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前途多難だけど、出発進行!

 俺は――俺達はラピュセルの外門前にいた。立派な馬車が俺の横にある。結構大きい。七人ほど――さらには、食料などを詰めこむため、キャラバン隊のかなり大きな馬車を(ゆず)ってもらったのだ。


 メンバーは俺とダラーさん、サンにオミクレーくん、オルミーガにイェネオさんに、なんとフェリスだ。


「なんでボクまで……」


 フェリスがいつもの露出度がたけえ格好(かっこう)しながらげんなりしてた。


「しゃーないやろ。向こうの王様に一応顔知られてて、かつ人狼で西行って生き残る可能性が高いのはキミしかおらへんもん」


 お見送りに来てくれてたスコールさんが苦笑しながらそう言った。


 フェリスはスコールさんを(にら)む。


「どうせ死んでくれたら助かるとか思ってんだろ」


「そないなこと思ってへんって。帰って来たら、とびっきりの嬉しい(たぶん)サプライズ用意しとくからー」


「イー!」


 スコールさんは苦笑しながら言ったけど、フェリスは威嚇(いかく)で返す。


 まあ、実際スコールさんは嘘を言っていない。事が上手くいったのなら、フェリスはアンサムと婚約することになるだろうからな。それが嬉しいかどうかは分からんが、少なくとも今の現状から抜け出すことが出来るだろう。


 ちなみにだけど、フェリスって人狼達――とりわけ、上の世代の人達から滅茶苦茶嫌われてるらしいよ。


 なんでもフェリスが生まれた時に『偽神化』が暴走したらしく、それで多くの人達が被害に遭ったみたい。フェリスの両親はその時死んだらしく、その周辺にいた大半の人達が今なお苦しむ被害を受けたみたいだ。


 当然、スコールさんがよく言っている『年寄り連中』っていう人達にも、フェリスをよく思っていないのが多くいて、あえてフェリスに危険な任務を(さず)けてるっぽいね。最近だと死の森に向かわせた、アレが挙げられる。


 なので、放っておいてもどうせすぐにまた死地に追いやられてしまうっぽいね。だからスコールさん的には今後のためにも、俺らに預けた方が良いって思って同行させたようだ。


 あっ、一応だけどスコールさんはフェリスのことを殺したいほど憎んでるとかはないよ。むしろ逆みたいだ。フェリスにはスコールさんのうさんくさい雰囲気のせいで信じられてないようだけど。


 それについては書状をもらう時に俺がスコールさんに訊いていて――いや、実際は『なんで俺のことを信用するのか』って話だったんだけど……。


 あれだ、ちょっとほわほわほわーっと思い浮かべることにする。






「なんでキミに優しくするか?」


 俺は書状をもらう時、スコールさんに(たず)ねてみた。その時、他には誰もいなくて――一応、対となるハーティさんがいる(いつも一緒なんだよね、この二人)――問題ないと思ったのだ。


 スコールさんが首を(かし)げる。


「なんでそう思うん?」


「少なくとも他の人達に比べると俺らには優しいなあって思ったんですよね。それって転生者だからって理由以外にもあったりしますよね」


 面倒臭いので率直に()きました。素直に教えてくれるならよし。はぐらかされても、別に重要な情報じゃないので、それでもよし。


 するとスコールさんは反対側に首を傾げる。


「別に大した理由はないで? フェリスちゃんがキミのこと信用しとったから、『ああ、見た目ヤバいけど良い子なんやなあ』って思っただけで。んで、話してみたら異界の転生者ってのがわかって、これは味方にせなあかん!って思っただけや」


「そうなんすね。……フェリスのこと、信頼してるんですね」


 それにしてはフェリスから(けむ)たがられてるような気が……。


 俺のそんな感情が伝わったのか、ハーティさんが口元を(そで)で隠してクスクスと笑う。


「この男、見た目通り胡散臭いからなあ。フェリスちゃんからはバチクソに警戒されてて毎度笑けりよるんよねえ」


「それはお前も同じやろ」


「あんたよりマシですぅ」


 ハーティさんとスコールさんがバチバチに睨み合う。仲良いなあ、この二人。


 俺は首を傾げる。


「フェリスは貴方達がフェリスのことを信頼してるってのは知らない感じなんです?」


 そう問うと、スコールさんは「へっ」とハーティさんを鼻で威嚇すると、俺に向き直って(うなず)く。


「せやな。態度にだしとるけど、信用はされん。まあ、それも仕方ないことなんやけど。あの子、自分はこの国の人狼全員から嫌われとる思っとるからな」


 なんか『偽神化』云々の話は耳にはした。ヤバい被害出したって。ちなみに被害規模はラピュセルに留まらず、あらゆる国に及んだらしい。ラフレシアも被害に遭ったらしく、《滅茶苦茶焦った》とのこと。あと、オーベロンさんも姿を現して『パック含めて最も死を覚悟した瞬間』だとかなんとか。


「実際、あの子が信じとるんは獅子人の子とアロマちゃんだけやからなあ」


 ナランさんとアロマさんだけかあ、と俺が思うと同時に「ん?」と疑問が一つ浮かぶ。


「グリムさんは?」


「ちょっと難しいんやけど、信用はしとるはずや。けど、嫌われてるとも思っとるかもなあ。……あの子が生まれたと同時にあの子の親が死んだ――言うなれば、グリムの子を殺したことにもなる。祖父ながら養父として育ててくれたことに感謝はしとるんやろうけど、負い目から憎まれてると思ってるんちゃうかなあ。……そないなことないのになあ」


 グリムさんを見る限り、フェリスのことを本当に大事にしてるのは伝わる。たぶん内心憎んでるとかないとは思う。……けど、それを感じ取れたところで『フェリスがそう思えるか』は違うってことだな。


 ましてや大勢の他者から明らかに憎まれてると分かってしまったのなら、そういう面での自己評価が低くなってしまうだろう。


「あの子がグリムに自分を抱かせようとしとるんは、一種の贖罪(しょくざい)やね。とにかく傷つけてもらいたいんちゃうんかなあ。――まっ、もしかしたらガチで祖父を恋愛的に好きな可能性もあるけども」


 スコールさんは「あの子の心情を推し量ることはできん」と苦笑しつつ首を横に振り――、


「あっ、で、なんで僕がフェリスちゃんを信用しとるかって話しやったかな?」


 ――ぱんっと手を合わせて、話の流れを元に戻す。


「そっすね。てか、……失礼なこと言いますけど、話を聞く限りだとスコールさんがフェリスを信用する要素ってなさそうですけど……むしろ他の人狼の人達と一緒になるんじゃないかなあ、と思ったり」


 俺はさすがに滅茶苦茶失礼なことを言った自覚があるので、ちょっとおどおどしているとスコールさんとハーティさんが笑う。


「そうよなあ」


「実際、うちらもフェリスちゃんには偏見もっとったし」


「そうなんですか?」


「そうそう。年寄り連中に悪い話聞かされとったからなあ」


「今思うと最初にあの子に会った時、うちら態度悪かったなあ。ぶっちゃけその初期の印象を引きずっとるままなんとちゃうん?」


 スコールさんとハーティさんは気にしてなさそうにさらにケラケラと笑う。


「じゃあ、なんで」


「最初に言うたけど大した理由はないで? ……あの子、頑張ってたからなあ」


「頑張ってた?」


「せや。周りに嫌われて誰からも相手にされん中で必死に(きた)えて、あの年であんなイカレた技術身につけたんや。……僕……らは成り上がろうとするために他方面に敵作りまくってなあ、その四面楚歌の辛さが身に染みてわかって、あの子の凄さを知った――ただそれだけやね」


「劇的な何かがあったわけやないんよ」


 だからフェリスはスコールさんとハーティさんが自分を信用しているなんて露とも思っていないそうだ。


 けど、まあ――、


「人に対する意識の変化ってそんなもんっすよね」


「そんなもんや」


 割と雑に変化するんだよね、意識や視点って。




 

 

 ――んで、ほわほわとした回想終わり! そんなことを聞かされましたとさ。


 ちなみにこの話をフェリスにしたところで、人狼には嫌われてると思ってるので信じてもらえないだろう。俺が(たばか)られたとか思いそう。


 実際、本当のことを言ってくれたわけじゃないかもしれないし。フェリスを何かしら操作したくて、俺に自分達が良い印象になるように吹き込んだ可能性もなくはない。


 あれだ、人を()める時のテクニックの一つに第三者を使うというのがある。直接キミはすごいと言うより他者からあの人キミを評価してたよ、と伝えた方が好感度が上がりやすいと聞く。


 油断ならない商人という生き物だ、それくらいやるかもしれない。と、そのくらいは警戒しておくべきだろう。


 この情報がフェリスにとって必要になったら、その時伝えてみよう(めっちゃ精神が不安定になった時、微妙ながら効くかもしれない)。


フェリスのことはとりあえず一端、思考の片隅においておくー。


 あっ、そうだ。一応、もう一人合流する人間がいる。


 リディアだ。


 ドクターを送り届けたら、飛んで戻ってくるって言ってたけど――ふと思った。アンゼルムさんを経由して、ドクターの所に転移門を開いてもらった方が良いのでは、と。


(その方が良いかもな。事故が減る)


 心配性な彼ピのミチサキ・ルカもこう言っております。


(いや、飛ぶのって結構ガチで危ないんだって。西の共和国から北のカーナーフ帝国に飛んでくことが多いんだけど、ほぼ毎回、リディアがタイタンの奴らに銃で撃ち抜かれることあって、毎っっっっ回、肝が冷えるんだってあれ。だからリディアに飛んで運んでもらうの禁止な! 絶っっっっ対!!!)


 ……とのことなので、転移門を使って呼び寄せることになりました。案外のっぴきならねえ理由がありました。


 はい、なーのーでーアンゼルムさん召喚して――、


「いぇーい」


 ドクターを特殊召喚だい!


「一体なんだよ……?」


 そして現れたのは痩身長躯(そうしんちょうく)のラテン系イケオジだった。ウェーブがかった髪をオールバックにして、白衣着てポッケに手を突っ込んでる! やだ、素敵!


何奴(なにやつ)!?」


「俺からすればこっちの台詞だが?」


 それはそう。


 んでもって、イケオジこと――ドクターはため息をつく。


「まあ、魂を見れば――アハリートだって分かるがな。……フラクシッドの方が良いか?」


「お好きな方をどうぞ」


 俺の呼び方はなんてきまってないからね。アハリートは基本としてマスターに宿主、(あるじ)に父さん、はたまたボス――そんでもってフラクシッドなんていろんな呼び方をされている。


 ……改めて並べると結構多いな、俺の呼び方。


「そんでもってドクターは如何なる理由でそんなお姿に? ちなみに俺は変身能力手に入れて、姿を整えました」


「俺も姿整えただけだ」


「懐かしい姿してるねー」


 そう言ったのはアンゼルムさんだ。寝転がりながら、ドクターを見上げている。


「昔を思い出すよ。やる気出た?」


「まあそんな感じです。…………ヤブ医者やってた時は正直、誰にも来て欲しくなかったですからね。今回は――こっちの方がウケが良いと思いますし、これでやってみます」


 なんか言葉から察するに、ドクターのこの姿が本来の姿っぽい感じかな? あの太めな方は『やる気ない』を文字通り全身で体現したものってことか。


 ……にしても良い姿しておられる。…………確か、上司がベラさんになるのかな? あの人、こんなイケオジ隣にいて平静でいられるのかしら。


 無理っぽそう。今度遊びにいって、どんな慌て方してるのか見てみようかな。


 俺がそんなことを考えていると、テクテクと黒が特徴的な魔女さん――リディアがやってきたよ。


「うぇーい」


「いぇーい」


 俺は気軽に手を前に出すと、リディアも気さくに手をパーンと合わせてハイタッチしてくれました。


「アハリちゃん、イケメンになったねえ」


「そう? ありがとー」


 俺がポーズを決めて、キメ顔をするとリディアが手を叩きながら「きゃーかっこいー」と褒めてくれた。


(キリキリキリキリキリ)


 そんでもって俺の内部からは彼ピの嫉妬威嚇音が聞こえてきたよ。


 なのでリディアとの絡みはこれくらいにしておこう。怖いので。


 他は特に何もなかったけど、強いてあげるならドクターの後ろにはウーくんがいて、オミクレーくんに手を振っていたよ。そんでもって、アンゼルムさんはフェリスと目が合うと微笑みを浮かべて頭を振っていた。フェリスはなんか微妙な顔してた。『偽神化』の検査はちゃちゃっともう受けたんだけど、そん時、普通に会話してたね。ナイトウォーカー――それも『王種』っていうヤベえ存在だけど、いざ話してみると親しみを感じちゃう人だから、人狼のフェリスからするとなんとも言えない気持ちになるのは分からんでもない。


 そんなこんなありつつ、リディアと合流完了! ついでにドクターにアスカを渡しておいたから(もちろん魔力諸々ドクターもち!)、こっちとも雑に連絡取れるようになったよ。アスカをおいておけば、何かしらあっても死者が出にくくなるから良いよね。ただし維持コストがかなりかかるのが難点だけど。魔力もそうだけど、血肉用のご飯を用意しないと駄目なのだ。


 というわけで、ドクターとアンゼルムさんを見送り、諸々つつがなく進行しています。


 あとは特にしとくべきことはないよな? ミチサキ・ルカの話じゃ人造勇者が暴走してここまでやってくるって話だけど……ジルドレイにプルクラさんら四天王いて、アスカがいるからこの近辺は問題なし。プレイフォートにもドクターやらアスカを配置しておけば、まあまあ持ちこたえることが出来るだろう。


 まあ、何が起こってるか、を知れるだけでも良いんだよね。もしかしたら、ミチサキ・ルカが次に繋げられるかもしれんし。


(助かる)


 良いってことよ!


 西については道中、相談しながら考えて行こうか。効率良く進めるためには、魔族達の元に行くチームと共和国の王様に会いに行くチームに分けなきゃいけないからなあ。


 ……それと決めとかなきゃいけないことっていうか、懸念事項が一つあって……オルミーガとイリティの件だ。マジでどうすっかなあ、あれ。


 話しすんのも怖いから、未だ進展はないんだけどどうにかしなきゃいけないからなあ。見て見ぬ振りをしたら、絶対悲劇が起こる。それは嫌だ。


 まさに前途多難! 場合によっては仲間内で殺し合いが発生して、それをどうにか止めなきゃいけなくなるかもしれないのだ! もういや!


 やらなきゃいけないことだけど、考えたくねえ。なので、一旦これは考えないようにする。どっちにしろ、オルミーガと話さんことにはどうにもならんし。


「色々面倒臭いこといっぱいあるけど、とりあえず行きましょう。みんなー馬車に乗り込めー」


 俺が馬車を指さすと、イェネオさんとアスカ、リディアが「わー」と言いながら、我先に乗り込んで、渋々ながらフェリスが入り、吸血鬼組がおずおずしながら続き、最後にオルミーガが入る(勇者くんことサルヴァトーレや魔王さん――ガルディアンはもしかしたら馬車に入らないかもしれなかったので、一時魂になっていただいてる。ラキュー達は普通に俺の体内だ)。


 そんでもって、俺は馬っぽい生き物に変身して、馬車とライドオン!


「行ってきやす!」


「気をつけてなー」


「あんまり無理せんといてねー」


 スコールさんとハーティさんに見送られながら、俺達は西の共和国に旅立つのであった。

次回更新は2027年1月まで不定期になります。定期的な更新はしなくなりますが、キリの良いところまで完成したら投稿するスタイルになります。

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