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ネタにマジレスやめてくださいっ!

 俺の視線の先には、向かい合う二人と一人がいる。


 ダラーさんにサン、そして対するはオルミーガだ。ダラーさんらはあわあわしてどうしたものかわからない様子があらわになって、オルミーガは敵意をかくすことなく二人をにらみ見据えている。


(さぁ! 皆さんご覧下さい! 大っ変っ! 盛り下がって参りましたぁ! 会場の空気ひえっひえですよ! ふぅうううう!)


 俺はこの凍り付いたような空気に興奮してます。良いですよね、どうなるかわかっていたのに、この状況をセッティングした挙げ句に第三者のように全く関係なく振る舞うのって。たーの☆すぃ!


(クズだ……)


 ミチサキ・ルカが愕然がくぜんとした感じでつぶやく。


《皆、見て。これがクズっていうものだよ。こんな駄目なのになっちゃいけないからね》


 そしてラフレシアは俺の饅頭下半身の前につくと、アルス達をさとしだした。


 ラフレシアは俺という反面教師を活用して、教育してくれるらしい。俺と違ってまともな魔物になって欲しいものだ。


 さて、冗談はこれくらいにして監視はしっかりとしていかないとな。


 さすがにオルミーガには吸血鬼達と仲良くしなくては良いけど、殺しにかかるのだけはやめてくれとは伝えた。そんで「んなに血の気多くねえよ」とは返してくれたよ。まあ確かに不穏な空気は出しているものの殺意はない。


「…………」


 そもそもしゃべらないし。


 なのでダラーさんらもどうして良いかわからないみたいだ。そんでもって俺もどうして良いかわからないのが本音なので、知らんふりで楽しんでる次第だ。とりあえず殺し合わなきゃなんでもいいよ。


 でもダラーさんにチラチラ見られてるので、なんとかせにゃならんかもね。


 こういう場合は、外部から何かしらの思わぬアクシデントが起これば状況を動かすかぎになる。ちなみに俺がやると何もかもがわざとらしく見えるので、出来ません。なーのーで、天に祈ってます。


 幸い、さっきから『不穏ななんか』は聞こえてきているんだけどね。そろそろだろう。


「はははははははっ! 俺が最強だぁあああ!!」


 とち狂ったような笑い声に続いて馬鹿でけえ馬鹿みたいな発言が爆発する。


 これは誰かって? オミクレーくんです。


 魂ぶっ込んでレベル上げして、見事デイウォーカーになれたみたい。けれどやっぱりちょっと魂があっぱっぱーになっちゃったみたいだ。ラフレシアいわく、幸いあの程度なら調整すれば後遺症もなく活動出来るらしいので抑えておけば問題なかったらしい。


 さっきまで気絶させたっぽいけど、ダラーさん達とオルミーガの睨み合いが始まってちょっと経ってすぐに目を覚ましちゃったんだ。


 イェネオさんに頑張って貰ってたけど(普通に問題なく抑え込めてた)、今まさに離してもらうように頼んだのだ。


 そして、俺へ突撃してくるオミクレーくん。正確にはラキューめがけてだろうけど。


(油断せずにおちょくりながら逃げ回れ。オルミーガにちょっかいかかるようにしてね)


「ぷぎ!」


 ラキューがめずらしく乗り気な声を上げて、地面に降り立つ。んで変顔して「ぷぎゃあああああ!」とオミクレーくんを煽ると「あああああ!?」とまんまと引っかかってくれましたよ。


 少年の怒声と楽しそうな豚の鳴き声が辺りに響き渡る。


 そんで豚と少年は空気を読まずに、ダラーさんとオルミーガの周りをグルグルと回り出す。


 騒々(そうぞう)しいせいで、オルミーガが微かに唸り声を上げてるよ。よしっ、そこだっ、たたみかけろラキュー!


 ラキューがダラーさんとオルミーガの間で立ち止まり――ちょっとだけ尻を上げて、ぷっとおならをする。


 しかも、連続で――おならの演奏をする。あっ、一応無臭っぽい。しっかり聞いて貰うためには臭いはノイズだからね。


 ぷーぷぷぷぷっ、ぷーぷぷぷぷっと何気にリズムに乗ったおならを繰り返していると、さすがにオルミーガも鬱陶うっとうしくなってきたのか、ケリをしてきた(小突く程度ですごく弱い)。


 それを華麗かれいにかつ、跳ぶように大きく前進して避けるラキューだ。同時にそこにオミクレーくんがやってくる。


 タイミングバッチリでオルミーガの足に引っかかってオミクレーくんは盛大にコケてしまう。うーむ、やっぱりラキューってセンス良いねえ。狙ってやったのなら大したものだ。


 ラキューは役目を終えたため、俺の横に戻ってきた。しかも、あんだけ目立っていたのにも関わらず、存在感を感じさせないほど自然にだ。俺もソッとラキューをくっつける。これぞミスディレクションっ!


 はい、現場は静まり返って、視線は一点に向かっております。


 オルミーガは、あー、みたいな面倒くさそうな顔をしており、ダラーさんらはさらに焦っている。イェネオさんはラキューが逃げ回っている時からケラケラ笑って楽しそうだったよ。


 んで、オミクレーくんは静かに立ち上がって――、


「んだぁこの野郎おおおおおおおおおお!!」


 まあ、順当にキレてましたよ。


 オルミーガは軽いため息を一つつく。やっぱり『本物』は余裕がありますね。俺と時とは違って、多少なりと自分に非があると思ってるのか、わかりやすい威圧はしない。


 オミクレーくんが焦点がブレブレの目でオルミーガを睨み付けて、グイグイと近寄りメンチを切る。


 おー、良かった良かった、胸ぐらは掴まなかったよ。やってたら、オルミーガのどっかがポロリして、オミクレーくんのどっかがポロリかゴキリしてたかもね。


「やんのかあ!?」


「おう、上等だ。やってやるよ、クソガキ」


 オルミーガはどうやら冷静だが普通に喧嘩は買うようで。


 ということで、喧嘩開始でーす。








 で、どうなったかというとー……もうぼこっぼこですよ。オミクレーくんが。


 顔をすんごいらしながら、仰向けに倒れている。まあ、これまた順当な結果よね。


 ちなみにオルミーガは武器を使わないどころか、二本の腕だけで圧勝していた。多少はガードするけど、一歩も退かないその戦闘スタイルはたぎるものがあるね。


 オミクレーくんも(たぶん)分が悪いと途中でわかっただろうに頑張って応戦していたけど、一発、仮に当てても全然ダメージ入ってない感じだったからなあ。


《重力か、重量を操作できるね、やっぱり》


(しかも『魔力操作』もそれなりに上手いのか、自分から離れたものにもしばらく付与出来るっぽい。さっき、ショットガンぶっぱなされた時、かなり地面深くにめり込むくらい効果が続いてた)


 皆して、よく観察してるねー。俺もなんかないかしら。


(すごくはやくじめんにおちてた!)


 もちろん冗談ですよ。――けれど、


(……。まあ、うん……いや――うん――)


《…………。マスター、あのね……》


 ミチサキ・ルカとラフレシアがなんかすごい気をつかうような接し方をしてきた。


(いー!)


 俺は思わず威嚇いかくしてしまう。


 うっせえ! 哀れんで説明しようとするな! 知ってるもん! そんな腫れ物を扱うみたいな感じになるなや! そういう扱いって、俺だって、されたらすごく傷つくんですからね!


 ネタにマジレスよくないと思いますっ!


 まあ、この場合、ネタの種類を間違えた俺にも非があるけど。やっぱり馬鹿ネタはもうちょっと関係を進めてからだな。言い方を変えただけじゃ駄目だな。身内ネタがすべるのはこういう『相手がこっちとそのネタに対する反応を知らない』ことで起こるから。なんだかんだ言って、この二人とは数日か数ヶ月程度の仲だしね。


(……あんた、今まで――前のループまで俺と接する時は結構真面目な比率が多かったから、パロネタ以外のボケってわからないんだよ)


 ミチサキ・ルカが今、言っているように、まさにその通りだったんだろうね。……あと前のループではミアエルが死んでからの付き合いだし、ミチサキ・ルカが復活したらボケる気力はないだろうからなあ。


 ちなみに馬鹿ネタは馬鹿として扱われる可能性があるので注意が必要だ。ようは無意識にでもあなどられるからね。それの何が悪いのーっていうと、ラフレシアとかミチサキ・ルカはともかくラキューに侮られるともはや生物としての格が終わってることになるじゃんよ。


 それと馬鹿ネタをする側 (この場合は俺)が半端に知識があると、今の俺みたいに「いー!」ってなってストレスが溜まるからそこも気をつけないといけない。


《あいむ、うぃんなー!》


 ああいうオルミーガの片腕を持って、勝利宣言してるアスカみたいに天然なら問題ないけど。


 オルミーガの隣には俺からいだしたワームくんが歯をガチガチとかち合わせて鳴らして――たぶん、ゴングの真似事をしていた。あとヒウルが、オルミーガの頭の上から光を落として、スポットライトみたくしてる。


 楽しそう。ああいうの頭空っぽで好き勝手に振る舞うの俺好きー。だから俺、子供とか動物とかと遊ぶの好きなんだなーって改めて思う。


《アスカー。アイムだと、アスカが勝利者っぽくなるから、もうウィナーだけで良いと思うぞー》


 なんか名前とか色々と付け加えるとかの話は、必要ないのでもはやはぶく。こういうのは雑で良いんだよ、雑で。


《おーぅ。――うぃんなー!》


 うぃんなー美味しいです。


 ちなみにオルミーガはアスカに腕を掲げられて、普通に為すがままになっていて、――なんか意外だ。……あんまりアスカには嫌悪感はないのかな? 始祖なのに。さっきもほっぺむにむにしてたし。


(そこら辺はたぶん、フーフシャーに釘を刺されたからじゃないか? 今思ったように始祖だから、そっちと仲良くして交渉を有利にしようとしてるんだろ)


《それが妥当ではあるね。切り替えが出来る思考はチンピラより軍人寄りかも。結構、強かだ》


(……そうなのか)


 アスカの件はマジで知らんかった。また俺失言しちゃったみたいね。……あー、まあ、うん。確かに俺を懐柔するよりアスカの方がよさそうではあるね。


 ……つまりこっからは、オルミーガとダラーさん達による、アスカ仲良し争奪戦の始まり!?


(………………ああ、なるほど。アスカをダシにすれば、オルミーガも良い感じになってくれるか)


《そういう悪知恵をすぐ思いつくのは素直に尊敬する》


 どうも。じゃあ、それをすぐに実行に移すか。

次回更新は1月14日23時の予定です。場合によっては早まることがあるかもしれません。

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