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大人は遊ぶのにも一苦労

 俺はワームくん達を回収がてら、オルミーガに近づく。ぺたり、ごっくん、ずぼんと三人を回収して、オミクレーくんをのぞき込むようにして、オルミーガに一番近い上半身をかたむける。


《あら、結構手加減したのね》


「ガキ相手に本気出すほど、大人げなくねえっての」


《本気は出してはないけど、遠慮えんりょはしない感じ?》


 オミクレーくん、めっちゃボコボコになってますやん。


「こういう生意気なガキはどっちが上か、わからせる必要があるだろ。弱い奴にめられるのが一番、駄目だ」


 やっぱり上下関係に厳しいところはヤクザかヤンキーっぽさがあるね。まあ、戦いを生業なりわいにする以上、強さってのは重要だ。それにオルミーガは副隊長っぽい、上に立つ存在でもあるようだから『格』とか重く見てるみたいだ。


《……。ところで子供ってわかるの? 吸血鬼って見た目と年齢ねんれい違ってたりするけど。そこにいるダラーさんやサンは……どんな感じ?》


 俺がそう言うと、耳が良いダラーさんとサンが反応して、耳をそばだてた。オミクレーくんと戦闘が始まった時、ちょっと離れてもらったので距離がある。なのでオルミーガは二人のそんな細やかな反応は見えなかったみたい。そもそも見てないし。


「…………。長命種はわりと見るけど、仮に見た目が若くても振る舞いが違うんだよ」


 あっ、振る舞いなんだ。マナがくさってるとかではないのか。


「で。こいつはまんまガキ。下手すりゃ二十年も生きてねえだろ。……で、あいつらは……100年以上――少なくとも見た目の適齢期てきれいき過ぎてんだろ」


《実際は千年くらいらしいっすよ。四天王の直系の眷属けんぞくらしいっす》


「……大物じゃん。てか、……駄目だろ、余計」


 オルミーガが深いため息をついた。うん、言ったら駄目だね。魔族側のヘイトが溜まっているのは、四天王達上層部だから直系の眷属とか、一番仲良くしちゃ駄目な部類だろう。


《ちなみにダラーさんは別に高い地位とかにはいなかったらしいっす。そこのサンっていうのが四天王プルクラさんの記憶と性格をぶち込まれて、『鳥籠の魔神』ことアスカに特攻されそうになって、ついてけねーってなったらしい。まあ、止めることも出来なかったチキンですがねえ!》


 俺がそう言うと、ダラーさんはずかしそうに顔を手でおおって、サンに苦笑いされながら背中をぽんぽんと叩かれていた。


《うぇーい》


 んで、アスカが呼ばれたと思ったのか、俺の身体からピョコリンと胴体を出し、両手の親指と人差し指、小指を立てるデヴィルホーンをしながら現れた。


《ちなみにこのハンドサインは相手が大好きですと象徴するものです》


「みえねえけど」


 舌を出して、黒目を上に向けてますものね。


《アスカ、その心は?》


《虚無》


《悲しい。意図は?》


《仲良くしたい。ラブ、ユー》


《ですって。ちなみにですが、あそこにいる人間の女性はアスカと闘った元勇者で、『狂界』の中からなんやかんや復活出来ました。しかもラフレシア……フラワー……ああ、死神妖精の親友なのですよ》


「…………。あー……情報過多すぎんだけど」


 勢い良くぶっ込んでみました。攻めの基本は情報過多にすること! そうして、意識をいたところで意外なものをぶっ込んでトドメをすのだ!


《やっぱり?》


 まあ、俺に刺す術はないから、何も出来ないんだけど。ただ本当のこと言っただけです。


《でもとりあえず知っておいてもらいたいから、言ったよ。別にこれで仲良くして、って言うつもりはないけど最低限の背景は知っていてもらいたいからね。ダラーさん達とオルミーガに対する俺の誠意みたいなもんと思って》


「……」


 オルミーガは俺をジッと見つめていたが、こしに手を当てて頭を振るとため息をつく。


「あたしも善処はするよ、じゃあ。必要な最低限の会話くらいはする」


《うん、それでもいいよ。ちなみに派閥っつーか、この集団で仲良くするべきなのはイェネオさんだな。死神妖精の親友だから、上手くすれば動揺はさそえるからね》


《ただ十中八九、私の記憶から読み取った偽物みたいな扱いはされるから、ティターニア様とは戦えないけどね。……それに前線に出して私達に殺されたら、目も当てられないことになるから》


 アスカのとなりにこれまたピョコリンとラフレシアが生えてきて言う。俺が使ってる声と同じ声が違うところから聞こえてきたためか、オルミーガが一瞬混乱したように俺とラフレシアを見て――「ああ」とすぐに納得してくれた。


「……女神と戦うためのカードはそろってる感じなんだな」


《魔族側にとって有益なのはイェネオさんとこのミチサキ・ルカだと思うから打算ありきで関わってもよろしいわよ》


 俺がぽんぽんとミチサキ・ルカの脇腹を叩くと、仏頂面ぶっちょうづらのミチサキ・ルカに脇腹にパンチを食らってしまった。


《あと、俺からお願いしたいのは、このアーセナル・ミネルヴァ――アルスで良いよ――に戦闘訓練して欲しい感じかな》


「あぶ!」


 アルスがいつもの気怠けだるげな雰囲気ではなく、やる気に満ち溢れた顔で、ビッと片手を挙げた。それに対してオルミーガはいぶかしげな顔になる。


「なんでだよ。お前、そういうの出来ないの?」


《気付いてると思うけど、俺はスキルに頼った戦い方しか出来ないんですよ。で、これからもそれに頼った戦い方が主流になると思う。てか、きたえてるヒマがないから、どうしようもないんだよね》


 やれるならやりたいけど、そっちに時間を割いた結果、何もかもが中途半端になるのが一番良くない。


「……今更ながらレギオンって……全部の上半身が同一個体みたいなもんなんじゃねえの? あのあたしの前でした馬鹿みてえな寸劇って……今思えば、そうだろ。今見た感じ、明らかに一つの意思で支配してるだろ」


《ううん、別個体だよ。こいつら、制御してようやく大人しくなってる感じ。だから俺が胴体を欠損して再生した直後とかはあんまり近寄らない方がいいかも。身体の制御とか普通に奪ってくるし》


 結構、不安定なんだよね、レギオンっていう存在は(寸劇は嘘だったけど)。ブラーカーさんと戦った時は、上半身共が『死にたくない』っていう気持ちで統一されていたから、ある程度は戦えていたけど……ちょっと強い程度の個人や集団相手だと気持ちがブレッブレになって、暴走しちゃいそう(ワームくんを生成するひまがないと暴走はまぬがれない)。


 そこら辺の対策したいけど……どうすれば良いんだろうね。やっぱり進化か?


《ちなみに上の奴らは魂があるせいで、変に共鳴して狂ってるだけなんだ。下半身の四人は問題ないよ》


 四人がパタパタと平静アピールをする。実に素晴らしい理性(あふ)れた動きをする。


 オルミーガは四人を見渡し――ラキューに視線が止まる。


「そういえばなんで豚?」


《さあ? 進化したら生えてきた。豚に変身しまくってたからだと思うけど。んで、ラキューは見た目こそ豚だけど、しっかり自我があるし優秀だから見下さないでやってね。さっきもよくやってたでしょ?》


「ぷぎゃ!」


 ラキューが顔を上に反らす。


「……確かにさっきのは上手いとは思うけど……」


 そう言いつつ、オルミーガはラキューのほおまみ、伸ばす。


「でもさすがにムカつく」


「ぷぎー!」


 イヤイヤと頭を振るラキューだったが、残念、オルミーガの魔の手からは逃れられないのだ。








 まあ、そんなこんなありまして、オルミーガとダラーさん達の軋轢あつれきは……別に解決してないけど悪くはならないだろう。細かい関係改善を出来る余地は残せたので、あとはダラーさんやサン次第だ。


 最悪、駄目そうだったらオルミーガかダラーさんらを西に先行してもらって、なんやかんやしてもらうのもありかもしれない。オルミーガだったら、西の魔族達に掛け合って貰ったり、ダラーさん達ならミアエルに付き従う感じがベストだろうか。


 そこら辺はこの混成部隊の空気感を見て、判断しよう。


 けど、このまま放置するのも、駄目だと思う。一応、俺はこの部隊のリーダーでもあるからね。改善出来そうならやるのだ。


《それでは皆で囲んでゲームをするか》


《そんな簡単にできるわけないでしょ》


(もう少し考えろよ)


「素人がよぉ」


「ふぁ……」


 思わず自分の声帯使って鳴いちゃったじゃないか。ガチで泣いて、いたたまれない空気にしてやろうか、この野郎共……!


 と、まあ、考えなしではない。俺はここで皆が遊ばないといけないカードを切るっ。


《タケノコニョッキやる人、この指とーまれっ!》


《……! わぉ!》


「……! やる!」


 はい、二人()れました。アスカとイェネオさんです。もう二人して俺がみょーんと伸ばした指にとまりに来ましたね。くくっ、これぞまさに飛んで火に入る夏の虫だ!


 イェネオさんももちろんだけど、アスカもとても興奮した感じが見て取れる。やっぱりやりたかったんだね。ピュアよね、この子達(まあどっちも見た目より実年齢がかなり上らしいが童心とはいつまで持っていてもいいものなのだ)。


 俺はオルミーガとミチサキ・ルカ、ついでにラフレシアに向かってあごを引いて顎肉をたくわえる笑顔を見せる。


 無論、三人に引っ叩かれましたがね。


 なんであれ、両陣営にとって重要なアスカと魔族側は仲間に引き入れた方が良いイェネオさんが遊ぶことになりました。つまりここで二人をないがしろにしたら、それだけで心証が悪くなるというもの……!


 あと仲間はずれは悲しい気持ちになるから、ちゃんと自分達から混ざれなさそうなダラーさん達も誘います。


《おら! ルール教えるから、そこの吸血鬼達も混ざれコラぁ!》


「な、なんで喧嘩腰なんだ?」


「私達が不甲斐ないからとか?」


「……! うぅ……」


 おろおろするダラーさんにサンは鋭く刺す。うん、やっぱりダラーさんは尻に敷かれるタイプだわ。それと意外にバシバシした物言いするんだね、サンって。


 んで、二人は俺の元にやってきます。


(んで、ミチサキ・ルカはする? てかわかる? タケノコニョッキって)


(おまっ、なんてこと……! ニョッキのルカちゃんと呼ばれたあたしに向かって……!)


 知らんがな。あと前世出てますよ。


(じゃあ、やる?)


(ふっ、素人共に教えてやるよ。『本物』ってやつをよ……!)


 手加減してあげてね。


 ミチサキ・ルカは俺からブチッと離れて、歴戦の兵士の面持ちでのぞむ。


 俺はオルミーガを見下ろす。


《やる?》


「……」


 オルミーガは少し複雑そうな顔で頭をき(髪の毛あるよ)、小さくうなる。


「少しだけ」


 そう言って混ざりました。やったね。


 ついでにディーヴァとラキューもやりたいそうなので、参加させます(ラキューには両脇に触手をつけておきました。コールはディーヴァと交代で『孤苦零丁』の使い回しをさせる予定だ)。


 んじゃあ、オミクレーくんが起きるまでを目安にやりましょー。

次回更新は1月21日23時の予定です。

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