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ゴブリンをスレイするかもしれないお話?

 ラピュセルの間近に巣を作ったゴブリンは統制の取れた集団となっている。それなりに知能は高く、個としては弱いが集団で戦えば村や小さな町で滅ぼせるほど強い。


 ある種の文明を築いており、さすがに高等な建築物などは建てないが彼らが増える元となる食料や家畜の『管理』はしっかりと行われている。


 保存の技術や飼育技術、さらには衛生管理にすら気をつけているほどだ(自分達はともかく家畜がすぐに死ぬことから気をつけるようになった)。


 だからゴブリンの『家畜部屋』は思いの外、清潔だった。特にゴブリンキングがいるコロニーの『家畜部屋』は洞窟の奥深くではあるものの、天井に穴が開いた珍しい構造で太陽の光が届くようになっている。


 地面には布や毛布などが敷かれており、跪かせた『家畜』が無駄な怪我を負わないように気を遣っている。『飼育』する上での配慮は怠らないようだ。


 地面に打ち付けた杭にリードが繋がり、家畜の首へと繋がっている簡単な拘束具であるが逃げ出すことは難しい。


 手足の指はなくなっているからだ。だが切り落とされたわけではなく、縮んだようになっており指同士がくっつき、爪が大きくなって、まるで蹄のような形に変化しかけているのだ。


 関節も伸びて、四足歩行の動物へとなりかけている。


『肉体改造』による変化だ。ゴブリンの力が弱いことと、人狼達が抵抗しているために変化が中途半端となっていた。


 ――完全に変化はしていないものの、異形の身体になるというのは普通の精神を持つ生物ならば心を苛むことになる。


 特に二人の女性の人狼は己の(いびつ)な肉体に絶望し、(すす)り泣いている。


 その上、負担は少ないとはいえ、絶え間なく出産する羽目になり――さらに乳房も改造されてまるで乳牛のようなものとなっていたのだ。無論、生乳(せいにゅう)を採取するためだ。効率的に採取するために、数すら増やそうとする形跡も出来ていた。


 そして調査隊リーダーとなる男性は同じく、肉体を変化させられており、元の性器はなくなり孕み袋と化している。


 ただこちらは明らかに生傷が多い。辛そうに顔を歪めているが、泣き言を言えないのは心の強さもそうだが――舌を切り落とされた上に(のど)を焼かれたからだろう。


 リーダーでありながら、部下を守ることも出来ず、励ましの言葉すらかけられない自分にふがいなさを感じて――少しでも彼女達が傷つかないように自分に注意を向けようとしていたため、傷だらけになってしまっていた。


(――どうにかならないか。……俺はともかく、こいつらは仮に助かったところで――)


 自死を選ぶかもしれない。治癒能力を持つ魔法使いをプレイフォートから呼んだところで治せるかわからないのだ。この手の変化をさせられた者達が治療を受けて完治したという話は聞いたことがないのだ。


 もし自ら命を絶てるなら、そうした方が良いのだが、生憎と現在のゴブリン達は致命傷を回復出来る程度の治癒魔法を使えるようで、何度か『助けられて』しまったのだ。


 ――ゴブリンにとって人狼は優秀な母胎(ぼたい)なのだろう。実際、出産ペースが早い上に、ゴブリンにとって強力な固体が多数産まれているのだ。


 それが幸いなのか単なる(なぐさ)みものにされることはなく、キング個体によって常に使われていた。


 ただ、それが良かったなどとは到底思えないのだが。むしろ雑に扱われて命を落とした方がマシな現状であった。


(……いつまで続く――早く、終わらせてくれ――)


 そう彼が思っていると――目の前の壁からニョキリと『目』が生えてきた。


「!?」


 彼らは壁と向かい合っている。――そちらには何もない。壁の向こうも岩や土だけだろう。


 そんな壁から触手の先端に目が生えた奇妙な何かが現れ、彼ともう二人に目を向ける。


 そしてもう一本違う触手がその隣から伸びてきて、――そちらには明らかに口がついていて――喋る。


《どうも救援なんですけど、拘束具を解けば、最低限動けますか?》


「…………」


 彼は口を開けて、舌がないことを示すと、その触手は《あらま》と呟く。


《切り落とされたっぽいですね。……なら……》


 触手が近づいてきて、軽く触れてくる。避ける暇もなかったし、そもそもこれ以上何かが悪化することもないだろうと、気にしなかった。……それに明らかにヤバい見た目のくせに理性的であるため、受け入れてしまっていた。


 すると――舌が生えてきた。もこもこと物理的な感触を伴い、切り落とされた舌が元に戻る。喉の火傷や身体の傷も元に戻るが――残念ながら改造された肉体は戻らなかった。


《……やっぱり『肉体改造』された部位は戻らないかあ。……やっぱり――――まあ、いいや》


 肌に触れた触手が離れて、再度、向き合い口を開く。


《どうでしょう? 動けます?》


「獣化すれば戦えはする」


 獣化形態には極力ならないでおいた。リードに獣化を阻害する効果もあった上に、下手に変身してそちらも改造されてしまっては、完全に詰みになってしまうからだ。


《そっすか。ならいいです。魔道具も使えますよね? そこの出入り口に結界を設置しておくんで、騒がしくなったら起動してください。たぶん俺がキングを(おそ)っている間に貴方達を人質にするために来るかもしれないので》


「……わかった。………………ところで救援なんだろうが、あんたはなんだ?」


《しがないアンデッドです。どうぞお見知りおきを。ああ、それと身体についての希望は捨てないように。『もしかしたら』があるかもしれないので》


 そう言って、その触手は彼と彼女達の拘束具を解き、言葉通りに唯一の出入り口である穴の両側に骨で出来た魔道具を立てた。ついでに《トンネルを()られる可能性を考慮しますね》と言って、もう二つ骨を立てて四角い(じん)を作った。


 どうやら内側に入って、魔道具を起動させ続けていればとりあえずはゴブリンの猛攻(もうこう)をしのげるだろうとのこと。


《じゃあ、お気をつけてー。知ってると思いますけど、この部屋の外に見張りのゴブリンが二匹いるんで動くにしても慎重にお願いしますねー》


「……助かる。そちらも気をつけてくれ」


《了解っす》


 そう言って、その触手は壁の中に消えてしまった。


 彼は気力を振り(しぼ)って、仲間二人を(ふる)い立たせるために鼓舞(こぶ)するのであった。








 まず出だしは上々だ。


 捕虜(ほりょ)を全員見つけられた上に、安全に結界を設置出来た。結界は起動すれば内側でなければ絶対に破壊することは不可能だ。内在魔力がたくさんある人狼ならば長時間起動させ続けることが出来るだろう。


 ――捕虜に対する懸念点は生きる意欲がなくて、動かずにそのままでいて人質にされることだな。……あの男の人は、取り乱すこともなく受け答え出来ていたからたぶん大丈夫ではあるとは思うけど、残り二人が結構参っていたからなあ。


 見た感じ、かなり酷く改造されていて希望を失ってるっぽいんだよな。


 希望を失うな、とは言ったけど、どうなることやら。


 一応、テキトーこいたわけではないんだよ。


 この本拠地のコロニーの外に待機してもらってるグリムさんにはゴブリン達が無力化した際に討伐する指示の他に、別のお願いもしているけど――それが希望になるとは思うんだよね。でも、うーむ、どうなることやら。


 とりあえず俺はゴブリンキングを無力化すれば良い。話はそこからだ。


 俺は洞窟の壁や地面の中を潜りながら進む。俺を探知出来る存在はいないようで、スムーズに進むことが出来ている。


 ゴブリン共の位置を把握しながら進んでいるけど……100匹近くいるくない?


《増える速度が速いね。……やっぱり人狼だからかなあ》


 現状を見る限り母胎としてかなり優秀っぽいね。


 ……もしかしたらコロニーが増えてる可能性もあるけども、そのケアを含めての今回の作戦だからね。


 んでー奥へ奥へと進んでいくと、明らかに大きくて強そうなゴブリンの群れを発見。一際大きいのがたぶんゴブリンキングで、その周りにいるのがホブだろうか。通常のゴブリンが大体120㎝くらいだけど、3メートルくらいあって、幅も結構あるね。まあ、俺より小さいけれども。


 ただ数が多い。ゴブリンキングを取り巻く2メートル程度のホブゴブリンは十数匹もいる。


《雑に突っ込めばマスターなら蹴散(けち)らせるね。ただ混戦時にキングに逃げられないように注意しないといけないけど》


(俺がそこの全員相手して、出入り口にアルス達を配置して、キングの逃走阻止と雪崩(なだ)れ込んでくるかもしれない雑魚の相手してもらうか)


《良いんじゃない? (はさ)()ちされるのは本来悪手だけど、マスターは最悪奇襲されても問題ないし――アルス達は最悪倒れても問題ないからね》


 もはやこの子ら、俺が死なない限り、死なないしね。


(お前ら、いける?)


(あぶ!)


(問題なしでーす)


(いけ、る)


(ぷ、ぷぎー)


 ラキューがなんか尻込みしてるけど、まあいい。


(ラキューはサポートで良いからね。てか、透明になって毒液を吹きかけてけばいいからな)


 ちなみにだけど、毒ガスを流し込めば一発だけど、洞窟でガスがどういう挙動をするかわからないから、やれないのよね。下手をすると捕虜になってる人狼さん達に被害が出るかもだし。


 致死性がない無力化する毒でも、吸引量によっては死にかねないからなあ。なので毒を使う場合は気体はNGで液体がギリオーケーな感じだ。


(それか火炎放射でもやっとけ)


 こっから人狼さん達のいるところまで燃え広がるものはないし、酸欠とかも……あそこ、天井に穴が開いてたから煙に巻かれることはないはず。


(ぷぎ!)


 ラキューはちょっと自信が出てきたようだ。ついでにお守りとして、ゴブリンヘッドをつけておこう。もしかしたら仲間だと思われて攻撃されないかもしないしねっ(ないか)。


 ……んーと、よしよし。ゴブリンキング達がいる部屋はあいつら用に大きめに作られている。天井も5メートル近くある俺でも窮屈(きゅうくつ)ではないくらい高い。


 一応、縦も横も高く広いキングやホブでも通れるくらいの通路幅にはなっていたけど、俺が透と挟まりそうだったから、ここを見るまで狭くて戦いにくかったらどうしようとか、ちょっと心配だったんだよね。


 広さも申し分ないし、悠々(ゆうゆう)と戦える。


 キングにホブ半分くらいが俺の相手だ。


 ――では、せっかくだし、ここで言っとくか。


 ゴブリン共は皆殺しだ。

次回更新は3月31日15時の予定です。

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