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転生したら、アンデッド!  作者: 三ノ神龍司
第三幕 終わらぬ物語の行方
222/293

第七十章 とりあえずサメをつければさいきょーになる

 俺の目線の先には、最高の生物が鎮座していた。


 身体は白い子豚のものだ。しかし頭は平べったい曲線を描いており、感情のなさそうな黒いつぶらな目が左右についていた。青と白の肌は優しそうな色合いだが――その肌を近くで見るととってもザラザラとしているのが分かる、


 いわゆるサメだ。豚の胴体をしているのにサメの頭がついているのだ。


《……なにこれ》


(シャークピッグとでも言うべきか……まさに最強の生物……!)


「ぷぎ!」


 シャークピッグもといラキューが、んがあ、とサメの大口を開ける(ちなみに被り物なので口を開けるとラキューの顔が見える。深淵(しんえん)を見せるとき、深淵もまた(のぞ)かれるのである)。


(地味に『同期』で動く仕様)


《無駄に高性能》


 ちょっとだけ癒着(ゆちゃく)させてるけど、ただの被り物だ。


 これは、ちょっとした実験だな。『侵蝕』とかラフレシアを介さず、相手を操る手段を増やしておきたいのだ。『侵蝕』は殺すと同義だし、ラフレシアは必殺技として使えるんだけど、脆弱性がかなりあるからさ。


 あと生体ユニットはロマンだからな!


「ぷぎぁああ!!」


 ラキューがシャカシャカと短い脚をばたつかせて、イェネオさんの下へ向かった。


「ん?」


「ぷご!」


 ラキューがサメ頭をブンブンと振るう。


「…………」


「ぷぎゃああ!!」


 ぐぁああ、とサメの鋭い牙を見せつけて、さらに頭をバタバタと振るう。被り物だから、すげーぶるんぶるん頭が揺れる(前世でいつぞや見た、恐竜の着ぐるみを着た動画を思い出す挙動だ)。


(驚かせてる?)


《驚かせてるよ》


 ラフレシアは、こっそりとイェネオさんにも教える。


「……。わぁあー、ビックリしたー」


 イェネオさんが空気を読んで、めっちゃ棒読みながらそう言ってくれた。


「ぷぎゃ!」


 ラキューは得意げに頭を反らせる。そしてシャカシャカとどこかに遊びに行ってしまう。


 ……ふむ、構って欲しかったのか。なんでか何かとイェネオさんに(から)みたがるよな、ラキューって。


(やっぱり豚と上半身達って子供的な感じがするよなあ)


《皆、精神的にはかなり幼いよ》


(そうなん?)


《ラキューは初めから構って(もら)いたかっただけみたいだし。アルスは、()めて貰ったのが嬉しかったからすごい頑張ろうとしてる。ディーヴァとヒウルは注目をとにかく浴びたいみたい》


(ディーヴァとヒウルは迷惑系アンデッドになっちゃいそう……!)


《この世界のアンデッドは存在そのものが迷惑だけどね》


 ひでえことおっしゃる。


(かけた言葉で変わるって、まんま親と子供の関係だな。……マジで『個性ない』とかの発言、気にしてたんだな)


《今後は一言一言に気をつけないとね》


 ……マジでこれに関しては気をつけないといけない。親の言った言葉って、結構、子供心に深く刻まれるのよ。――子供だからと舐めたら、将来冷たい目を向けられて『昔、俺(私)のこと○○って言ってたじゃん』っていう手痛いしっぺ返し食らう可能性があるからな。


 そういう意味では、ラキューとアルスは良い感じになってるっぽいのか。


 ラキューの初期、暴力的な感じだったのは、生まれたばかりなのと相手との接し方――構われ方が分からなかったって感じかなあ。


 アルスは……なんやかんやと褒めたおかげで、自信を持ってくれてるみたい。んで、物作りとか……ラフレシアが言うには戦いについても興味津々らしいよ。ちなみにサメ頭の被り物にも興味があるらしい。被らないけど、クルクル回しながら(なが)めている。


「宿主ー。私も、あれ、あれ欲しいですー」


 ディーヴァが俺に近寄ってきて、指をさしながらそう言った。指された方には、サメの被り物を被ったラキューが元気に走り回っている。


(被り物?)


「はい!」


 しゅばっ、と片手を挙げてアピールをする。


(はい)


 俺はササッとディーヴァ用のサメ頭を作成して、手渡す。


 「わーい、ありがとうございますー!」


 するとすぐさま、ズボッと被り、


「ぎゃあおおん!!」


 怪獣みたいな声を上げながら、ラキューの方へ走り去ってしまった。


「ぶひん!? ぷぎゃあ! ぷぎぃ!」


「ぎゃお、ぎゃおおん!!」


 なんかラキューとパタパタとすごいじゃれ合ってる。楽しそうで何よりです。


 ……うん、ディーヴァは精神が幼女だな。接し方を色々と考えよう。


 さーて、こうなったらヒウルも気にかけてみるか。


 ヒウルは相変わらず俺らから離れた位置で――でも俺らに身体を向けて、ピカピカ光ながらポーズを取っていた。


 ……ボディビルダーのポージングっぽくはないかなあ。筋肉を強調っていうよりかは、静かな立ち振る舞いを演出……いわゆる石像に近い。色も真っ白だから、そう思えるのだろう。


(ヒウルのあれってどんな意図があるの?)


《最小の力で最大効率に目を引く方法を考えてる。単純な美しさ――マスターの記憶をチラッと見て、芸術の石像みたいなアレを目指してる感じ? まあ、それ以外に……マスターの真似をして悪ふざけっぽく、胸とか股間光らせて目を引こうともしてるかな》


(後者はともかくまともなこと考えてんのね)


 ならいいや。そんなら参考になるってんなら、俺の記憶とか見れば良いよ。つーかヒウルに関しては積極的にそういう形振り構わないことをやった方が良いだろう。


 ……っていうのも『真経津鏡(ヤタガラス)』は四つの魔道具の中では、一番攻撃力や使いどころがないものだからなあ。『雷霆万鈞(ブロンテース)』は使いにくいけど、最強の攻撃力があるし、『孤苦(マニフェスト・)零丁(ディプレッション)』は声真似や精神汚染が優秀だ。『隠形児戯(ハイドアンドシーク)』は高度な擬態潜伏が可能で普通に有能なサポート能力だ。


 ……けど、『真経津鏡』って目くらまし以外の手段がないのよね。出力を上げれば、肌を焼けるけど、吸血鬼でもない相手にはすぐにジュッとまではいかんし。


 ……そう考えると努力をしているのは好ましいけど、どん詰まりになるのは見えてるな。頑張っているってんなら、少し明るい未来を提示したい。


(……あいつらって新しいスキルを手に入れたり出来るかな?)


《……うーん、魔道具が魂の代わりになっちゃってるんだよねえ。魔道具ってスキルが増えて仕様が変わることを防ぐために、スキルが勝手につかない作りになってるはず。……ただ、ちょっと難しいけどヒウルが使う時だけに、スキルを手に入れられるとか使えるようになるとか、個別にスキルを格納するそういう仕様には出来るかなあ》


(出来るなら、本人の意思も確認した後にやってあげた方が良いかも。それと、せっかくだし、手に入れられるスキルを『光系』に限定出来るならするべきかも。熟練度の配分とかいじれる?)


《難しいことを……。出来なくはなさそうだけど、時間がある時ね。今は無理。片手間にやれることじゃないし。――ちなみに『光魔法』じゃないよね》


(ぴっかぴっかするだけの、ただの光が良い。……何気に使い勝手悪いだろうし、あれ)


 ミアエルには悪いけど、光魔法は使いにくいことこの上ないのだ。だからいらない。そもそも俺らは魔力が重要なのにそれを散らしてしまうのは、自殺してるようなものなのだ。


(……光を操る……光源を操る……、それらを集めるとかするだけでもかなり使えると思うんだよな。周囲の光を集めて相手を暗闇に閉じ込めて、集めて高温になった光を発射ーとか面白そうじゃん?)


《凶悪すぎる。……光学迷彩にも応用出来るからラキューの立つ瀬がなくなるんじゃない?》


(ラキューはメインが毒だし。……というか、ヒウルのあの性質なら隠れることはしないんじゃないか? それに『隠形児戯』は気配含めて完璧な遮断だから、お株は奪わないだろ)


《ならいっか》


 と、言うことでそれなりに煮詰まったので、ヒウルのところにいっきまーす。


 サンのところに行かないのかって? それはミチサキ・ルカとイェネオさん、ラフレシアがどう動くか決めている最中なのだ。俺は暇なのだ! 俺はそういう話し合いって苦手……というか詳しい話なんて出来ないし。時々、ラフレシア越しに質問されるのを答えてるぐらいだな。


 そんなわけでして、ドタドタと直接、ヒウルのところに行きます。


 ヒウルは近づいてくる俺には当たり前だが気付いているようだが、気がないフリをしている。


(ヘイ! 石像やるなら黄金比求めようぜー)


 何やってるの、とか訊かない。さすがに白々し過ぎるだろう。……それに俺が上位に位置するから、下手に気遣うような素振りで近づくと向こうも困惑すると思うんだよな。


 ヒウルが不思議そうな顔を向けてきた。黄金比、が気になったらしい。芸術系には必須の概念な気がしないでもない。


(ラフレシアー、ヒウルはなんて――)


「おんっ!」


 ヒウルがなんか()き込んだ。で、それから何度か咳払いをする。すると――、


「黄金比、とは?」


(しゃべ)れんの!? あれ!? 『孤苦零丁』持ってる!?)


「『言霊』、と、相性が良かった、ようで」


 ちょっと途切れ途切れだけど、しっかりと喋れている。


 わぉ。そうなのか。……ああ、助かった。俺の意思は向こうに伝えられるけど、逆が無理なんだよな。だから、意思疎通をするにはラフレシアを介さないといけなかった。


『孤苦零丁』は生産コストが高いから、普通に喋ってくれると本当に助かる。


(それで、ラフレシア。黄金比ってどんなん?)


《人に話題を振るなら、その話題の最低限の知識を頭に入れとけ、ボケナス》


(ひぎぃ)


 直球で罵倒されちゃった。


《黄金比っていうのは1:1.618で表現されたもの。なんで美しく見えるかっていうと、自然界に多くある比率で、サブリミナルでその比率が美しく見えるらしいよ》


(黄金比で回転攻撃するとさいきょーらしいぜー)


「なる、ほど?」


《マスターは黙ってろ》


(ひんっ)


 最近のラフレシア、俺に対する切れ味を上げてきている。初期にあった嫌い感とかは出てないのに、不思議だなあ。まあ、初期は嫌いすぎて話したくない感じで、中期は気を遣ってたけど、今は遠慮がなくなってきてるからね。


 ラフレシアがヒウルに黄金比について説明している中、俺は自身の饅頭(まんじゅう)下半身に埋まってるアルスを見下ろす。


(アルスは『言霊』使えんの?)


「ぶあ? …………」


 サメの被り物の口がパカパカするのに可能性を感じて(いじく)っていたアルスが、見上げてくる。そして俺の言葉に、むぐぐぐと力を()めて――、


「ぶ、ああ! ぶあ、ぶぶあ、あぶう!」


(適性なかったかあ。残念)


「ぶあ」


 アルスが、そうですねー、みたいに割と気にしてない風に(うなず)いた。『孤苦零丁』もあるし、大して気にしてないみたいだな。


 そんでもってラフレシアとヒウルの方はというと――、


《正確に測る手段は今のところないから、どこかの町に行った時に計測器を借りて使った方がいいかもね》


「楽しみ、だ」


 ヒウルが期待感を(にじ)ませながら、頷く。


(んで、そんなヒウルに、ていあーん。これまた時間が出来た時だけど、ちょっと実験に付き合って貰って良いか?)


「なに、か?」


(ちょっと魔道具に細工出来たらしたいと思っててさ)


 そんでかくかくしかじか、とぅるんと説明をするとヒウルは興味深そうな雰囲気を(かも)し出してくれた。


「頼、む」


 快諾(かいだく)いただきました。


 ちなみに実験なので、ヒウルオンリーで試す感じになっている。一回色々やってみて、不具合とか生じないかの試験もやらねばならないようだ。


 ラフレシアいわく、小さなバグでも大惨事に至る可能性があるから、慎重(しんちょう)にしないといけないようだ。ちょっと弄ったら魔道具として全く使い物にならなくなったとか、あるかもしれんしね(時間があればプレイフォートに戻って、製作者のベラさんにも協力して貰うべきかなあ)。


 まあ、その危険を(おか)す価値はあるからやるんだけども。もし出来れば、他の皆の強化を行えるからね。


「よし、そんな感じで行ってみようか」


 イェネオさんがそう言った。対面には簡易的に作ったミチサキ・ルカのの意識が乗った肉体がある。その肉体とイェネオさんは話していたのだ。どうやら話し合いが終わったみたい。


《ざっくり説明するから、マスターもとりあえず二人のところに来て》


(うい)


 俺はだかだかとイェネオさん達の下へ行く。


 基本はサンを助けるために動く感じになるとは思う。


 ちなみに向こうにいるのはダラーさんにリディア、オミクレーくんにウーくん……そんでもってドクターだ。


 一応、契約上はアスカを転移させるまでだった。けれど逃げだそうとしたところ、サンに止められてしまったらしい。たぶん転移門を使って援軍を呼び寄せられるとか思ったのかもしれない。


 少なくとも、簡単に逃げられる状況ではなかったようだ。


 それに下手に転移したり逃げたりしたところで、逆に追いかけられて逃げた先のアンサム達に迷惑をかけるかもしれない。


(タス、ケテ――タス、ケテ)


 そんな訳だから、実は狂界から出てから、ずっとドクターの悲痛な声が聞こえてきていたのだ。ウケる。


 まあ、さすがに可哀想なので、助けに向かうが。


 とりあえずドクターがいるなら、転移する座標決めも簡単だし、転移門もドクターが維持(いじ)してくれる。


 ただ豚になって強襲を仕掛けたこともあるから、向こうも警戒していることは頭に入れておくべきだ。転移した瞬間に攻撃が飛んでくることも想定して――その対策もしていかないといけない。


 あっ、一応だが『不滅』の不死は俺には乗らんらしい。ミチサキ・ルカいわく、そこの適性は俺にはないってよ。あくまで対ティターニアさん戦用の専用スキルだって考えておいて欲しいってさ。


 だから俺は死ぬような攻撃を受けたら、俺やラフレシア、他皆の魂は吹っ飛んだ上で――ミチサキ・ルカだけが復活するらしい。


 あとは……、あっ……、


(ラキュー?)


「ぷぎ?」


 俺と併走(へいそう)しているラキューに声をかける。


(これから戦う相手なんだけどさ)


「ぷぎ」


(たぶん豚を見たら、すげえ憎しみを込めて攻撃してくるかもしれないんだ)


「――!?」


 これにはラキューは(おどろ)きを(かく)せない。なんやかんやとサンとは会ってないし、あの戦い方は見てはなかったからな。


 ラキューは立ち止まる。サメの口が、パカッと開くとそこには口を半開きにして、目を大きく見開き、わなわなと震えたラキューがいる。


(まあ、(おとり)としては最良だから……グッドラックだ)


「ぷぎぃ……!」


 ラキューが逃げだそうとしたので、触手で引っ捕まえて脇に張り付けておいた。


「ぷぎゃああああ……」


 ラキューがパタパタと暴れながら悲痛な鳴き声をあげているが、無視だ。


 さあ、お前の因縁の決着 (なすりつけ)をしに行こうではないか。

次回更新は7月16日23時の予定です。

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