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なんでやねん!

 二人の男女は、まあ、当たり前だけど人狼だね。狼なのに狐目(狐は犬科だから変ではないかな?)ですっごい胡散臭うさんくさい。


 んで服装はなんだろう、男の人の方は導師どうしとか師範しはん的なひらひらな服なんだよね。あれだ、キョンシーが着ていそうな服だ。


 女の人の方は男の人とは違うベクトルのひらひらな服だ。いわゆる天女っぽい、羽衣はごろもとかきぬっぽい流れるような布地で出来ている。男の人の方は色合いが黒や緑みたいな地味な感じだけど女の人は色がピンクが基調であでやかな印象を受ける。


(ラフレシア、きっとアレだよ……!)


《あれ?》


(あの人達、語尾に絶対、アルってつけるよ!)


《……いや……まあ、マスターがそう思えばそういう言語にはなるかもしれないけど》


 この世界って翻訳ほんやくシステムが組み込まれていて、それぞれが聞こえた通りに言葉が直されるらしい。同じ日本語とか英語とか使われなければ、聞き手側が思った方言とかなまりとかになるらしいね。


(いーや、違うねっ。皆がアルっていう語尾を聞くに違いないよっ!)


《なんでそんな自信が……?》


 俺はどや顔をする。


(中国風だから!)


(……なんでこの人、たまに精神年齢が五歳くらいになるんだろうな)


《性癖に刺さる何かを目の当たりにするとよくなるんだよね。相づち打っておけば丸く収まるから、そうしといた方がいいよ》


 なんかミチサキ・ルカとラフレシアが失礼なことを言っています。まあ、なんとでも言うがいい。俺の予想の正しさが証明されて、ひれ伏すことになるんだからなっ。


 ちなみにフェリスの胸に刺さっていたアスカからは情報は得られなかった。一応、フェリスは胸元をしめて、隠してくれたんだけど呼ばれたあのお二方は、「ああ」とか「そう」とか短く軽く言うとすぐに席を立って、こっちに来たのだ(んでもって、アスカを始終隠してくれたこのことからフェリスはこっちの味方をしてくれるのを確信した)。


 そんな彼らの語尾の全貌ぜんぼうが今、明らかになる……!


(そこは重要じゃないだろ)


(重要ですーあぶぶぶぶー)


(手ぇ出るぞ!?)


 俺はミチサキ・ルカに下唇を突き出した顔を見せつけると、拳を振り上げられてしまった。


「どうも――」


 俺の前に立った男の人が、俺を見上げながら声をかけてきた。頭を軽く下げた後、俺をマジマジと見つめてくる。


 そして――、


「いやー話に聞いとったけど、ほんまごっつい見た目しとるなあ」


 関西弁だった。


「なんでやねんっ!!」


 俺は思わず自分の声帯で叫んでしまう。『鬼胎』を発動しないように頑張りましたとも。


 そんでもって男の人はというと、俺のツッコミにぽかんと一瞬した後、手を叩いて笑う。


「何に対してかわからんけど、ええツッコミするやないの。この子、意外におもろいね」


 そう言って、男の人は隣の女の人に話を振る。


(こっちの人は……! こっちの人は…………似非中国じゃなくって……くっ――どすえって言うかも……! 京都弁になるかも……! なんかそんなしゃなり感が出てるから……!)


(持論をくずして安パイに妥協しようとしてんじゃねえよ)


 俺が日和ひよるとミチサキ・ルカが容赦ようしゃなく追い込んでくる。


 そして女の人が口を開く。


「そうネ。きっと仲良くできると思うアルよ」


「なんでじゃい!」


 俺はまたも自分の声帯で叫んでしまう。この痛恨の連敗に思わず顔を手でおおってしまった。


 俺が、あふおふーん、と泣くと女の人がケラケラと笑う。


「ほんまおもろいわあ。見た目より可愛い中身してはるなあ」


 ――と、口調が明らかに男の人と似たものになった。


《からかわれてる。……うーん、やっぱり……》


 ラフレシアが何かに気付いたのか、かすかにうなっていた。


「ところでキミ」


 男の人が俺に向かい合い、人差し指と親指で輪っかを作る。


もうかりまっか?」


 これわっ……! 俺はその問いかけに思わず答えてしまう。


「ボチボチでんなあ」


 せっかくだし、自分の声帯を使います。


「良い返ししてくれるなあ。――そんでキミ――」


 すると面白かったのか、男の人は嬉しそうに笑い、言うのだ。



「――異界の転生者やろ」



 なんかバレちゃいました。








《ラピュセルが『商業国家』になったのって、始めからとかじゃなくて、ある特定の年代からいきなりなんだよね》


 ラフレシアが俺にそう教えてくれる。


《それまでは戦争ばっかりやってた南の国(プレイフォートの前身となる国らしい)の諜報や暗殺かなんかをやってたみたいだけど、あるときから商業にも手をつけるようになったんだよね》


(……その要因が転生者かもって? 俺みたいな天然の『バスに乗ってた奴』?)


《うん。そうかも。ただまあ、確証は得られなかったから……ていうかそもそも忘れてたから言わなかったけど、今の問答を見てて思い出して確信出来た》


 ちなみに昔は農業が盛んな農業国家みたいな側面があったらしい。国っていうか、村がたくさんあって、それぞれが農業を営んでいたって感じらしい。ラフレシア――フラワー達が管理していた時にあえてそうなるように調整していたっぽいね。


 今でもそこら辺の農産業が盛んなのには変わらず、農産物を中心に他方面に商売しているらしい。


 俺は男の人に首をかしげて、見つめる。


《どうして俺を転生者だと思うんです? あっ、声は気にしないでください。こっちの方が都合が良いので》


「えらい可愛い声しとるな。……なんでそう思ったんかは……まあ、うちらラピュセルが商業国家になった要因――転生者がいたからやな」


 やっぱりそうなのかー。


「その転生者が残した言葉があって、これを言って特定の返してくれれば『自分と同じ転生者かも』ゆうてたんや」


《なるほど。ちなみにその訛りは――》


「これはその転生者様から伝わった『商人』として由緒ゆいしょ正しい言葉遣いらしいで」


 あのバスに関西人乗ってたんだー。


「ちなみにその転生者はこの訛りを使っとらんかったようやで。『おだづなよ!!』とかよくわからん言葉が今も伝わっとるなあ」


《東北民じゃねえか》


 ラピュセルを古代中国っぽい雰囲気の国にして、一部の人狼には(似非)関西弁を教えた東北訛りの強い転生者か。俺以上に属性もりもりにあるし、色々やらかしてんなあ。


 少なくとも人狼の国を商業国家にしてるから、知識チートしたんだろうなあ。


《……転生者ってなんであれ色々やらかすんだよね》


 ラフレシアが疲れたようにため息をつく。


 確か、タイタンの地下に巨大迷宮を創ったあんぽんたんがいるんでしたっけ。


 男の人がニコニコとした笑顔を浮かべる。


「うんまあ、キミが信用にたる存在ってゆうんが一発でわかったわ。商売は信用が第一。じゃあ、早速お話しよか? ああ、僕はスコール、こいつはハーティや」


《はーい、俺はアハリートです。そっちの男の人はダラーで女の子がサンって言います》


 てことで、『お話』しようと思うんだけど、どうしようかね。うーんと為すべき目的は『捕まった吸血鬼の引き渡し』、『ジルドレイとの交易打診』、『なんか倒して良い魔物いないっすかね?』の三本かな。


(ラフレシア? さっきは俺、ジルドレイに潜入した存在っていう呈じゃない方が良いって言ったじゃん。でも正直に言うとそれはそれで弱味にならない?)


《なるけど、マスターって嘘ついたまま話を押し通せるの? それにあからさまな嘘は、信用を損なうからやめた方が良いよ。損なった上での交渉をしたいなら別だけど》


 なるほど、話術に長けているならあえてやった方が良いって感じか。うーむ、せっかくだしやってみようかしらね。『嘘』の方を。いや、違うな。別に聞かれなきゃ答えない精神でいけばいいのか、これは。ノリで乗り切ろう、そうしよう。


 俺は手を挙げる。


《捕らえられてる吸血鬼さん、返して欲しいっす!》


「ええよ。手配してもらうわ。キミらが直接引き渡しに立ちあってな」

 

 やったー、返してもらえたー。


(……いやいやスムーズ過ぎるだろ!)


《なんか企んでるんじゃない?》


 ミチサキ・ルカとラフレシアがなんか疑っている。全くもー、これだから荒んだ世界で生きてきた人達はー。優しい人達なんですよ、彼らは!


 んーと、この件がスムーズに済んだなら、交易の話は優先しなくてもいいか。


《俺、レベルアップしたいんでなんか暴れ回ってる魔物とかいたりします? 倒したいんですけど》


「魔物かあ……。それなら近辺の山に戦争のせいで対処できんくて無駄に数を増やしたゴブリンがいるんやけど、それでも良いなら頼むわ。討伐とうばつに向かった武家の幾人かが戻ってこんし、そこら辺の救出をお願いしてもろてええか?」


《いいっすよー》


 無論、タダです。つか、特にお金もいらないしね。……普通に助ければ、大きな借りをつくれるしね。


《それと吸血鬼さん達、交易したいそうっすよ。金属栽培したり、食材を長期保存出来る魔道具とかあったんで良いかもっす》


「ほんまかいな。それは……是非とも詳しくお話したいなあ」


 これはすごく目の色を変えて食いついた。……今思うと、人狼達って内在魔力がかなりある方だから家電風の魔道具とか普通に使えるんだよな。需要はかなりある方だろう。


 こっからは商売の話になるから、近々バトンタッチしないとな。いや、すぐにしちゃうか。


《じゃあ、あっちと繋げてお話しますかー――と、その前に一つ》


「?」


《吸血鬼の国には潜入して、こっそりしてたんですけど、アンゼルムさんには見つかっちまったんですよね。で、その中で色々協力して貰う代わりにフェリスを連れてきてーって言われてて……》


「なるほど。――どう? フェリスちゃん」


 スコールさんは後ろにひかえているフェリスに顔を向けて、く。フェリスは――結構、あからさまに嫌そうな顔をして、横に背ける。


「別に。なんでもいいよ、こっちは」


「そんなん投げやりにならんといてや」


 スコールさんは苦笑してしまう。……うーむ? フェリスはスコールさん達 (?)のことを嫌っているようだけど、逆にスコールさん達はそんなんでもなさそうなんだよね。


 フェリスに対する憎悪や嫌悪が見受けられないのだ。さっきまで周りにいたお世話してくれるお手伝いさん達はそういう気配が微かにあったんだよね。あと若い子は特に恐怖を感じた。ちなみに今はお手伝いさん達はここから出て貰っているよ。俺がスコールさんに転生者だとバレたあとに人払いをされたのだ。


「僕らはキミの意思を尊重するからな。――と、アハリートくん。さすがにこの子を連れて行くんいうんはかなり『高値』になるで」


《やっぱそうすか。じゃあ、特に良い物が提示されなければ、俺から断ってみましょう。てことで、サン。アンゼルムさんのとこにつなげて欲しいっす》


「あー……ボス、残念ながら、私は――――え? あっ、大丈夫そうです」


 なんかサンがプルクラさんから連絡を受けたっぽく、アンゼルムさんのとこに直で繋げるようになったらしい。


《じゃあ、繋げてもらいましょう――あっ、一応だけど、光の対策は――》


「えーっと、あっ、転移門の境目に光を遮断出来るフィルターを張れるみたいです? それでこちらがあちらの暗闇を見えるように可視化?することもできるみたいで?」


 難しい言葉がぴゅんぴゅん飛んできたのか、サンが首を傾げながら語尾にハテナをつけながら言った。とりあえず大丈夫みたいです。


 そんでもって、サンが少し移動して、開けたところに手の平を向けると魔力が一箇所に集まり、それが楕円形の転移門を形成する。


 転移門の向こう側には白く清潔な研究施設が広がっている。実際に目で見るのは初めてかもね。


 そして……!


 もぞっもぞっ、と芋虫が這ってきて、転移門のギリギリで止まる。それは寝袋に包まれて、ぼんやりとした表情をした青年――アンゼルムだ。


《へい! アンゼルムさん!》


 俺がバッと手を挙げる。


「へーい。ずいぶん姿が変わっちゃったね、アハリート」


《へい、アンゼルムー》


 アスカが俺の側から現れて、スッと手を挙げた。


「へーい、リーダー。元気そうでなによりで」


 アンゼルムさんはアスカにはちょっとだけ手を見せて振り返していた。次にちらり、ちらりと視線を移していき、ハーティさんとフェリスに目を止めて――少し考え込み、フェリスに視線を向ける。


「キミがフェリス?」


「え? う、うん」


 さすがのフェリスも千年級の吸血鬼には気圧けおされるらしい。寝袋の変態に呼びかけられたからかもしれないが。


 アンゼルムさんはフェリスの顔をマジマジと見つめながら、ふーむと唸る。


「少し期待してたけど、やっぱりアルテミスとは似ても似つかないね」


「アルテミス?」


「うちらで言うところの始祖様やな。そこのアンゼルムさんの恋人やったらしいで」


 スコールさんがフェリスの疑問に答えると、フェリスは驚いたように見返す。


「なんで知ってんの!?」


「人狼と吸血鬼の『本当の関係』は上層部には受け継がれてるんよ。まあ、知ってるだけで交流はほとんどなかったんやけどな。あくまで最低限の農産物をおろすくらいや。だから今回の『凶行』にはわけわからんくて正直ビビったわ」


「僕もビックリだよね。まさかあんなことしようとするなんて」


 スコールさんがちょっと怖い半笑いをして、アンゼルムさんがため息をついて首を振っていた。


 アンゼルムさんはフェリスを見やる。


「それで? 一応、アハリートとは約束を取り付けたけど――少しだけキミの魂の情報から『偽神化』を見せて貰える?」


「見せて――どうする?」


 フェリスが警戒して問うと、アンゼルムさんはそんなフェリスに気にせず言う。


「データは取るけど、それくらいだね。キミの『偽神化』が本物かどうかの確認がしたいだけだから。別にキミの『偽神化』を無理矢理発動とか奪うとかするつもりはないよ。……そもそもキミの『白痴はくちノ獣』だったっけ? それは『実際に観測が出来ない』んだから意味がないよね」


「…………」


「一つ言っておくけど、恐らくキミの『偽神化』は不完全であると推測しているよ。最上位スキルを生まれた時から持っている人間がその能力を『制限された状態』で使うことがあるらしいからね。そもそもキミの偽神化は『世界』という領域を創らないんだろう?」


「……それは、ボクは……知らない」


「…………。……そっか」


 フェリスが苦しそうに顔を背けながら言うと、アンゼルムはその表情を見て、おもんぱかったのかそれ以上追求することはなかった。


 そして、アンゼルムさんはフェリスから視線を逸らし、スコールさんとハーティさんに顔を向けた。


「この子の検査をするためには、キミらに許可を貰えば良いの?」


「うーん、そうやなあ」


 何故かスコールさんは少し困ったように腕組みをして、ハーティさんに視線を向ける。


「うちを見んといてよ。――調子狂うわあ、ほんま」


 ハーティさんがため息をついて、首を横に振る。


「アンゼルムはん、なんかうちらに払えるものある?」


「払えるものかあ。……うーん、キミらが必要な道具かあ……。……うーん、遺伝子制限を一時的に緩和する魔道具とか?」


「……。そういうもん、ぽろっと出さんといてよ……。ほんまやりづらいわ……」


 ハーティさんが顔を手で覆ってしまった。スコールさんも天を見上げてしまっている。


 うーむ? 遺伝子制限の緩和って、なんじゃろ。


 俺は首を傾げ、ついでにダラーさんとサンもわからない様子だった。あとフェリスも、ちょっと、ん?と理解していない様子で――ラフレシアは「それは――」とわかっていてアンゼルムさんにあきれている様子だった。ミチサキ・ルカも何か感づいたのか(薄い本か……?)とか言っていて、『そっち』方面に関わることらしいのがわかった。まあ、遺伝子だもんね。


「フェリスちゃん!?」


 スコールさんが考えていたフェリスに向かって、やや大きめな声をかける。


「な、なんだよ」


 フェリスはビクッと飛び上がってしまう。


「これで最後やけど、キミのことについては僕らが本当に決めてええんやな!?」


「え――……いいけど。……ボクに選択する権利なんかないだろ」


「……。そんな卑屈になんといてや。――まあ、今回の件は僕らが進めることにするわ。一応ちゃんとその時々の重要な節目に確認取るから、そん時はちゃんと決めてや!」


「…………」


 フェリスがブスッとほおふくらませて黙る。なんかちょっと年相応な感じがして面白いな。


「じゃあそういうことで! じゃあ、早速やけど、フェリスちゃんに指令! キミのパパ、ここに連れてきて!」


「お父さんを? なんで?」


「あの吸血鬼の引き渡しの権限とゴブリンの件は武家であるキミのパパの管轄かんかつやろ」


「まあ、うん」


「ほら、わかったならはよ、行き!」


「うっさいなあ、そんな急かさなくてもいいじゃん」


 フェリスはぶっすりとした顔をしてぼやきながら、立ち去ってしまった。


 んで、しばし沈黙。けれど、それはちゃんとフェリスを出て行ったかどうかをスコールさんとハーティさんが確認しているからだ。


 俺も聞き耳を立てて、たぶん遠くに行ったであろうタイミングで手を挙げる。


《その魔道具ってどういうものですか?》


「簡単に言うと人狼でも他の種族と子供を作れるものだよ」


 アンゼルムさんが物凄ものすごい簡単に説明してくれたよ。


 スコールさんがため息をつく。


「それがあれば、人狼以外の貴族と繋がりを持てる。ある意味、僕らに必要なもんでもあるな。幸い、まだ僕らはプレイフォートの貴族達と繋がりを持っているから婚姻関係を築けるわけやな」


『まだ』の部分が妙に強く感じられるのは気のせいじゃないだろう。たぶんプレイフォートがラピュセルの諜報ちょうほう活動から手を切ろうとしているのを察知しているのかしら。実際、お姫様は元々いた暗部の人達を重用して動かそうとしているみたいだし。


「それがあれば、王族は無理でも有力な貴族と結びつけることが出来るやろ。幸い南は人間至上主義っちゅーわけやなくて、『強い血』を取り入れることを目的としとるからな」


 ――おっと? ここでスコールさんは嘘をついたね。王族と結びつくのは無理と言っているけど、――聞いた限りじゃフェリスはアンサムと幼馴染みだ。


 ……なるほど、この話をフェリスの前ですると荒れそうだわな。だからちょっと無理矢理にでも追い払ったのね。


 ぜってえ、フェリスはあわてそうだもん。なんやかんやとフェリスとアンサムは悪友って感じで、恐らくそれは『絶対に結ばれることがないから成立していた友情』でもあったろうから。


(……このルートを行くと、アンサムの結婚相手ってフェリスの可能性が出てくるのか)


 ミチサキ・ルカがボソッと言う。気になること言うじゃないの。


(アンサムって他の人と結婚する可能性があったの?)


(うん。一番、多いのはベラ――ベラドンナだな)


(あの人!?)


 あの甲冑かっちゅうまとってた髪がもはってなってるオタクっぽい人!?


(アンサムが報償を与えるけど何が良いって、言った後に『婚約』とか冗談でベラが言ったらアンサムが「おういいぞ」みたいな感じで決まったらしい)


(アンサムざつー。他は? 俺が知ってる人、いる? リディアとか?)


(それはないぜったいないゆるさない――意趣いしゅ返ししてやる。――――ミアエルだよ)


(アンサム、ロリコン!? ノータッチしないと駄目でしょ!?)


(思ってた反応と違う……)


 なんかミチサキ・ルカに残念がられてしまった。


(なんかもっとこう――許せないー、みたいに言わないのかよ)


(まあ、俺はミアエルの保護者をやるつもりだけど、命以外では過保護になるつもりはないからなあ)


(……割とあんたって他人と一線引いてるところあるよな)


 人と距離をとっていないと化け物になるという選択肢がとれないもの。俺は化け物ガチ勢になりたいのでねっ。でもまだ中途半端ではある。まだ俺は弱いから強くならない限り、文明を築いている存在と仲良くしておかないといけないのだ。まだ、もう少しな……!


(…………ちょっとあんたを滅ぼしたくなってきた)


 いやん、ゆるしてー。


(ところでざっくりアンサムがミアエルとくっつく件について知りたいな)


(……正確に言うとくっつく可能性がある、だな。西の件でミアエルが生存して終わると、獣人達を抑える+西の共和国に圧力を加える関係でそういう話が出てくるんだよ。あくまで話だけだけどな)


 ほーん。なんかレアイベントみたいな話だな。そもそもミアエルの生存っていうのが難しいらしいから辿たどり着くのは至難の業だろう。


(今回はフェリス、か……。これが一番、らしくはあるな)


(かもねー)


 今後の動向が見逃せませんなっ! ……フェリスにアスカをこのままつけとくか? その方がいいかもね。アスカがいれば吸血鬼から危害を加えられないどころか、一部の人から協力を得られるかもしれないからね。


 さーて、次はどんなことになるかなあ。適度に参加しつつ、傍観者としてこの交渉を楽しんでいこう。

次回更新は3月10日23時の予定です。

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