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転生したら、アンデッド!  作者: 三ノ神龍司
第二幕 偽りの王子と国を飲み込む者達
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第一章 偽りの王子襲撃計画

 地平線まで続く広大な平原は、田畑で埋め尽くされている。行軍や行商用に大きな道路がいくつか設けられているけれど、それ以外は見渡す限りの田んぼに畑、農民用の家屋が建ち並んでいるのだ。

 

 そしてそれら農地に囲まれるように馬鹿高い城壁が築かれた町があった。町の外からでは、内部がどうなっているか分からない。だが長々と囲う城壁を見ればとてつもなく広いということが分かる。


 ついでにその町の中心には大きな城が建てられており、ここが他の村や町とは異なる場所であるのが確認できた。


 ここは王都、プレイフォート。この近辺で最大の都市であり、国の中心部だ。


 俺は町から遠く離れた林の中から、その光景を眺めていた。


 俺ら――リディアにミアエル、フェリス、アンサム、ついでにスーヤ、あと俺、アハリートはこれからあの町で一騒動起こすことになる。


 事の発端は一人の奴隷商人に出会ったことで始まった。ゾンビがうろつく森で出会った奴隷商人のアンサムは実はプレイフォートの王子様なんだとか。でも、呪いによって身体を奪われて無理矢理奴隷商人をやらされていたらしい。


 それで今回、アンサムの身体を取り戻すことが目的となっている。そうでないと色々と不味いことが起こってしまうんだって。人狼達の国が滅んだり、そのまま世界がやばいことなったり。ある意味世界の危機を救うミッションだ。


 で、今は本番に入る前に作戦を立てるところである。


 まあ、俺は頭が良くないし、作戦なんて立てられないから、ぼーっと皆の話し合いを横から聞いてるだけなんだけどね。


 頑張って理解しようとはしている。えーっと、話の要点は、アンサムに成り代わっている第二王子――クレセントからアンサムの肉体を取り返すこと。


 この肉体の奪還については俺の能力――『魂支配』を使えばクリア出来るらしい。クレセントを支配した後、呪いを解かせればいいんだって(ちなみに『侵蝕』でも呪いの解除は出来るが、最悪肉体が使えなくなる可能性がある)。


 まあ、必ずしもクレセントが呪いをかけた本人ではないかもしれないけれど。ただ役割の再設定は呪いをかけた当事者達が関わるから、儀式に参加する形に持っていけば問題はないっぽい。とりあえず集まった奴を襲えば良いってさ。


 で、問題は出会った際に『魂支配』をどうやるか。この力って結構、時間かかるから、周りの奴らを無力化しないといけないんだよねえ。相手が護衛なしってのはあり得ないだろうし。


 だからその議題で皆がどうするか悩んでいる時、俺は何気なく、リディアが特攻かければいいんじゃないか、って言った。あいつ、最強っぽいし。


 だけどリディア本人に困った顔をされてしまう。


 「実際、出来ないことはないけど、政治的な意味でやらない方がいいっていうのが本音かなん」


 (政治的……?)


 ある意味、とっても難しい単語が出てきた。


 「ちょっと私は世界的にやばい存在に分類されてるからねえ。聖教会っていう世界に根を張ってるのと、ことを構えてるから、下手にアンサムくんと関わると――敵でも味方でもプレイフォートの立場が悪くなる可能性があるの」


 「だな。古の魔女、リディアの悪名は聖教会が散々まき散らしてるからな」


 アンサムが小さく首を横に振って、息をつく。


 「で、ついでに言うと、うちは聖教会とは関係は悪くねえがあまり内部に踏み込ませないようにしてる。魔族に関連したことで合わない点が色々と――――っと。そこは良いか。……そういうことで向こうとしちゃ、こっちに踏み込む理由が出来るのは有り難いだろうってのはある。だから特攻は勘弁だな。全部、この身体の奴のせいにして、切り捨てるのもありだが、それもどこかしら食ってかかられる要因になって危険だしな」


 聖教会、なんか面倒臭そう。あとリディア、世界的にやばいってなにしたの?


 リディアの異名になんか邪神の使徒とかあるから、少なくとも穏やかな理由は絶対にないよな。


 ……まあ、そこは今はおいておこう。


 「だから、仮に特攻するにしても私は聖教会とプレイフォートの敵として振る舞わないといけないの。出来るのは聖教会の関係者を見つけたら、敵対っぽい感じに暴れて注意を引く、くらいかなあ。……ただ前回のことで『妖精』達に動きを悟られてるはずだから情報収集は必須かも。……作戦中に『聖人』達に出てこられると厄介だし」


 「聖人って魔女さん対策をしてる奴らのことだっけ?」


 木に背を預けているケモミミ巨乳娘ことフェリスは、そうリディアに尋ねる。


 ……そういえば、不思議に思ったんだけどなんか普通にリディアのこと分かってる風なんだよな、皆。詳しくは知らないけど、リディアは悪者っぽいのに気にしてないのはなんでなんだろう。実際に関わって雰囲気が悪くなかったからってだけな訳じゃないだろうし。不思議だなあ。


 「……そう。あの子らって結構、厄介なんだよねえ。殺しても拠点で復活するから、逃げられるのが嫌なんだよね。魂が崩壊するまで懲りずにやってくるから、何度か戦わないといけないし。それに私との戦いを想定して訓練してるし、死に戻りで経験積むからやりづらくって。だから、フェリスちゃんには聖人達の情報も探ってきてほしいかなあ。完全な不意打ちだけはされたくないから」


 「分かった。町を探ってる仲間達にそのことも聞いてみる」


 フェリスは町で情報収集をする役目を負っている。なんでも人狼ってこの世界では行商人として有名みたい。各国に深く根付く聖教会みたいな宗教団体とは違う情報収集のパイプを持っているようだ。


 それにしても聖人ねえ。リディアの強さを目の当たりにしている身としては、本当に対抗出来るのか疑ってしまう。魔物の最上位体でもある『王種』を赤子の手を捻るレベルで倒した実績があるからな。


 「ああ、あと精神的に殺してやりたいからゴブリンとか触手生物、寄生生物みたいな他生物を生殖に使う魔物の居場所も出来れば探って欲しいかなあ。『復活魔法リザレクション)』の要である子が女の子だったら、そういう精神攻撃が割と有効だし。逃げられて復活されても精神が壊れれば、次はなくなるから」


 「わ、分かった」


 フェリス、ドン引きである。冗談で言っていないのが分かるから、反応に困る。


 ……リョナい展開にフラグ立っちゃったなあ。俺も手伝うことになったらやだなあ。何気に俺って拷問向けな能力揃ってるから。


 ちょっと微妙な空気になった中、アンサムが渋い顔をしながら口を開く。


 「……そこら辺についてはあんたに任せる。で、クレセントの馬鹿を捕まえることについてだが、王家の人間だけが使える秘密の裏口があるから俺はそこを通ってあいつに会える。俺がいれば他の奴も使えるから、アハリートにはついてきてもらうぞ」


 「うー」


 アンサムが俺を見てきたから、頷いておく。


 「問題はこっからだ。あいつとあいつを取り巻く連中は政を疎かにする馬鹿でアホの糞だが、残念ながら守りはかてえ。呪いの関係上、俺の居場所を大まかに掴んでるはずだから、奇襲は出来ないもんだと思って欲しい。まあ、幸い場所の正確な把握と操られる心配はねえけどな」


 (まあな)


 アンサムが口の端を曲げて笑いかけてきたから、俺も頑張って表情筋を動かして笑みを返してみせる。


 アンサムは呪いによって、行動に制限がかかっている上に、ある程度操られてしまうようだ。アンサム自身に呪いのことを聞いて明確に知ってしまった第三者がいる場合、アンサムはそいつらを排除するようになっているらしい。


 けど、そこの問題はある程度クリアできた。


 呪いを解くことは出来なかったが、強い力で呪いの力を上書きしてやったのだ。


 実は今、アンサムには俺の『魂支配』がかけられている。そのおかげか、呪いによって行動を操られなくなったようだ。ただ、今のところ、情報を知った第三者の排除が無効になっただけで直接的な命令には逆らえない可能性もあるらしい。


 まあ、仮に操られたとしても俺の力で拮抗出来るらしいから、アンサムが突然敵対してくることはないだろうとは言われている。行動不能にはなるだろうけど。


 あとこういう無理矢理力の上書きとかするとバグが発生するらしいから注意が必要とのこと。例として向こうから操れなくなる代わりにアンサムを直接的に殺せるようになるかもしれないんだって(本当は呪いをかけた奴らはどんな手を使おうとも直接的にも間接的にもアンサムを殺せない)。何事も確証はないから、なんとも言えないらしいけど。


 ……うむ、不確定要素が多くて怖い話だ。


 ちなみに今の俺は、アンサムと念話に近い感じで話せるようになっている。便利!


 「王子さんとアハリートの二人だと不安が残るな。城の中で、協力者を仰げればいいんだがな。誰かいるか?」


 そう問いかけたのは、この中で割とまともな奴、スーヤだ。


 スーヤは勇者の村にいた兵士だ。本来はついてくる予定ではなかったけど、物資調達としてあまり目立たないということで抜擢されたのだ。


 俺らって色々と目立つからね。リディアは世界的にやばい奴らしいし、アンサムはいわずもがな、ミアエルは容姿が目立つ。唯一、行動しやすいフェリスも情報収集だけじゃなく物資集めと色々と奔走すれば、際立つことは必至だろう。


 ああ、俺は王都に秘密の出入り口以外、入ることすら出来ない。


 王都に入る際は、必ず身の内検査を実施されるらしい。そこでは魔物であった場合、詳しく調べられ、敵性存在や存在自体がやばい奴は入れないようだ。俺、確実に弾かれるよね。


 人間だって偽ったとしても、魔物かどうかを確実に判別出来るらしく、誤魔化すことはまず無理だ。


 城壁を乗り越えるにしても、壁面や壁の上から町を半球状に覆うように侵入者用の感知結界が張られているらしく、感知されれば一分もしないうちに兵隊が駆けつけてデストロイされるとのこと。


 俺って擬態能力とか隠密能力が高いけど、それでも気付かれずに侵入は無理なんだってよ。


 城壁の高さの関係上、地面に潜っては入れないし――下水道は狭いけど今の俺ならある程度形を変えられるかもしれないが……寄生虫を散布する可能性があるからアンサムにやめてくれと懇願された。


 スーヤの問いかけに、アンサムは考え込む。


 「信頼出来るのは、二人いるな。俺の剣の師匠――ルイスと……執事だか大臣だかなんだか意味分からねえ奴」


 前者はともかく、後者はなんぞそれ。


 俺同様、周りもハテナを頭に浮かべているため、アンサムはなんとも悩ましげな顔をする。


 「俺もよく分からねえんだよ。小さい頃から爺さんのままで親父――王と仲が良くて――リディア、あんたとも知り合いみたい感じだったな、今思うと」


 「あー、うん、なんとなく分かった。ウェイトくん、か」


 リディアがなんとも微妙な感じに苦笑した。俺は首を傾げてしまう。


 (なんか変な反応だけど、やばい奴なのか?)


 「……まあ、うん、私から見れば、だけど……他の子からすれば出来た人間だと思うよ。信頼は出来ると思う。少なくとも私が味方をしているって伝えれば、アンサムくんのことは信じてくれるだろうけど…………その場合、私を殺しにくるからなあ。……いや、大丈夫かな。仮に私が暴れたら、どうせ向こうから嬉々として殺しにやってくるし……逆に止めてって伝えて貰った方が作戦期間中は殺しに来ないからいいかも……」


 なんか不穏な言葉が聞こえてきたんだけど。本当にそいつ大丈夫なの?


 リディアにしては珍しく本気に悩んでいるようで、低く唸っている。


 「うーん、作戦の観点から協力してもらった方がいいかなあ。その場合、私を殺したいって言うだろうけど、後で相手してあげるからって伝えてくれると助かるかも」


 「……あんたが、あいつ――ウェイトとどういう関係なのかは知らねえけど、分かった。最優先で接触して説得する。……あと出来るなら俺の師匠にも声はかけてえな。こっちは戦力的な意味で――少なくともあんたと張り合えるレベルだと思ってる」 


 「んぉ、マジで?」


 リディアがちょっと意外そうな顔をする。


 「相性の問題もあるだろうけどな。『王種』に至った剣士で、どんなものでも切り飛ばせるし、身体能力もたけえ。恐らくウェイトを除けばこの国で一番つええはずだ」


 「防御無視持ちの物理特化系かなん。確かに私が苦手な相手かも。うーん、出来ればそっちも仲間にしてもらえると私は安心かもねえ」


 「ただ、信用させる術がねえから、なんとも出来ねえかもしれねえが。最悪任せることになる可能性があるのだけは覚えておいてくれ」


 「気をつけておくよん」


 リディアは柔らかく微笑んでそう答える。


 大体、実のある話はこんなところかな。


 ――とりあえず、決まったことは、俺とアンサムが城に侵入してクレセント――もしくは呪いをかけた術者を捕まえて、俺の『魂支配』で従わせて呪いを解除させる。ただ相手も守りは固めてくるだろうから、クレセントや(もし他に)術者がいたら無力化した後、襲い来る敵を倒し続ける必要あり(場合によってはそいつらの生死は問わない)。そのため、俺とアンサム以外は戦闘に参加出来ないから連続戦闘の前に能力が高い奴を味方にしたいところ(今いる人材が使えない理由としては、フェリスは『立場的な都合上』、スーヤは不測の事態の対応とミアエルの子守、ミアエルはお留守番となっている)。


 んで、リディアは聖人とか言う奴らがいるなら、それを理由としてタイミング良く町で暴れて、俺らから注意を逸らす役目だ。出来る限り、戦力を城の外に集中させる狙いがある。


 これらの作戦を開始させるために、まずフェリスが情報収集を行う感じだ。情報の如何によっては作戦を立て直さないと行けない感じになるっぽい。当たり前か。


 作戦決行予定日は一週間以内。アンサムが王都に近づいてしまった以上、早めに行動しなければ警戒される恐れがあるからな。


 ゴリ押し部分が強いけど、奇襲が出来ない以上、どうしようもない。少なくとも罠にはめるためには、相手の行動が分からないとなんとも出来ないしな。そして調べる時間が圧倒的に足りない。だから、今はゴリ押ししかないんだ。


 ということで、一旦、解散することになる。


 作戦が始まるまで、俺は暇になる。町には入れないし、なんか近くを散策してようかなあ。


 そんなことを思いながら、同じく暇なミアエルを連れて俺は適当に散歩をすることになるのだった。

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