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ファンタジーはやっぱりエグいのです

 今、過去一気まずい場面にいるかもしれん。


 フーフシャーさんらと対談していた大きな土のテントにまたよびだされた。


 なんかね、フーフシャーさんのお姉さんが死んでしまったんだって。


 まだ正式な発表は伏せているけど、普段冷静かつ温厚なフーフシャーさんが怒鳴っていたため、軍団全体に動揺が走っていた。


 俺もビクビクしている。とりあえずラキュー達は回収して饅頭下半身に張り付けておいた。……何が起こるかわからないからね。最悪、いきなり『敵陣のまっただ中』にいることになりうるかもしれないのだ。


 ……それは、ミチサキ・ルカの返答次第だ。


 ミチサキ・ルカの意識が入っている身体は俺から離れて、さっきまで俺が面談していた土のテーブルの前にいる(俺はその後ろに控えている)。


 フーフシャーさんはピリピリとした雰囲気をかもし出し、ブラーカーさんは事態が飲み込めていないのか、困惑し、ドラゴン風味のお人はどんな感情を出せば良いのか困った様子だった。


 対してミチサキ・ルカは神妙しんみょうそうな顔をしている。


 このひりついた空気が漂う中、口を開いたのはフーフシャーさんだ。


「知っていたわね?」


 すんごいとがめるような言い方だ。本来、言いがかりも良いところなはずだけど、ミチサキ・ルカはそうじゃない。


 だって、ループをしているから。


 200年以上生きた王種が死ぬというのは、イレギュラーと言ってもいい。そんな起こりえないことであるからこそ、起こってしまった事実は『起こりえる可能性が高かったかもしれない』のだ。


 何かしらの要因によって、それは必然的なものであると考えられるのだ。


「……なんとも言えない。……あいつの死因は光魔法か?」


「ええ。情報伝達の精度は低いから、誰かは知らないけど……ミアエルちゃんの記憶で見た、『あのクズ』で間違いないわ」


「……。『アレ』か。…………一つ言うと、生き残る可能性もあるんだ。ただ、どのみち光魔法を食らっているみたいで時間差で死んでしまうことはあった。……今回はその場合、アスカがいるから、助けられると思った。でもその前に死ぬのは……俺にはどうすることも出来ない。どういう行動の末に、そうなったのかは未だにわからないんだ」


 ミチサキ・ルカがため息をつく。


「どうしてあいつが『アレ』と戦うことになったのかは、わからない。どんな作戦行動をして、どうしてかち合うことになったのか……それさえ知ってればもしかしたら……。いや、でも俺の封印が解かれてから、最速でどうすれば、あいつを救えるんだ? あいつに情報を伝えるにしても、精度の低い情報でどこまであいつの行動を抑制出来る」


 ミチサキ・ルカは自問自答しているかのように言葉を口ずさむ。


「そもそも『アレ』が何を思って、あいつの前に立ちはだかったか……それともあいつが立ちはだかったか……それすらもわからない。原因が『アレ』側ならどうすることも出来ない」


 ミチサキ・ルカが深いため息をつく。


「……悪い。わからないんだ、本当に」


「…………」


 なんともいたたまれない空気が流れる。


 フーフシャーさんもこれには、もう責められないって顔してるよ。少なくとも、ミチサキ・ルカには悪意はないっぽいし。


(……いや)


 けど、俺の心情に反応するようにミチサキ・ルカが首を小さく横に振った。うむ? ちょっと不穏だぞ。何考えてんのよ。


(……仮にあいつらの姉――ライラが死ぬ方が都合が良い、って俺が思ってたらどう思う?)


(サイテー)

《サイテー》

《サイテー》


 俺とラフレシアとアスカが次々に同じ言葉を口にする。


 それを聞いて、ミチサキ・ルカは苦笑してしまう。


(だよな)


 そう静かに言ったあと、意識をフーフシャーさんに戻した。


「フーフシャー。……あいつは……ライラの命は誰かにたくされたか?」


「……。ええ。あの『クズ』にだけは渡らなかったそうよ。……なんでも、『お兄ちゃん』……ルキフェルくんが継いだみたい。名前はしっかり伝わってこなかったけど、副隊長とかに託されたわけではないのは確かね」


「……そうか。あんたらには嫌な結果だろうけど最悪は防げてる。ルキフェルは、この世界で唯一の新魔法、新スキルの『闇魔法』が使えるかもしれない。そのトリガーのレベルアップと進化があいつの魂になるかもしれないんだ」


 闇魔法……光に対を為す闇!的ななんかアレ? でも大抵、闇魔法に対抗出来るのは光魔法、みたいな設定が多いよね。対抗より、むしろ打倒される側っぽいのが闇のイメージだ。


「…………。それを取らせるために言わなかったわけ?」


 フーフシャーさんの目が細まり、ミチサキ・ルカをにらみ付ける形となる。


「否定はしない。俺にはこの道を選ぶしか方法がなかったから。もしもう一度、この道を辿たどれたのならどうすれば良いか教えて欲しい。――ライラに直接転移は出来ないんだろ?」


「…………向こうに転移を出来る人材はここにいないわ」


 ジルドレイの吸血鬼はぽんぽん転移を繰り返していたけど、あれは異常なんだよな。実際の所、空間系の適性以外にも魔力の出力と容量がかなり高め&多めでないといけない。


 そんでもって、転移するためには特定の場所ならともかく、個人に転移するには魂関連のスキルにも適性がないといけないのだ。


 基本的に魂系のスキルってアンデッドが持ちやすいけど、アンデッドって生き物に対して敵対的だから仲間にしにくいらしいんだよね。


「それに俺がこんなに早く復活出来たのは、むしろ奇跡的なんだ。初めてと言ってもいい。それまで魔界に行って……『あの魔神共』のどれかを相手にするしかなかったんだ」


「……あれを……そうなのね」


 フーフシャーさんから怒りがやや引く。どうにも魔界にいる三体の魔神はかなりやべーみたいだ。ブラーカーさんでさえ、うわあみたいな表情がわかるし、ドラゴン風味のお人も同情的だった。


 フーフシャーさんは額に手を当てて、深いため息をつく。


「いいわ。今回は不問にしてあげる」


 辛いだろうに、そう言えるフーフシャーさんは本当に優しくて理性的な人だと思う。だから一応、この人のために『クズ』らしい光の種族を苦しませて殺してやろう。


(ちなみに全ての出遭ったルートでは逃げられてる。逃げしたあとはなんの噂も聞かなくなるから、野垂れ死んでいそうだけど)


 マジかよ。……うーむ、気合いを入れないとなあ。場合によってはさっくり殺すか。ところでどうして逃げられるん?


(普通にセンスだけは良いから、シンプルに取り逃がすんだよ)


 ああ、わかってても対処出来ない一番面倒な奴ね。


「……ちなみにだけど、『闇魔法』ってどんなものなの?」


 フーフシャーさんがそう問いかけてくる。俺もそれ知りたーい。


「簡単に言うと『対光魔法』の力だ。光魔法を引き寄せた上で、吸収してエネルギーに出来る。上手くきたえれば、ティターニアにも対抗出来るかもしれない。……今回はその成長をさらに促す手段もある」


 ラフレシアですね。レベルアップを強制出来る力ってかなり貴重みたいね。レベルアップ用に魂を調整しなきゃ、普通に狂っちゃうからそりゃそうか、とはなる。


 でも、ラフレシア加入の条件って、ほぼほぼランダムなんだよな? 俺が偶然、ラフレシアが自死する前に『魂支配』をかけられたから、捕まえられただけで。


 ……次回ってあるのかな? ここまでこれる? それともここら辺でセーブするん?


(……しないな。本当にこの後、どうなるかわからないんだ。詰みがあったら、困るからこのまま進む。それに俺は再現性がない場合はセーブを頼まない。あんたの中に入るのも、条件を確定させてからウェイトに頼んだからな)


 ああ、まずウェイトさんに頼まないといけないのか。つまり俺がゾンビになった後から復活する間で『どこか選んでセーブする』っていうのは不可能ってことか。


(幸い、ウェイトは過去に戻る時に単語をいくつか持ち越せるから、確定ルートを発見さえ出来れば、時間指定さえすればいけなくはない。……そのルート時に俺がやらかしたら終わるけど。だから基本的には、よっぽどのことがない限りはセーブデータを更新するつもりはない)


 だよね。下手をすると詰みセーブになるから、先に進めての更新は出来ないと思った方が良いのだ。


(そもそもカエルの時点で今でもかなりランダム性があるんだよ)


 そうなんか。……では、頑張ってもっと再現出来るようにしろ。TAS技を使えるように頑張れ。最近のゲームだと人力でもTAS技使えるみたいだし、なんとかしてこのゲームのバグや仕様を見つけ出すのだ。んで、俺の魂の中で乱数調整するのだ。


 と、まあ、冗談だけど。


 ゲームっぽいところはあれど、それほど単純じゃないのよね、この世界って。


そこを間違えちゃあかんね。


 でも、うーむ……どうにかしたくはあるね。


(ラフえもーん、なんか俺も魂とか記憶持ち越し出来ないかなー)


 出来ないと思いつつも、某青狸に聞く眼鏡キャラみたいな感じにラフレシアに言ってみる。


《……》


 なんかアスカをスッと前に出される感じが魂の中で感じた。んでもって、アスカは得意げに胸を張った感じで言う。


《ますたーは実に馬鹿だな》


《出来たらとっくに『私達』がやってるでしょ》


 アスカに次いでラフレシアが続ける。


(そりゃそうか)


『私達』――つまりはタイタンの妖精達ってことだな。


《ループについてはウェイトのスキルを把握はあくしてるから知ってる。だから結界とかを作って試したけど、駄目なんだよね。理論的に出来はするけど、そもそも『制定者』やオーベロンを出し抜けないから無理なの》


 あー、無理っぽそう。そもそも考えた時点でアウトだ。明らかにループ用だとわかれば、『制定者』はその結界とかに手を加えてきそうだしね。


 まあ、なんか出来そうだったらやる感じでよろしいか。もし魔界とかに行って『制定者』と話が出来たら交渉でもして、俺も次に行けるようにすれば色々と救えるだろ。


 フーフシャーさんが腕を組んでかすかにうなる。


「そういうことなら、保護を優先させた方が良いかもしれないわね。……アハリートくんの拘束時間を減らして、少しでも早く西に行けるようにしたいわね。ちなみに人狼の国によらない選択肢は――」


《ねえです》


「そうよね」


 何気に頑固な俺にフーフシャーさんは苦笑するしかない。


「それなら、まあ良いわ。準備が出来たら出発してちょうだい。――それと、ルカくん。一つ訊きたいのだけれど……」


「なんだ?」


「ループのための過去の情報があるっていうのなら、その情報から誰かを――姉の情報を抜き出して生き返らせることが出来るんじゃないの?」


 おーっとこれはある意味では禁じ手では? 設定を突き詰めた場合に発生する、素晴らしいバグを見つけたな。で、どうなんです? 俺もなんやかんやと何度も再生されてるようですが。出来なくはないだろう。


「……結論から言うと、出来る。けど、やらない方が良い」


「どういうこと?」


「保存されてる過去の情報から、特定の何かを抜き出すのは無理だってわかって貰いたい。『制定者』いわく、出来なくはないが広大な荒れ地の砂から、気になる砂を一粒見つけ出すような苦行だからすこぶる面倒らしい。それに下手に手をつけると元の情報にバグが発生するかもしれないっていうのもあるらしい。だから『私はそんなもん頼まれてもやるつもりはないですがー』だってさ」


 うん、それは嫌がって当然だ。


「難易度は低くなる方法はあるけど、それは世界を一度、再現する――つまりどこかにこの世界を別に創り出すしかない。……人一人を助けるために、世界そのものを犠牲ぎせいにする覚悟があればどうぞ、と言ってた。ちなみに再現するためには、世界を創れるエネルギーが必要になる。……この世界以外の世界を見つけて犠牲にする必要があるんだ」


「……なるほど、それは……出来ないわね」


 フーフシャーさんは乾いた笑いを上げた。うーむ、救いがねえ。


 でも、こればっかりはどうしようもない。


 なんか、ままならんね。


 ……とりあえず今は、これより酷いことにならないように動こう。……魔王様についても、これ以上フーフシャーさんらが失わないように俺が手伝えるなら何かしら力を貸したい。


 でも今のところは大した力添えは出来そうにない。やっぱり進化とか新スキルを手に入れてみようかなー。

次回更新は12月24日23時の予定です。

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