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転生したら、アンデッド!  作者: 三ノ神龍司
第三幕 終わらぬ物語の行方
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第四十九章 脚本がないとどうしようもない

 うぉー、勇者と魔王をぶっ殺してやる!


 とりあえず物理で殴ろうかと思う。


 スキルはあんまり使わない予定だ。手の内はあんまり見せない方がよさそうっぽい。


 もし繰り返す可能性があるなら、厄介な性質を持つかもしれないらしい。


 繰り返して強くなるというのが、単純にレベルが上がって、使えるスキルとかが増えてくるだけなら良いけど……。


 もしそれがあらゆる面で『対応』されるというのなら話が変わってくる。


 毒を使った結果、毒の耐性とかを持たれるかもしれない。


 他に俺の能力の知識を持ち越されるとかされても厄介極まりない。俺は(だま)し討ち特化なところがあるから、やることを知られるとすごく困る。


 はーい、んで、今から戦うその勇者と魔王だけど――、


(撃滅の勇者と防守の魔王だっけ。…………二つ名逆じゃない?)


《合ってるよ。攻撃特化の勇者と防御特化の魔王》


 なんです、その矛盾対決。


(どっちが勝った……って、いや、訊くまでもないか)


 この世界の勇者は魔王には絶対に勝てない。どれほど強かろうと、『不運』に見舞われ負けてしまうのだ。


(えーっと、撃滅の方がでっかい剣を……持ってるな)


 音で『見て』みると、人間の方はグレートソードみたいなでっかい剣を(たずさ)えている。……良いね。でっかい武器。……デスサイズはラフレシアに止められたから、もう使う気はないけど……あれなら良いかなあ。


 そんでもって、魔王の方はややデカめの、二足歩行の爬虫類(はちゅうるい)っぽい形をしている。周りになんか小さな甲羅っぽいのがいくつか浮いてる。亀か?


(……撃滅の勇者の攻撃に当たっちゃ駄目なんだっけ?)


《『無突』っていうスキルの強化版を持ってるかもしれないからね。掠りでもしたら、全身が弾け飛ぶかも》


 こわっ。


《魔王の方は反射能力を持ってるのは間違いないから、そこを気をつけて。あと本体の耐久値も高かったはず》


(反射の対応って……反射しそうな位置を殴らないように、ぐらいだよね)


《マスターの能力だと、注意する、しか対応する術はないかも。一応、反射出来る威力にも上限があるからそれを越える威力の攻撃をすれば破れるけど――マスターには攻撃手段が少ないから……》


 俺の攻撃スキルって毒みたいなスリップダメージとか主で、純粋な攻撃力ってないんだよね。化学変化とか使えば、まあまあの威力は出せるかもだけども。あとレールガンとかだな。


 俺はラフレシアと会話しつつ、だかだかと突っ走っていると、ついに視界に二つの姿が映る。


 一人は、普通の人間だ。二十歳半ばか少し上くらいの男で、防具は胸当てぐらいしかつけていない。たぶん動きやすさ重視なんだと思う。で、筋骨隆々な感じ。あれが撃滅の勇者だろう。


それでもう一人は、二メートルちょいある爬虫類の……おじさんかなあ。(かみ)とか(ひげ)とか生えててすごいおじいさんっぽいのよね。


 ゆったりとした布の服を纏っていて、長老って感じ。


 そんな長老さんの周りには亀の甲羅を思わせる盾がたくさん浮いている。


 盾に魂はない。スキルで操っているか造り出しているものだろう。リディアの黒球のように強固な繋がりはないはずだから、こっちのちょっとした阻害で無力化出来そうではある。


(まず撃滅の勇者をぶっ殺すぞー!)


 人間は耐久が低いからね。この世界は、耐久を上げる術が身体強化のスキルを手に入れて使うしかない。仮に強化スキルを使っても、腕力とか攻撃力は上がっても防御力は上昇しにくいらしいんだよね。


 だから、攻撃するのは人間の方が良い。あと魔王を攻撃している間に横から攻撃される危険があるから『勇者から攻撃』以外の選択肢がないのだ。


《魔王のケアも忘れずにね》


(オッケー。おら、上半身共、行け!)


 俺は彼岸花風の上半身共をいくつか切り離して魔王へと差し向ける。あの甲羅の盾が邪魔しに入って来ないようにすればいいのだ。


 あの甲羅の盾で俺の攻撃が防がれて、そのせいで隙が生まれて、撃滅の勇者に一撃を叩き込まれて爆散、とかになる可能性があるからな。


 ――というか、あいつらの能力が低いかもしれないと断定して仕掛けるのは危険だ。そう考えてはいるものの、実際に体験するまではあくまで仮説で、警戒を(おこた)ってはならない。


 俺は撃滅の勇者に向かって突撃する。


 撃滅の勇者は馬鹿でかい剣を正面に構える。


(攻撃を受けてもその部分を自切すれば問題ないかな?)


《……さあ? その手のデータはさすがにないよ。ただ『無突』は相手にレジストされる危険があるから、効果が一瞬で発動して一瞬で終わる。まあ、かなり速いっていうのを理解しといて》


 受けてから自切は間に合わないってことか。ただ、一瞬で発動して終わるっていうなら範囲はそこまでじゃないってこった。当たり所によっては俺は致命傷にはならないかもしれない。


 そもそも核&上半身共を全部ぶっ壊されない限り、俺は死なないしな。


 けどそうなるのもそれはそれで危険だから、やっぱり自切用の身体の一部を用意していた方が良いだろう。


 上半身共そのものや腕、あと実は生やせる触手に根本から引き千切れる準備をしておく。いや、防ぐ用は、予め千切って他の触手や腕で先端を掴んでおく方が良いか。


 というわけで、そんな触手や上半身共を前に出しながら、撃滅の勇者の頭部に向かって、攻撃用の分厚い触手を叩きつける。


 撃滅の勇者は横に跳び、悠々と触手を回避してくる。そのまま自然に剣を横に寝かせて、たぶん薙ぎ払う構えを取ってきた。


《『無突』ばかりに気が向いてたけど、『斬鉄』もあると思うよ》


(『無突』との併用は?)


《もちろん出来る》


 じゃあ、このまま受け止めることも出来ずにお饅頭(まんじゅう)下半身をぶった切られるわけか。それでお饅頭下半身が爆散すると。


(パックくん、ダメージ受けないように透明化してて)


《――うん》


 すぐに何をやるか分かってくれたようで、口の中にいたパックくんの気配が完全に消える。


 同時に、俺は下半身の口からいつもケツジェットで使っている液体燃料を着火して噴射する。


「!?」


 ぼがぁん、と、ほぼ爆発するような火炎を噴射して、撃滅の勇者を焼く。俺も口の中が若干焼けて、大きな身体も、やや後退する。


 まあ、噴射したのは一瞬だったし、踏ん張りはつけてたから吹っ飛びはしない。


 というか逃げるつもりでやったんじゃないしな。こういう時、逃げるとろくなことにならない。そもそも体格、素の攻撃力、リーチ、色々な面で勝っているんだから逃げる必要なんてないんだ。


 人間なんてなあ、重い物でぶっ叩かれると大抵死ぬんですよ。


 だから、敵の位置をしっかりと捉えつつ、触手を連続で叩きつける。


「ぐぅっ!」


 体勢を崩していた撃滅の勇者は、この攻撃を(さば)ききれずに滅多打ちにされて(うめ)く。


 んで、剣を持つ手に触手を巻き付け、そのまま握り潰す。さらに動けないように身体に触手を巻き付け、頭部に思い切り触手を叩きつけた。


 ぐしゃ、と撃滅の勇者の頭が潰れる。――殺した、けど身体は消えないね。てっきり魔力で造られているかと思ったけど血肉がちゃんとあるのか。まあ、いいや。魂が抜けたのを確認したから、次は魔王の番だ。


 魔王は上半身共に苦戦していた。


 攻撃は今のところ食らっていないようだったけど、攻撃手段が乏しいのか攻めあぐねていたようだ。……いや、仮にも魔王がそれじゃあ駄目でしょうよ。防御特化だろうと、魔物なら少なくとも攻撃手段を持つ進化を一度くらいはしてるだろうし。


(……やっぱり王種にしては弱いよね)


《格段にね。少なくとも勇者と魔王は最上位スキルを持ってるはずだから。それが勇者と魔王の『役割』になるための条件みたいなところがあるし》


(……この『演劇』が繰り返されるとして、そのうちあいつらに最上位スキルが与えられるってこと、ある?)


《普通に考えればないと思う。けど魔神だからあり得ないことはない、はず。……ジズなんかは他人を強化出来るし》


 ああ、いるらしいね、そんな魔神も。つまり繰り返すとしたら、本物の撃滅の勇者や防守の魔王のような存在になるかもしれないのか。


 ちなみに『ような』というのは単純にアスカがそいつらを見ただけであり、口伝で能力を知っただけらしいので、かつて存在していた勇者と魔王の再現にはならないかもしれないらしい。


 そいつらの詳しい情報を持ってる誰かが吸収されたら完璧な再現もあり得るかもだけど、リディアみたいな奴でない限り――――いや、いたじゃん。


(パックくん、吸収されてんじゃん)


《それは大丈夫だよ。僕の記憶はマスターであるオーベロンにあるから。――情報を抜かれる危険もあるから、この身体には記憶はないんだ》


(なら、問題ないか)


 結構、そこら辺しっかりしてるよね。ラフレシアだって、自死能力あるし、普通なら囚われちゃうなんてことはないんだろう。


 ――けど、考えちゃいけないんだろうけど……もしパックくんの記憶をアスカが手に入れていたら変わっていたのかな。


《どうだろうね。……『不死ノ王』の本当の気持ちは知るべきじゃないとは思う》


(アスカにとって良くない感じ?)


《『アスカにとって』良くないわけじゃないよ。……誰かを嫌いになったりしたわけじゃないんだ、彼は。でもさ、良くないことを考えなくても……何も考えられてなかったことは良い訳じゃないよ》


(…………)


 それは……詳しくは訊きたくはないな。……つまるところ、勇者や魔王に挑んだ理由や死ぬ間際に……アスカのことを置き据えてなかった、っていうこと……かもしれないんだろ。


《…………》


 誰だって大切な相手がいたとしても、常にそいつのために何かするわけじゃない。その時々によって自分のためであったり、何かの志であったり。大切なものは人によって無数にある。


 ……特に死にに行く奴の考えることなんて、基本的に自分に根ざしたことだろう。死を回避するためにしても、そうじゃなくても。そこまで余裕がないからこそ、死を願うんだろうし。


『不死ノ王』関連の記憶には期待しない方が良いかもな。


 ただ、感情を揺さぶるための材料としては使えるだろう。……幸せな真実を知りたい奴にとって、不都合な真実ほど心乱されるものはない。俺の声と合わせれば、いけるかもだけど、どうなることやら。


 さて、まず魔王をぶっ殺そう。


 盾の数は五枚だ。それ以上の上半身共に囲わせて、触手で叩いたり、肉の一部を投げ付けさせていた。


 反射能力はあるようで、触手で殴る度に一部が弾け飛んで、肉の一部を投げ付けた場合は跳ね返ったものが顔面にぶつかってちょっと潰れていた。


(反射って基本的に倍にして返すものなの? ちょっと威力上がってる気がする)


《多少は跳ね返すとブーストがかかるよ。スキルが強化されると耐久の上限とか反射の倍数が上がるね。――見た感じだとあれはほとんど最低レベルのスキルだよ。マスターなら殴り壊せると思う》


(壊す時って反射って発動すんの?)


《するものもあるけど、あくまで強化されたものだけだよ。あれはたぶんない》


 じゃあ、力任せに行くか。


 俺は長くて分厚い触手を作って、雑に魔王を薙ぎ払う。


 魔王が甲羅の盾で防ごうとしてくるが、見事に全部壊すことが出来た。ばきゃん、ばきゃんと甲羅が砕ける音が心地良い。


 魔王は中々に敏捷で、身体を屈めて避けてくる。――回避能力が高い?


 甲羅の盾がなくなったから、上半身共を纏わり付かせる。


「――!」


 ()いずる上半身が脚を掴んできて、魔王は蹴り飛ばして引き剥がそうとするが、何分、数が多い。見た目通り、力は強いようだが複数の手に脚を掴まれては『それなりに力が強い』程度ではどうしようもない。


 ゾンビに囲まれたら終わりなんだ。囲われないように立ち回らないといけない。


 ということで、グッバイ。


 俺は触手を魔王の脳天にぶち込んだ。


 ばきゃん、と脳漿(のうしょう)頭蓋骨(ずがいこつ)が砕ける音が鳴る。


 ――だが、すぐに死なない。俺をジッと(にら)み、震える手で俺の触手を掴もうとして――危険だから即座に離れる。んでもって、上半身共を使って、引きずり倒して動かなくなるまで殴打する。


 時間にして10秒ほど殴り続けて、ようやく魂が抜けたのを確認した。……いや、耐久力馬鹿高くないか?


 これが強くなったら、倒せるのか? そもそも本体に攻撃が通らなくなる可能性すら出てきたぞ。


 ――さて、次は……、


(リディアくる? てか、バルトゥラロメウスが言ってたけど、なんか三人で襲ってきたって言ってたような……)


《しばらく経ったら、とも言ってたから時間がかかったら出てくるんじゃない。で、リディアの性質が多少反映されてるなら勇者と魔王が死んだら、出てこない……かもしれない》


(そこら辺は多少割り切りそうではある)


 すごい恨みを買わない限りは、たぶんリディアは諦めるかもね。


(じゃあ、一旦戻るか)


 俺は空を警戒しつつ、アスカのところに戻る。


(リディアって、黒球や魔法以外だとどんな攻撃してくんの?)


 重力を使ったり、色んな魔法を使ったりしてくるのは知ってる。けど、出力が高くないから今ならレジスト出来なくはないかもしれないから、倒せるんじゃないかって思ってる。


《ここのリディアはどうか分からないけど、『神の杖』とか魔法を別のことに使って『レジストが出来ない』高威力の攻撃をしてくるよ》


(それって実質、防御不可ってこと?)


《うん》


 戦いたくなーい。


 ――幸い、早めに倒すとリディアは現れないみたいだな。そのまま俺はアスカの前まで辿り着く。


 相変わらずぼんやりと俺を見つめてきていて……魂も相変わらず持っていない。


(『不死ノ王』ならここで何を言って、何をするかな)


 俺がそう問うと、パックくんが小さく唸りながら答えてくれる。


《たぶん、『ただいま』って言いながら微笑んで頭を()でるかな》


 うーん、(さわ)やか系主人公。俺には似合わんな。


(……いや……俺もそういうイメージを持って貰うのも大事……?)


《何考えた結果そういうことになるかは分からないけど、小さな子供ならともかく思春期以上の相手に頭撫でるとかやると逆に好感度下がるよ》


 ラフレシアに痛烈なリアルを語られる。くそっ、このリアリティフェアリーめがっ。


(むぐぅ。そんなことないし。だったら今度、スイーツなこと(ささや)きながら頭撫でてやる。恥ずかしがるなよ)


《やめろ。それはスイーツじゃなくて、ただの不凍液だ。別の意味で恥ずかしい》


 ――毒だけにってか。くそっ、上手い返ししやがって、俺だって――「じゃあ逆に良いな、俺の冗談で凍らなくなるからー」とか言いたいけど、それ言うと液体燃料をガチで燃やされるのでやめとく。


 さて、俺はアスカに近づき、その頭を軽く撫でて、頑張って微笑みを浮かべる。


「ただいま」


「…………」


 アスカが虚ろな目で見つめ返してくる。


 何も言わない。


 そして――、


『――始めからやり直します』


 ……うん、ちゃんと台詞を言いましょうよ。どうすることも出来ないじゃないですか。


《昔のアスカは……本当に反応に乏しかったから。彼がなくなって初めて、『どうして』って言う感情から彼のエミュレートを始めて、外部に反応を多く示すようになったんだ。だから彼が戻ってきたら……そのままだし、……そもそもアスカは先を想像できないから……》


(マジでどうしようもないな)


《これこそが魔神の理不尽》


 俺とラフレシアはため息をつく。


『演劇の質を上げるため、リアリティを向上させます。勇者と魔王、その他『エキストラ』に『統合スキル』を追加します』


 そんな声が聞こえてくる。


 俺は空を見ながら思う。


(生き残れるかなあ)


 逃げる方法も同時に探さないとなあ。とりあえずまずアスカの魂を見つけないことには始まらない。次のパートでは、すぐに戦わず周辺を歩き回ってみるか。


 そんなことを考えながら、周りの空間が歪んで『ループ』する様をジッと眺めているのであった。

次回更新は1月22日23時の予定です。

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