おゆるしください、ラフレシア
はい、満を持して変身系のスキルを手に入れようと思います。俺は別に人型になりたいとは思わないけど、他の人の迷惑になっちゃうからね。TPOはちゃんとしなきゃいけないのだ。
まあ、別に肉を削げば人型にはなれるけど、安全性が下がっちゃうからね。命の危機を晒してまでTPOはしたくないのである。だったら俺はずっとジャージでいるもん、の精神だ。
なのでそこら辺の天秤で量った結果が、変身系スキルを手に入れる、ということになる。
んでもって、理想が統合スキル。いければ最上位スキルを手に入れたい。
「えーっと、統合スキルになりそうな組み合わせは……『体色変化』『性質変化』『骨成形』『部位生成』『擬態』『分裂体※』かな? いや、だとしたらすでに統合スキルになってるよな。大体5個か6個くらいの組み合わせで統合スキルになるもんな」
《『骨成形』と『部位生成』もしくは『分裂体』が違うんじゃない? 『体色変化』『性質変化』『擬態』とあと二つくらい新しいスキルを手に入れて見ることを考えた方が良いかも》
「なんか良いのある?」
《『肉体操作』は?》
「ミチサキ・ルカが『侵蝕』に混ぜちゃった。あーあ」
(ごめんて。でもあの時はああでもしないと死んでたからどうしようもないんだよ)
それはそう。助かりましたよ、あの時は。それに『侵蝕』も攻撃ではほとんど使わないけど、自己再生で今も役には立ってるしね。
《なら……『巨大化』とか『小人化』とか大きくなったり小さくなったり、肉体を変化させてみるのも良いかも》
「それはありだな。変身の方向性的には大きさは自由に変えたいから。出来れば小さくなりたい」
このデカさのまま人型になっても意味は……あるだろうけど、出来るなら目立たなくなる方向性でいきたい。
「変身スキルっぽいスキル……目立たなくなるっていう方だと顔の整形とか?」
《良いんじゃない? 『肉体操作』の範疇かもしれないけど、局地的なスキル化も色々と前例はあるし、そういう組み合わせで統合スキルになったりするし》
「じゃあ、そういうのをやってみようか。……で、出来れば最上位スキルに一気にしたいけど……」
《それは欲張りすぎ……って普通なら言いたいけど、マスターなら出来るかもね。ただ、ナチュナルな属性の手に入れる条件がイマイチわかってないんだよね。ジョブの場合は私達――ティターニア様のスキル創造によるものだし》
「うーん、一番最初に手に入れた『合成獣』は『接合』と『融合』を同時に手に入れた時だったよな。そんでもって『寄生者』は……ミチサキ・ルカの裏技だけど、あれってどうやったの?」
(参考にはならない。『制定者』に頼んだ、本当に無理矢理な奴だったし。どっちかっていうとラフレシアが言うジョブに近い)
「じゃあ再現性はないな。『死神ノ権能』に使われたやつも似たようなものだろ? んで、『混濁ノ邪龕』にしてくれた『宗教家』は進化した時だよな。……で、要因を無理矢理決めるとしたら『感情うんたら』スキルを一度に手に入れたから、かなあ? もしかして一度に二つ以上のスキルを入手した場合に限る?」
《でもそれだとレベル51に上がった時に『性質変化』と『体色変化』を手に入れたのに属性は手に入らなかったよ?》
「いや、確かあれって『擬態』の熟練度が上限に達した時に手に入れたやつじゃないっけ? それを勘定に入れると『卵胞血虫』の『保湿』と『乾眠』も条件に入るし。たぶん進化か通常かのどちらかでスキルを特殊な条件なしに一度に二つ以上手に入れる、とかじゃないのかな?」
《……ありそう。……それだと進化後――それも最後の進化後に一つは最上位スキルを持つ場合がある説明もつくし》
あと進化以外で手に入れるのは普通は難しいけど、出来なくはない。けれど一気に最上位スキルに出来ないと属性はクセが強すぎて危ないんだよな。『合成獣』を手に入れた時、とんでもなく身体が脆くなったし。たぶん手に入れてもすぐに死んじゃう魔物とか多かったと思うのよね。属性の保持って結構ムズい。
「それをちょっと試してみよう。けど、いきなり変身系のスキルで試すのは危ないな」
仮定が間違っていた場合、『残弾』を減らすことになるからな。すでに変身系のスキルにはどんなものがあるか頭を悩ませてるし。
なので現在、良い感じに統合スキルに出来そうで、さらに一気に最上位スキルに出来そうな組み合わせをよく目を凝らして見つけてみよう。
『魔力感知』『死線感知』『死んだふり』『体色変化』『性質変化』『弾力強化』『魔力吸収』『過剰生成』『鬼胎』『脱糞』『遠隔操作』『骨成形』『触手爆弾』『怪力』『クリーンルーム』『加圧』『卵胞血虫※』『保湿』『乾眠』『擬態※』『補助脳※』『部位生成※』『発電器官※』『放電』『閃光』『分裂体※』『四足歩行』『営巣』『気化散布』
――今持ってる通常スキルはこんな感じか?
うーん、パッと見良さそうなのがないなあ。
…………うーん、うーん……いや、発想を変えて今から即座に手に入れやすそうで、そんな重要でもなさそうなスキルの組み合わせを試して見るとか?
その場合は…………ハッ……!?
(ハッ!?――じゃねえが!? あんた、なんてことを……!)
俺の電流のように迸った考えにミチサキ・ルカが恐れ慄く。
(『それ』をやったら、ガチでラフレシアに嫌われるぞ!?)
(だいじょーぶ。俺とラフレシアの絆は……永遠さっ)
(半年も経ってない間柄でよく言えるな!?)
信頼関係ってのは時間じゃねえのさ、とか思ってたらポコンとホヤ頭部の内壁を叩かれてしまった。
まあ、無視です。ミチサキ・ルカの言葉は参考に値するけど、残念ながら決定権はないので俺を止められない。そこで指を咥えてみてなっ。あと一緒にいるワームくんは自分の尻尾をしゃぶるセクシーな姿を俺に見せて?
「ぎぃ!?」
突然の飛び火に関係のないワームくんがビビる。でも、やってくれたよ! やったね!
さて、やるか。でもガチでラフレシアが嫌がることだから、ケアはしておかないといけない。
俺は『薬毒』の応用で生命のスープから糖分を取りだし、程よく水分と混ぜつつ、えーっとべっこう飴にするためには水分を飛ばせば良いんだっけ?
ミチサキ・ルカに尋ねると、悩むように唸る。
(べっこう飴って砂糖に対する熱の反応のうんちゃらじゃなかったっけか? だから熱しないと駄目じゃないのか?)
じゃあ、火かあ。……なんか弁当の紐を引っ張ると温まるやつあるじゃん。あれって何使ってんの? 乾燥剤みたいなの? そもそも乾燥剤の成分ってなに? えっとシリカゲルとか聞いたことあるけど…… シリカゲルってなに!?
(知らん。俺にそこら辺の知識は全くない)
俺もないや。液体燃料も結構雑に作ったからね。……あっ、雑で良いか。なんかマグネシウムが燃えやすいとかあったような……。
(素人がそういう化学に手を出すと火傷するぞ)
文字通りってね。美味いわね。……うーん、止めた方が良いか。液体燃料もかなり気をつけて『燃えない』ように使ってるからね。それが結果的に上手い具合に使えてるだけなのだ。
下手に燃える物を燃やして、どっかーんと爆発オチは避けたい。
……いっそのこと、熱する過程含めてラフレシアとその他多数にやらせるか。
俺は咳払いし、ラフレシアに声をかける。
「んっふふふ、お菓子好きかい?」
俺は骨バケツにたぶん甘い香りをしているだろう砂糖水をなみなみと注いで、地面に置く。その甘い香りに一瞬で誘われて、妖精さんが笑顔で近づく。
《すきー》
※注 ラフレシアです。
一気にIQ下がったな。
その時、アスカが俺の目の前にスッとやってきて、右手をサムズアップし、左肩に添えるポーズをとった。
《うん、大好きさ☆》
俺はそれを見て、触手を伸ばして優しく頭をなでなでする。
《げへへ》
アスカは頑張って嬉しそうに笑う。すごく嬉しそうにしてんだろうけど、すんげえ邪悪な笑みになってる。
んで、俺はホヤ頭部に触手を突っ込み、中で遊んでいたアルスを引っ張り出す。
「あぶ?」
ちょっと不機嫌そう。
「アルス、化学実験やろうな。この砂糖水を使ってべっこう飴を作ろう。ラフレシアは作り方知ってる?」
《もちろん! 砂糖水を熱するんだよ! あっ、ヒウルも来てー》
ラフレシア、めっちゃ笑顔。俺はヒウルも引っ張り出す。
「じゃあ、仲良く作っててねー。俺、ちょっとやることあるからー。ちょっと気に入らないことするけど、許してねー」
「あぶ」
「了解、した」
《はーい》
もはや生返事だ(アルスはまあまあ興味がわいたらしい。ヒウルは特に文句はないらしい)。でもまあ、言質は取った――もとい許可は取ったのでやるぞい。
「はい、ラキュー、ちょっとお手伝いしてー」
「ぷぎ?」
俺はラキューを小脇に抱えて、それなりに離れたところに移動する。
「ぷぎっ、ぷぎぃー」
べっこう飴作りを見学したかったようで、めっちゃ不満そうだがこの子の助けが必要だ。同時にいろんなことをするから、少しでもリソースを減らしたい。
「手伝ってくれたら、べっこう飴を優先的に食べさせてもらえるように言うから。なっ?」
「ぷぎっ!」
それを聞いたラキューは元気よく頷いてくれる。
さて準備を整えよう。えーっとまず木陰に薄く伸ばした皮を生成し、それを木の枝にかけて囲いを作る。出来る限り外から見えないようにした。あんまり意味ないけど(あとこっそり俺の内部にいるラフレシアを休眠状態にしておく)。
出来れば、深い穴を掘りたいけど時間はそんなにない。
……なんか良い力ないかなあ。ないんだよなあ。俺の潜る力って、土を多少柔らかくして泳げるようにはなってるんだけど、別に押しのけてるわけじゃないんだよね。透過とちょっと似た立ち位置にある。なので潜って土を掘る、というのは出来ないのだ。
まあ、悩んでても仕方ないし、力任せにやるか。力はあるから触手の先端をスコップ状にすれば、ざくざく掘れる。すぐにでも縦3メートル横幅2メートルくらいの穴は掘れたんだけど、足りるかなあ?
んで、ホヤ頭部下部の『加圧』室を違う液体を入れて使いたいから、巨大な豚型タンクを作って、それに移し替えてラキューに管理させる。このタンクには命は宿っていないが、『同期』を使えばゆっくり動く。まあ特に動かせる意味はないけど。
「ぷぎー!」
でもラキューは楽しめるので、モチベーションを上げられるのだ。
そんでもって背中から生やした触手にタンクと直結させれば、ラキューが液体燃料の管理を出来る。これでこちらの心配はなし。不意に爆発する心配はなくなった。
「ラキューも液体燃料を移しておいて。そんでもって、久しぶりにうんこ詰めておいて」
「ぷぎ?」
良いんですか?みたいに見上げてきたので、こしょこしょと話す。
「内密。しー」
「ぷしー……」
静かにしてくれるようだ。うん、忠実で素晴らしい。
さてと『加圧』室を三つに区切り、それぞれに別々の物体を造り出す。……うーん、ちょっと生成効率が悪いなあ。俺ってそんなに作ることは得意じゃないっぽい。肉体なら効率よくいけるけど、今から作るのは液体とガスだ。『薬毒』のおかげで問題なく作れるけど、生成速度はそんなに速くない。
(アスカ、俺の代わりに二つの生成請け負って)
《何の生成がお望みで?》
(えっとねー)
アスカにこっそりと作ってほしいものを伝える。
《おっけぃ――べっこう飴一丁!》
二つ返事でオーケーしてくれたよ。やっぱりアスカは引かないから、変なことでも気兼ねなく言えるな。でもそれにかまけると胸糞悪いことでも平気で言っちゃうようになるかもだから、自制は大事よ。
ということで、アスカに二つほど生成を任せ、一つは俺自身で頑張って作りながら『放出』する。さて、やるぞ。
で、何をやるかっていうとだけど、今から俺は、おしっことゲロとおならをします。あとラキューにこれから出して貰ううんこを触手で弄くります。
これから! 俺は!! 汚いことを!!! します!!!!
「準備おっけい!?」
《おしっことおなら、準備おっけぃ!》
「ぷぎっ!」
アスカが声量を抑えつつもはっきりと報告し、ラキューはぷりぷりっとうんちをひねりだしてくれる。
さあ、いくぞ!
気合いを入れると一斉におしっことおならとゲロを吐いて、ラキューの出したうんちに触手を突っ込んで弄くり出した。
これらの現在進行形的な詳細な説明は省く。精神的にこっちも吐きそうなんだ。実況なんか出来るか。やらなきゃいいだろって? でもこれ以外に実験に使える駒がないんだよ。
(たぶんゲロの方が先にスキル化するはず。レギオンの時、何気に吐きまくってたからな)
酸のゲロとか何気に便利だったんだよな。だからちょくちょく饅頭下半身から吐いてた記憶がある。だから何かしら、吐く系のスキルを得ることになるかもだけど……他のとそんな変わんないくれると嬉しい。……他のが時間かかると苦しみが増えるからね、ラフレシアの。
『熟練度が一定まで溜まりました。『嘔吐』を取得しました』
きたっ!
《え?》
そして、当たり前だがラフレシアが気付いてしまう。
《マスター? ……そこで……なに、してるの? 今の、なに?》
こわいよー。ラフレシアが震え声になってるけど、声のトーンからして怒ってるっていうか、ガチで困惑して理解出来ないっていう感情が感じ取れるんよね。
(アスカ、勢いアップするからついてきてくれっ! おしっこの方は俺が生成する!)
《……! うぉおおおおおお!》
俺が放出量を上げるとアスカの熱い声が聞こえてくる。ゲロはもうしなくていい。スキルを手に入れた以上、消費するのは無駄だ。今やるべきことはおしっことおならを最大限かつ同量発射すること……!
放出量が目に見えてあがる。耐えてくれ、俺が掘った穴……!
(熱い雰囲気なのに絵面が汚え……!)
ミチサキ・ルカもドン引きですが、ここまできたら止められません。
そして――、
『熟練度が一定まで溜まりました。スキル『小便』を取得しました。スキル『放屁』を取得しました』
《……!? いやぁああああああああああああ!!》
俺の魂に汚物なスキルが二つ混じり込んだことで、ラフレシアが悲鳴を上げてしまう。
『条件を満たしました。属性『不浄王』を取得しました』
《きゃあああああああああああああああああああああ!!》
ラフレシアの悲鳴がさらに一オクターブ上がったが、まだだ、まだ終われない!
俺はラキューのうんこを激しく弄くる。そして――、
『熟練度が一定まで溜まりました。スキル『弄便』を取得しました』
《あぁああああああああああああああああああああああああああ!?》
あと少しぃ!
『――条件を満たしました。『脱糞』『嘔吐』『小便』『放屁』『弄便』を統合し、『糞戸』に出来ます。統合しますか?』
《のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!》
統合します。
『確認しました。『糞戸』を取得しました』
《あああああああああああああああああああああああああああああああん!!》
咽び泣いてますわよ。
『――条件を満たしました。『糞戸』――属性『不浄王』を統合し、『穢身ノ罪過』に変化出来ます。統合しますか?』
これでフィニッシュだぁあああああ!!
《なんか良い名前だけどやだあああああああああああああああああああ!!》
ほんとにね! ちなみにですけど、イエスで!
『確認しました。『穢身ノ罪過』を取得しました』
《あぁ……えふっ、げふっ》
ラフレシアがついに喉が涸れでもしたのか、咳き込んでしまっていた。他の目を使って確認したら、ラフレシアが大地に身を横たえ、静かに泣いていた。俺の魂内部にいたラフレシアは耐えきれずに爆散(表現をマイルドにした比喩です)してしまった。マジでごめんってなった。
俺はそんなラフレシアにソッと近づき、念入りに綺麗にして消毒までした触手(もちろんうんこ弄ってた触手とは別だよ)で優しく持ち上げ、アルスの元に行く。どうやらアルスはラフレシアが叫び出しても気にせず、べっこう飴を作っていたようでちょうど完成させて冷ましていた。
骨鍋いっぱいに広がるべっこう飴の上にラフレシアを降ろす。
身体を横に向けているラフレシアは身動きしないまま、小さな舌を出してチロチロとべっこう飴を舐める。
「美味しい?」
《……うん》
なら良かった。
俺はアルスに向き合う。
「べっこう飴、もうちょっと増産しておいて。ラキューとアスカが欲しがってたから。ああ、ちなみに砂糖水って温度によって色々変化するから、試してみるといいよ。温度が低いとシロップで逆に高いとカラメルになって甘みもなくなるんじゃなかったっけかな?」
「あぶ!」
わかった、とアルスが手を挙げて砂糖水をヒウルに頼んで熱する。……そういや温度計なかったんだよな。水銀って俺の体内から抽出出来ないよなあ。サーモセンサーみたいな能力って開発出来ないかしら。前戦った竜もどきの目を拝借して研究するべきだったかしら?
まあ、そっちはいいや。
はい、じゃあ変身系のスキルを手に入れるぞ。
――まあ、ざっくり言うと『巨大化』と『小人化』なるスキルを同時に得て――片側巨大化させてもう一方と小っちゃくしたりした――『体色変化』『性質変化』『擬態』『巨大化』『小人化』を元に『変身』というスキルに統合し、ついでに『変態人』っていう属性スキルを取得して(ヒウルが欲しがったからこれまたコピーした)――『千ノ無貌』っていう最上位スキルを手に入れたよ。
二つの最上位スキルの効果は後ほどだな。一応、ざっくり言うと『穢身ノ罪過』は特殊特化型で『千ノ無貌』は常用特化型だ。
どっちも強力だけど、『穢身ノ罪過』は超絶使いにくいから西の共和国に行くまで使わないかも。こっそり練習はするけど、普段使いはしない。てか出来ない。ちょっと使ってみたけど、かなりピーキーなのよね、このスキル。
対して『千ノ無貌』は地味だけどすごく使い勝手が良くて、これからラピュセル行って、その使用感を確かめてみます。
俺の『第一形態』を見せてやんよ!
次回更新は6月23日23時の予定です。もしくは6月16日23時に投稿するかもしれません。




