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転生したら、アンデッド!  作者: 三ノ神龍司
第三幕 終わらぬ物語の行方
219/293

第六十九章 不滅の勇者

 晴れ渡る空。()み切っていて、たぶん空気が美味いだろう。


 ここに今まで鎮座(ちんざ)していただろう、巨大な鳥籠は完全に消え失せ、真っ新とした大地が残る。……空間爆発が起こったせいで、軽く吹っ飛んだっぽくて岩場が更地になってた。


 つっても、そんな範囲は広くないけど。


 そんな綺麗になった大地に……イェネオさんが横たわっていた。顔を両手で隠し、


「死にたい……」


 そんな物騒(ぶっそう)なことを消え入りそうな声で(つぶや)く。


《そんなこと言わないでよ。せっかく生き残れたんだしさ》


 ラフレシアがイェネオさんの顔の上に乗って、なだめるように優しく叩いていた。


「あんな、あんな……今生(こんじょう)の別れみたいな雰囲気出して、「さよなら」とか言ったのに生きてるとか、恥ずかしい……!」


 まあ、気持ちは分からんでもない。まさか生き残れるとは思ってもみなかったし。


 ちなみに何故生き残れたかというと――、


《むおおおおおおお》


 俺の横にいる妖精アスカのおかげだ。


 もう一人召喚された妖精アスカは……俺の触手を食っていた。勢い良く、ずりゅるるるるると(すす)るように食べている。……俺って何気に食べられること多いなあ、と改めて思う。


 ただ、このおかげで俺の内在魔力は急速に回復しているのである。


 どういうことかっていうと、アスカは魔神化してしまった時に持っていた魔晶石と融合してしまったのだ。


 そんでもって、魔晶石は外部の魔力を自分に合った内在魔力などに変換してくれる効果があるらしい。――その応用でアスカは取り込んだものを自分の内在魔力へと効率よく変換することが出来る。


 つまりは何かを――この場合は俺の血肉を食らえば、自分の魔力である透明な魔力へと即座に、効率よく変換出来るらしいのだ。


 これによって俺を貪り食ったアスカは、無事、自分の魔力を生成することが出来て、イェネオさんの消滅速度を上回る回復速度を実現できたのだ。そんでもって今は俺の内在魔力を戻している最中だ。でも効率は悪いっぽいね。無限の内在魔力回復手段とはならないっぽい。


《だけどこのままだとイェネオが不安定な魔力の塊になっちゃうから……マスターの肉片を使って肉体を造っちゃおう。……倫理観とかこの際捨て置いて。……アスカ、マスターの肉体をイェネオの肉体に変換して。多少エネルギーを消耗すれば、完璧にイェネオのものに出来るでしょ》


《いぇあ》


 回復を担当していたアスカは親指を立てて頷く。出来るのか、便利だな。……つまり、今後、欠損した人とか、俺の肉片を渡せば治せるのか。


 俺はイェネオさんを見下ろしながら、自らの(あご)(さす)る。


(……ここで小粋なジョークとして)


《うん》


(テセウスの船の話でもしようか)


《おい馬鹿やめろ》


 止められてしまった。


(駄目?)


《小粋なジョークで哲学の話題出すな。胃もたれどころか、穴開くわ》


 駄目らしい。残念。


 ちなみにだけど、上半身と豚はイェネオさんに頭を向ける形で仰向けに寝転がっている。輪になってるのだ。なんか漫画の最終回辺りの扉絵か表紙みたいな構図だ。


「ぷぎ」


 ラキューが相も変わらず何故かイェネオさんにちょっかいをかけようと、身体をぶつけようと転がる(イェネオさんと隣り合っているのはラキューとアルスだ)。


「ぷぎゃ」


 でも、イェネオさんはラキューを見もせずに鼻を(つか)んで止める。


 やっぱり勝てないラキューなのであった。


 ちなみに他の上半身達は、特に何かをするでもなくボケーっとしていた。まだ内在魔力がなくなった虚無感が続いてるみたいだな。一応心配なので触手で繋いではいる。うっかりぽっくり死なれても困るからな。


 さーて、待ってる間何しよう。俺も本調子じゃないからなあ。なんか違和感あるんだよな。


 ……あと、なんか忘れてる気が――。


 その時だった。


 俺の上半身の上半身の一体が、ビクンと勝手に動いたのだ。そして大きな声を張り上げる。


「オレノ――ミチサキ・ルカ ノ フウイン ガ トケタ!! イマスグ フウイン シナオセ!!」


 さすがにビビる。そして――、


「おぼぉあお!!?」


 俺は突然の激痛にひっくり返ってしまう。


 マジで痛い。なんか分かんないけど、すごい痛い。前に受けた光魔法の比じゃないくらいすごい痛い。あれだ、魂がなんかヤバいことなってる感覚がある。――けど、俺の力じゃ、『原因』に干渉は出来なかった。


俺の魂を無理矢理、侵食するかのような、そんな感じだ。でも、侵食してくる『原因』に何をしても効果がない。


 えっと、これ、ミチサキ・ルカの魂か。……どうにかなりません?


「タマシイ ニ カンショウ スル チカラ オレニ ナイ」


 ああ、うん、そっすか。そんでもって『不滅』の力のせいでそんな意図がなくても、俺を食い殺そうとしていると。俺、とんでもなく危ない化け物を身の内に飼ってたみたいです。


「え? なになになに!?」


 イェネオさんがこの異変に(あわ)てて飛び起きる。


 上半身達や――豚でさえ苦痛に(うめ)いてるのだ。さらにはラフレシアや……無論、アスカも《あががががが》と壊れたラジオのように痛みに震えていた。


《マスターに、封印されてた、勇者の、魂が、解放、されて……マスターを取り込もうと、してる、みたい》


 ラフレシアが頑張って説明してくれた。


「ど、どうすれば良いの!?」


「イイカンジ ニ オレ ヲ コノヒト二 フウイン シテ」


「い、良い感じ……?」


「ギッチリ カタメツツ オレト イシソツウ デキルヨウニ 『不滅』モ ツカエルヨウニ」


「注文多いなあ! とりあえずパパッとやるからな! あとで細かい調整やる感じで!」


「ソレデモ オッケー」


 とりあえず話は固まったらしい。


 ――んで、特に何か波乱があるわけでもなく、つつがなくミチサキ・ルカの再封印は完了したのであった。


 うーん、イェネオさんを助けて良かった。このせいで最悪、死んでたかもしれなかったからな。まあ、これに備えていつでもリディアに来て貰えるようにしてはいたんだけどね(もちろんサンも一緒にくるリスクはあったけども)。いやーすっかり忘れてたわ。


 そんでもって、助かってミチサキ・ルカの諸々とか話をしようかーって思ってたんだけどね。そして――、







 ……気付いたら、そこは不思議な世界でした。


 白い何もない空間。上下左右何もなく、俺は浮かんでいる。


 しかも、俺は……ほぼ光の塊だけど、前世の人間の形をしていた。


 ここはいわゆる精神世界的なあれか。……そんでもってこれが、俺の魂……!?


 ……なんだよ、もうちょい腐った感じでも良かったのに。


《なんでガッカリしてるのかな》


 そうラフレシアに呆れたように言われてしまった。――ラフレシアは特に変わらず小さな少女型だ。別に光の塊でもない。


「自分の魂の形が予想より凡庸(ぼんよう)だったら、そりゃガッカリする。つまんね」


《もう少し自分を愛してあげて》


 ラフレシアに切実な言葉を投げかけられてしまった。


「ぎぃ」


 と、俺が自分の姿に不満を抱いているところ、聞き覚えのある鳴き声が聞こえてきた。そちらを見やると――真っ黒い犬がいた。……たぶん犬だと思う。真っ黒いモヤモヤな感じで輪郭(りんかく)は定まっていないけど、大体の形が犬っぽいのだ。


 尻尾もフリフリしてるし。


 そんでもってその犬が――たぶんワームくんが俺に跳びかかってくる。


 ビックリしたけど、しっかりとキャッチ出来た。


「ぎぃ! ぎぎぃ!」


 めっちゃペロペロしてくる。


「んぅまままままままっ!!」


 俺も()められるがままに、顔をブルブルと振るってワームくんの愛情表現に応えた。


 うん、素晴らしい。忠犬ワームくんは実に可愛らしい。もちろんワームの姿をしているワームくんも可愛らしいが、この姿もまあまあ良きである。犬好きだし。


 思う存分、堪能(たんのう)してから、ワームくんを降ろし……、離れた位置に立っていたもう一人に向き合う。


 ――上半身達や豚ではないな。ちなみに三人と一匹は姿を現さなかった。ラフレシアいわく《あくまでマスターの魂と重なっている眷属のみがここにいるんだと思う》だってさ(なので無論、アスカもいて、ワームくんと(たわむ)れています)。


 つまり、そいつは……ミチサキ・ルカ……ではあるんだろうけど……、


「……女性っすか?」


 光の塊だったけど、身体の輪郭(りんかく)がまんま女性だった。背の高さでいえば、少女でも通用しそう。


「まあ、前世では俺は女だったし」


 あっけらかんと言うミチサキ・ルカである。


 俺はしばらく考え込んで、


「……『配慮』が必要な人?」


「ああ、そういう面倒臭いのじゃないから気にしなくてもいい。前世だと女の精神に女の身体だったし」


 ……だよな。普通、『配慮』が必要な人って心が先にきて、身体が別な訳で、ミチサキ・ルカがそうであった場合、色々と矛盾が生じるんだよな。


 前世で心が女で身体が男だったら、現世では女の身体になるわけだし。その逆も(しか)り。


 まあ、そうならない可能性もあるだろうけど、大体は望みに対応しそうなんだよな。俺は化け物になることを心の奥底で望んでたからそうなった感じだし。『不死ノ王』もなんやかんやとアンデッドであることを望んでたんじゃなかろうか――と、思うとパックくんから《そうだね》と心の中に伝えてきてくれた。


「でも、前世とは心と体が違う訳だから……どうなん、それ。ほんとに配慮大丈夫?」


「前世での配慮が必要な人って、まず今の俺みたいに心と体が合致した状況になったことがないわけで、その違和感が色々と大変なんだと思うんだよ。俺はそこら辺、前世で体験してるし。……ぶっちゃけると、男の身体ってめっちゃ楽だから、このままで良いっていうのはある。……前世の身体は無駄に重いのがあったからなあ。そういうのがない男って楽なんだわ」


 そっすか。まあ、女性の身体って色々と大変よね。


「それに突然ではあったけど、男になりたいって願わなかった訳ではないし」


「というと?」


 俺が首を傾げると、何故かミチサキ・ルカがぬちゃあ、とした雰囲気を(かも)し出す。


「いわゆる、美青年×ショタの×××が好きだったわけで。可愛いショタを俺の×××で×してええええ、とか思ってたので、今世は妄想が高クオリティで(はかど)って最高なんですわ」


《やべえよ、やべえよ……》


 ラフレシアが珍しい狼狽(ろうばい)をみせている。俺に向ける怒りとは違う、ガチ目の変態を前にした対応だ。


 それにしてもまさか『不滅』の勇者が実は腐っていたとは。いや、ゾンビの魂に宿っていたからってそんな要素必要ないんだけど?


 ……もうちょっと真面目な人かと思ってたんだけどなあ。


 ていうか、あれ? ミチサキ・ルカの精神が女だったら――、


「リディアと恋仲的な感じだったけど、それはどうなん?」


「ああ、それはほんと。リディアは俺の嫁」


「????」


 俺、ガチで混乱。


 俺は一旦、額に指を置いて考え込んでから、改めて意味不明な変態に向かい合う。


「お前は精神は女」


「イエス」


「女が好き? 実は百合?」


「ギリギリ、勢いで冗談のキスは出来るけど、それ以上は無理。男が好き。むしろ薔薇」


「矛盾が生じて乗り越えられない壁が生じたんだが?」


 まず突破しなきゃいけない初期段階でそれが生まれたせいで、最大限の困惑と足踏みを繰り返す羽目になる。


 ミチサキ・ルカが腕を組む。


「リディアは例外」


「何故?」


「なんていうか、今は勇者の村って言われてる初期段階の集落で俺の……いわゆるお姉さん的な立場の人でさ………………かなりのバブみを感じて性癖が(ゆが)んで、特異点になった」


 性癖歪んじゃったかあ。なら仕方ないか。


「だからリディアは性別以前の問題で性欲的には普通に興奮するし、まあ、一生を永遠近く()い遂げる所存(しょぞん)


「男らしいこと」


《それでわざと封印されたり、ループしたりしてるからガチだよね》


 それな。


 ――ていうか、そうだよ。話は変わるけど、いや、むしろ知りたいから軌道修正になるけど――なんで封印されてるんだろ。ループ出来るなら封印も回避出来るわけで――絶対に『わざと』なのだ。


「とりあえず一発ぶん殴られてから、封印されて謎に助けてくれた理由教えろや」


 俺は拳を握ってズンズン近づいて行くと――意外なことにミチサキ・ルカは嫌そうに身を仰け反らせるが、逃げる素振りは見せない。


「やっぱりそうなるかあ。……毎度こうなんの確定なのかなあ」


 なんか諦めたように俺の暴挙を受け入れてくれた。










 男女平等パンチをして、一旦仕切り直し。色々と訊くぞい。


「ああ、一応言っておくけど、ここって別に時間が凝縮(ぎょうしゅく)してるとかないから。普通に流れてるから、詳しい話は色々と終わってからな。ここまで来て、リディアに何かあったら嫌だし」


「そうなのね。……じゃあ一つだけにしとこう。俺に封印されてる理由は? おかしいだろ。俺が宿る身体が偶然、お前が封印されてる身体なんて」


「そりゃあな、リディアにあんたの魂が入る可能性が高い墓に入れてもらってたし。結構大変だったんだぜ? 条件によっては外れる場合もあったから、それを見つけ出すのが」


「だからなんでそこまでして――」


「ざっくり言うと、あんたが無茶苦茶だから」


 ざっくり(けな)されたんですが。


《分からんでもない》


「ひどっ」


 味方だと思っていたラフレシアが、ミチサキ・ルカに同意してきたんですけどー。ショックだわー。


「――ただ『この後の無茶苦茶全ての原因』ではなかったんだよな。でも、俺の力だけじゃ絶対にティターニアは突破出来ないから、こうする他なかった」


「そんなに強いの? ティターニアさんって」


「ノータイム光魔法の他に、妖精達は無数の魔道具を操ってきて、手数が異常なんだよ。対して俺しか戦えないのに、それじゃあ勝ち目がない。どうしても人間の弱さが浮き()りになるんだよ」


 ミチサキ・ルカはため息をついて、頭を振る。


「だからもっと強い力が必要だった。――出来れば魔物に――、って思ってたそんな中で、毎度のループであんたが暴れててさ」


「俺、そんな暴れてたの?」


「意外かもしれないけどバックアードに保護されて、過激な魔物思考になってたんだよな。あいつ――バックアードって何気に同胞に対してはかなり優しいようでさ。……今回の件で、『不死ノ王』とあんたを重ねてみてた可能性も出てきたしな」


 そうなのね。……無駄に部下が多くて(した)われた雰囲気はあったよな、バックアードって。あれって洗脳とはまた違って普通に優しくしてたのか。


「で、ミアエル保護のためにバックアードを倒すと毎回あんたに逃げられるんだよ。……だからあんたの存在を知ってから、ループするごとにリスキルしてた」


「リスキルやめてくださいっ!!」


 マナー悪いですよっっ。


「いや、だって仕方ないんだって。バックアードと触れ合うルートだと確実に、……プレイフォート、人狼の国とか西の共和国とか滅ぶし。このファンタジー世界でゾンビ映画もの何度も繰り返したんだぜ? 嫌になってくるって」


「えっやだっすてきっ……」


 お、俺、そんなことしちゃうの……? 邪悪な魔物ルートだと、俺、この世界をゾンビアポカリプスにしちゃうの――? はあはあ、やばい、すごい興奮してきた。


《…………》


 ラフレシアにすごいゲテモノを見るような目をされたけど、その程度じゃ俺の(たか)ぶりは抑えられないねっ!


「かと言って、俺達で保護すると、……目を離すと高確率でカエルとかに食われて死ぬしさ」


「やだ俺、弱すぎ……」


 まあ、初期の俺って自分から身体(もろ)くなったりと生存するのに不利な要素満載だったしな。その時、ミチサキ・ルカは宿ってなかったから、短い期間で変化することも出来なかったろうし。


「ずっと監視してる訳にもいかなくて初期はリスキルしてたけど――色々あって監視名目で取り()くことに決めたわけ。リディアには説明してないけど。……出来れば、オーベロン達に知られたくなかったしさ」


 そしてミチサキ・ルカは空を見つめながら言う。


「…………それでこんな俺の疑問に答えてくれる?」


『我が輩の知ったことではないな』


 オーベロンさんの声がそう短く答えた。


『だが貴様の知りたい答えは、西にある、とだけ伝えておく』


 その答えに、ミチサキ・ルカはため息をついた。


「そういう感じになるだろうな。分かってた。……まあ、前に進めただけ良しとするけどさ。前回までオーベロン達は姿を現さなかったし」


「そうなんだ」


「そもそもラフレシアを捕まえられてなかったしな。寸のところで逃げられて、味方にせずにいたんだ。……今回の吸血鬼の国も……だから、全力で殺しにかかってほぼ壊滅させてたし。……表面上のあの狂ったプルクラのことしか知らなかったんだよな」


 あれまあ。まあ、オーベロンさんから本当の話を聞かなかったら、アスカは悪者になるからね。で、戦争を止めるためなら――相手が悪だと思うなら、過激な方法にするよね。


「サンは殺したん?」


「いや、あれは……なんかフェリスとも仲良くって、助けることにはなった。ダラーは……たぶん最初に殺してた。『あれ』がそうだと思うんだよなあ」


「わぉ」


 今とは色々と違う結末になったわけね。まあ、知らなかったらそれはそれでハッピーエンドではあるんだろうけど。


 無知は無知で幸せなのよ。


 けど、次からはそうはいかんかもな。ラフレシアを捕まえるルートってかなり運要素強いし、今回を逃すと大変になりそう。


「だから今まではアスカの狂界に入ることはなかったし。――ちなみに前回以前に倒したのは、ベヘモス。簡単な感想を言うなら、毎回、アスカみたいな魔神が良いなって思う。……正直、魔界の魔神には関わり合いになりたくない」


 何を見てきたのか、すっげえ疲れたように言うミチサキ・ルカだ。


「今のところ、このルートは正しい。ただこの先は、俺は何も指示出来ない。西に向かうならなおさらだ」


「前回は行かなかったの? ミアエルのお兄ちゃん関連で」


「すぐに行く必要がほぼなかったんだよ。……ミアエルが死んだから」


「…………」


 それにはさすがの俺も言葉に詰まってしまった。


「……正直に言うけど、ほぼ毎回だったんだ。で、場合によってはゾンビにしてた。もちろん記憶もないもない状態。……正直、あれを見てるのは辛かった。変えたかったけど、ミアエルは頑固で、あんたについて行くんだ」


「そっか。……今回はなんとかなってるんだな」


 俺は大きく息を吸い、吐く。肉体はないけど、なんとなくその動作でモヤモヤは少し晴れた。


「で、その時はどこ行ってた?」


「そのまま北に行って、魔界で魔王に会ってた。――あと、俺を解放するための魔神討伐だな。ああ、そういえば魔王に北の帝王がカチ込みかけてきたっけ。場合によっては魔王が殺されてたから、ケアしないとな」


「マジか。怖いな、帝国」


 なんか好戦的な国らしいよね。


「どっちにしろ北の帝国に行かないといけなくなると思う。あいつら、とにかく南下して侵略しようとしてくるんだ。止めるためには、リディアが昔、関わったドラゴンが北にいるから――まだ生きている上に帝国民に神格化されてるから、こっちの要望があの人に届けば、とりあえず帝国は止まる。北の攻略はそれを目標にしなきゃならない。で、その後、目的の東に行って……ティターニアを解放する」


「上手くいくかね」


「いかないだろうな。……なんか知らないけど、東のタイタンが一定の期間を経ると暴走するんだよ。で、その……ああ、そうだ、人造勇者とかの対策も練らないと――あいつに出張られると普通に国単位で詰むから――」


《いや、人造勇者は私達の国から出られないよ。――っていうか、そもそも行動範囲がかなり狭いのが難点で国外どころの話じゃないし》


 ラフレシアがそう説明するけれど、ミチサキ・ルカは怪訝(けげん)そうに見返す。


「いや、普通にここら辺まで、やってきて虐殺してきたぞ?」


 そこでラフレシアが固まる。


《は? なんで?》


 ラフレシアがめっちゃ困惑している。


《ていうか、暴走って……なにが――》


「……可能性として、この人の寄生虫とか流れたかもしれないって考えてたんだけど、その線も薄いようだし……」


 で、ミチサキ・ルカも分からないみたいで、核心に進む推測を口に出来ない様子だ。


「じゃあ、話はここで一旦打ちきりだな」


 ということで、話を終わらせることにした。考えても仕方がないことが出てきてしまった以上、話し合いは無意味だからな。


 とりあえず知りたかったことは、雑にだけど知れたから良しとする。


 まずはサンを救いに行きましょ。

次回更新は6月25日23時の予定です。



 日常一コマ劇場 『どうしてミアエルは生き残ったか』


 アハリートは首を傾げる。

 

 「ところでさ、ミチサキ・ルカ? もし次回あるなら生かして欲しいことがあるんだけど」


 「ルカかミチサキって呼んでくれ。なんで毎回、フルネームなんだ。……で、なに?」


 「やっぱり心の中も読めるのな。まあいいや。今回、どうやってミアエルが生き残ったんだと思う? もし再現出来るならやって欲しいんだけど」


 「……言いづらいことを易々と……」


 ルカがため息をつく。


 「たぶんラフレシアのおかげ。……だからむずいかも」


 《私?》


 「前回以前は、なあなあのまま話し合わずにいたからな。そのせいで無理矢理ついてきたり、連れてったり……とにかくここに来ることになるんだ。けど、今回は何やかんやと話し合う機会があっただろ? それでミアエルは西に行くことに決めて、運命が変わった」


 「だからそれを促してくれたラフレシアのおかげってわけか。……ありがと」


 アハリートが珍しい優しい微笑みをラフレシアに向ける。


 《う、うん。ど、どういたしまして》


 ラフレシアはアハリートの綺麗かつ直球のお礼に、たじたじと照れてしまう。


 アハリートはそれを茶化すことをせず、ルカに向き直る。


 「それと判断の手助けしてくれたミチサキ・ルカもありがとうな。今日までマジで助かってた」


 「それほどでも。……あと、フルネームやめろ。――それと」


 ルカがやや顔をしかめる。


 「なんで、毎回殴るんだよ」


 「それは俺は知らん。カエルの時、もうちょい良い感じにしれくれ、としか」


 「無理言うな!! 毎度毎度カエルに食われやがって!! 毎回肝を冷やすこっちの身にもなれってんだ!!」


 「ごめんちゃい。じゃあね」


 「あっ、待てちくしょう!!」


 そうアハリートはお茶目に行って、精神世界から立ち去るのであった。後にはムキィと怒るルカが残されるのであった。




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