど特に何も言ってこなかった。
――そして俺は準備を進めていく。……ある程度、この身体の能力も把握することが出来た。身体の動かし方もそんなに変わった訳じゃないから問題ないな。
そうして準備を終えて、町を進んでいると、たぶん教会に向かう途中の聖人達も程なくしてすぐ見つけた。……じゃあやるか。
ちょこっと他の進化先について
『バイオハザード』
取得スキル:『遺伝子操作』『遺伝子保持』『遺伝子採取』『ウィルス生成』『変質毒』
自己の遺伝子を操作することで、強制的に変化をすることに特化したアンデッド。様々な動植物から遺伝子を採取することが前提であるため、かなり基礎能力が弱い。だが、時間が経てば経つほど厄介な存在になり、手に負えなくなる。またウィルスや『変質毒』を用いることで他生物も変化させてしまう。放っておくと文字通りの『生物災害』が起こりえる。
『インベーダー』
取得スキル:『産卵』『同期』『圧縮』『クラーレ』『並列処理』
大群をなすことが出来る進化形態。必要な材料さえあれば、毒を持つ小型のコピーを大量生成出来てしまう。また、感覚も同期出来る上に大群であっても容易く操れるほど処理能力が高くなる。使わない肉を身体に圧縮して保存しておけるため、必要以上に大きくならずに行動が可能。条件が揃えば、一夜で国が滅ぶ。
『ポイズンテラー』
取得スキル:『幻覚毒』『出血毒』『淫毒』『アルカリ液』『大気汚染』
毒に特化した形態。様々な毒を持ち、相手に合わせて使い分けることが出来る。幻覚性の毒は、対象の恐怖心を発露させ、近くにいる同族を『化け物』に錯覚させて同士討ちが可能。ポイズンテラーの毒は気体になると長期間滞留し続け、強い毒性を保持することが出来る。そのためポイズンテラーが集落に入り込むと、そこは地獄に変わる。淫毒は『餌場』を決めた際に獲物を増やす時、使う。
『デモンズワーム』
取得スキル:『産卵』『大地汚染』『洗脳』『蓄積』『魅了』
全長10メートル、直径3メートルある巨大なワーム。存在し続けるだけで、大地は汚染されていき、その毒で死ぬことはないが生物は弱化していく。蓄積型の毒であるため、世代を超えて土地も生物も痩せ衰えていくことになる。唯一、毒を無効化出来る方法はデモンズワームの幼体に寄生されること。デモンズワームはその土地でもっとも栄えている種族に寄生し、仮初めの共生を行う。




