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転生したら、アンデッド!  作者: 三ノ神龍司
第一幕 死の森に生まれたゾンビと古の魔女
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第二十三章 リディアの帰還

 リディアは闇夜を切り裂く流星の如く、空を駆ける。


 リディアが森で上位個体を探していた時間は約一時間程度だ。何も見つけられなかったが、それ以上の捜索は時間の無駄だと判断して村に戻る最中だ。


 正直村が心配だった。彼らの力量は生半可ではないのは知っている。誰よりも見続けていたのだから。

 

 だけど、親が子を心配するように、見続けていたからこそ、弱さも知っているから不安になってしまうのだ。

 

 ――そして、リディアが村に辿り着き、空から見下ろとそこに広がっていたのは……惨劇だった。

 

 結界は破られ、南門は破壊され、村にゾンビが流れ込んでいる。

 

 「……っ!」

 

 とっさに魔法にて広域を攻撃した衝動に駆られるが、抑える。今すべきことは状況の把握だ。下手に攻撃して、村人を巻き込みたくはない。

 

 リディアは刹那の時間にて、村の全域を俯瞰の視点で把握する。

 

 ゾンビの群れは中央部には入り込んでいない。村の中央部の避難施設外部には、壁越えなどが出来たタイプなのか多少のゾンビが闊歩しているが施設内部に侵入を許していないようだ。だが施設の結界はすでに切れており、解毒系に切り替わっている。このままではジリ貧だろう。

 

 屋上に出て迎撃出来るようにはなっているが、今は誰もいない。完全に締め切られ、侵入を許さないようにしている。

 

 今、施設を囲んでいるゾンビは、先遣隊のようなものだろうか。それか群れからはぐれて偶然迷い込んだだろう。通路を埋めているのが恐らく本隊のゾンビ達に違いない。だがそのゾンビ達は大回りで中央部に向かっているのだ。最短距離の『壁』を乗り越えていくのもいるが、少数だ。

 

 ……そう『壁』。南門から避難施設の最短距離に何かがある。

 

 (……肉の塊?)

 

 そうとしか形容出来ない謎の物体が通路を塞いでいる。家屋と家屋の間に張り付き、地面にも根を下ろしているのか押し寄せるゾンビの波にビクともしない。

 

 組成は……人? いや、ゾンビだろうか。種族鑑定やスキル鑑定では引っかからないことから、あれは何らかの魔物ではないようだ。

 

 見た目はまるでゾンビを溶かして混ぜ込んだかのよう。

 

 (……『レギオン』系列の死体とかではないよね)

 

 レギオンと呼ばれるゾンビの中で一番厄介な存在の可能性を頭に浮かべる。だが、そもそもあれはパラサイト並に扱いが難しい魔物でもある。

 群体に混ぜるのは向かないし、あのバックアードが意図して作るとは思えない。下手をするとゾンビの群れを壊滅させる恐れがあるのだ。

 仮にもし操れたのであれば、現状で村の人間では殺すことは難しいため、動かなくなっているのはそれはそれでおかしい。

 

 だとするとあれはなんだろう。

 

 (……? 普通に見てると、群れ自体も何か変な気が……。……あれは、ゾンビがゾンビを襲ってる? ……なんで? 眩惑魔法? 何か特殊なタイプかな……? スキルは――『卵胞血虫』!?)

 

 ゾンビを襲っているゾンビのスキルを鑑定したところ、そこにあったのは『感染』ではなく、『卵胞血虫』の文字だった。

 

 リディアの血の気が引く。


 不味い。あれがあるということは、パラサイトが発生しているということ。パラサイトの感染者は魔物でなかったら結界をすり抜けてしまうし、解毒も効果がない。体内の寄生虫除去の方法はいくつかあるにはあるが、いずれも簡単にできるものではないのだ。

 

 中央施設にいるゾンビを確かめるが、あちらは『卵胞血虫』のスキルは持っていない。いや、でもあれは脳に寄生虫が到達してもスキル化に時間差があるから油断は出来ない。その間も寄生虫だけでも分裂して増えたりするので感染の可能性は少なからずあるのだ。

 

 ……どうしてあれがいる。パラサイトはとてつもなく危険なのだ。

 

 それはもちろんバックアードにとっても。

 

 (……運悪くパラサイトに進化した? いや、でもそんなことそう簡単にあり得ないはず。そもそも進化も管理しているだろうし……。でもなら、なんで……)

 

 イレギュラーなことばかりが起きている気がする。今までの定石がことごとく崩れているため、対処が後手後手になっている。

 

 (……分からないことが多すぎる。今は村の皆の安否の確認に、生きていたら状況の確認、その後に対処をした方がよさそうかな)

 

 そうと決まれば、とリディアは自由落下して村の中央部、避難施設前に降っていく。直前に止まり、同時に周囲をうろついているゾンビを蹴散らす。


 周囲の安全を確保し、避難施設の扉の前に立つ。

 

 (……感知には反応あり。大勢いる。……無事、だよね?)


 少し、怖い。もし開けて中に生存者が一人もいなかったら。そう思うとリディアは怖くて扉に手を当てることができなかった。

 

 でも、いつまでも迷っていられない。

 

 リディアは、人間のみが開けられる特殊な魔法がかかった扉を開け放つ。

 

 そこにいたのは――。

 

 「リディア様!?」「リディア様だ!」「やはり戻ってきてくださった……」「リディアお姉ちゃん!」「これで、もう安心だ……」

 

 無事な村人達だった。怪我をしている者も少なからずいるようだが、見た限りでは重傷者はいない。

 

 ――良かった、そうリディアは心の中で安堵する。

 

 いや、まだ安心出来ない。パラサイトが発生した以上、わずかな怪我でも致命的な事態に陥りかねないのだ。


 「遅くなってごめんね。……着いていきなりだけど被害と今の状況について教えて」

 

 「分かりました。スーヤ!」

 

 兵士の一人が人混みの中に呼びかけると、すぐさまスーヤがやってくる。

 

 「ご無事で何よりです、リディア様」

 

 スーヤが頭を下げると、状況の説明をしてくれる。

 

  どうやらあのヴォーメットが言っていた通り、何故か子供達がゾンビ化したようだ。それも異常進化していたとのこと。不意を突かれたこともあり、スーヤ以外の隔離施設を担当していた兵士は全滅。また結界の柱防衛は南西は守り切れたようだったが、南東は全滅してしまったようだ。そこから一気に瓦解してしまったらしい。

 

 「……。そっか、亡くなった子がいるんだね」

 

 兵士を担当している者は、基本的に未婚の者が多く、今回亡くなったのも配偶者や子供はいなかった。だが親や兄弟はいる。怯えている村人の他に、一層暗い顔をしているのが家族を失った者なのだろう。

 

 ……油断はしていなかった。楽観的に物事を見ていたつもりもなかった。

 

 だけど、被害を出してしまった。

 

 要因は色々ある。けれど一番の問題は自分のせいだとリディアは改めてそう認識する。

 

 やはりあの骸骨を野放しにしてはいけなかったのだ。とある理由から、バックアードが何もせずともこの森はアンデッド化する死体そのものが無制限に増えてしまうため、どうしてもアンデッドを支配出来る存在が欲しかった。だからあの骸骨を味方にしたかったのだ。

 

 根気よくいけば味方に出来ると思っていたのだ。

 

 魔物は話しが通じない邪悪な者ではない。とにかく強くなろうとする戦闘民族ではあるものの、信頼関係は築けるのだ。

 

 今までリディアは魔物――竜やヴァンパイアなど――と人類の味方として戦ったことがあった。アンデッドは今まで友好関係を築くことはなかったが出来ないことではないと思っていたのだ。

 

 でも、バックアードは常に敵意を向けてきていた。

 

 それは生者に対する嫉妬か本人の邪悪さ故か。……恐らくどちらもあったからこそ、だろう。

 

 バックアードの本質を見極められなかったことが大きな敗因だ。

 

 もう、バックアードとは敵対するしかない。完膚なきまでに滅ぼす。そして事が終わったのなら、自分自身に対して何らかの『罰』を与えなければならないだろう。

 

 リディアはそう決意し、――とりあえず今は、村の安全を確保しようと思う。

 

 「それで今は私の帰りを待つために立てこもっていたんだね」

 

 「そうです。幸い『彼』のおかげで大量のゾンビに施設を囲まれることはありませんでした」

 

 「『彼』?」

 

 「本当なら俺も死んでいたんですが、『彼』――アハリートに助けられたんです」

 

 「……アハリちゃんが?」

 

 リディアは驚きのあまり目を見開いてしまう。

 

 スーヤが言うには、彼とミアエルが危機的状況に陥った時に現れて助けてくれたのだという。しかもその後、避難施設にゾンビの大群を近づかせないようにと遅滞行動まで請け負ってくれたのだ。さらに彼は――。

 

 「……パラサイトに進化……」

 

 「……彼には頭が下がります。彼にとっての一番のデメリット――どんな集落にも入って生活出来なくなるのを理解した上でその選択をしてくれたんですから。もしアハリートが望むのなら、この森で暮らすことや……場合によっては一時的にでも村に入れるよう掛け合っていこうと思います」

 

 「私も出来ることなら協力するけど……こんなことがあった今だからこそ、難しいんだよね。……パラサイトだと『解毒』は効果がないから」

 

 「……それは重々承知してます」

 

 スーヤは決意に満ちているが、アハリートを村に入れるのは難しいだろう。村人らはアハリートに助けて貰ったことは知っている。だが感謝をしてもアハリート自身の跳ね上がった危険性に目をつむるのは無理だ。

 

 どちらに悪意がなくても、きっとどちらも強いストレスを感じてしまうに違いない。

 

 その先に待ち受ける未来は、悲惨なものになってしまうだろう。

 

 けれど、恩人を見捨てる真似はリディアには出来なかった。だからこの問題が解決したのなら、彼に『提案』をしよう。色々とリディア自身の思惑も絡んでいるものの、せめてアハリートを孤独にしないように心がけるつもりだった。

 

 リディアは吐息をつく。

 

 「さて、そろそろ私の仕事をしないとねえ。殲滅しようと思うけど、アハリちゃんを巻き込みたくないんだよねえ。連絡は取れる?」

 

 「連絡は取れませんが、彼にも聞かせた作戦はあります。なのである程度の位置は把握出来るかと。それと彼の能力なら基本的に時間が経てば経つほど、無力化は完了するのでリディア様には殲滅ではなく、上空から上位個体の各個撃破をお願いしたいです。この避難施設に大群が押し寄せてきたら、その時は殲滅を頼みますが」

 

 「いいよん。詳しく作戦を聞かせて?」

 

 リディアはスーヤが組み立てたという作戦を素直に聞き入れる。

 



 ――そうして出撃したリディアは、順調に上位個体を撃破していき、全滅させることに成功する。それにより、ゾンビ達の大群としての力は大幅に落ち、二、三時間程度で村から撃退することが出来たのだった。


 被害は出たものの村は壊滅の危機を免れることができた。

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