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村をちょっと散策してみる

2020/04/10 19:48 追加。

 バックアードの企みをくじいて、村に平和が戻った。


 って、言っても被害は甚大だったから、すぐに別れを惜しんで旅立ち~とか出来なかったわけだが。


 村を守る結界の修復に一週間ぐらいかかるらしく、最低限その期間までは滞在しなきゃいけないんだってさ。


 一応、村人達だけでも結界装置の修復とかは普通に出来るらしい。けどリディアが滅茶苦茶心配して、せめて修復するまで見守りたいんだって。


 まあ、ゾンビ映画でも大丈夫かと思って離れて、ちょっと間を開けて帰ってきたら全滅とかあるしな。実際、それになりかけた訳だから心配するなというのは無理だろう。


 それにこの森ってバックアードがいなくなってもちょくちょくゾンビが湧いて出てくるから、危険らしい。


 その発生の仕方がちょっと特殊っぽいみたいなんだよね。なんでもアンデッドの発生が『概念化』しちゃって止めようがないんだって。何それ怖い。


 無制限に増え続ける――訳でもないけどその可能性があるから定期的にゾンビ狩りもしなくちゃいけないのがこの死の森の面倒なところだそうだ。


 まあ、そのおかげでこの森に入ってくる奴らがほとんどいないから、リディアにとっては都合が良いとかなんとか。


 けど狩りが大変だし、それを含めて防衛にもいつも以上に人数を割かなきゃいけないから心配だって、ぼやいてたな。


 ……だからこそアンデッドを使役出来るバックアードを倒すんじゃなくて、味方につけたかったらしい。


 出来るなら俺がその役割を担えたら良かったけど、残念ながら俺の支配は危険過ぎる。


 んで、そんな役立たずな俺の現在の役割についてだが……。


 やることなし!


 なんにもない!


 とっても暇!


 今は村の壊れた門の近くに転がって、文字通りゴロゴロしている。あっ遊んでいるわけじゃないぞ。一応これでも自主的に門番をしている。俺って何気に感知能力が高いからね、近くに敵が来たらすぐに気付けるはず。


 なお撃退出来るかは不明な模様。


 ――まあ、何も来ないから撃退うんぬんも杞憂なんだけど。なんか簡易結界とか村の外に広範囲で敷いているらしいから、今まで一体も見かけてないんだ。


 だから離れても問題はないんだけど。かと言って別の何かが出来る訳でもなし。村に勝手に入ったら、迷惑だろうし。


 「おっ? 何してんだ、おめえ」


 「う?」


 ゴロゴロしていると不意に声をかけられる。近づかれたのは察知出来ていたけど、村人だとは分かっていたから放置してた。まさか声をかけられるとは。


 寝っ転がりながらはさすがに失礼なので、立ち上がる。


 目の前にいるのは四十代くらいのおじさんだ。中々に筋肉がついていて、俺の心にヒットをしかける。……うーむ、男らしい男はやはり良い。ちなみに俺はゲイではない。


 俺は首を傾げる。


 「うー?」


 「なんか暇そうにしてんなあ。スーヤんとこ案内してやろうか? それともあの半、太っちょがいいか?」


 半、太っちょってたぶんアンサムのことだろうな。確かにあれは半分太っちょだ。


 うーん、でもアンサムってもう借宿にいないんだよなあ。んーと、今は村から離れたところでフェリスと一緒に組み手っぽいことしてる。割と真面目な感じで。


 なんでそんなこと分かるのかって言うと一応、ちょっとした理由がある。


 簡単に言うと『魂支配』をアンサムにかけてる。俺から何かしらの強制をしているわけじゃないけど。でもかけてるだけでもアンサムにかかっている呪いの強制力――正体がばれた時に対象を排除とか呪いをかけた側の命令に反抗出来るとかなんとか。


 んで繋がった副作用で、あっちの見た物聞いた物とか分かるし、やろうと思えば思考とか記憶とか読むことも出来るっぽい。やらんけど。


 そんなこんなでアンサムの動向については逐一分かってるけど……あっちには今、行きたくないなあ。訓練がなんか玄人っぽいんだもん。


 「うー」


 俺はジェスチャーで半、太っちょことアンサムのぷっくりお腹を示して、手でバツを作る。


 「スーヤがいいか」


 「うー」


 頷く。


 「じゃあついてこい、案内してやっから」


 「うー!」


 ありがとう、おじさん! 男気溢れるおじさんに惚れそうになりながら、俺は後をたったかついていくのであった。

 







 

 おじさんの後ろをついて行きながら、キョロキョロと村を見回す。



 改めて見ると、THE MURAって感じ。一階建ての民家が基本で、大体木で出来ている。窓は……ガラスはないな。鎧戸っぽいものはあるけど。


 ガラスってどのくらいの文化レベルだと作られるんだっけ? ガラスって、砂を焼けば出来るんだっけ? なんかゲームだとそんなお手軽な感じだけど……そんなわけないよなあ。うーん、俺には知識系チートは出来ないな。


 んで、家から視線を外して下を見ると……道路は土だな。まあ、馬とか使ってる感じはしないし、わざわざ道路を綺麗に整備する必要もないんだろう。


 都会とかだと一面石畳とかあり得るのかな? ロマンがあるな。


 ふと、だかだかと三人ほどの小さな足音が聞こえてくる。


 「あー、ゾンビだー。なにしてんだー」


 ちょっと遊んだことのある顔見知りの男の子が声をかけてきた。他に二人いる。


 「うー」


 「何言ってかわかんねーし」


 楽しそうに笑っている。うむ、良い感じに生意気だぜ、好きだぜそういうの。


 「今日はあのびろびろしたのねーの?」


 「うー」


 頷く。触手はみだりに遊びに使っちゃいけないからね。特にスーヤ辺りに監督してもらわないと怖くて出せん。


 おじさんが歩きながら、子供達に顔を向ける。


 「今、スーヤんとこに行くから、あいつが暇だったら遊べると思うぜ」


 「マジで!? じゃあ、そうしたら考えたんだけどさ、こういうのやろうぜ! びろびろぴーんって伸ばしてそれに掴まったら楽しそうじゃね?」


 「ついでに回って貰おう」


 「いいね、それ! できるの、ゾンビ!」


 「うー」


 まあ、それくらいなら構わないかな。でもぬるぬる取っても滑るだろうから、掴まり続けるの大変だろう。だからなんか触手に引っかける布か革とか必要かも。そうすればメリーゴーランドごっこも出来るだろう。


 「よしっ、じゃあ約束な! スーヤ暇だったらこっち来いよ!」


 「スーヤ暇人だと良いな! なんだっけ、働かない奴……そうだっ、ニート、ニートになれ!」


 「スーヤニート! ――……あっ、あとあの子も……あ、なんでもない」


 ニートニート言うのはやめなさい! スーヤはニートじゃありませんっ。つーか、何気に俺に刺さるからやめて、それ。


 あとミアエルをご所望な子がいたな。……可愛いからな、ミアエル。


 この短い滞在期間で子供同士のラブロマンスとかやっちゃう感じ? 恋心にも気付いてないちびっ子が、ちょっとミアエルの気を引くためにイジワルなんかしちゃったりして――最後の別れでこっそり隅っこで涙を流すとか……あぁ、青春だなあ。


 ちなみに俺はミアエルに色目使われるのは別に良いよ。相手が大人で変態のロリコン犯罪野郎じゃない限り。


 俺はミアエルの命の恩人で懐かれただけであって保護者じゃないからな。


 でもちょっと動向が気にならないと言えば嘘になる。


 ミアエル、今、何してるんだろう? さすがに寝てるなんてことはないだろう。友達とか出来てそっちと遊んでるのかな。それなら良いんだけど。もしや働いたりしてる感じ? なんかありそう。

 

わざわざ探しに行くのもあれだし、それとなーく確認しようか。

 

 




 しばらく歩いて、村の中心部に近いところにあったそれなりに大きな家につく。


 「村の警備隊の宿……兵舎みたいなもんだな。スーヤの奴、交替で寝てるはずだ」


 「うー?」


 それ起こしちゃっていいの? そう俺が心配そうに唸って首を傾げるとおじさんは笑う。


 「心配すんな。予定がないなら、適当に相手してもらいな。……数が減ったって言っても、他のとこの人員を移せば問題ないんだ」


 そっかー……。まあ、警備隊はあくまで巡回による索敵が基本で、接敵は想定してないわな。それによほどの大群じゃない限りは、個人でどうとでも出来るんだろう。それに俺みたいに地面を掘り進んでくる奴がいるなら、大勢いたところで抜けられるだろうし。


 おじさんは「ここで待ってな」と言うとずかずかと兵舎の中に入っていった。ちょっと申し訳ないかなあ、と思っていたけどスーヤ以外に俺の相手出来ないしね。でも出会った期間は他の村人とほとんど変わりないはずなんだけどなあ、不思議だ。


 ちなみにリディアに頼るという選択肢は……そういえばなかったな。何故だ。今思えば、おじさん、巧妙にアンサムとスーヤの二択にしてきてたぞ。


 けど遠ざけたいとかイジワルではなさそうだな。絶妙に面倒臭い、複雑な心理状況の元、リディアに負担を与えないようにしてる感じか。


 で、暇そうな俺の相手はリディアに任せるより、アンサムか……スーヤに任せるのが適任と判断したんだろう。哀れ、スーヤ。


 中からおじさんとスーヤが話し合う声が聞こえてくる。なんか急いで着替えている風だ。ゆっくりで大丈夫だよ。俺、ただ暇なだけだから。


 ぼーっとしていると視線を感じる。


 見ると井戸端会議してたおばさん、お姉さん達と目が合う。ちょっと戸惑った感じだったけど手を振ってきたので、振り返すとなんかきゃっきゃと笑っていた。


 木を担いだお兄さんや水瓶を抱えたおじさんなんかはチラリと俺を見て通り過ぎる。たまに会釈してくる人もいたので軽くお辞儀を返す。


 たまに子供達がやってきて、太股やら股間を突いてきたので、人差し指で肩を連打してやるとくすぐったそうに笑って逃げていった。


 うん、のどかだなあ。


 やっぱり多少危ないかなあ的な心配するような会話も聞こえてくるけど、敵意は向けられてこない。


 あー、なんか時間がゆっくり流れているような気がする。


 良い感じな集落だな。俺がもし安全な存在なら、是非とも住まわせてもらいたいものだ。


 そんなこんなをしていると、スーヤがやってくる。


 「悪い、またせたな」


 「う~ぅ」


 別に今来たところだよ、となんとなく彼女風な雰囲気を出すため、腰をくねらせる。


 「なんでしな作った」


 (雰囲気って大事だからだよ)


 「意味が分からん」


 スーヤに苦笑されてしまう。


 俺は首を傾げる。


 (そういや暇なのか?)


 「一応、な。見張りの予定は夜からだから、問題ない」


 それは夜勤ということではないだろうか。というか、もし見張りが昨日の夜からなら、眠ったのついさっきとかではなかろうか。


 (もし寝てて起こしたんなら、悪いから今日は門の外でうろうろしてるけど)


 「気にするな。あんたは客人なんだからな。それに村を救ってくれた恩人でもあるわけだから、無下に扱う気は無い」


 くっ、情けは人のためならず、を文字通り体現してるぜっ。俺が頑張ったせいで、一人の若者の睡眠を奪ってしまうなんて。


 まあ、お言葉に甘えるけど。ここまで言ってくれるんなら、断るのも失礼だし。


 ――と、兵舎からのんびり出てきたおじさんが、スーヤと俺の肩を叩く。


 「それじゃあな、スーヤ。それとゾンビもな」


 「うー」


 ありがとうおじさんっ。おじさんがいなかったら、俺は今日一日、門の前でゴロゴロしてる羽目になってたよ。


 手をふりふりしながら、おじさんを見送り、見えなくなってからスーヤに向き直る。


 (それで俺は仕事が欲しいわけだが)


 「暇だから遊ぼうかと思ったらまさかの仕事の斡旋願いとは驚く」


 (さすがに一週間もゴロゴロとか出来ない、朽ちる)


 「仮にもアンデッドがそれを言うか」


 ほんとにね。一週間予定ないだけで、気が狂いそうな奴が永遠を生きられるんだろうか。生後一週間程度で早くも永遠の未来を生きる自信がなくなってきた。


 で、スーヤは真面目なので俺の無茶なお願いを真剣に考えてくれる。ただ、腕組んで唸ってるのを見ると芳しい返答はなさそう。


 「悪いが……ないな。俺も一日ついている訳にもいかないし、その都度誰かに交替してもらうのもな」


 (まあ、そういうことなら仕方ないからいいけど。ところで村の中案内してくれる? この村のこと、気になってたし。あわよくば俺の仕事寄生先を見繕う)


 「そういうことならお安い御用だ」


 そんな感じでスーヤに村のことを教えて貰うことになったぜっ。

 





 

 この勇者の村って一部の風景だけ切り取ると本当にただの小さな村っぽいんだけど、規模から言うとかなりでかいんだよね。


 人口が増える度に何度か拡張された跡があって、二カ所ほど外壁っぽいような壁の名残があった(そんな壁を利用された施設や家があったのだ。基本的にその都度、不要な壁は解体されてるのかな?)。


 んで、村の拡張する時、結界とかどうなってるのーとか思ったんだけど、普通に結界も拡張出来るっぽい。


 なんか村の端にある四つの大っきな柱を動かせば、良いだけみたい。


 俺はそんな結界の心臓部があるところまでやってきていた。話には聞いていたけど、実際に目にしたことがないから気になってはいたんだよな。どんなものなんだろう、心臓部って。


 結界の心臓部がある施設は周りにある家と違って、大きめだ。形は……なんだろうサーカスのテントみたいな……広い草原に住んでる遊牧民のテントみたいなあんな形が木で組まれてるみたいな?


 どういう構造か知らないけど、頂点部分は穴が開いてるっぽいな。木であんな家組めるのね。なんか変なところでファンタジーを感じた。


 重要な施設っぽいし、まあ、外から眺めてるだけかなーとか思ってたら普通に入れてもらえた。


 中は柱が何本か立っている以外はほとんど空洞だ。そのさらに中心には……リディアの銅像があった。


 冗談ではない。なんか近くに男の子っぽい銅像(材質は鉄に近いけど銅像と呼ぶ)が壊れたものが安置されていたけど。……あの銅像、勇者か? 今の俺の顔と似ているような……。


 (……なんぞあれ)


 「リディア様の銅像だ」


 見れば分かるよ、見れば。何でそのリディアの銅像が明らかに中心部に置かれているかだ。……まあ、想像は出来るけどさあ。


 「あれが結界の心臓部になるんだよん」


 スーヤの説明を待っていると、代わりにリディアがテクテクとやってきて説明してくれた。


 (おっ、リディア、はろー)


 「はろー、アハリちゃん」


 リディアが手をフリフリして近づいてきて、手の平をずいっとこっちに伸ばしてきたから、ぱちーんとハイタッチ。


 「いえーい!」


 「うー!」


 「スーヤくんもいえーい!」


 「は、はあ」


 スーヤもハイタッチ、ぱちーん。


 お年頃なのか、スーヤはちょっと恥ずかしそうだった。


 リディアが俺に向き直る。すっごい笑顔……ていうかなんか頬を赤らめて興奮してる?


 「いわゆるあれは魔道具だね。――魔道具っていうのは簡単に言うと、スキルを得た道具くらいの認識で良いよん」


 おぉ、なんかゲームなファンタジーっぽいの来たぞ。


 ――気になって色々尋ねて見ると、あの銅像型魔道具って自立稼働型だとか。なんか魔力の流れを制御がうんぬんかんぬんで、なんとかかんとか。難しくてわかんにゃい。


 でも自律的思考……まあ、インテリジェンスではないらしい。


 一応、長い時間壊れずにいると意思を持ったりはするようだ。けどこの銅像にはその機能は必要ないからその都度、周期的に新しいのに入れ替えてるんだと。


 ちなみに魔道具は70%以上破損すると修復が不可能なんだそうだ。近くに転がってる勇者の銅像が前の結界の心臓部だったみたいだけど、壊れて使えなくなったみたい。


 あと、俺にはまともな魔道具は扱えないっぽい。魔力操れないといけないんだってー残念。魔力を吸収とか集めるのを強制的にすれば使えるらしいけど、それって使ってるとは言えないよな。


 (ところでなんでリディアの銅像?)


 「そ、そこが問題でねえ」


 リディアがすっごい、はあはあしてる。どうした。


 「み、皆がね、この機会に新しい心臓部を私の銅像にしたいって言うから……。しかもすごい気合い入れてかなり私に似せて……。……こ、この恥ずかしいのがなんだかとっても興奮して――」


 いつも通りのドMな理由だった。


 (てか、リディアに羞恥心とかあったんだな)


 「んっー!」


 この程度で感じるな、やめろ。……くそっ、迂闊だった。下手なこと言うと、すぐにプレイに変わっちゃうから気をつけないと。


 なんかこのままここにいると、リディアのプレイに付き合わされそうだったから早々に立ち去ることにした。リディアがまだ名残惜しそうだったけど、気にするものか。

 





 

 結界の心臓部を出てから一通り、村を歩き回る。大きな村だけあって、施設は充実しているみたいだな。鍛冶屋はあるし服や革製品を取り扱うところもある。ワインとか作ってる醸造所なんてものもあるらしいぞ。


 他には回復能力を持ってる奴がいて、その子(女の子らしい)を中心にした療養所もあるとかなんとか。


 回復系能力って興味があって(ゾンビに回復スキル使ったらどうなるんだろうとか)、療養所に行ったけど、残念ながら休みだそうだ。なんでも回復術者の子は身体が弱いらしく、寝込んでいるそうな。あの襲撃のせいで、その子を酷使しまくったってのも大きな原因みたいだ。


 あと、村の外には畑があるらしいけど……そっちは行かない。食べ物とか飲み物があるところはあまり近づかない方が良いだろう。


 大体回れたけど、俺が何かやれそうなところはないな。ままならないものだ。


 (じゃあ、そろそろチビ達んとこに行くか。遊ぶ約束したしな)


 「……アハリートって結構、子供好きだよな」


 (ち、ちげーしっ。そ、そういう約束しただけだしっ)


 そんな微笑ましいものを見る目をするんじゃあ、ない!


 「そんなんだったら、アハリートに子供達を見てもらえれば良いんだけどな。たまに村の外に出ようとする悪ガキもいるから」


 (つっても、俺の能力上、出来ないだろ。スーヤだって常に一緒にいられないだろ?)


 「出来るならやってくれるんだな」


 にやにやすんなし。


 俺は、ぺしんとスーヤの肩を小突く。


 スーヤは「ごめんごめん」と笑いながら、顎に手を当てて考え込む。


 「――ようは粘液さえ抑え込めれば良いんだよな。肌を晒さないようにすれば良いなら――」


 何か思いついたようで、俺はスーヤにどこかへと連れて行かれるのであった。

 





 

 俺は今、革の拘束具で全身を包まれていた。ベルトもきつくしめられて、とってもタイトである。さすがに触手用の拘束具はなかったから、触手は適当な革で包んでいたけれど粘液は漏れていない。というか、身体は動かせるものの、スキルは扱えなくなっていた。


 これは普通のスキル及び内在魔力に由来するスキルを停止させる効果を持つ魔道具らしい。魔力そのものを抑制させるわけじゃないのがミソだそうだ。


 魔力は拘束された対象から勝手に徴収するから魔道具が使えるかどうかは関係ないようだ。


 こうすることで、俺の危険性が薄くなる。身体全体を覆うことで肌を傷つけにくくなることで、寄生虫が感染しにくくなるしな。


 まあ、それはそれとして、……見た目がどうかと思うんだ。俺の場合、口と鼻を使う必要がないからそこも塞がれてるし、ホラー映画に出てきそうな拘束された怪物みたいな姿になってる。なんか床とかびたんびたん跳ね回ったら絵になりそう。


 これはさすがにビビられるんじゃないかなあ、と思ってたら案の定、大体の奴に避けられた。


 けど――。


 「うおーーー! もっと速く、速く!」


 「上げて下げてやって!」


 「やっほおおおおおおおお!」


 生意気小僧三人組が臆せず遊んでくれたおかげで、着々と子供達が集まってきていた。


 「うん、なんとかなったな」


 スーヤ、とっても満足そうだ。


 でもさ、ちょっと力技過ぎだと思うんだわ。もう見た目、完全にヤバい奴じゃん。今の俺、情操教育的にアウトだよ?


 「はあはあ、こ、拘束具をつけられてその上遊具にされるなんて、すっごい羨ましい……!」


 ほら、隅で変態(リディア)がこの姿に羨ましがってるし。というか、お前はさっさと仕事に戻れ。


 「今日一日、大丈夫なことを確認したら長老達に掛け合って、拘束具をつけている間は村での出入りを自由にしてもらおう」


 (そりゃあ有り難いけど……)


 今更見た目とか気にしないけどさあ。


 そういや化け物系な姿に慣れた筆頭ミアエルがいないな。村を回ってるときもいなかったし。うーむ、少し心配だけど……この状態で探し回るわけにはいかないだろう。


 村の中を自由に動き回れることになるかもしれないし、その時に探そうか。


 ――とりあえず、あれだ。なんやかんやと細かいことは気になるが、一言だけ言おう。


 俺はニートじゃなくなりました、まる。

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