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わりとやることは多い

 ラキューがリディアに泣かされたが、それ以外は特に問題なく地上に戻って来られた。いやーいいっすね、太陽の光って!


 外で待っていたのは、リディア(ミチサキ・ルカと逢瀬中)とドクター、オミクレーくんにウーくん、イェネオさんだな。メンバーに特に変わりはないようだ。


 んーと、やることは……俺はすぐにフーフシャーさんに会いに行きたいけど……まずは、ドクターだな。


(一応、一緒に行く?)


「まあ、その方が……良いのか?」


 ドクターは俺を見上げながら言う。俺はそんなドクターにサムズアップをキメてみせる。


(アンサムとはマブダチだからよっ。大丈夫っ)


「いや、レギオンになったのさっきで……それ、相手知らねえだろ。……南の奴らは特にレギオンの怖さを知ってるからな。遠くから確認された瞬間に攻撃されてもおかしくねえぞ」


(……リディアに先行してもらいましょ)


「ならお前いらなくね?」


 しどい! ただ事実ではある。だったらそれでいっか。


(んじゃあ、ドクターはリディアと行ってー……ウーくんも行くよね。……オミクレーくんは?)


「ジルドレイに戻んだろ?」


 ドクターはオミクレーくんの方に振り向き、そう言うと――オミクレーくんはうなった。どうした?


「俺は……ダラーさんと一緒に行けねえかな?」


《それはつまり俺と一緒に行きたいという意味でもある? うふふー》


「ぷぎゃ!」


「うるせえ」


 オミクレーくんは目の前で反復横跳びするラキュー(アゴをしゃくれさせてる)をくつの爪先で蹴飛けとばそうとするが、華麗かれいに避けられる。


「くっ――せめて、こいつとお前くらいは倒せるようにはなりてえ……!」


 切実な意志を感じるわ……!


《でも、俺はすごく速く成長するから目標にはしない方がいいよ。ラキューなら良いけど》


「ぷぎゃ!?」


 なんで俺!? みたいな顔された。


喧嘩けんか売っておちょくった末路よ、あきらめろ》


 俺はそう言い放つと、ラキューは口を半開きにしてわなわな震える。


《別についてきても良いけど、昼に移動出来ないのは面倒だなあ。……場合によっては強制的にデイウォーカーになってもらうけど、良い? さすがに移動制限をかけられるのはきついから》


《つまり魂を入れてレベルを上げるってこと。もちろんそっちの魂の強度を調べたりとか、レベルアップ用の魂の調整とか安全性は出来る限り確保するけどね》


 俺に続いて、ラフレシアがそう言ってくれる。声が同じだからどっちが言ったかは集中しないとわかりにくい。若干、俺は棒読みなのだ。


「――っ。でも、そのくらいの覚悟がねえと――!」


「む、無理はするなよ?」


「そうそう」


 むぐぐ、と拳を握るオミクレーくんにダラーさんとサンがあわあわとしている。


「ちなみに魂を直接入れられてレベルを上げた身からするとかなり辛い。今も――――あれ? 今思ったけど、そんなに頭がグラグラする感覚がない?」


《魂の入れ替えの際に、ちょっとだけ調整はした。レベルアップに関係ない無駄な『情報』を取り除いたから少しは楽になってるはず。ちなみに今もそれなりにそこら辺の調整はしているから、もっと楽になると思うよ》


「そうなんだ、ありがとー。……そういう調整が出来るなら、あり?」


《でも魂の強度次第かな。元の魂が弱いと、邪魔な情報を取り除けないくらい絡み合っちゃうから。……回数を増やすごとに、『雑音』が蓄積していってどうしようもなくなるんだよね》


「なるほどねー」


 サンやリディアはその強度というのが、恐ろしいほど高いのだろう。


(ちなみに俺は?)


《普通よりちょっと強い程度。転生者としては割と凡庸ぼんようだね。マスターの成長速度が異常なのは、ミチサキ・ルカとか魔物の魂――ワームくんの魂による補助効果が大きいだけだから》


 だから俺は基本的に魂をぶち込んでのレベルアップは向かないらしい。レギオンになるために使った魂もかなり調整を加えたものだったようだ。


 今後、ミチサキ・ルカと分離することを考えると今のうちに出来る限りレベルアップはしたいよね。


 ああ、分離することも考えるとやっぱり変身出来る能力は欲しいかもね。あと、人間として生きていけるように生命活動がある肉体も用意しないと。……まあ、生きてる肉体に関してはラキューの身体をベースにすればいけるかもだけど。アスカもいるから簡単にできそうではある。


(……豚の身体がベースって嫌だな)


 なんかミチサキ・ルカがボソッと言う。


 ワガママ言わないのっ! 良いからリディアとイチャイチャしてろよっ。


 つーか、豚さんの肉体って人間と色々親和性があるらしくって、皮膚ひふやら内臓やらを移植出来ないかって研究されてるんじゃなかったっけ。それと一緒だよ(ラキューは豚じゃなくて豚もどきだけど)。


 せっかくだし、西の共和国に行ったとき、肉体に関する実験もしようか。それと魂をもっと扱えるようにもなろう。虐殺をすると言っても、本来、戦いで効果的なのは殺さないことではあるからな。上手い具合に廃人をたくさん作れるのなら、それに越したことはないのだ(ただやっぱりコストがかかったり、時間がかかったりしたら普通の殺害にするけども)。


《ということで、まず魂の検査とレベルアップ用の調整をするために妖精を一人入れるけど、オーケー?》


「――う……――あぁ……!」


 オミクレーくん、すんごい尻込みしてるけど頷いた。嫌なら止めても良いのよ? それとウーくんは何も言わないのね。ちょっと何か言いたそうな顔をしているけど、口は開かない。……うーむ、この見守りには、何やら友情のようなものを感じますなあ。


 とりあえずオミクレーくんにラフレシアと契約させて魂にぶち込んでおく。もちろん魔力はオミクレーくん持ちだ!


 さて、こっちは良いとして俺は、フーフシャーさんに会いに行くか。……別にダラーさんとか連れてっても……問題あるかな? たぶん妹さん、ブラーカーさんがいらっしゃるかもだからな。


 フーフシャーさんならギリ、吸血鬼相手でも対応は出来るかもだけど、ブラーカーさんは無理っぽいかもなあ。


《じゃあ、サンとかダラーさんらは……フーフシャーさんらと話している間はここら辺で待機してもらってて良いっすか? その後、一緒に人狼の国に行く感じで》


「……人狼の国も一緒は駄目じゃないか?」


《へーきへーき》


「むしろ行ってきて、捕虜ほりょにされた奴を回収してきて欲しいんだけど」


「わあ!? プルクラ様!?」


 なんか俺の横に転移で開けた穴から、プルクラさんが腕組んで偉そうにそう言ってきた。いきなりはビックリするわ。……『魔力感知』が下手過ぎて、全く分かりませんでした。……それは皆も一緒か。ダラーさんらは驚いているけど、ドクターやサンは『知ってた』みたいに平然としているから、普通にそこら辺の技量が高くないとわからないやつか?


「それとブルート。せっかくだからあんた達、亡命って形じゃなくて技術支援とかそこら辺ってことにして送り出すていにするから」


「……そっすか」


 ドクターがなんかちょっとげんなりした感じになってる。詳しくは知らないけど、政治に色々と振り回されたから、政治的な扱いに忌避きひ感でもあるのかもね。


《ところで捕まったのってブラーカーさんの子供の身体持って特攻した人です?》


「そうね。……逃げ隠れが上手い奴を採用したんだけど、文字通り犬以上に鼻が利く奴がいて、追いつめられたみたい。ステルスが上手いから、手放したくないのよ。連れてきて」


《ですって》


「…………」


 ダラーさんもめっちゃげんなりしちゃった。サンが「私も手伝うから」と苦笑しながら背中を叩いている。


「っていうことで、はいどうぞ、ブルート」


 なんか別の転移門が開いて、そこからアンゼルムさんの世話係 (だと思われる)サンくんが荷物を抱えてやってきた。そんでそれをドクターに手渡す。


「これ道具一式。必要なものがあったら随時ずいじ、連絡入れて。届けるから」


「おう」


 ドクターとサンくんが淡泊な会話をして、特に挨拶あいさつもせずに別れてしまう。一応、アンゼルムさんが床に横になりながら「頑張ってねー」とか言っていたけど、ドクターはほぼ無視である。


 そんで要件を終えたプルクラさんとサンくんの転移門はさっさと消えてしまう。事務的な要件以外言わない辺りが、仕事人間感が強まるぜ。


 ドクターとダラーさんの深いため息がもの悲しい。


 まあ、そっちはいいや。


 んでもって、話をまとめるとードクター(とウーくん)はリディアに連れられてアンサム達に合流する。


 んでもって、俺は今からフーフシャーさんらに会いに行って、交渉をする。……この場合は吸血鬼代表としてダラーさんらを連れて行くべきか否か、なんだよな。話し合って、行けるなら行くけど、たぶん駄目そうなら合流場所を決めて、後々合流してー人狼の国に向かう感じかな(あっ、イェネオさんも人狼の国に連れてくよ)。


 それで人狼の国で偉い人を交渉する感じだ。偉い人に会うためには、……たぶん、フェリスに言えばいけるかなあ。なんか重要っぽい存在らしいし、いけるよな、きっと。


 あと、適当に人狼の国を見て回りつつ、倒して良い魔物を確認してレベルアップして、最低一回は進化をしておく、が目標だ。


 ちなみにこれは出来る限り早くやろう。西の共和国には早く行きたいからな。ということで、レッツゴーだ。

次回更新は10月29日23時の予定です。

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