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会話能力が元から壊滅的なんです

 殺意渦巻く魔族の皆様方から、少し離れたやや大きめの土テントの中に案内されました。どっかの遊牧民のテントみたいな大きさしてる。たぶん、ブラーカーさんみたいな身体が大きい人達用なのかな。


 身体が大きな俺も(ゆうゆう)々と(横がちょっと擦った。……ふくよかな子も想定してっ!)通って、腰を落ち着ける。


 んで、俺の前にはフーフシャーさんとブラーカーさんとドラゴン風味の人がいる。


 フーフシャーさんはさっきより気が抜けた感じがするけど、他二人は未だ俺に警戒心ムンムンである。まあ、おどしをかけちゃったし仕方ないか。


 こっからはあんまり刺激しないようにしないとね。


 フーフシャーさんが柔和な笑みを浮かべてくれる。


「はい、ここなら音も外にれないようになってるから普通にしゃべってもらって大丈夫よ。あっ、普通って言っても、ラフレシアちゃんの声でね?」


《ういーす。――えっと、どんな話かというと、単刀直入に言うと……そちらの魔王様が死ぬかもしれないっていうアレで――》


「なんだと!?」


 ドラゴン風味のお人がブチ切れました。開幕刺激しちゃったんですけど、俺の会話&説明能力クソかな?


 俺はフーフシャーさんを見やる。


《この場合って出だしをどうすれば良かったんですかね?》


「えっと……全貌ぜんぼうがわからないからなんとも言えないけど、そうね……どうしてそうなると思ったか、その理由を先に言ったらいいかもしれないわね。特に本筋の内容がショッキング過ぎる場合には」


 俺の変な質問にフーフシャーさんはちゃんと答えてくれる。……時々はっちゃけるけど根は真面目よな、この人。うん、確かに頼られて苦労しそうだ。


 はい、俺はあんまりフーフシャーさんに迷惑をかけたくないので、しっかりと考えます。


《んーと、ループ……じゃねえな……えっと、あー、ミチサキ・ルカって知ってます?》


「ええ知ってるわ」


 フーフシャーさんがうなずいてくれて、ブラーカーさんは「?」となっていたが、フーフシャーさんに「ほら、リディアと一緒にいて女神に挑む時、前線に立ってくれた男の子がいたじゃない」と説明するとしばらく考え込んで、「!」と気付いて頷いた。


 ドラゴン風味のお人は、首を傾げていたが、今詳しい話を尋ねるのは野暮だと思ったのだろう、口を閉ざして怒りをしずめてくれた(でも俺を見る目つきが鋭い)。


《そのミチサキ・ルカにきました》


「ああ、そうなのね」


「なる、ほど?」


「いや、待ってください」


 フーフシャーさんは合点がいった様子で、ブラーカーさんはクエスチョンマークを頭の上に浮かべつつもノリで頷き、ドラゴン風味のお人がさすがに置いてけぼりを食らうと思ったのか、待ったをかけた。


「ミチサキ・ルカという人物は…………えー、……リディア……古の魔女……女神にいどんだ唯一の『不滅の勇者』のことですよね? たぶん」


「そうそう。よく知っていました」


 フーフシャーさんが笑顔になって手をパチパチさせる。


「からかわんでください。……それでその『不滅の勇者』は……確か、女神にやぶれて封印されたのでは?」


「その通り。……それで、どういった解除内容で封印されたかはわかる?」


 その質問にドラゴン風味のお人は「いや」と首を横に振る。そんなお人にフーフシャーさんは人差し指を立てて、美人教師風の雰囲気をかもし出しながら口を開く。


「『魔神の討伐』」


「――!? まさか――!」


 ドラゴン風味のお人は、俺へとバッと顔を向ける。ちなみにブラーカーさんは始終「??」な感じだった。話が進むに連れてどんどんハテナが増えていっているのが見える。


「そう。だからアハリートくんは魔神を倒した。違う?」


《正解っす。ミチサキ・ルカの封印を解くために魔神を倒しました》


「な、なんと――。いや、待て! その、なんだ、ミチサキ・ルカ……はこちらでは魔族に味方をした『不滅の勇者』として英雄や救世主とも言われているお人だぞ!」


「ちなみにルカくんの名前は私のお父様が亡くなった後、いつの間にか忘れられてて、訂正するにも面倒だったから『不滅の勇者』で通しちゃった」


 それは酷い。


「――百歩譲って貴様が解放するために魔神を倒したとしよう! ならばここに連れてくるのが筋というものだろう!」


《いや、まあ、そんな人だとは知らなくて……》


(俺も……。今までのループじゃフーフシャー達からそんな話聞かなかったし。たぶんリディアも……)


 ミチサキ・ルカが困惑こんわくしている。……うん、リディアはミチサキ・ルカが封印された後、その身体を持ってすぐに隠れただろうから、知らないよな、たぶん。


《いや、ていうか一応、ミチサキ・ルカはいますよ》


「どこにだ!?」


《こいつです》


 俺は一体の上半身を指さす。ミチサキ・ルカの意識が入っている上半身は、なんと言えば良いのかわからないようでうなるばかりである。


「い、意味がわからん……!」


 で、ミチサキ・ルカが何も言わなかったせいでドラゴン風味のお人が手で顔をおおってしまった。あーあ。


(うるせえ、大体全部お前のせいだろ、口下手の陰キャめ!)


 すごい刺してくるんですけど、この勇者。


 くそっ、頑張って説明してやんよ!


《えーっと、なんか色々あって封印された勇者の身体に俺の魂が入ってアンデッドとして動き出しちゃったみたいで……。ちなみに俺は普通の異世界人間転生者で頑張って進化してレギオンになりました。この世界では生後数ヶ月です》


「色々盛りすぎだ!」


 でも本当なんですもの。


 ……なんかこういうすごいこと、みたいで驚かれるのって何気に新鮮なことのような気がする。ちょっと嬉しいぞい。


 とりあえず、ざっくりとした説明は済んだから……もうミチサキ・ルカが説明して。


(丸投げすんなよ。……いいけどさ)


 ぶすー、とした反応をしたけどやってくれるようです。やったね。


 ミチサキ・ルカがかくかくしかじかと説明してくれたよ。ちなみにミチサキ・ルカは俺のスキルへの適性はほぼないがゾンビっぽい状態なので、喋るのには一手間必要だ。でもその一手間さえ行えば、俺より安全に喋れるのだ(ただ『孤苦零丁』をラフレシアに調整してもらって使うだけだが)。


 そんなこんな説明してくれたおかげで、ドラゴン風味のお人はミチサキ・ルカへの(ついでに俺もちょっとだけ)敵意が薄れた。


 なんか魔王様の名前とかもう一人の姉の名前とか、他にはフーフシャーさんやブラーカーさんの過去話をしていたよ。


 それでその全てが合っていたため、信用されたみたい。


「――どうかご無礼をお許しください、『不滅の勇者』殿」


 ついにはドラゴン風味のお人がひざまずいちゃったよ。


「いや……えっと……」


 ミチサキ・ルカがまごついちゃってるーぷぷー。


 ほおを引っぱたかれた。


 上半身にくっついたままだから普通に手が届いたのです。


 あー、ほらー、突然叩くからドラゴン風味のお人がビックリしてるじゃないですかー。


「な、なにか……?」


「本体があおってきたんで手、出ただけだ」


「そ、そうですか」


 はたから見ると自分をなぐっているだけに見えるよな。


 ドラゴン風味のお人が咳払せきばらいをする。


「……それで時期を見て東に?」


「えーっと、おいおい。……行くよな?」


 ミチサキ・ルカが俺をギンッとにらんできたので頷く。


《オーベロンさんとの約束もあるし行きますよー。ティターニアさんを解放してあげたいのでー》


「……そうか」


 ドラゴン風味のお人は俺に対して意外そうに……そしてどこか嬉しそうに頷いた。


 ミチサキ・ルカが「あっ、そうだ」と呟いてフーフシャーさんの方を向く。


「もしかしたらタイタンがおかしくなるかもしれなくて、それの調査に西の共和国に向かうんだけど……。フーフシャー、『あいつ』に協力するよう話を通しておいてくれないか?」


「そういうことなら良いわよ」


 ――そうフーフシャーさんが快諾かいだくしてくれた。


 お話はこれくらいかしら。少なくとも吸血鬼側になんかするーっていう話はミチサキ・ルカのおかげで有耶無耶うやむやになったぜ。初めからこの話題だせれば良かったのにね。


(……そうしても信じてもらえないどころか、もっと刺激してただけだと思うけどな。あくまで少数だったのと、理解を示してくれるフーフシャーと……そいつがブラーカーと違って理性的だから話が出来たってだけだ)


 ちなみにやっぱりブラーカーさんは「?????」的な感じだ。わかってる風をなんとか出そうとしてたけど、途中で話がつまんなくなったのか、ぺたんと座って欠伸あくびしてるし。


(あと信じられても普通に祭り上げられて、味方せざるを得なくされたかもしれないからな)


 それは怖い。下手に激怒されて強要されるより、変な熱狂をされた方が断りにくそう。


 うーん、情報の出し方一つで状況が色々と変わりそうね。……この交渉ごとが俺の課題だなあ。相手を怒らせる方向でなら、良い感じになるんだけど通常の話し合いだとなんか上手くいかんのよね。


 なんでじゃろ。


 まあ、いいやとりあえずお話はお開きなのでお外に出るぞい。




「決闘しやがれ!」




 お外に出たら、いきなりそんなことを言われたぞ。わぉ!!

次回11月12日23時の予定です。早く書ければ、もしかしたら11月5日に投稿するかもしれません。

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