彼女はいつも賽に身を委ねる
オルミーガを仲間にした! てっててーん!
はい、ということで連れてきます。西の共和国に行ったとき、たぶんそっちの魔族とも合流するだろうから、滞りなく話を進める人が欲しかったのだ。
あと、殺すことに理性以外の躊躇がないのがありがたい。ダラーさんやサン、イェネオさんとかには獣人を殺すことは頼めないからね。
そういう意味では矢面に立ってくれるオルミーガがいるのは助かる。
……そもそも俺の仲間って、上半身と豚を除いたら、殺しが出来ない人しかいなくない? フェリスは普通に出来るだろうけど、さすがに今回西にはいけないからなあ。
《よろしくねっ》
俺は片目をつむって、舌をぺろりんちょと出した表情をオルミーガに向ける。
「うがるるるるるるるる……!」
蟻のくせに狂犬みたいな唸り声をあげやがる……!
ちなみにオルミーガの口の形は人間っぽくて、歯は犬歯のような鋭い歯が多めで肉食っぽさが見て取れる。……クワガタっぽい牙はなかった。
改めてみると、蟻のお尻のぷっくらと大きい部分も……あるにはあるけどすんごい小さい(尻尾の退化した人間の尾てい骨みたいな感じになってる)。身体の形状はほぼほぼ人間……ていうか、二足歩行に特化した形になってる。
「あぶぶ、あぶぶ、あぶ」
んで、そんなオルミーガの近くをアルスがうろちょろしています。言葉を発せないから、陰キャっぽい挙動になっちゃってるよ。
《その子と仲良くしてあげてね。見た目と違って、そんな危なくないから》
アルスの見た目は全身白濁色のガリガリ、赤目の禿頭です。そして全裸。かなりヤバい見た目をしているから、普通に避けられてもおかしくはない。一応、アンデッドだし。
……ただ、アルス達ってアンデッドだけど生き物に対して敵意は持ってないっぽいんだよね。たぶんアンデッド系が生き物に敵意を向けるのは、魂が壊れていることに起因するのかもね(感情が壊れているアスカという例外はいるが)。
「……アンデッドだよな、お前ら」
オルミーガは唸るのをやめ、あぶあぶしているアルスに近寄ると額を指でずんずく、つつく。
《俺はともかくとして、そいつらも問題ないみたい。だから等しく尊厳はあるのです》
だからそんなに、つつかないでやってください。
「だったら服くらい着せろよ」
《そいつら実は生まれて数日も経ってないんすわ。そんな時間なかったんですわ。あんたらが暴走してる時に進化して生えた子達なんすわ、そいつらって》
実はアルス達ってまだ赤ん坊なんですよね。
「…………。なのに喋れる奴は喋れて、それなりに理性もある? そんなのがポコポコ生えてくるとか……お前ヤバいよ」
うん、俺もそう思うわ。
ただ、アルス以外の下半身の上半身達にはノータッチだ。っていうか、まともな機能を持つのがアルス達だけで他は頭半分であるのがほとんどで、まともに思考出来る状態じゃないのだ。
たぶん、まともなのはそうそう生まれないと思う。
《あっ、服作れる人っています? 金貨ならあるんで、支払い能力はあるんですけど……》
お金を出すのに慣れてなくて、ちょっとビクビクしながら金貨が入った袋を取り出す(肉体に埋めてました)
「いや、なんで通貨持ってんだよ」
《色々あって、王子様とか助けたら貰いました》
「……どういうことだ」
オルミーガ、混乱す!
こんな見た目のアンデッドが(元はもっと人間らしかったが)、どっかの国の王子様と関わり合いになるとかありえないよね。まずさわりに無理がありすぎた。むしろ王子様に成り代わって国庫強奪したとかなら納得されそう。
「まあ、いいや。考えるのめんど。……どうせ数日ヒマだろうし、作ってる奴紹介してやるよ。……はあ、で、あたしは負けた上に生き残っちゃったこと旅立つまで延々といびられてるわ」
《俺の仲間をいぢめる奴は許さないぞっ、とかやります?》
「殺すぞ。……てか、性格変わってね?」
《元がこんなんなんです。さっきまでのはビジネス用に使おうかと思ってる『態度』です》
もうちょい調整が必要だと思うんだよね。どんな『まともな見た目』になるかによって、色々と喋り方とか変えていかないといけない。
うーむ、この鹿骨頭をベースにやると道化師っぽくなるかなあ。
まあ、なんであれ、異形頭は素晴らしいので鹿骨頭にするのだ。
ああ、胴体部分はスーツっぽいフォーマルなスタイルが最高かも。……そういう服ってどこで作れるのかしら。プルクラさんがそれっぽいの着てたから、場合によってはジルドレイに発注かけるか。『擬態』でそれらしいのが出来るなら、やりたいけどね。
そんなこんなでしばらく野営地で過ごすことになりました。一応、ちゃんとダラーさん達には連絡は入れたよ。オミクレーくんの無理矢理レベルアップの件もあるから、まあ、ちょうど良かったみたい。
とりあえず決闘をしたからか、最低限の警戒はされてはいるものの、敵意とかは感じられず嫌な絡まれ方はしていない。
少なくとも俺に魔族の方々が寄りつくことはなかったけれども、アルス達は普通に受け入れられてる。
特にディーヴァは陽の者っぽいコミュニケーション能力があるらしく、なんやかんやと会話を楽しんでるみたい。
あとラキューはそのまんまの意味で可愛がられてる。さすがに動物扱いすると怒るっていうのはすぐ理解されたので、撫でられることはないけどご飯を貰って餌付けされてた。
アルスは……何気に積極性があった。服以外にも何かを造り出すスキル持ちがいたらしく、そっちに興味が移ってる様子。俺も簡易工房っぽいところをチラッと見たけど、素材さえあれば、色んなものが造れるみたいね。
魔道具ではないけど、個人にチューンナップした武器を造るのが魔族では主流なよう。
てか戦場では、魔道具なんて簡単に造れないらしく、壊れたら使い物にならないからオルミーガが使っていたもののようなのが需要があるみたい。
ヒウルは、こっちはこっちで服飾に興味があったらしく、いつの間にかふんどし締めてたよ。絹製のつやつっやふんどしとかちょっと笑ってしまった。
んで、筋肉もりもりの人達と相撲みたいなことしてた。
皆、楽しそうで何よりです。
俺? 俺は色々と危険なので一箇所に留まっておりますよ。『同期』で周りの様子も確認出来るしね。
一応、ラフレシアは周知の存在なので普通に放ってます。アスカは元吸血鬼な上に、始祖であるから刺激しないように外出は控えてもらってる。さすがに俺でもそこら辺の気は遣えるよ。
ミチサキ・ルカ? そっちも好きにさせてる。あんまり積極的に外には行かないようだけど。……やはり陰なる者……!
(あってるけど、違えよ。そもそも二百年前から魔族とは付き合いがあったし、……ブラーカーの隊と一緒になったのはこれが初めてだけど、他は色々と見てるから必要がないってだけだ)
(単に見飽きたって感じ?)
(悪く言えばな。ループものの定番だろ)
そうですね。ちなみに説明を聞いた限りではミチサキ・ルカ殿がやっているのはループではなく――、
(うぜえうぜえ、ここでオタクを出すなあ)
とまあ、動けなくてもまあまあ楽しく過ごしているよ。
あっ、そういえば気になることが。せっかくだし、ループのことを訊いてみるか。
(最近の……この先でわかってる展開って何があるの?)
(ほぼざっくり言ったぞ。北のカーナーフ帝国が南下してきて、面倒くさい。西の共和国が荒れてて面倒くさい。東のタイタンがあるとき暴走して面倒くさい)
とにかく面倒くさいんですね。
(んじゃあ、情報を絞ると……西に行ったとき興味深かったのは?)
(……。興味深いことかあ。……基本的に俺を解放するために魔界に行くことがほとんどだったから、西はないんだよなあ。……稀に西に行くけど、大抵ミアエル関連で……それもゾンビ化とかした時に、なんかわずかでも記憶を取り戻すためっていうあんまり話したくはないことだし)
なるほどお。それは陰鬱になりそうだな。
(それと西は色々と死にすぎるんだよ。……特に『あいつ』は確率で生き残る場合があるけど……でも実際は……逆の方が俺にとっては……)
なんか深刻そうに呟く、ミチサキ・ルカだ。
悪いこと思い出させちゃったかしら。
(今から良い感じに導けたりしないん?)
(無理だ。西に干渉するのは基本的に遅いんだ。だからそこは運に頼る他ない。……それに今回はスーヤ含め、あっちに行ったからどうなるか予想がつかない)
ちなみにミアエルにはスーヤとクソガキこと侯爵令嬢のイリティがついて行ってるよ。三兄妹設定です。
三人とも優秀だから臨機応変に立ち回ってくれると願っている。
(ほんとにな)
そう言ってミチサキ・ルカはため息をつく。色々と知ってるって心労が溜まるみたいね。
で、その話題はそこで途切れて、あとは気にはしてなかったんだけれども……。
「ルカ! ミチサキ・ルカ! こちらに来なさい!」
――そんなフーフシャーさんの怒声が聞こえてさすがにビビる。
(なにやったん!?)
俺は驚いてミチサキ・ルカを見やるとミチサキ・ルカはすんごい疲れたような表情をして、深い深いため息をついた。
(……駄目な方だったか)
――そして俺らがフーフシャーさんの元へ向かうと、そこで彼女達の姉の『訃報』を知らされた。
次回更新は12月17日23時の予定です。




