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転生したら、アンデッド!  作者: 三ノ神龍司
第三幕 終わらぬ物語の行方
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第六十六章 耳をすましても……

「ぶあー」


 饅頭下半身からニョッキリと生えたレールガンの上半身は、(くや)しそうにそう(うめ)き声を()らした。


(よくやれてたよ。――切り替えて防御頼むな)


「ぶあ!」


 上半身の頭を()でながら言うと、片手を挙げて元気よく返事をしてくれた。可愛いね。


 ――さて、防御面はレールガンの上半身に一任しよう。任せられる能力も十分に見たし。今後の成長が楽しみだね。


 うーむ、使い捨ての人材より、使い回せる人材(表現が悪いな)の方が重宝するな。少なくとも上半身の上半身を切り離して使うより断然良い。


 フェリスとかアンサムとか優秀だけど、国とかに準拠(じゅんきょ)して完全な俺の味方じゃないっていうのがネックだったからな。


 俺自身の戦力向上よりも、分離して動かせる戦力の方が使い勝手が良いかも。少なくともミアエルとお兄ちゃんを助けに行くには、分散する戦力が必須だ(アンサムとフェリスは西には絶対に行けないだろうから)。


 まあ、まずは目先のことに集中しよう。


 イェネオさんは……上半身の亡骸(なきがら)から距離を取ったけど細切れにとかはするつもりはないっぽいな。毒とか爆発とかするかもしれないから、無闇に死体を攻撃するのもアレなんだろう。実際、魔道具がまだ無事だし操ろうと思えばいけなくはない。


(……っていうことなら、まだ気付いてないか)


 ならいける。でも時間をかけるとバレる可能性がある。


(お前ら、準備出来たかー?)


(あぶ)


(あば)


(ぷぎ)


 たぶんよろしいようで。なら、一気に勝負を決めるぞ。










 イェネオが空飛ぶアハリートに攻撃して叩き落とすか、と行動に移そうとしている時に、アハリートが降下してきた。


 とりあえず斬撃を飛ばしてみるも、やはり防がれてしまう。――今し方倒した上半身が生えてきて、攻撃を防いでいたのだ。


(……やっぱり復活するんだ。それもかなり早い。……うん、かなり早い)


 別個体の可能性も考えたが、防ぎ方が先ほどの上半身と同様だった。


 同一個体とみていいのか、それともアハリートがそう見えるように操っているだけかもしれない。


(少なくとも魂の移動はしてないから、今の個体は死んだんだよね)


 イェネオは魂を感知する能力に優れているわけではない。むしろ感じる力はないと言って良い。しかし、以前、フラワーから聞いていたのだ。『蘇生術』はフラワーが魂を回収し、空間転移して新たな肉体を『最短距離』で運ぶというもの。


 そのため、空間転移が発生する、または発生した魔力の流れでそれが行われたかどうかを判断出来るのだ。


 それを注視していたのだが、その気配は微塵もなかったのだ。


(本体との繋がりで記憶を保存していたり、スキルを引き出したりしてる? ――そうすると本体よりもスキル効果が弱くなる…………まさにそんな感じか)


 今の上半身の得意なスキルはなんであれ、アハリートより強いということはなさそうではあった。


(豚は透明化、残り二体は閃光と声真似。……さっきの子は汎用性が高い感じ? 他の子に比べて力が弱い理由にもなる、のかな?)


 ちょっと疑問が残る予想だったが、(おおむ)ねそうであると想像しておく。


 ――そこにアハリートが意図していなかった『誤認』が発生した。


(残り二体がどこにいるのか、把握しないと不味いかな)


 確実に残り二体の上半身は奇襲要員だろう。だから常に警戒しなければならない。それと豚は存在を感知出来ているから、意識を逸らしてはいけない。……いの一番に倒したいが、常に距離を大きく取っているために倒すことが難しい。気を取られすぎるとアハリートや他の相手に不意打ちされる危険があるのだ。


 ――やはり一人で戦うべき相手ではないな、と思う。


 それと時間をかけるべき相手だ。肉を削いで、破片を燃やして――を何度も繰り返さないといけないのだ。


 幸いにして殺す必要はなく、触れて行動を抑制すればいいのだが――生憎と簡単にそれを許してはくれない。


 何度か近づいて打ち合ったりなどをして分かったが、肌の表面には強酸らしきものがある。だから直接触れるのはかなり危険だ。


(肌が焼け(ただ)れてもいい覚悟はあるけど……それをしたところでって相手なんだよね。魂を操れる――それもラフレシアがいるなら、かなり精密に操れるかもだし。そもそも肉体の操作がお手軽にやれる時点で、本体に触れられるかどうか怪しいし)


 ようは触れて、特殊効果を発動させたとしても空振る可能性が高いのだ。


(かと言って、直接アスカちゃんを狙っても……守りが堅くて……)


 多少切り刻まれても問題ないからか、アスカを優先する時は普通に優先してくるのだ。


 どうにかして、再生の阻害をしないとジリ貧だ。


 さっきは焼いたから、次は凍らすべきか――イェネオはそう思いながら、飛ぶ斬撃を雑に放ちながら牽制していた。


 アハリート達を止めるためには、まず特殊効果を当てなければならない。そのために確実に当てられる隙を作らなければならない。――しかし、相手はそれを分かっているだろうから、回避するための策を講じているはず。


 だからそれを上回るか、出し抜く何かが必要になる――と、そこまで考えて、何か駄目な方向に思考が伸びている、と気付く。修正しなくてはならない。まず考え方が間違っている。アハリートの存在を――そう、一個体の生物と捉えては駄目なのだ。


(――ああ、そっか。そう考えるとなんでこんなに面倒なのか分かった。……相手は『城』なんだ。堅牢だから攻め立てるにはもっと戦力を揃えるか、違う方向性の火力がないと駄目だ)


 シンプルな殺し合いでも、アハリートを殺しきるのは難しいだろう。――少なくとも対人、対怪物をしているような高火力では意味がない。大きな建造物を吹き飛ばすような戦術的な高火力の方向性が正しいだろう。


破城槌(はじょうつい)みたいな一点突破の攻撃が望ましいけど、今、溜める攻撃はリスクがちょっとあるどころじゃないんだよなあ)


 豚の突進が来るかもしれないし、他の二体が奇襲してくるかもしれない――いや、それを考えておびき出させるのも良いかもしれない。――向こうにはこの考えが筒抜けであるから、そのどちらも対応出来るようにする。


 少なくともアハリートに大きな風穴でも開けない限りは突破することは不可能だ。


「よし、ぶっ放すか」


 こう考えれば良い。視線の先にいる肉体を一瞬で消失させることが出来るならば、たとえ避けられても――そもそも『本体』が避けること前提で攻撃するべきだ、と。


 手加減して、勝てる相手じゃないのは十分に分かった。


「《地獄の業火》」


 超高温で焼失させる。


 巨大な火球を出現させるために、魔力を集中させる。時間はかかるが、1、2秒ほどだ。でも、戦闘では致命的な時間で――やはり長く感じる。


 周囲を探るため感覚を張り巡らせる。豚は感知出来る。――来るとしたら足元。もしかしたら、アハリートの前に出てきて、光線での目潰し、後ろから声真似での陽動、その全てを警戒する。


 そして――やはりアハリートの前に上半身の……二体が共に現れた(一体がおんぶされるように背に覆い被さっている)。さらに豚が突っ込んで来る気配がする。


 火球が間に合わなかったら、まず豚からぶった切って、再度攻撃を仕掛ける。もしくはあの二人の上半身に追いつけると判断出来たら、攻撃することを視野に入れた。


(――?)


 ……油断ではない、一瞬の思考の空白。歴戦であるが故に、一つの疑念が生じた。そしてそれは疑問として、明確な意味をもって脳内に出力される。


 ――――何故、()()()()()()()()()()()


 その瞬間だった。 


 どっ! という衝撃が真横、それも至近距離から襲いかかってきたのだ。身体が傾ぐほどの威力――その上――強烈なめまいと……無音。


鼓膜(こまく)、破られた――)


 イェネオはとっさに食いしばり、身体強化で身体の制御を取り戻す。同時に剣を真横に振るって、正確に『それ』――『孤苦(マニフェスト・)零丁(ディプレッション)』を持つ上半身の首を切り落とした。


 斬り落とされるその瞬間まで、透明で――しかも気配は一切なかった。


(透明――くそ、そのスキル持ちか――渡せたのか――)


 豚が透明化しないことの説明がつくが、今はどうでも良い。


 もはや無駄な思考に割く時間はない。


(小細工がもう出来ない。負けだけど――諦めが悪いからなあ、私は)


 イェネオは喉が裂けきらんばかりの絶叫を上げて、アハリートに向かって一直線に向かう。


真経津鏡(ヤタガラス)』を持つ上半身が光線を放ってきたが、それを甘んじて受ける。だが、視力は失わない。完全に失う前なら、目そのものを抉られない限りは機能を維持出来る。


 高速で、上半身に近づき、縦に一刀両断する。酸の血が、肌を焼くが、どうでもいい。


(良く見とけよ、不死身。死に際の人間が、どんだけ恐ろしいか)


 イェネオはそう思い、アハリートを(にら)む。


 アハリートは身を退きかけたが――耐えた。正しい。今のアハリートの速度では逃げ切るのは難しい。ここで背を向けるのは悪手だ。


 追いつめて、決死にさせたのならそのケアもしなければならない。


 覚悟の決まった死に際の生物ほど質の悪いものはない。誰彼構わず道連れにしようとするかもしれない。食い止めるその決心が必要だ。


 イェネオはアハリートに片手を伸ばしながら――の背後に向かって一気に跳躍する。そこにはアスカがいる。アハリートが一瞬でも気後れでもしてくれれば、抜けられたが――剣の刃先がアスカの入った触手袋に届くか届かないかのところで、足首に何かが巻き付き、引っ張られる感触を覚える。


 直後に身体が引っ張られ、地面に叩きつけられる。


 そのまま剣を持つ腕を遠慮なく、叩き潰され、剣を奪われた。


 そして、さらに手脚も次々に叩き潰され――完全に身動きが取れなくなる。


 全身に激痛が襲うが……何かを刺されるとすぐに痛みが消え去った。


 イェネオは恨みがましげにアハリートを見上げ、呟く。


「ずっへえ(ずりぃ)」


 ちゃんと発音できなかったが、アハリートは理解してくれたのだろう、申し訳なさそうに頭を下げてきた。


「あやはんな(謝るな)」


 こうしてイェネオは無力化されてしまうのであった。

次回更新は6月4日23時の予定です。

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